こうして、広間の奥へ進んでいくラフィール達であった。
,広間の奥には扉が三つあった。
「どれを選べばいいのかしら?」
プラキアが首を傾げた。
「分からない。こんな物以前は無かった」
とファリース。
「ああ、どれでもいいですよ」
背後から答えが返ってきた。六人は一斉に振り返った。声の主はさっき死んだはずのスナイプだった。
「あら、貴方まだ生きていたの」
ミルフィーユが言った。
「いえ、私はもう死んだということになっています。それがどうかしましたか?」
「非常識だぞ。普通死んだ人は喋ったりしない!」
とラフィール。
「そんなこと、一体誰が決めたのですか?私はそんな他人の常識にとらわれるような・・・・・まあいいでしょう。とにかく、その三つの扉のどれを選んでもサタン様のもとへは行くことができます。ただ、その三つの扉の全てに人が入らなければサタン様のもとへは行くことができないようになっています。つまり、貴方様方は三つのグループに別れなくてはならないという訳です。御理解いただけましたでしょうか?」
「なるほど。こちらの戦力を分散させようという訳か」
ファリースが言った。
「御理解いただけた様ですね。では私はこれで失礼させていただきます。健闘をお祈りしていますよ。では」
その直後スナイプの身体が勢い良く燃え上がった。炎は一瞬でスナイプの身体を覆った。スナイプの身体は、まるで薄い紙に火を付けた時の様に、あっという間に灰となった。
「・・・・あの人、一体何者だったの?そもそも人だったの?」
と呟くナシーカ。
「多分、<ヒドラ>だな」
とハーデス。
「<ヒドラ>?何ですか、それ?」
とプラキア。
「<ヒドラ>はシャシャイン戦役の時にシャシャイン連邦が開発した人間型生体兵器のことです。生命力が強くてちょっとやそっとでは死にません。再生力も旺盛で、二つに分けるとそれぞれがまた新しい個体となります。完全に殺すには焼き殺すしかありません。更に・・・・」
「へルマスター、そんなことよりこれからどうするんです?」
ミルフィーユがハーデスの言葉を遮って言った。
「おっと、そうだったな。さて、どうしようか」
ハーデスは暫く扉の周辺を調べていたが、やがて顔を上げると、
「三つに別れるしか無いようだ」
「・・・そうですか」
ナシーカが残念そうに言った。無理もない。さっきの戦いではハーデスとミルフィーユがいたから勝てたようなものだったからだ。そして扉は三つ。誰かが青の牙のメンバーの助けを受けることができなくなるのだ。
「私とアクリア諜報員は一人でも多分大丈夫だが・・・・」
とハーデス。
「四人の中で今のところ一番バランスがとれているのはプラキア卿ですね。その次はファリース子爵殿下。男爵公女閣下は剣術ではプラキア卿を上回っていますが、射撃の技術はあまり良くありません。まあ、普通の人よりは上ですが。パリューニュ子爵殿下は射撃技術はプラキア卿よりも上ですが、若いため力があまりありません。接近戦となると不利でしょう」
とミルフィーユ。
ならば、私とナシーカが組めばどうなるのだ?」
とラフィール。
「その場合は期待できますね、確かに。しかし・・・」
とミルフィーユ。
「しかし?」
とラフィール。
「・・・・いえ、ただ貴方はラマージュ陛下に似ているなあ、と思っただけです(自分が皇族である事をあまり自覚していないのかしら)」
結局左の扉はハーデスとファリースが、真ん中の扉はミルフィーユとプラキアが、右の扉はラフィールとナシーカがそれぞれ入る事になった。扉を開くと、その向こうには狭い空間があった。
「これは多分昇降筒だな。恐らく三つ全てに人が乗らないと動き出さないようになっているんだ」
ハーデスが言った。
「それじゃあ皆さん、また後で会いましょうね」
先ずミルフィーユが扉をくぐった。
「負けちゃだめよ、私のかわいい殿下、男爵公女閣下。」
続いてプラキアも。
「プラキア卿もな」
そしてラフィール。
「私、頑張ります!」
更にナシーカ。
「私も絶対に負けない!」
次にファリース。
「では皆さん、どうかご無事で」
ハーデスが最後にそう言って扉をくぐった。全員が乗り込むと、やがて扉が閉まり昇降筒はゆっくりと下に下がり始めた。