生まれたことを誇る物語   作:クランレイア

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大変遅くなりました、第1章の始まりになります。
まだまだ私生活が忙しくて不定期更新な上に、あちこちに寄り道しやすいですが出来るだけ早く更新したいと思います。

近いうちにFateのやつもやりたいなぁ(願望


光の始まりへと向かう

 

 

 

 

 

 

暗い意識の中で、微かにだが誰かの呼ぶ声がするとラゾットーチェは思った。

ぐるぐると回る世界に気持ち悪くなり、しかしそれでも意識を手放す事もなく、また目覚めるわけでもない。

呼びかける声はだんだんと大きくなっており、優しくも高い事から女性の声であると分かる。

そしてその声に聞き覚えのあったラゾットーチェは意識を声の方に向け、重たい瞼をこじ開けるようにして目を開いた。

 

「あ…良かった、目が覚めたのね。ゾットくん」

「…ルイチェル…?あれ、俺たち…」

「詳しい説明はもう少し後にしましょう?まだテルーちゃんとセレーディアさん、フェンディーラ様が起きていないの」

 

目を開いた先にいたのは柔らかい色合いの金髪を三つ編みにして横に流し、桜貝のような色の髪留めをした海色の瞳の若い女で、その姿を見てあの料理店の店主であるルイチェルだと気付く。

彼女の言葉にラゾットーチェは上半身を起こし、自分の周りにエーテルナやフェンディーラ、セレーディアが倒れているのを確認した。

その反面で周辺の魔物の気配を探り、共に過去へと遡ったイルーダとフェルマジェリカの二人がいない事に気付く。

 

「イルーダとルーリィは何処行ったんだ?」

「お二人なら周りの様子を見てくるって。千年前の地形だから、少しでも把握しておきたいそうよ」

「…あ、そ。やっぱ軍人は行動力あるな」

 

呆れ半分、関心半分でそう言いながらラゾットーチェは立ち上がり、未だに気を失っている三人を診始める。

齢19とこの中で最年少である彼は、千年後の導師専属医を務めるほどの腕を持つ世界が誇る天才医師である。

ラゾットーチェは三人を診た後、エーテルナとフェンディーラだけ(・・)を起こしにかかった。

その様子にルイチェルが首を傾げるのとほぼ同時に二人が目を覚まし、辺りを見回して状況説明を求めた。

それと時を同じくして周辺の地形と魔物の有無を確認しに行っていたイルーダ、フェルマジェリカの二人も戻ってきて全員(ただしセレーディアのみ未だに目覚めない)がその場で円の形に座った。

皆が此方を向いている事を確認して、イルーダとフェルマジェリカは話し出す。

 

「とりあえず周りに魔物の気配はなかったわ。此処から北に廃城があって、ほぼ逆方向に港も確認した」

「それ以外の街や施設が無いことから、恐らく廃城はプリズミーシェイ。港はリーシャン港だろう…最も、千年前の名称が分からないままなのはマズいがな」

「それは後で地図を買うしか無いと思います。幸いな事に千年後と通貨は殆ど変わらないみたいですし、何とか出来そうですよ」

 

ほら、とルイチェルが差し出したのは常に持ち歩いている財布から出した千年後の通貨と、先程拾ったのだという千年前…つまり現在の通貨。

見比べても殆ど、というより全く同じ通貨にエーテルナはまじまじと見つめる。

一つ不安材料が無くなったことでフェンディーラが言った。

 

「あのぉ、ゾットに聞きたいのだけど、どうしてアルスを起こさないのかしら?彼女も聞きたいだろうし、除け者にしたと聞いたらきっと怒るわよぉ〜」

「…起こさないんじゃなくて、起きないんだよ」

「?どういうこと、ゾット」

 

エーテルナに名を呼ばれ、ラゾットーチェは眉を下げながら答えた。

 

「体に異常は見当たらなかったけど、一向に起きる様子が無い。いつものアルスなら誰かが近づくだけで起きるだろ?たぶん、ローレライとの通信で予想よりも体の負荷が大きくかかり、その回復の為に強制的に眠ってるんだ」

「じゃあ、暫くは起きないってこと?」

「暫くって言っても、アルスの体力とか考えて半日掛かるか無いかくらいだと思う」

 

ラゾットーチェの言葉に納得した全員がセレーディアを見つめるが、問題はまだまだ山積みである。

それを指摘する為にフェルマジェリカが言った。

 

「それなら、まずはこの場所を移動しましょう。少しでもアルスが回復出来るようにと、テルーは兎も角、一般人のルイチェルの安全確保の為にも。それからどうするかを話しても遅くはないわ」

「そうだな、このままでは野宿になりかねない。リーシャン港までの距離もさほど無いだろうし、今はそれが最善だろう。…ログホースは俺が運ぶ。バーミリアやフェンデは周囲の警戒を頼みたい」

「あらぁ、ならライガにでも変化して運びましょうかぁ?」

 

フェルマジェリカとイルーダがそう言えば、小首を傾げながらフェンディーラが尋ねる。

ライガとは獅子に似た肉食の魔物であり、女王を群れの長として暮らしている。

その大きさは軽々と人を背に乗せる事ができ、女王ともなれば通常のライガの倍以上あるだろう。

軽く告げているが生まれながら膨大な音素(フォニム)を持つフェンディーラだからこそ、人間ならざるものに体を自由自在に変化させるという事が出来るのだ。

それを分かっている軍人の二人はラゾットーチェを見、彼も仕方なさそうに頷いた。

それを見たフェンディーラは瞳を伏せると自身の体内音素(フォニム)に意識を向け、自在に操ると次の瞬間にはその場に美しい獣がいた。

女王よりは小柄だが通常のライガよりも大きく、分かりやすいよう色もフェンディーラの髪の色であるシアンの鬣を持つその獣は、小さく唸ると背中に乗りやすいように伏せた。

すぐに意識がないセレーディアと彼女を支える為にイルーダが背に乗り、そのまま立ち上がるのかと思われたが中々行動に移さない。

首を傾げていればエーテルナが突然足を振り上げた。

そして瞬きをする間も無く現れたのは、小柄な彼女が使用するには大きい移動式音機関。

千年後の世界でエーテルナが作り出したそれは音素自動型二輪移動式譜業と言い、本来ならば存在しなさそうな物である。

現代で言う大型のバイクに跨ったエーテルナは急な事に驚いている面々を見ながら言った。

 

「…ルイチェル、ゾット、後ろ乗って」

「え?でも、それじゃあフェルマジェリカさんが…」

「あー、そういう事。乗りなさい、ルイチェル」

「フェルマジェリカさんまで…」

「私は導師様が乗せてくれるみたいだから、気にしないで乗りなさいよ。魔物も譜術で一発だしね!」

 

そう言って片目を瞑るフェルマジェリカと、無言で早く乗るよう催促するエーテルナに渋々頷くルイチェル。

苦笑しながらラゾットーチェも軽く背中を押し、エーテルナの後ろに二人が座る。

大型のバイクと言えど、その大きさは改造が繰り返されていて三人乗っても余裕のようだ。

音素自動型二輪移動式譜業に三人が乗ったのを確認した後、フェルマジェリカもイルーダの後ろに身軽に乗り込むと獣の背中を軽く叩いた。

獣の姿をしたフェンディーラは了解の意を込めて軽く吼えると立ち上がって勢いよく駆け出す。

その後を追いかけるようにエンジンを掛け、アクセルを握ったエーテルナ達が続く。

バイク特有の駆動音が辺りに響き、眉をひそめたエーテルナがメーターなどがある部分のボタンを押すとその音は限りなく小さくなる。

音素自動型二輪移動式譜業による駆動音で周辺の魔物を刺激しないように考えた結果、風属性の第三音素を利用して音を消すように調整したのだ。

密集する木々の中を駆けて行き、数分と経たずにちょっとした森だったその場所を抜けると視界の遥か向こうに港が見えた。

それが皆が言う千年前のリーシャン港なのだろうが、彼らは記憶の中にあるその場所と活気の違いに眉を顰めた。

 

「アレが、千年前のリーシャン港…?」

「随分と寂れてるっつーか、人がいねえな」

『仕方無いですよぉ。千年前のリーシャン港は、まだキムラスカの軍港として機能していたはずですからぁ』

「そうだっけ?」

 

空気に溶けるように響くフェンディーラの言葉に、ラゾットーチェは首を傾げた。

それに頷いたのは生まれながら政治、経済、歴史などの英才教育を受けてきたフェルマジェリカである。

 

「そうよ、今の時代…ND2018の頃はキムラスカ、マルクト両国の間でまさに一触即発の状態だった。だから互いの国境を守るリーシャンタグスは非常に警戒しているのよ。まあ、私達はそれを超えた状態で来たんだから、ある意味幸運だったわ」

「旅券など持っていないからな、俺達は」

「もし、誰かに確認されたらどうしましょう…」

『それなら、私が持ってますよぉ。ローレライから預かりましたぁ』

「………。もっと早く言って欲しいです、フェンディーラ様」

 

フェルマジェリカの言葉にイルーダが頷き、心配そうにルイチェルが呟けばそれをのんびりとした口調でフェンディーラが答える。

思わず脱力しながらラゾットーチェが呟くのと、ある程度までスピードを落としたエーテルナが音素自動型二輪移動式譜業を止め、ライガに変化したフェンディーラが立ち止まるのはほぼ同時だった。

気が付けばリーシャン港は徒歩十数分で着くような距離まで来ており、二人の意図を理解した全員が地面に足をつける。

未だに目を覚まさないセレーディアをイルーダが背負い、マルクト帝国の軍服を着ているフェルマジェリカが荷物の中からマントを取り出すと、キムラスカ軍を刺激しない為目立たないように身に纏う。

足を振り上げたエーテルナが音素自動型二輪移動式譜業をコンタミネーションという、武器などを音素に分解した後体の一部に組み込み、自分の意思で再構築するという高度な現象を利用して自身の足へと戻す。

フェンディーラも横に一回転すると、瞬く間にその姿を元の若い女の姿に戻った。

 

「さぁ、急ぎましょうかぁ。もう少ししたら日が暮れるみたいですし〜」

「アルスも休ませないと、だよね」

「お、おう。魔物もこの近くには来ないみたいだから、急ぐぞ!」

 

こうして一行は港へと向かい、無事に宿の一室を借りることが出来た。

セレーディアを寝台の一つに寝かせ、6人はその周りに集まるように座る。

念の為にセレーディアを診ているラゾットーチェの隣に座るフェンディーラ、反対側に必要な物を買い揃えたルイチェルとイルーダ、マルクト軍の服から動きやすい旅装束に着替えたフェルマジェリカと興味深く地図を見ているエーテルナ。

何も心配はいらないと判断したラゾットーチェがセレーディアから離れると、一行はエーテルナの持つ地図を中心に広げて話し始める。

 

「あーっと…まず何から話せばいいんだ?」

「現在地の確認をした方が良いんじゃないかな、現在()未来(千年後)は全く違う名前だから混乱すると思うの」

「そうね。まず、私達がいる場所はリーシャン港…もとい、カイツールの軍港。これから向かうのはコーネリアナを経由してグランシャリアンだと思うわ」

「コーネリアナは現在の名称でケセドニア、グランシャリアンはバチカルと言うようだな」

 

ラゾットーチェが首を傾げながら疑問を口にすれば、地図を見ながらルイチェルが提案する。

それに頷いたのはフェルマジェリカで、現在地から予測される目的地を告げる。

告げられた目的地の名称を自分達の知っているものから、現在の時代で使われているものに言い直したのはイルーダだ。

興味深そうに地図を見ていたフェンディーラが不思議そうに問いかける。

 

「あらぁ?コーネリアナからなら、マルクトにも行けるはずよ。そっちには行かないのかしら?」

「ローレライの英雄殿は確か、マルクトからキムラスカに戻る途中のはずだろう。歴史に歪みがなくても敵国にわざわざ残るとも思えん」

「…私達の目的は本来の歴史になるように、歴史に干渉するものをなんとかする、でしょ?」

「それならある程度まで、歴史に残されていたように預言(スコア)の通りに進まないといけないってか?……胸糞悪ぃ」

「しょうがないよ、ゾットくん。…でも、私にはいまいち解らないなぁ。預言(スコア)に頼るってどんな感じなんだろう?」

 

そう言って首を傾げたルイチェルに答えたのは、珍しく険しい表情を浮かべたフェンディーラ。

 

「私としては、良いことなんて殆どありませんよぉ?どこまでもその通りにするのは、と〜っても楽なものです。でも、それだと個性が、人格が、その人だという存在が無くなります。それじゃあ人生は面白くないですし、何より、始祖ユリアが詠んだとされる秘預言(クローズドスコア)はこの星の破滅を詠んでいましたからぁ」

「…それは、俺達に告げても大丈夫なのか?」

「大丈夫、だと思う。それが詠まれていたのはND2018…つまり、今俺達がいる時代までだ。…第七譜石に詠まれていたものは、嫌というほど詠んできたから憶えてるぜ」

 

そう言ってラゾットーチェは瞳を伏せ、幼少期から諳んじてきた遥か昔の預言を口にする。

 

「ND2000。ローレライの力を継ぐ者、キムラスカに誕生す。其は王族に連なる赤い髪の男児なり。名を聖なる焔の光と称す。彼はキムラスカ・ランバルディアを新たな繁栄に導くだろう…」

 

「ND2002。栄光を掴む者、自らの生まれた島を滅ぼす。名をホドと称す。この後、季節が一巡りするまでキムラスカとマルクトの間に戦乱が続くであろう。」

 

「ND2018。ローレライの力を継ぐ若者、人々を引き連れ鉱山の街へと向かう。そこで若者は力を災いとし、キムラスカの武器となって街と共に消滅す。しかる後にルグニカの大地は戦乱に包まれ、マルクトは領土を失うだろう。結果キムラスカ・ランバルディアは栄え、それが未曾有の大繁栄の第一歩となる…」

 

「ND2019。キムラスカ・ランバルディアの陣営は、ルグニカ平野を北上するだろう。軍は近隣の村を蹂躙し要塞の都市を進む。やがて半月を要してこれを陥落したキムラスカ軍は、玉座を最後の皇帝の血で汚し、高々と勝利の雄叫びをあげるだろう。」

 

「ND2020。要塞の町はうずたかく死体が積まれ、死臭と疫病に包まれる。ここで発生する病は新たな毒を生み、人々はことごとく死に至るだろう。これこそがマルクトの最後なり。」

 

「以後数十年に渡り、栄光に包まれるキムラスカであるが、マルクトの病は勢いを増し、やがて、一人の男によって、国内に持ち込まれるであろう」

 

淡々と告げられる言葉の数々にルイチェルは言葉を無くし、予め知っていたフェンディーラ以外の全員が表情を強張らせる。

 

「…やがてそれが、オールドラントの死滅を招くことになる」

 

最後にそう締め括られた言葉に、その場は重い沈黙が漂った。

ラゾットーチェは不機嫌そうに髪を掻き上げながら言う。

 

「…もし、歴史が預言(スコア)の通りに進んじまったら、千年後に生きる俺たちはいなくなる。何千、何万という途方もない人数の人が死ぬ…それだけは何としても阻止しねえと」

「…その為にあたしらが来てんだ、確認しなくても解ってんだよラゾットーチェ」

「アルス!お身体はもういいんですかぁ?」

 

聞こえるはずのない声に全員が顔を上げ、寝台に横になっていたはずのセレーディアを見た。

上半身をゆっくりと起こすセレーディアにルイチェルが手を貸し、そばに駆け寄ったフェンディーラが問いかける。

セレーディアは頭を振りながら起き上がるとルイチェルに短く礼を告げ、フェンディーラに深々と頭を下げながら言った。

 

「この通り、もう大丈夫です。迷惑を掛けて申し訳ありません、フェンディーラ様。…あんたらも、心配掛けて済まなかった」

「気にするな、ログホース」

「そうそう!ローレライとの通信の影響なら仕方ないわよ」

「…大丈夫なら、良かった」

 

上からイルーダ、フェルマジェリカ、エーテルナが声を掛けるとセレーディアも安堵したように表情を緩めた。

宿屋の従業員から水を分けてもらったルイチェルが戻り、手渡されたセレーディアは礼を告げて受け取るとそのまま言った。

 

「…んで、此処は何処なんだい?」

「此処はリーシャン港、今風に言うならカイツールの軍港だとよ。此処から英雄殿を追いかけてコーネリアナを経由し、グランシャリアンに向かう予定だ」

「ふーん…聖なる焔の光を追いかけるのはいいけど、そいつらが今何処にいるのか知ってんのかい?」

 

ラゾットーチェの言葉に自分から聞いたくせに、セレーディアは興味無さげに頷くと首を傾げて尋ねる。

一瞬、言葉に詰まったラゾットーチェに助け船を出したのはイルーダだ。

 

「伝承通りなら此処を通った直後、または前だと推測できる。赤い髪に緑の瞳の青年を見たか尋ねて回ったが、此処で働く人間は誰一人見ていないそうだ」

「なら、まだ来てないことになりますねぇ。ここら辺で一休みしませんか〜?」

「それには私も賛成よ。慣れない事ばかりで、ルイチェルもテルーも疲れたでしょう?」

 

フェルマジェリカに話を振られたルイチェルは曖昧な笑みを浮かべるが、エーテルナは無表情だが素直に頷いた。

それを見たフェンディーラが笑顔で、ね?と念押しをすれば、ラゾットーチェもセレーディアも押し黙るしかない。

仕方無さそうに頷く隻眼の剣士に苦笑しながらフェルマジェリカは言った。

 

「よーし、それならとっとと休みましょう!明日も色々と早いでしょ?」

「そ、そうですね。それじゃあ、お先に失礼しますね」

「おー。んじゃ、俺達も休もうぜ」

「……おやすみ」

「は〜い、おやすみなさーい」

「あぁ、しっかり休むといい。何かあればすぐに起こそう」

 

フェルマジェリカの言葉をきっかけに全員がそれぞれ動き始め、彼女とエーテルナはすぐに近くの布団へと横になり、イルーダは一番端の簡素な寝台に腰掛けると愛用している武器の手入れを行う。

ラゾットーチェは欠伸をしながらも静かに布団に潜り、フェンディーラはセレーディアにしっかり寝るように言いくるめると、彼女の隣の寝台に寝転んだ。

セレーディアはそれに苦笑しながらも静かに瞼を閉じると、すぐに眠りについたので思ったよりも体力を消耗していたらしい。

それらの様子を見届けたルイチェルは小さく笑みを浮かべ、宿屋の廊下に出ると突き当たりにある窓に向かう。

そこから見える星々の輝きに目を細め、その場に膝立ちになると祈るように両手の指を絡め、それを自分の額にくっつけた。

瞳を伏せた彼女が何を想い、祈ったのかは分からない。

少しするとルイチェルは顔を上げて夜空を見上げた後、迷う事なく部屋に戻るといそいそと寝台に横になる。

既に起きているのは武器の手入れを行っているイルーダだけのようで、ルイチェルは他の皆を起こさないように小声で彼に言った。

 

「…おやすみなさい、イルーダさん」

「あぁ、良い夢を。明日はきっと忙しくなる、今の内に休んでおけ」

「はい、頑張りますね…」

 

そう言って微かに微笑むイルーダにルイチェルはこくりと頷き、そのまま瞳を閉じるのだった。

 

 

 

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