こうして、重大な秘密をシータが告げている頃、帝宮ではハーデスが定例の報告をしていた。
「陛下、先日は、危ない様子でしたね。ダリシュから聞きました。今後は、これを糧として、むやみに前線にでないことを希望します。それでは、報告します。」いつものように淡々と説明するハーデス
報告書の主な内容は、今回の騒動の報告とその対応策だった。
「そうか・・・。わかった。やはり、緊急を要するのは、思考結晶から切り離された艦隊の編成か。それで、そなた、この敵に対しての勝率はどれくらいだ?艦隊戦は、わかるが、このての戦いは、私は不慣れだ。勝率を聞きたいものだ」報告書を見つめながら聞くラマージュ
「さあ、それは、わかりません。そのことは、ダリシュに聞いてください。この事変については、息子のダリシュに全部任せています。まぁ、かなり自信を持っている様子なので安心していいですよ。陛下。」
「そなた、何を言っている?帝国の危機だぞ。あのような子供に任せていいわけないであろ」不満そうなラマージュ
「いいえ、私はたとえ、陛下にやつざきにされても、これを変える気はありません。私は息子を信じていますから。というより、『青の牙』全体でもこの決定でいいとでました。それほど、息子は部下たちから信頼されているのです。それに、敵も私を中心に監視の目を向けているはずです。息子の方は、まるでノーマークです。これは、戦術としてもとても有効なのですよ。陛下。」自信満々に言うハーデス
「そうなのか。それも作戦なのか。まぁ、いい。とにかく、帝国の危機だということを忘れずにな。」念を押すラマージュ
「はい、陛下。わかっています。」敬礼するハーデス
ハーデスが今後の対応策について、ラマージュに説明するとおもむろにハーデスに通信が入った。
「こ・・・・これは。」その報告に驚くハーデス
「ほう、滅多に驚かない。そなたが、驚くとは、重大な問題が発生したのか。」心配するラマージュ
「問題というより、その事実がつらいのですよ。特に陛下の気持ちを考えると」ハーデス
「何だ、その言いまわしわ。はっきり、つげるがよい」
「敵の洗脳されたアーヴの中に死んだはずの陛下の娘のアブリアル・ネイ=ドゥブレク・ファリース子爵・ラフィール殿下が発見されました。ダリシュの情報では彼女が機械兵士や洗脳を受けたアーヴのサタン艦隊の最高司令官ということです。」
,「その情報源は確かか?真実ではなかろう?」
ラマージュは一瞬我を忘れたが、直ぐに取り戻した。
「はい、確かです。この情報は真実です」
ラマージュはしばし考えた。
―――あの子は私が埋葬した。あれは……夢だったというのであろうか。夢、いや、そうであって欲しいという願望か。ありえるな、あの頃は我が強かった。
「分枝体(クローン)か何かではないのか?」
「いえ、本部の通信によると本人である事が判明しています」
―――帝国の危機に…我が娘を思う気持ちの方が強いとは。私の質も落ちたな。
「身体に無数の傷跡を確認。…洗脳が薄いのか理性が強いのかは判断しかねますが、どうやら反抗しているそうです」
「それは私を呼び寄せる罠かもしれぬ。だが、その者に限らずアーヴは生きて捕獲するがよい。万に一つ奴を取り逃がしたとしても使える情報が有るかも知れぬ」
丁度その時、ラマージュのクリューノが鳴った。緊急通信だ。
「こちら、情報参謀局です。たいへんな事になりました。敵のジャミングに全思考結晶がやられました。でも、敵の追撃をかわしながらこちらに向かってくる連絡艇を確認していました。現在ジャミングの最中で正確な位置は判りませんが、多分宇宙港に向かっています」
「判った。慎重に回収するがよい。罠かもしれぬ」
「判りました」
通信は切れた。
「最高指揮官であるならばその者の筈が無い。もし『あの者』でなければな」
ラマージュがそう言うと、
「よっぽど心配してらっしゃるようですが…どうしてそう信じられる…のですか?」
と、ハーデス。
「『あの者』はアーヴ貴族だ。その様な行為は最高に恥ずべき行為。運が悪ければ死刑になってもおかしくないのだぞ。あの子はそうゆう時代に生を受けた」
「クローンか、身体交換の相手がファリース子爵殿下を知っている可能性と…」
言い難そうにしていると、
「罠か。……どれであろ。まだ本人である可能性も否定できまい。敵は巡察艦と突撃艦からなる大隊だ、それをかわしきれるのはあの子において他に無い。もしもクローン技術を使ったとしても、完全に操舵のウデを譲り受けるのは不可能と言うもの。操舵のほとんどは直感であるからな」
と、ラマージュが続いた。
ハーデスは首をかしげ、
「どのくらい上手だったのですか?ファリース子爵殿下は」
艦の全幅、全高が1シェスダージュ(1×E-6=1μm)の狂いも無い輪を全速力で通過させられるウデの持ち主で、その技術が偶然じゃない事を説明した。
「そんな操舵技術を持った子供が、事故死……。ありえないな。今、公開された情報によると、息子の死も事故で、パリューニュ子爵殿下の暗殺計画も事故死に見せかける暗殺計画だった。このことから見て同一人物です」
たまたま部屋に入って来たヤフェトが答える。
「ヤフェト、そなたに死んだ“ラフィール”の事を話したな?あの子が『サタン』の最高指揮官だと言う話をどうおもうのだ?」ラマージュ
「個人的にはなにも…」
,言い難そうに言うヤフェト。
「・・・・・・そうか。無理もない。そなたはあの子に会った事が無いからな」
とラマージュは言った。その時またクリューノが鳴った。情報参謀局からだ。
「陛下、先程の連絡艇を回収しました。乗員は保護、乗員は記憶片を所持していましたのでそれも回収しました」
「そうか。ところでどのような者が操縦していたのだ?」
ラマージュは一番気にしている事を聞いた。
「名前は不明ですが、アブリアルの耳をした女性です。身体中を凝集光銃か何かで撃ち抜かれており、我々が回収した時にはすでに意識を失っていました。現在治療を行っていますが、医師の話では助かる確率は二割未満とのことでした」
「・・・・・・そうか。記憶片の方はどうなっている?」
「すでに解析は終了しています。中にはサタンに関する情報が数多く入っていました。星界軍情報局と紋章院に問い合わせたところ信憑性は十分あるそうです」
「情報?例えばどのようなものだ?」
「例えば、サタン艦隊の軍艦の中には拡大アルコント共和国の惑星コンパルサの星系首相で、武器商人でもあるサディアス=オクタビア氏から購入したものもあるとか、サタン艦隊にはハニア連邦で指名手配中の左翼運動家、ラーマニー=チャンドラセカール氏が所属しているとか、他にも・・・・」
「いや、もうよい。残りは後でゆっくり観させてもらう」
「了解しました。では」
通信が切れた。
私はその者を見に行く。私がじかに確認する」
「判りました、お供しますよ」