ラフィールの修技館時代   作:いち領民

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ラフィールの修技館時代 第22話

「母上、待たせました。すみません」

ラマージュは顔色の悪いファリースを見て、

「どうしたラフィール。何かあったのか?」

 

ファリースは先程の密告の事を話し、『サタン』のある場所を教えた。

 

「本当にここで間違いないのか?ここには何もないぞ」

と、星系記録を見ていたヤフェトが問う。

「はい、間違いないわ。私はここから逃げてきたの。でも…ココには……。記録が無いという事は、ココには無いという事かしら。記憶がちぐはぐで・・・」

人間は死の恐怖を目前とした時、記憶を自ら消し去る事がある。

「レオが記録を消したのだろう。『青の牙』と『黒き槍』に連絡を」

 

連絡を受けた双方は、現地へ向かった。

「ありました。では、作戦に入ります」

送られてきた情報を見て、あっと驚いた。その大きさは帝都の何十倍もの大きさをした軌道城館だった。

「攻略できるのであろうか。もし出来なければ……それは帝国の死を意味する」

 

ファリースは、ただ座っているラマージュを強く抱きしめる以外に何も出来なかった。恐怖に押しつぶされそうになり、その不安は絶大だった。

「ラフィール、大丈夫だ。私が付いている」

 

 

「陛下、情報局の特務艦隊をはじめ、思考結晶を切り離した対サタン用特別艦隊は、60分艦隊相当、集結しました。」情報参謀が状況を説明した。

 

「うむ、わかった。目標は、敵、巨大軌道城館である。これを破壊し、殲滅せよ。ダイ・セーレ」指揮丈を握りしめ、命令するラマージュ

 

帝国星界軍の旗艦であり、皇帝の船であるガフトノーシュの艦橋には、ベルガをはじめ、『黒き槍』のメンバー13人、ヤフェト、ラフィール、ファリース子爵、ナシーカ、プラキアがいた。『青の牙』のメンバーであるシータ、ハーデス、ユーリルはダリシュの指示のもと別働隊として、他の場所で待機していた。

 

「陛下、もうすぐ機雷の射程圏内に入ります、敵は動く気配はありません。」通信参謀

 

「そうか、わかった。射程に入った後、全機雷発射、先手必勝だ。とにかく、一刻も早く、こんなものは破壊するがよい」

 

ラマージュがそう命令した直後、異変が起きた。旗艦であるガフトノーシュに振動が起きたのだ。

 

「なんだ、今のは?ファラムンシュ参謀長、説明するがよい」眉をひそめるラマージュ

 

「どうやら、敵がこの艦に侵入した模様です。侵入者…・・レオです。彼が一人でガフトノーシュに乗りこんできました。これは、我々の指揮系統を混乱させる作戦でしょう。となると、敵は次の手も用意しているはず。」ファラムンシュが説明を終わらないうち、通信参謀から連絡が入った。

 

「陛下、ミスティック門の向こうの平面宇宙にサタン艦隊現れました。その数…・75分艦隊相当…我々よりも多いです。完全に退路を断たれました。陛下」

 

「く、だが、門にこもっていれば、地の利はこっちが優位。目の前の軌道城館を破壊すれば、サタン艦隊もとまるであろ。難しいと思うが、各分艦隊、個々で防御戦と攻撃する編成を行い、それぞれ対応するがよい」すばやく命令するラマージュ

 

「陛下、全機雷発射しました。敵、軌道城館をもうすぐで目標到達します。…・。敵の一角に高エネルギー反応出ています。主砲だと思われます。あ…・。全機雷、敵の主砲により全滅。その後、軌道城館こちらに接近してきます。」悲痛な面持ちで報告する通信参謀

 

「指揮系統、前面、後背、の3点同時攻撃とは、敵もやるわね。」唇かみ締めるプラキア

 

「陛下、まずは、レオの殺害は我々に任せてください。陛下は、全軍の指揮に専念してください。」ベルガ

 

「わかった。レオは、そなた達にまかせる。私は、この状況をなんとか、打開する。」指揮丈を握り締めるラマージュ

,「サタン艦隊、小質量の時空泡を多数分離しました。機動時空爆雷と思われます。約5分後にこちらに到達します。」通信参謀が報告した。

 

「そうか。軌道城館への攻撃はまだか?」

ラマージュは尋ねた。

 

「現在突撃戦隊多数が戦陣をきって攻撃中ですが、防御磁場により敵軌道城館の損害は軽微のようです。巡察艦の攻撃は、後7分ほどで開始されるでしょう。」

通信参謀が報告した。

 

「分かった。護衛戦隊は門周辺に展開、敵機雷に備えよ。」

ラマージュが命令をとばした。

 

「了解。・・・・・・・・・・・護衛戦隊、展開完了しました。敵機雷到達まで、後30秒。・・・・あっ」

通信参謀は小さな叫び声を上げた。

 

「どうした?」

通信参謀に尋ねるラマージュ。

 

「敵軌道城館、機雷多数を発射。こちらに急速接近中です。」

 

「どうやらまずは機雷で我々を挟撃するつもりのようですな。」

ファラムンシュが冷静に報告した。

 

「護衛艦を前進させよ。ただし戦隊を下げすぎるでないぞ」

護衛艦が次々に機雷を破壊する。しかし、そんな護衛艦の被害は甚大な物だった。

 

「巡察艦、前面へ。護衛艦を援護。あまり前へ出すぎるな。後方部隊、電磁投射砲一斉射撃」

 

「見方の被害は甚大なり。20隻余りが爆散。無傷な艦は本艦、第3打撃戦隊、偵察分艦隊、のみです」

 

その旗艦の中では、激戦を強いられていた。

「何故奴には当たらない!幻覚でも奇跡でも起きているのか?」

凝集光はことごとく手前で曲がり、光源弾装は不発する。

 

「お前らに俺は殺せないが、俺にはお前らが殺せる」

 

 

その一瞬、何がどうなったか判らなかった。光のような物が通過し、何人もの翔士をなぎ倒した。

その時、ベルガはナシーカの言っていた事を思い出していた。勿論、たまたまラフィールとの会話を耳にした程度だが。

「電磁投射砲?そんな物をどうやって持つ?」

「えっと、小型化した物があるの。でも試作品で暴発してしまう事もあるわ」

 

「どこが暴発する、だ。全然そんな様子ないじゃないか。くそっ」

「どんどん、いくぞ。」

小型電磁投射砲を次々と発射するレオ

次々と翔士の死体の山がつまれいく状況だった。

 

「(やはり、接近戦での物理攻撃しかないか。)」そういって、黒き槍の部下5名に目線を送るベルガ

 

それと同時に5方向から剣を持った黒き槍の隊員がレオに一斉に襲った。

 

「ふ、その程度では、俺は触れられんよ。」

そういって、小型電磁投射砲を連射して、5人とも即死だった。だが、同時に5人を倒したとき、レオに一瞬気の緩みが起き、そこにベルガが尋常ではないスピードで接近した。

 

一瞬、レオの前に壁が現れたが、それをベルガは愛用の黒い槍で貫き、レオに右手首ごと小型電磁投射砲を破壊した。

 

「ち、油断したか。まぁ、いい。」そういって、もう一つの手から瓶を取り出して、それを地面に叩きつけた。あたりに、一瞬緑色の煙がでたが、その煙は数秒で空気に溶け込んだ。

 

「まさか、それは、気化粒子爆弾。」レオの行動を不審に思うベルガ

 

「そうだ。これで、火薬式の銃も凝集光銃も使えない。ここは、格闘戦の遊びでも付きあってもらおうと思ってね。君らもここで爆発を起こして、船が沈むのも嫌でしょう」

不敵な笑みを浮かべているレオだったが、完全に、槍に貫かれた右手首がみるみるうちに再生していった。

 

「どういうことだ」困惑するベルガ

 

「ああ、これね。俺の体には再生槽の圧縮液が埋め込まれていてね。それを使えば、怪我は一瞬で治るということさ。さて、お楽しみを続けようか」明らかにこの状況を楽しむレオ

 

 

レオと黒き槍の第2ラウンドが始まった様子を艦橋でプラキアは眺めながら、今回の作戦前のダリシュの言葉を思い返していた。

 

 

「プラキア卿、ここに呼んだのはあなたに頼みがあるからです。」

 

「なんですか?ダリシュ君。」

 

「もし、旗艦にレオが侵入して、『黒き槍』が危ないとき、あなたがパリューニュ子爵殿下達を指揮して戦って欲しいのです。僕達、『青の牙』は、別働隊として動くので、旗艦に乗りません。そして、あの中で特殊戦闘における指揮をできるのは、あなただけです。」

 

「私が…・。わかりました。そのときは、全力でいきます」決意するプラキア

 

「プラキア卿、これを渡しておきます。今回のために私が情報集めをして、整理しました。レオが考えそうな作戦や使用する武器の情報と対応策です。」記憶片を渡すユーリル

 

 

「ありがとう。ユーリルちゃん。これを参考にするわ。」

 

 

再び、ガフトノーシュの艦橋

 

「陛下、忙しいところすみませんが、お願いがあります。私達もレオを倒すために参戦を許可してください。」指揮丈を握り締めているラマージュに提案するプラキア

 

「そうか、わかった。許可する。そなたの思うがままにするがよい。」

 

「ラフィール殿下、男爵閣下、男爵公女閣下、いきましょう。レオは思った以上に強い。このまま手をこまねいているわけには、いかないわ。ファリース子爵殿下は、陛下の側にいてください。」

 

「わかりました。プラキアさん。」

 

こうして、レオとの戦闘に参戦するプラキア達だった。

「くっ」

プラキア達がそこへついた時、ベルガはほぼ瀕死の状態までに追い込まれていた。

 

「やれやれ。最近の『黒き槍』の質も落ちたな。そう思わないか?ナシーカ。まさか君の方から僕に殺されに来るとは」

 

ナシーカは生まれて初めて“アーヴの微笑”をした。ナシーカは持っていた大柄のナイフ…。そう、ラフィールが自殺に使った、アレだ。あれをもう一本、両手に一本ずつ持ち戦闘に備える。

 

「タイマンと行こうじゃないか。死んだ方が負け」

 

「受けて立つわ」

 

レオが人間では考えられない速度で迫ってきた。その時ナシーカはスッと、まるで氷の上に居るかのように動き出した。

 

「(あ、あれは…“剣の舞”。あれは古代民謡舞…武術だったなんて。でも2人とも何て速さなの、指揮が出来ない)」

 

その美しき舞は敵も見方も魅了する力がある。本来は日本刀大の大きさの刀で行うのだが、コンバットナイフでも充分引けを取らなかった。

 

「くっ、この僕が…。たかが小娘の殺人舞に押されているとは。だが、そこまでだ!」

一瞬、ナシーカの舞が止められた。そこを見たプラキアは、

 

「首に攻撃を集中させてください」

 

「分かったわ」

先程とは打って変わった振りの舞を踊る。

 

「加勢するわよ、私の可愛い殿下」

「ああ」

 

 

 

20分と戦っているが、ナシーカの舞が衰える事は無かった。無敵の舞に加えてプラキアやラフィール達の加勢も加わり、無敵ではあったが、いかなる攻撃も回復してしまう。ダリシュからもらった記録片には首に全てがある、と推測されている。

 

「ば、馬鹿な……こ、この僕が……」

 

遂に、ナシーカの刃がレオの首を捕えた。鮮血に混じり、妙な液体が噴出される。その液体こそ再生槽凝縮液体に違いなかった。

「男爵公女閣下、よくやりました。さぁ、艦橋へ帰りましょう」

 

「ところでお祖父様は?」

途中で居なくなったヤフェトを気にかけるナシーカ。廊下の角を曲がった瞬間、瓦礫の山の中に居るヤフェト。

 

「後方部隊は全部やっつけたぜ。こうゆう戦闘は前方に気をとられて後方からの不意打ちにやられる、か。プラキア卿、貴方の指示通りでした」

 

「有難う、男爵閣下。お陰で全力で戦えました。

「どういたしまして。さて、それじゃあ私はべルガ君を医務室に連れていってから艦橋に向かわせてもらうよ」

そう言ってヤフェトは重傷のべルガを抱きかかえて医務室へと走り去っていった。残された三人はレオの死亡を確認した後艦橋に戻った。

艦橋では、苦戦する状況が続いていた。

 

 

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