生まれたことを誇る物語   作:クランレイア

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約千年の時を超えて

 

 

ND2018

世界を破滅に導こうとする一人の男を、ある青年達が命を懸けて止めた。

青年の名はルーク、古代イスパニア語で[聖なる焔の光]という意味を持つ。

彼の人はその命を懸けて師と呼んだ男を止め、栄光の大地にて消息を絶った。

それから数年後、彼の人は栄光の大地で仲間の元へと戻り、世界を導いていったという。

あれから約千年もの時が過ぎ、世界はまた滅亡の危機へと向かっていた。

 

 

 

ND3020

レプリカ戦争(レプリカ・ウォー)から約千年後。

かつて食料の村エンゲーブと呼ばれた場所は、今では街にまで発展し「食の街 ソル・ゲーティア」と呼ばれていた。

そのソル・ゲーティアの一角、小さな料理店で運命の歯車は急速に狂い出す。

 

からん、ころん、

 

軽やかに鳴り響くベルが来客を告げ、料理店「セレニア」の店内にいた数人が扉の方を見た。

店の入り口に立っていたのは青い髪の若い女と、中性的な隻眼の剣士。

二人を見た全員が驚き、呆れ、無反応など個性的な反応を見せる。

その中で金髪の若い女がにこり、と人の良さそうな笑みを浮かべて決まり文句を告げる。

 

「いらっしゃいませ、フェンディーラ様。セレーディアさん」

「こんにちわぁ、ルイチェル」

「邪魔するよ、ロークナイト」

 

金髪の女の言葉に二人も友好的に返し、店内へと足を進める。

するとカウンター席に一人座っている赤髪の男が口を開いた。

 

「…珍しいな。導師が付き人一人でやって来るのは、少々危険だと思うが?」

「あ”?何だ、アタシ一人じゃ力不足だって言いたいのかい?イルーダ・オージェスタンスよぉ」

 

ギッ!と赤髪の男を睨みながら、剣士はその隻眼を鋭くする。

しかし男は剣士の殺気を受け流し、何事もないかのように自分のコーヒーを口にする。

そんな今にも殺し合いを始めそうな空気を壊すように、明るい女の声が響いた。

 

「まあまあ、別にいいじゃない。騎士団長サマ」

「…、フェルマジェリカ・S(シュテルツ)・バーミリア」

 

突然の声に男は顔を顰め、声の主の方へと視線を向ける。

視線の先には足を組み、ひらひらと片手を振る青の印象的な色黒の女がいた。

軍服を身に纏う女はへらりと笑い、そのままカウンターの奥にいる女に言う。

 

「あ、ルイチェル。コーヒーお願い」

「は、はい…。フェンディーラ様もセレーディアさんも、どうぞお好きな席に座って下さい」

「はぁい。…あら、ゾットもテルーもいたのねぇ」

 

女軍人の言葉に女…此処、料理店「セレニア」の店長をしているルイチェル・ロークナイトが戸惑いながら頷く。

そして未だに立っている女、ローレライ教団最高指導者である[導師]フェンディーラと、その導師に仕える私設軍神託の盾(オラクル)騎士団の主席総長であるセレーディア・アルス・ログホースを席に促す。

ルイチェルの言葉にフェンディーラはにっこり笑い、セレーディアと共に二人掛けのテーブルへと向かった。

その近くのカウンター席で、フェンディーラは見慣れた青年と女に気付いた。

フェンディーラの言葉に気付いた青年が顔を上げ、隣に座る女は無反応で料理を食べている。

これには男、キムラスカの貴族であるファブレ家付きの騎士団[白光騎士団]団長、イルーダ・オージェスタンスも呆れた様子を見せた。

フェンディーラに気付いた青年はぎょっとしながら言う。

 

「ちょ、何でいるんですか?貴女、つい最近まで体調不良だったでしょーが!」

「あらあら、ゾットは心配性ねぇ」

「…あんた、自分の立場考えて下さいよ…」

 

のほほーんとしたフェンディーラに、青年はがっくりと肩を落とした。

その青年の肩に隣にいた女が慰めるようにポンッと手を置く。

苦笑するセレーディアに促されて、フェンディーラが椅子に座るとコーヒーを手にルイチェルがやって来た。

そのコーヒーをフェルマジェリカに渡すと、ルイチェルは女…職人の街アイオサートの天才職人、エーテルナ・ガリュートの前にある空の皿を片付ける。

それを見た青年、創始者の街ユリアガーデンの若手医師であるラゾットーチェ・カーディル・フェンデが手を貸そうとした。

それに気付いたルイチェルはやんわり断り、カウンターの奥に行ってしまった。

ラゾットーチェが椅子に座りなおすと、フェルマジェリカが楽しそうに笑いながら言う。

 

「フラれたわね、ゾット」

「はぁ?ただの親切心だろうが」

 

心外だ、と言いたげなラゾットーチェの隣で、エーテルナは黙々と料理を口にする。

それを横目に見ながら、沈黙していたイルーダが言った。

 

「…最近、キムラスカ内で人々の急死が続いている。原因は不明のままだ。フェンデ、何か知らないか?」

「それは私も気になるわ。マルクト国内でもここ最近で死亡例が急増しているの」

「まぁ…」

 

コーヒーを置いたイルーダに続き、フェルマジェリカも真剣な表情でラゾットーチェを見る。

二人の言葉に「死」という単語を聞き、ルイチェルが悲しく辛そうに俯く。

イルーダ、フェルマジェリカ両名に尋ねられたラゾットーチェも顔を顰め、腕を組むと静かに言い出した。

 

「残念だけど、原因は俺も解らない。ただ、死んだ人達の体内音素やらを調べると、一般人どころか魔物…下手すると植物よりも音素量が不足してた。これはキムラスカ、マルクト両国共通だ」

「はぁ?そんなんじゃ生きられないじゃないか」

 

ラゾットーチェの言葉にセレーディアが呆れたように言う。

これにラゾットーチェは頷き、「この他にもまだあるんだ」と呟いた。

その言葉にフェンディーラが首を傾げてラゾットーチェを見つめる。

少し興味を持ったらしいエーテルナが問うた。

 

「…何があるの?」

「お前らは…あ、ルイチェルも確か知ってっけど、レプリカっているよな?実はユリアガーデンで保護してたレプリカが数日前から次々と行方不明になってる。それも一人二人じゃねえ、最悪だと一気に十数人がだ」

「あぁ、その報告、私の所にも来てましたねぇ。それで偉い方々が昔のように預言(スコア)を〜、なんて言うんで抜け出しちゃいましたぁ」

「……それでですか」

 

はぁ、と溜息を吐くラゾットーチェとセレーディアの二人。

一方でフェンディーラはにこにこ笑うだけである。

そんな三人を見ながらイルーダが腕を組んで考え込む。

反対にフェルマジェリカが頭を乱暴に乱し、半ば諦めを浮かべながら言った。

 

「民の死亡にレプリカ大量失踪、これが全部音素(フォニム)によるものなら、どうするってのよ?わたしもイルーダも権力はあるけど、対策を講じる為に国を動かすにはイマイチ足りてないし」

「全くだな。例え導師が伝えたとしても、民の不安を煽って更に混乱させてしまうだけだろう」

「つーか、逆に教団の狸共に隠されちまうよ。あいつらは自分達の利益や身の安全しか考えてないしな」

 

そう言って鼻で笑うセレーディアに、カウンターにいるルイチェルも暗い表情ながら考え込む。

先程まで笑みを浮かべていたフェンディーラや、無表情ながらにエーテルナも考え込むが中々良い案が思い浮かばず、その場にいる全員が暗い表情をした。

万策尽きたか。

そう全員が思った時に動く影があった。

影もとい、セレーディアが激痛に堪えるように眼帯をした隻眼を抑え、ヨロリと立ち上がるとフェンディーラの側から離れようとする。

 

「セレーディア?」

「おい、どうした」

「う、ぐ…っく、来るな…!なんで、今さら…通信…してくる!」

 

咄嗟に駆け寄ろうとしたフェンディーラやイルーダ、ラゾットーチェを制するとセレーディアは片目を抑えたまま一人で喋り出す。

まるで見えない誰かと話しているような彼女に、心配したルイチェルもカウンターから出てくる。

食事を終えたエーテルナも様子のおかしいセレーディアの方を見たところで、彼女はまた話し出した。

 

「…はぁ?レプリカ…失踪の、原因を知ってる?なんで…つか、その為に………とか、おかし…あっ!てめ、やめ……クソッタレ!後で覚えてやがれ!!」

 

最後に暴言を吐き捨てて、セレーディアは暫く何も話さなくなった。

突然の暴言に驚愕して固まっていたルイチェルが、恐々という様子で近寄り声を掛ける。

 

「せ、セレーディア、さん?あの、大丈夫ですか…?」

『やっと、繋がった』

 

ルイチェルの言葉に答えず、セレーディアは呟いた。

その声は先ほどまでアルトだったが、少し低めのソプラノへと変化している。

異変に気付いたイルーダ、フェルマジェリカ、ラゾットーチェが身構えると残り三人も一歩、二歩と後退る。

それを見た『セレーディア』は口の端を上げると言った。

 

『そう警戒しなくてもいい、私はこの子や貴方達に危害を加えるつもりはない』

「…貴様、何者だ」

「もしかして、ローレライですか?」

 

腰から下げられたトンファーに手を伸ばしながらイルーダが問うが、『セレーディア』が答える前にフェンディーラが首を傾げて尋ねた。

それを聞いた全員が目を見開くのと、『セレーディア』が笑みを深めるのは同時だった。

 

『ふふ、この子が大事にしている訳だ。正解だ、導師よ…我が名はローレライ。このオールドラントを巡る第七音素(セブンスフォニム)の意識集合体である』

「馬鹿な、ローレライは音譜帯となったと千年前から伝えられているぞ!」

「それにローレライと通信出来るのは同じ音素(フォニム)振動数を持つ同位体でないと出来ないはずだろ?アルスはローレライと同じ音素(フォニム)振動数じゃないぜ」

 

『セレーディア』もとい、ローレライの言葉に信じられないようにイルーダが声を上げ、医師であるラゾットーチェが冷静に疑問を投げつける。

それを聞いたローレライは笑みを浮かべたまま告げる。

 

『ほぅ、良く知っているな。確かにこの子と私の音素(フォニム)振動数は違うが、ある物を媒介に通信を可能としているのだ』

「?ある物…?」

「ローレライの宝珠、ですよぉ。アルスの片目にはその欠片が入っているんですぅ」

 

アレも第七音素(セブンスフォニム)の塊ですからぁ、といつの間にか普段通りの笑顔に戻っているフェンディーラが答え、一拍の間を空けてエーテルナを除く全員が叫んだ。

それを見たローレライは心底楽しげに笑い、しかし次の瞬間には真剣な表情で話し出す。

 

『…さて、私がどうやってこの子と通信出来たかを理解してもらったところで、本題だ』

「……人間の突然死、レプリカの行方不明、だね」

『そうだ、原因は預言(スコア)の力が何らかの理由で強まり、世界が預言(スコア)通りに戻ろうとする反動だ』

 

預言(スコア)、という言葉にフェンディーラの表情が固くなり、ラゾットーチェが嫌悪感を隠そうともせず剥き出しにする。

あまり預言(スコア)について知らないルイチェルが首を傾げるが、空気を読んでそれがどうしたなどと言うことはなかった。

ついさっきまで頭を抱えていた問題の原因が分かったことでフェルマジェリカが尋ねる。

 

「待って、預言(スコア)と言っても千年前以前なら延々と続いてるのよ?大雑把過ぎてちょっと…」

「それに過去が原因だとしたら、我々はどうしようも無いぞ」

『そう焦らなくてもいい。私もルークが解放してくれた事で救われた世界を、むざむざと滅亡に向かわせるつもりも無い』

「じゃあ、どうするんですか?」

 

フェルマジェリカに続き、イルーダも険しい表情で告げるとローレライは頷いた。

少し遠回りだったが世界を救うと言外に告げるローレライに、ルイチェルは反対側に首を傾げた。

それにローレライはこの場にいるセレーディアを除いた6人を見て、静かに、だが重く落ち着いた声で答える。

 

『世界が預言(スコア)通りに戻ろうとする反動を利用し、この子を含めた全員を原因がある時代に送る。全ての原因を取り除けば戻ることも出来るので、そこは安心してほしい』

「…そりゃ、またスケールが大きすぎないか?軍人ならともかく、一般人のルイチェルやテルーにゃ辛いだろ」

「…いいえ、私も行きます。年下のゾットくんは行くんでしょう?年上として、何よりこんな私でも出来ることがあるのなら、今いるこの世界を守る為にほんの僅かでも力になりたい」

 

ルイチェル、とフェルマジェリカが小さく名前を呟く。

それを聞いたルイチェルが微笑み、隣に立っていたエーテルナも手を挙げた。

彼女が参加する意思を見せたことに驚く面々だが、告げられた一言に呆れながら納得もした。

 

「…千年前の技術、気になるから行く。あわよくば、幾つか持って帰ってきたい」

「………お前はそう言う奴だったよ、テルー」

 

ラゾットーチェがガクッと肩を落とすと、フェルマジェリカは笑いながら肩に手を置いた。

 

「しょーがないわ、だってテルーだもの!さて、とっとと千年前とやらに行きましょうよ!どうせ、このメンバーが行くのは確定なんでしょう?」

「俺達は構わんが、彼女達も本当に連れて行くのか?」

「イルーダさん、確かに私は戦えませんが独学ながらも治癒術を習得してますから、足を引っ張る事だけは無いと思うのですが…」

「大丈夫ですよぉ〜、いざとなったら私もアルスもゾットもいるんですからぁ」

「いや、あの俺医者……あぁもう!どうなったって知らんぞ俺は!!」

『…随分と投げやりだな』

 

まあいい、とローレライが呟くと奴はパチン、と一度だけ指を鳴らした。

それと同時に6人…正確にはローレライに憑依されているセレーディアを含めた7人を包むように音素(フォニム)が収束し始め、彼らを飛ばさんと擬似的な超振動が引き起こされようとする。

流石のエーテルナやフェンディーラまでもがギョッとすると、ローレライはニヒルな笑みを浮かべながらこう言った。

 

『あぁ、言い忘れていたがこれから向かうのはND2018…レプリカ戦争の英雄、ルーク・フォン・ファブレがいる時代だ。彼らにお前達が未来から来た事は他言無用、不用意に話せば存在が消えかねんからな。せめて一度、栄光を掴む者(ヴァンデスデルカ)を倒してからにしてもらおう』

「おい待て!最後の最後にとんでもねえ爆弾をぶっこむんじゃねーよ!!この、音素(フォニム)の塊がぁああああああああ!!!」

 

ラゾットーチェのその叫びを最後に、ローレライを含めた全員の姿が掻き消える。

この星(オールドラント)を巡る音譜帯へと戻っていったローレライの意識は、セレーディアの身体から離れる際に祝福を告げる。

 

ーーーお前達に、(ユリア)の加護があらん事を

 

その言葉を意識の端で認識しながら、セレーディアは意識を手放した。

 

 

 

 

 

さあ、刮目せよ。

 

これより、未来より来たる者達の歴史を辿る(世界を守る)、もう一つの深淵の物語(生まれた意味を知る物語)が始まる

 

 

 

 

 





遂に始まるもう一つの深淵の物語

そこで出会った人々に、彼らは何を思うのか…


とりあえず不定期更新ですが進めていこうと思います
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