一方そのころ修技館では・・・・・・・・
「はあ・・・・・・・。どうしよう・・・・・・・」
一人の青鈍色の髪と紅い目を持った少女がこの日何十回目かのため息をついた。
彼女の名は、スポール・アロン=テルミラ・レーグルス男爵公女・ナシーカ。スポールの姓を持つ者の一人である。が、同じスポールの姓を持つスポール・アロン=セクパト・レトパーニュ大公爵・ペネージュの様な”典型的なスポール”とは正反対の性格だった。彼女はとてつもなく素直で心優しいスポールで、とても平気で人を罵倒することができるような性格ではなかった。彼女はスポールの中でも傍流で、そのことが、彼女を本来のスポールの性格から解き放ったのだろう。
彼女の悩みの原因は学生寮での部屋割りにあった。彼女はなんとラフィールと同じ部屋になってしまったのである。
「話によると、スポールの姓を持つ者と皇族方とは仲が悪いらしいからなあ。名前だけで最初から敵視されたらどうしよう・・・・・・・。私、最初から人間関係がギクシャクするなんて嫌だな・・・・・。いっそのこと、時が止まってくれればいいのにな・・・・」
彼女のこの希望とは裏腹にラフィールとプラキアは刻一刻と修技館に近づいていた。
「殿下、いいこと?もしスポール家の方たちでも、相手の方から喧嘩を売られるまでは手を出さずに他の人たちと同じ様に接しなさい。いいわね」
「うん」
いざ宇宙港に入る瞬間、割り込みが1隻。瞬間的に船をスライドさせ接触をさける。
(あの巡察艦を元にした艦でこんな所へ送り出すのはレトパーニュ大公爵家以外にない。それにあの挑発的な操縦からみて大公爵公女ご本人)
小さく溜息を付くプラキア。
そしてとうとう二人は宇宙港に到着した。二人は交通艇を降りた。その瞬間
「パパパパーン・パ・パ・パ・パパパパーン!」
目の前には今まさに演奏を始めたオーケストラの一団がいた。
『な・・・・!・・・何?これは・・・・!!(ヒソヒソ)』
『・・・・レトパーニュ大公爵公女の仕業だ・・・・。(ヒソヒソ)』
『本人は恥ずかしくないのかしら・・・・(ヒソヒソ)』
『多少は恥ずかしいだろうが、それ以上に私の驚く姿が見たかったのであろ。(ヒソヒソ)』
二人がひそひそ話をしている間に目の前に赤い絨毯が敷かれた。その絨毯には金色鳥の刺繍が施されていた。そして、その上を優雅に二人の方へ歩いてくるのは・・・・・・・
「お待ちしておりました、殿下。」
「一体これはどういう事だ、大公爵公女。説明してもらうぞ。」
「私はただ殿下の修技館御入学をお祝いしようとはるばる参上しただけですわ。」
「残念だが、私をからかっているようにしか見えないぞ。」
「それは心外なことですわ。私はいつ、どのような時でも殿下に敬意を表していますのに。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・何か他にも理由があるのではないのか?」
「いいえ。ですから殿下に一目お会いしたくて参上しただけですわ。それでは私はこれで失礼させていたたきますわ。」
そう言ってペネージュはその場をあとにしようとした。ラフィールとプラキアは去っていくペネージュを見てほっとした。
「ああ、大事な事を忘れていましたわ。」
ペネージュは振り返った。
「何だ?」
「私の一族の中で、今日修技館に入学する者がおりますの。」
ラフィールの顔色が僅かに変わった。ペネージュはかまわず続けた。
「たしか、殿下とは学生寮で同じ部屋になったとか。きっと殿下の良き友人となってくれますわ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
ラフィールは真っ青になった。ペネージュはそんなラフィールの姿を見て満足したらしく、
「それでは私はこれで失礼させていただきますわ。修技館での殿下のご活躍を楽しみにしてますわよ。オーホホホホホホホホホホホホホ!!!!!!!」
と言い残してオーケストラを引き連れて去っていった。
後にはラフィールとプラキアが残された。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あの、殿下。」
「・・・・・・・・・・・・・・何だ?」
「そろそろ入学式の準備をした方よろしいのでは?」
「ああ・・・・・・・そうだな・・・・・・・。」
「・・・・・それでは私は会議がありますのでこれで失礼させていただきます。」
「・・・・・・・・そうか、わかった。」
そうしてプラキアは去っていった。
「・・・・・・・・はあ。・・・・・・・とりあえず、この私物を寮に置いてこなければならないのだったな。恐らく、スポールもそこにいるのであろうな。」
憂鬱な気持ちになるラフィール。だが寮に向かう以外にする事は無い。ラフィールは覚悟を決めて寮へと向かった。
そのころナシーカは一足先に寮にたどり着いていた。
「はあ・・・・・・・・・。一体これからどうすればいいのかしら。皇族方とは話したこともないのに。」
彼女はまだ悩んでいた。
その時ラフィールがやって来た。ラフィールは部屋の戸の前で立ち止まった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・よし、行くぞ!!」
ラフィールは意を決して中に入った。
部屋の中にはナシーカがいた。ナシーカは自動扉が開く音に驚いて思わず
「ひっ・・・・・・!」
と、叫び声をあげた。
『ど、どどどどどどどどどどどうしよう。まだ心の準備ができてないのに・・・』
ラフィールが中に入るとそこにはペネージュの言っていた通り、スポールの紅瞳を持つ少女がいた。年は十六、七歳くらいだろうか。怯えたような目でこちらを見ていた。
「あ、あの・・・」
少女が話しかけてきた。
「何だ?」
「もしかして、アブリアル・ネイ=ドゥブレスク・パリューニュ子爵・ラフィール殿下ですか?」
「そうだが、そなたは?」
「私は、スポール・アロン=テルミラ・レーグルス男爵公女・ナシーカと申します。」
「そうか。これからよろしく頼む。」
「は、はいっ!よろしくおねがいします!」
ナシーカは頭を下げた。
『やった!なんとか出だしはうまくいったみたい。』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ふと気がつくと、ナシーカは、ラフィールが自分の方をじっと見ているのに気がついた。
「あの、なんでしょうか?」
ナシーカはあいまいな笑顔と共に尋ねた。
「いや、何でもない。」
『この者は本当にスポールなのか?何というか、雰囲気が今まで会ったスポールとは全然ちがうぞ。』
ラフィールはそんなことを考えていた。
後に二人は親友となるのだが、この時はどちらもそんなことは想像すらできなかった。
,それもそうだろう。普通、スポールはアブリアルを虐めて楽しむ種族だからだ。だがレーグルス男爵家の者たちは皆、皇族と仲が良い。元々は水と油…と、言うより火と油(アブリアルを油で、防火設備は万全。火はスポールだ。アブリアルの防爆防火扉をこじ開けて火を放つ)のだが、レーグルス家は乙5類(衝撃厳禁の水に入れて保存)と、水である。水はレーグルスである。
「あ、あのすみませんすぐ片付けますから」
密かに(堂々と)ナシーカの私物が散らかっていた。中には太古のCDや、もっと古いレコードまで有るぐらいだ。今当時有名だった曲が流れている。ここの校歌である。年によって異なるが、校歌のほとんどが演歌だ。なぜかというと、その手の趣味の教師が、無理矢理校歌にしたのだが、その曲が校歌となった
「す、すみませんすぐに止めますから」
しかしラフィールは、レコード特有の美しい音色に心を奪われていた。
「いや、止めなくてもよい。クリューノより音がいいな。良ければ売っている店を教えてくれないか?」
「えっと、コレは“古代専門店コック”に対外の物は売ってますよ」
うまい具合に打ち解けてゆく2人。その店も機動商店街に堂々と構える有名な店。
一方その頃埠頭ではドゥビュースがプラキアが会議を終えてやって来るのを待っていた。
「そろそろ来てもらわぬと入学式に間に合わぬな。一体、何をしているのであろうか?」
そのころプラキアは会議を終えて交通艇で全速力で修技館へむかっていた。
5分後・・・・・
プラキアは修技館にたどり着いた。
「やっと来たね、我が愛。」
「ごめんなさい。待ち合わせの時間に遅れてしまって。」
「別にそなたを責めているわけではないよ。」
「本当?」
「私が今までに嘘をついたことがあったかね?」
「ふふっ、それもそうね。」
「ところで、ラフィールの様子はどうだったのだ?」
「知りたい?」
「親が子の事を知りたくないと言う訳がないではないか。」
「ふふっ、それもそうね。」
プラキアはここにたどり着くまでのラフィールの様子を事細やかに伝えることにした。話がラフィールの学生寮の同居人の話になると、
「それは、あの子も災難だな。」
「本当ね。上手くやっていってくれるといいんだけど・・・・」
二人がそんなことを話していると、放送が流れ始めた。
『ピンポンパンポーン。九時三十分より、入学式を開催いたします。新入生は至急講堂へ集合してください。新入生の保護者の方は観覧席がありますので、そちらに御移動願います。』
ドゥビュースは端末腕環を覗いた。今は丁度九時二十分だ。入学式まであと十分だ。
「ではそろそろ行こうか。」
「そうね。早く行かないといい席がみんな取られてしまうわ。」
そう言って二人は観覧席に向かった。
ラフィールとナシーカにも放送が聞こえた。
「ではそろそろ行きましょうか。最初から遅刻するなんて恥ずかしいですから。」
ナシーカは言った。
「そうだな。」
とラフィール。
こうして二人も講堂へと急いだ。