埠頭からのびる曲がりくねった通路を時々現れる機械兵士を倒しながら2ウェスダーシュ(200メートル)ほど進むと扉があった。
「この先には何があるのだ?」
ラフィールがファリースに尋ねた。
「たしか・・・・広い部屋になっていたと思う」
「待ち伏せされているかもしれないわ。注意して」
ミルフィーユが注意を促した。
「さて、準備はいいかな?」
ハーデスが言った。
「いつでもよいぞ」
ラフィールが言った。
「いいですよ」
ナシーカが言った。
「問題無いです」
プラキアが言った。
「準備よし」
ファリースが言った。
「・・・だそうです。勿論私もいいですよ」
ミルフィーユが締めくくった。
「よし。それじゃあ・・・・・・いくぞおっ!!」
ハーデスは勢い良く扉を開け、一気になだれ込んだ。扉の向こうには一人の仮面を被ったタキシード姿の男が佇んでいた。
「あれ、たったひとり?」
ミルフィーユが意外そうに言った。残った五人も同じ気持ちだった。男はラフィール達の方に向くと
「サタン様特製軌道城館<ザラス>へようこそ。わたくしはエドガー・スナイプ。またの名を<死に損ないのエディー>と申します。本日は貴方様方のお相手をするようにとのサタン様のご命令によりここに参上させていただきました」
と、丁寧な言葉使いで言い、丁寧に御辞儀をした。
「相手って、つまり私達と戦うってこと?それもたった一人で?」
ミルフィーユが言った。
「ええ、まあそういうことです。しかし貴方様方はどうやらお疲れのご様子。戦う前にお飲物でもいかがですか?」
エドガー・スナイプと名乗る男は言った。
「悪いけど、時間が無いの」
プラキアが言った。スナイプは、
「そうですか・・・。残念です。貴方様方の最後の食事になるかもしれないというのに。でもまあ、仕方ありませんね。それでは・・・・・・・パーティーを始めましょっか!!」
と陽気に言うと、足下に置いてあった何かを担いだ。それが何かということにに最初に気が付いたのはミルフィーユだった。
「まさか、ハンドランチャー!?」
「そうですよ。では」
スナイプは狙いを定めた。
「やばい、みんな伏せろ!!」
ハーデスが叫んだ。六人はすぐに伏せた。ランチャーが火を吹き、ロケット弾を発射した。ロケット弾は六人の頭上を通り越え、六人が入ってきた入り口を通り過ぎ、通路を1000ダーシュ(10メートル)ほど飛んだ後、通路の壁に炸裂した。爆風と数多くの破片が通路を通って部屋になだれ込んだ。
「みんな、大丈夫!?」
プラキアが叫んだ。
「大丈夫だ!!」
「怪我はしていません!」
あちこちから声があがった。どうやら全員無事のようだ。
「こんな狭い空間であんな物撃ったら自分も破片でやられるかもしれないってのに。気は確かかどうか聞いてみたいよ、まったく!」
とハーデス。
「あのお、正気の相手に正気かと問うのは失礼だし、正気でないなら問いただしても意味がないと思いますよ。ちなみに私は正気のつもりですが」
とスナイプはニヤニヤしながら言った。どうやらスナイプも大した怪我はしていないようだった。スナイプはハンドランチャーを肩から下ろし、代わりに剣を持っていた。
「皆さん、早く立って下さい。それまで待ってあげますから」
とスナイプ。ラフィール達が全員立ち上がると、
「それでは、行かせていただきまーす!!」
スナイプは嬉しそうにそう言うと尋常ではない速さで向かってきた。六人は必死に凝集光銃の引き金を引いたが、スナイプはまるでそれを見切っているように避けながら向かってきた。
最初の目標はナシーカだった。スナイプはナシーカに向かって剣を振り下ろした。咄嗟にナシーカは銃で剣を防いだ。
「くうっ!」
金属同士がぶつかり合う堅い音がして銃が宙を舞った。指一つ傷つかなかったのは奇跡に近かった。スナイプは次に一番近くにいたミルフィーユに狙いを定めた。
「死になさい」といって、ミルフィーユの心臓に狙いを定めるスナイプ
しかし、その瞬間、つきたてた剣の切っ先をかわして、スナイプの間合いに入り、剣をつきたてた片腕を背負い、そのまま投げ飛ばした。そして、投げ技と同時に腕を極めて、その腕にスナイプの体重と投げられたときの衝撃がかかり、ボキという鈍い音を立てて、剣を持っている腕をミルフィーユはへし折った。
「あなた、思ったより、馬鹿ね。私に接近戦を挑むなんて、私の柔術の餌食になるは、目に見えているわ。」
そう言いながら、間合いをとるミルフィーユ
「アクリア諜報員さすがだ。また、腕を上げたみたいだ。」まるで、観客のように手を叩いて誉めるハーデス
「ヘルマスター、本気になってください。あなたの銃の腕ならこの程度の相手をはずすわけないでしょう。」ハーデスの様子を見て、苦言を言うミルフィーユ
「ああ、ごめん。頭環を標準タイプに戻すのを忘れていたよ。もう、これで、大丈夫だ」そういって、空識覚抑制頭環から標準タイプの頭環に素早く交換するハーデス
そのやりとりをしている間に折れていないもう一つの腕で剣を拾い、構えるスナイプ
「クックック、驚きましたよ。まさか、こんなかわいらしい姿をしたお嬢ちゃんに腕を折られるとは思いませんでした。でも、これもちょうどいいハンデですね。今度は失敗しませんから。」
そう言って、目標をハーデスにするスナイプ
そして、さきほどより、スピードあげて突撃してきた。その瞬間、ラフィール達は信じられない光景を眼にした。
「(あの男が三人に見える。)」ラフィール、
「(どういうこと?)」ナシーカ、
「(新手?)」プラキア、
「(わけがわからない)」ファリース
4人がそう思っている間にも、スナイプはハーデスに接近して、三人同時に襲いかかった。
すると、ハーデスはその三人のスナイプとは、逆方向の自分の背後に向けて青い奇妙な形をした装飾銃を向けて、発砲した。
すると、誰もいないはずの空間に血が滲み出して、そこから胸に手を当てたスナイプが現れた。
「私の…・残影剣技が破られると・・」と最後の言葉を言い終わらないうちにもう一発の銃声が広間に響き、眉間を貫かれたスナイプだったものが地面に倒された。
「さて、地上人の雑魚は片付けたし、先へ進もう。」何事も無かったように言うハーデス
「ミルフィーユさん、ハーデスさんの様子がさっきとは、違います。どうしたのですか?」彼の態度の変化が気になるナシーカ
「ああ、頭環を変えたから感覚が研ぎ澄まされて、ヘルマスターが本気になったということよ。今までつけていたのが、本来の空識覚の能力を8分の1に抑えたものだったからね。でも、オリハルコン製の銃の『アース』を使いだしたから、彼の本来の能力も発揮されるわね。」嬉しそうに説明するミルフィーユ
「8分の1って…・・。嘘でしょう。今まで、機械兵士を凝集光銃であっさり、倒していたじゃない。それだけ抑えられていて、あの腕前、恐ろしいわ。え…ということは、今まで、訓練で私があっさり倒されていたときも、抑制頭環をしていたのですか?ハーデスさん。」まだ、抑制頭環について信じられないプラキア
「ええ、もちろん。していましたよ。これは、滅多にはずさないのです。一応、訓練のためですけどね。ダリシュもユーリルもしていますよ。キルヒム家は、これは、修行の一環としてつけておかなければ、ならないのです。こういう、戦いの場とか、危機的状況以外では、基本的にはしています。」先ほどは、まったく迫力が違うハーデス
「ところで、気になったのですが、オリハルコン製は金色ではないのですか?シータさんの剣は、金色だった気がしますけど。」青い重そうな銃を眺めるナシーカ
「それは、フーレア家では金色をつけたのでしょう。この『アース』をはじめ、『青の牙』のマスターには、代々、オリハルコン製の武器を受け継ぐのです。その武器の極限までに極めているのです。我が家では青色をコーティングしています。それと、この銃は、圧力弾です。弾は、空気中の窒素や水を圧縮して固体化させて、それを敵に向けて撃つ。事実上、弾は無限。銃の弾切れという弱点を克服したものです。もっとも、固体化させるほどの圧力を加えるには、普通の銃身では、耐えられない。オリハルコンだからできるということなのですよ。男爵公女閣下」丁寧に説明するハーデス
「ヘルマスター、説明はそこまでにして、先へ進みましょう。時間は限られていますから。」ミルフィーユ
「そうだね。急ごう。さぁ、皆さん。行きましょう」