Fate foreverseensomeday 作:画星大河
蒸し蒸しと、夏の暑さが鬱陶しい。
日が傾いていると言うのに、夏の蒸し暑さは静まる気配がなかった。
「あっちぃなちくしょーめ…」
バイトに向かう道中、吉羅は誰に言うわけでもなく呟く。
気分は最悪。
バイトも投げ出してしまいたいがそうもいかず、吉羅は足取り重く、ノシノシと遅く歩く。
「……」
気分が萎えてると、何故か昔の嫌な記憶を思い出してしまう事がある。今まさに吉羅はそんな状態だった。
こんな事に気付いたのは、いつ頃だろうか。
気が付けばランドセルを背負い。
隣にはいつも幼馴染みの木谷文美がいて。
自分には両親の顔を見たことがなく。
気が付いたら「吉羅大地」という名前が付いていた。
幼少の時の事だし、記憶を忘れてしまっているだけだ、と言われたらなんとも言えないが、この名前をつけた親を吉羅は知らない。幼馴染みの文美に聞いても吉羅くんは吉羅くんだよ、と呪文のように繰り返されてしまう。
吉羅大地と言う名前が本名かどうかすらわからず数年間生きてきて、始めて自分が異常者だと知った。
親はどこにいるんだろう。
親の顔はどんな顔をしてるんだろう。
気が付けば吉羅は文美の家に一緒に暮らしていて、小学生より前の記憶が全くなかった。
―――記憶喪失?
いや、そんな物騒なものではない気がする。
簡単に言うと、記憶が小学生の時に初めて生まれたと言う感覚に近い。
きっと、文美は何か自分の事を知っているんだろう。だが、彼女は絶対に語らない。語られたら、不味いのか、語りたくないのか、それか、吉羅に気を使ってくれているのか。
そのせいか、吉羅は心の底から他人と言うのを信用した事がなかった。疑って、疑って、挙げ句の果てには幼馴染みの文美にさえ疑いの目を向けてしまう。
―――深入りしないでほしい。
異常者である自分に誰も寄って来てほしくない。
他人を疑う、と言うのは思った異常に疲れる行為でそれ以上に人に恐怖を抱く。
そんな思いで吉羅は中学時代から髪を染め、不良と思われ、他者は吉羅に一切近寄らなくなった。思惑通りだった。
高校3年になった現在。
昔の事を思い出しては、面倒くさい事してたなぁとそんな事を思う。
「疑り深いのは変わんねぇけどな…」
ボソッと誰にも聞こえない音量で吉羅は言う。
昔ほどではないにしろ、人と話す時はまず疑いから始まるのは治らない。
最低な事だ。
「なんでも願いが叶う、聖杯と聖杯戦争、ねぇ…」
バイト先に向かいながら吉羅は文美がさっき言っていた事を思い出していた。
そんなもんあるわけねーだろ、と思いながらも何か聖杯、と言う単語が妙に引っ掛かっていた。聞いたことがないのに、何故か懐かしさすら覚えるこの単語。
「願いが叶うとするなら―――」
吉羅は何故か悲しそうな顔で
「―――普通になりたいなぁ」
そんな事を呟く。