2ヶ月後
「今度あなた達のクラス担当の教官になったファウスト・ウェフ=フーレア・シータです。よろしくね。」今度は、グラサンはなくて、紅い色の瞳でラフィール達を見ていた。
「ファストさん・・・・その顔」自分とそっくりの容姿に驚くナシーカ
「そなたの顔はナシーカそっくりだったのか?だから、あのとき、変装をしていたのか。偶然とはいえ、奇妙だな」ラフィールも驚いていた。
「王女殿下、いえ、アブリアル訓練生、教官になったからにはあなたを厳しく鍛えますから、その辺をしっかり、頭に入れておいてください。それと、皆さんにいっておきます。一応、私は王女殿下の護衛も兼任しているので、普通の教官と違う行動をとるかもしれないけど、気にしなくていいわ」腰に二本の剣を携えていうシータ
「ところで、ファウスト教官、剣を2本持っているのはどういうことなのですか?一本壊れても大丈夫なための予備なのですか?」シータの剣が気になるナシーカ
「違うわ。私はもともと二刀流よ。あのときは、護衛任務というのが初めてだったので勝手がわからなくて、一本だけしか持っていかなかったのよ。だから、今度は、最初から全力を出せるようにと2本持っているわ。ああ、それと、男爵閣下には、あの剣は返しました。もっとも、あの方にはあまり必要の無いものみたいですけどね。」微笑みながら言うシータ
「そうですか。お祖父様も安心するでしょうね。それでは、これからよろしくお願いします。ファスト教官。」ナシーカ
「うむ、そなたの力だけは信用しているからな。」ラフィール
こうして、『青の牙のスポール』が飛翔科修技館に赴任した頃、帝宮の密議の間では、紋章院の『青の牙』の長であるハーデスが定例報告をラマージュ皇帝陛下にしていた。
「陛下、以上が、『青の牙』の現状報告書です。それと、陛下が気にしていた。レオという人物は、ここ2ヶ月ほど消息不明でしたが、息子のダリシュの情報によれば、巡察艦6隻、突撃艦12隻、護衛艦10隻、戦列艦4隻ほどを盗み、機械兵士を使って、戦力増強と訓練をはかり、ハニア連邦の国境地帯のハーブル門の小惑星帯に潜んでいるということです。」淡々と説明するハーデス
「なんと、それほどまでに戦力を増強したのか?なぜ、そこまで、ほうっておいたのだ?」不服そうに片眉を上げるラマージュ
「陛下がこの件に関しては、口出ししないと言っていたので、我々も何もしませんでした。まぁ、それは、名目ですが、それ以外のことで何かと忙しかったのです。我が家の不祥事なのですが、私が殺した兄のタトゥースの分枝体(クローン)がレオ以外で107人いたのです。そして、彼らは私が知らないうちに紋章院や星界軍の情報局に潜んでおり、それを処理するのがとても大変でした。どうやら、情報部門の組織をのっとり、帝国を裏から操ろうという計画が進行していたみたいです。でも、まぁ、それをこんなに早くできたのは、ダリシュのおかげです。まったく、我が息子なら末恐ろしいです。」苦笑を浮かべながら報告するハーデス
「なんと、そんなことが起きていたのか?確かに報告書には今のことが書いてあるみたいだな。自分の足場を固めるのに忙しかったか。そなたも息子に救われるとは、衰えたのか?」不満そうに言うラマージュ
「いいえ、それはないです。陛下。息子のダリシュはキルヒム家の最高の後継者です。現時点でも私に匹敵・・・いや、もう抜かれたかもしれません。とにかく、私が長から引退するのは早まるのは確実でしょうな。」言葉とは裏腹に嬉しそうに言うハーデス
「そうか、興味深いな。そなたの息子に機会があったら、会わせるがよい。今回はそなたの家の不祥事とはいえ、大事にいたらせなかったので、私がそのものに直々にお礼を伝えよう。」ラマージュ
「そうですか。それは、ありがたいですが、今、息子はファウスト・ウェフ=フーレア・シータが王女殿下の護衛についているため、『青の牙』のクリューヴマスターの代行をやっているのです。ですから、息子も忙しいので、陛下と会える機会は残念ながら今はできそうもありません。」
「そうか、わかった。それで、そなたは、レオの件はどうするばいいと思う?レーグルス男爵は、子供たちに任せるがいいといったが、状況が悪化してきたの事実だ。果たしてそれだけの戦力にプラキア卿達は対抗できるのか?」やはり心配になるラマージュ
「うーん、私達はプラキア卿に約束したので、レオに手出しはできません。ですから、陛下の直属の暗殺部隊『黒き槍』を使えばどうでしょうか?陛下は、別にプラキア卿とは約束はしていないのでしょう?だったら、これくらいのことはできるはずです。私も久々に彼らの勇姿もみたいですしね。」にやりと笑うハーデス
「そうか、そなたは、そういう意見か。まぁ、それも考えてみる。では、自分の任務に戻るがよい。私も皇帝の義務に戻るから」
そういって、颯爽と密議の間からさるラマージュ
ラマージュが扉をくぐった瞬間だった。
『こちらは造船・・・ぐあぁぁ~~~!‥‥ガガガガガ……ザーー・・・』
「これは国家の一大事です。プラキア卿には残念ですが」
「その先は申す出ない。直ちに『黒き槍』と連絡を」
冷静に穏やかに命令を下すラマージュ。しかし
「陛下、通信網が冬眠しました。あ!、全電力供給施設が停止」
直属の部下の努力も空しく、フッと電気がおち、黒洞々たる暗闇が全てを覆い尽くした。
「レオの仕業か。私は供給施設に向かいます」
ヤフェトはそう言って扉に近づいたが、電力の供給が絶たれた今、扉は完全に停止。それどころかライフラインである水や酸素までの供給が停止していた。
「このままではここで短いひと時を過ごす羽目になるかもしれない」
「そなたと一緒ならそれもよいかもしれぬ」
すると、扉の向こうからコツコツと音がしていた。
「何者?」
そういって、ラマージュは凝集光銃をヤフェトは剣をかまえていた。
「皇帝陛下、お久しぶりです。こんな状況でお会いするとは思えませんでした。」
扉を開けて出てきたのはプラキア卿だった。
「初めまして、皇帝陛下。シュリル・ウェフ=キルヒム・ユーリルです。ハーデスの娘です。」金色の瞳で答えるユーリル
「皇帝陛下、私のわがままで、レオをほうっておいたために、このような深刻な状況になってすいません。ですから、陛下もそして、『青の牙』の皆さんも私を気にせず、介入していただいていいです。国家の一大事なのですから。」すっかり、たくましくなったプラキア卿
「そうか、わかった。それで、この状況は何なのだ?帝宮までこれほど侵入できるのか?レオという人物は」帝宮の警護のふがいなさに憤りを感じるラマージュ
「侵入したのはたぶん、機械兵士でしょう。レオ一人では、不可能だと思います。それで、兄・ダリシュの報告では、レオが本来の自分の役割を気付かされたのはではないかということです。彼は、国家を乱す役割を。そして、その計画を立案しているのが、タトゥースが生前に作った最高・最悪の発明品・擬似生命思考結晶体『サタン』です。レオや機械兵士は、その駒にすぎません。兄も今、その本体を懸命に探していますが、まだ見つかりません。」兄の情報を伝えに来たユーリル
「つまり、タトゥースのクローンは駒に過ぎず。その『サタン』とやらを破壊しない限り、この騒動は収まらないということか」深刻な事態に眉をひそめるラマージュ
「でも、今回は、多少の被害はでましたが、レオの計画はすこしは阻害できました。この混乱にじょうじて、艦艇を強奪しようとしましたけど、盗まれたものは、すべて破壊しました。ユーリルと私でいざというときのことを考えて、爆薬をしかけておきました。陛下に前もってそれを伝えるつもりだったのですが、それより早く向こう行動したために、結果報告が先になって、申し訳ございません。」プラキア
「そうか、わかった。敵の戦力を少しでもそいだのだら、それでよいであろ。とにかく、『黒き槍』の隊長、ベルガを呼べ、今回の件は、緊急を要するからな」決意するラマージュ
「ええ、彼ならついさっき、来ましたよ。男爵閣下の後ろに。」そういって、指差すユーリル
「な、なんと、私に気配さえ感じさせず、後ろをとるとは、相当の使い手ですな。」驚くヤフェト
「ベルガ、勅命する。レオを殺せ。そして、『サタン』を破壊せよ。以上だ。詳しいことは、『青の牙』のハーデスの息子に聞くがよい。」
「は、わかりました。では。」
そういって、一瞬で気配を消し、闇の中へ消えていった。
「陛下、私もぜひ、協力させてください。このような事態を招いたのも私にも責任があります。」真剣に皇帝を見つめるプラキア
「プラキア卿、そなたの思うがままにするがよい。私は皇帝として、今回のことを片付けるまでだ。それと、ヤフェトは、プラキア卿と協力してやるのだ。その方がいいであろ。」ヤフェトにも役割を与えるラマージュ
「はい、おおせのままに。遺伝子では孫に当たるものを助けられるのです。ありがたいことです。」ラマージュの命令に満足するヤフェト