「ラフィー……」
ラマージュは彼女から発する殺意を感じ取った。
「母上、私……」
「やはり……、私は酷い親だ。娘が死ぬ思いで逃げてきたというに、何も用意していない。祝うべきだな。私の部屋に来るがよい、渡すものがある」
部屋で、ファリースに渡したのは綺麗に包装されたもの。
「こ、これって」
「そなたが事故死したと聞いてずっと置いておいたものだ。その頃は欲しいと催促していたが」
「母上、有難う有難う…」
部屋に入るまであった殺気はなくなり、彼女の目からは、大粒の涙が流れ出ていた。
しばらく、ラマージュの胸の中で泣いていたファリースだったが、
「母上、一つ聞いていい?。私とレーグルス男爵閣下とどちらが大事なの?」
ラマージュには答えられなかった。どちらとも言えないからである。
「私なんかより、男爵の方が大事なのね!?」
誤解を解こうと講義する。
「そんなわけないであろ。どちらも大事だ。娘の事を大事に思わぬ親が居るとしたら、たとえ私であったとしても死刑をするだろう。大切ものをそなたにまだ渡していない。そなたの日記をみて判った。今からでよければ、“忘れた物”をそなたにあげ続けよう」
「ほんとう?」
「もちろんだ。もし、そなたの事を仕事以外で無視したのならばそなたが私を殺せばよい」
そう言った後、ラマージュはベッドの上に座り、その上にファリースが寝転がった。
そして丁度ラマージュがファリースに膝枕をする格好になった。ラマージュはファリースの髪をそっと撫でた。ファリースは気持ちよさそうに目を閉じた。
「そなたがまだ幼かった頃、よくこうしてやったものだが、覚えているか?」
「うん・・・・・・・・・・。母上、一つ教えて欲しい事があるのですが」
「言ってみるがよい」
「はい・・・・・。以前、母上は私に私が愛の娘であるということを教えて下さいましたよね?」
「ああ」
「しかし母上は遺伝子提供者の名前を教えて下さいませんでした。そろそろ教えて下さい」
ファリースはラマージュの目をじっと見つめた。
「分かった。・・・・そなたの・・・・・遺伝子提供者は・・・・・・・だ」
ラマージュは少し顔を赤くしてボソボソと言った。
「え?誰ですって?もっと大きな声で言ってくださらなければ聞こえません」
「遺伝子・・・提供者は・・・・・・現レーグルス男爵だ・・・」
「え・・・・・・・?」
ファリースは驚いた。
「スポールが遺伝子提供者なのですか!?」
「ああ。おかげで当時は大変だった。一族の殆どの者は、スポールではあるがレーグルス男爵家の者だから、ということで見逃してくれたが、古参の皇族の者の中には、所詮はスポールだ、ということでなかなか許しをもらう事ができなかった。中にはまだ人工子宮から出てきてもいないそなたを暗殺しようと刺客を送り込んでくる者までいた程だ。あの頃は私と男爵が交代でそなたを守ったものだ。一族全ての者から許しがもらえたのは、そなたが生まれる一ヶ月前だ。男爵が、もう二度と私的な事情で私とそなたに会わない事を他の皇族の前で誓い、やっと許しがもらえたのだ。もっとも、それ以後何かと理由をつけては会っていたがね」
「そう、やっぱり、そうですか。あの忌まわしい男の血が流れていたの・・・・。それに、私はスポールは大嫌いです。母上。だから、兄上や姉上と私では皇族方の扱いが違っていたのですね・・・。幼いながら違和感を感じていました。しかも、悪意に満ちたものを・・・・」悲しそうな目をするファリース子爵
「確かに、クリューヴ王たちは、他のものが遺伝子提供者だった。そなたが私たちのわがままで、不憫を感じたことはあやまろう。でも、レーグルス男爵閣下は、そなたの半身の源だということはわかってもらいたい。」頭をなでながら諭すようにいうラマージュ
「母上、あの頃を覚えていますか?戦争が起きて、母上は皇太女として、星界軍艦隊司令長官として、忙しくて、私にはあまりにも会ってくれなかった。逆に男爵閣下は部下として常に会うことができる立場であった。でも、幼い私にとって、母上に会えないことがどんなに苦痛をもたらしたかわかりますか?母上、どうして、あの頃、男爵閣下が1年に何十回、何百回と常に会えるのに私は誕生日さえ、きてもらえない。その上、手紙には男爵閣下と一緒に戦えることがとてもうれしそうにしていました。だから、私は母上に認めてもらうため、誰よりも努力して、飛翔科修技館に入ったときは、船の操舵が天才的だともいわれるまで、頑張ったのです。」唇をかみ締めながらいうファリース子爵
「それは、わかっている。でも、敵を倒せねば。私には帝国を守る義務があるのだ。男爵閣下も優秀な部下だったのだ。敵に勝つには彼の力も必要だったのだ。それを理解してほしい。ラフィール」微妙な表情をするラマージュ
「それと、男爵閣下は、なぜ、私に会いにこなかったのですか?母上にこそこそと会うのに私に会ったことは一度もありません。私は一回会って、文句を言おうと心に決めていたのに、逃げているなんて・・・・あんな卑怯者が半身の源だなんて・・・絶対いやです。」最後は大声で主張するファリース子爵
その言葉を言った瞬間、ヤフェトを侮辱されことを怒り、ファリース子爵の頬をひっぱくラマージュ
「あ・・・・・・・・やっぱり、私よりあの男がいいのですね。母上」そういって、瞳に涙を浮かべて部屋から出ていくファリース子爵
「く・・・・。またも、あの娘を傷つけてしまった。私は母としては失格なのか・・・・・・・・・」
一人部屋でたたずむラマージュ