「レーグルス男爵閣下、早く陛下の護衛のために艦橋に戻ってください。早くしないと陛下が危ない。ファ…・」といって、通信はおもむろに切れた。
「何事だ…。とてつもなく嫌な予感がする。早く、戻らねば。王女殿下、ナシーカを頼みます。絶対、彼女から離れないでください。」緊急通信の内容をあえて、ラフィール達には知らせないヤフェト
「わかった。ナシーカは私にまかせるがよい」ヤフェトの必死の頼みを聞くラフィール
ヤフェトが艦橋についたとき、そこは、血の海とかしていた。
ヤフェトが艦橋に到着する5分前。
「陛下、敵戦艦『サタン』から特殊な音波が発生されました。よくわかりませんが、とにかく、何かこちらを混乱させる気かもしれません。」情報参謀が不思議そうな表情をした。
そう情報参謀が告げた瞬間、艦橋で戦況を見守っていたファリースに異変が起きた。
「頭が…・頭が痛い。…・ダメ、いや、私、私…・イヤー」と最後は頭を抱えながら大声を出してうずくまるファリース
「ラフィールどうしたのだ?」司令座席から心配そうに眺めるラマージュ
「ファリース子爵殿下?大丈夫ですか?」1番近くにいた翔士が気遣うように話しかけた。
その瞬間、その翔士の心臓が凝集光銃によって、貫かれた。
そして、コマ送りのようにその翔士が倒れると同時にファリースはおもむろに凝集光銃を持って、立っていた。
立ちあがったファリースの瞳は狂気の色を見せて、口元も毒々しい笑みを浮かべていた。
「ラフィール、何をするのだ?」突然の凶行に驚くラマージュ
「ラフィール?ああ、この器だった名前か。オレの名は、サタン・ジュニアだ。この器の意識は、もう無い。オレがのっとたのさ。ハーハッハッハッハッハ」と狂気に満ちた低い声で笑うファリース子爵の姿をしたサタン・ジュニア
「嘘だ。そんなの嘘だ。」あまりに過酷な状況を信じることができないラマージュ
だが、冷静に状況を見ていたファラムンシュが素早く命令した。
「皇帝護衛隊、殿下はご乱心なされた。すみやかに、射殺せよ」発砲命令をするファラムンシュ
「ファラムンシュ何を言う」その命令に驚くラマージュ
その命令を聞き、10人同時に凝集光銃を撃とうとした瞬間、
「死ね」
そういって、ファリースの凝集光銃の10連射で一瞬にして護衛隊のほとんどは、射殺された。
「10連ショット…・。私の技をコピーしたな。サタン・ジュニア。」皇帝の前に壁のように立ちはだかり、ラマージュを絶対守る体制をとるハーデス
「クックック、そうだよ。ハーデス。あんたの技は全部あのとき、見せてもらったさ。はっきりいいって、こいつらじゃぁ。オレには勝てないさ。さて、ここの艦も破壊させてもらうよ。」そういって、艦橋の機関系統の配線を凝集光銃で撃ちぬいた。
「陛下、今の攻撃で、この船の機関部の制御が困難になりました。このままでは、20分くらいで爆発します。ここは、撤退をすべきです。」ファラムンシュ
「嫌だ。あのものは、一時的に操られているだけだ。捕獲して、治療すれば治る。だから、だから、ラフィールを殺さないで欲しい。それが確認されるまでは動く気はない。」無茶を言うラマージュ
「ハーッハッハ、アーヴの皇帝よ。まだ、そんな甘いことをいっているのか?この器の意識はもう無いのさ。だから、あんたは、ここで死ぬんだ。」そういって、ラマージュに向けて、銃を構えた。
そのとき、突然サタン・ジュニアは、頭を抱えて苦しみ出した。
「く、やめろ。お前は、もう、いないんだ。消えてしまえ。ク……………。は・は。母上。わ・わ・私をこ・こ・殺して。は、は・早く・」最初は、サタン・ジュニアの表情だったが、苦悩にみちているが、ファリース子爵の表情へ、徐々に変っていった。
「ラフィール、ラフィール。そなたなのか。母の声が聞こえるか。頑張れ、そいつを頭の中から追い出すのだ。」ファリースの変化にまだ希望があると思うラマージュ
「ダ…・だめ。ム・ムリ。だから、ワ・わたし…・を殺して。わ・ワタシの……さ・最後の……願い」頭を抱えながら残った意識で最後の願いをするファリース
「しかし、そなたを殺すなど、そなたは、まだ、耐えているではないか。だから、だから、頑張るのだ。」
ラマージュは迷っていた。
しかし、ファリースは突然、凝集光銃を自分の側頭部にあて、発射した。頭を貫かれたファリースは倒れた。
「ラフィール、そなた、自分で決着を…・すまぬ」
ラマージュは、涙が出るのを耐えていた。
すると、突然頭を貫かれたはずのファリースが立ちあがった。サタン・ジュニアとして。
「ハーハッハッハ、こいつ馬鹿だ。自分で自分の頭を撃ちぬくなんて。それくらいで、オレが死ぬと思ったか。甘い、甘い。さてと、邪魔者はいなくなったし。今度こそアーヴの皇帝、死んでもらうぞ。」頭から大量の血を流しながら不敵に笑うサタン・ジュニア
「貴様、絶対、殺す。(頭を撃ちぬいても死なぬとは、あれは、もうラフィールではない。ラフィールの形をした敵だ)」アブリアルの怒りを爆発させるラマージュ
ちょうどその場面に、ヤフェトは入ってきた。
「陛下、これは、どういうことですか?」
皇帝の護衛隊を含め艦橋にいる何十名ものアーヴの死体の山を見て、驚くヤフェト
「ヤフェトやっときたか。ファリースがサタン・ジュニアにのっとられた。娘の努力も空しく、まだ、倒せないでいる。」自分の迷いにより、状況がより深刻になっていることを後悔していたラマージュ
「ほう・・新手か。まぁ、みんな死ぬのだから。誰が来ても同じ。」
「レーグルス男爵閣下ちょどいい。陛下を早く連れて逃げてください。この船は、まもなく爆発します」
ハーデスがラマージュのことをヤフェトに任せようとしていた。
「ヤフェト、私は逃げぬ。だから、私と共に戦うがよい。」意地でも戦おうとするラマージュ
「しかし、陛下。この状況では…・」ラマージュを止めようとするヤフェト
「ヤフェト。そなたならわかるはずだ。私がどんなにラフィールを想っていたことを。そして、その体をのっとらて、こんな凶行を続けさせられる悔しさも。」逆にヤフェトを説得にかかるラマージュ
「わかったよ。ラマージュ。君の言うとおりにするよ。」
「男爵閣下、また、同じ過ちをする気ですか?」大声で珍しく怒鳴るようにいうハーデス
「大丈夫だ。今度こそは。」そういって、目線をラマージュに送る。
「(よし、わかった。ヤフェト)。皇帝護衛隊。8方向からサタン・ジュニアを囲んで凝集光銃で突撃するがよい」ヤフェトの意図を理解してすばやく命令するラマージュ
ラマージュの命令どおり、突撃する護衛隊。しかし、次々とサタン・ジュニアによって、倒された。
最後の一人に狙いを定めた瞬間、ヤフェトはすばやくサタン・ジュニアに接近して完全に間合いに入った。
そして、自慢の家宝の剣で心臓を貫いた。
「グフ…」
心臓を貫かれた瞬間、血を吐くサタン・ジュニア
「勝った。」そう、ヤフェトが言った瞬間。サタン・ジュニアの瞳が邪悪な色に輝いた。
「ブッブー、残念。その程度の攻撃では死なないよ。無駄な努力ご苦労。」そういって、ヤフェトの額に凝集光銃をつきつけ、発射した。
「ラ、ラマージュ…・」
それがスポール・アロン=テルミラ・レーグルス男爵・ヤフェトの最後の言葉だった。
「ヤフェトーーーーーーーーーー!!!!」ラマージュは絶叫した。
「ヤフェト、ヤフェト、ヤフェト」何度も想人だった男の名を言うラマージュ
「陛下、失礼します。」
錯乱しているラマージュの首に当身をあてハーデスは気絶させた。
「ファラムンシュ参謀長、陛下を早くこの船から脱出させてください。ここは、私が引き受けます。」サタン・ジュニアに対して最後の戦いを挑むハーデス
「わかった。あとは、任せる。しかし、こんなことをして、アーヴの地獄へ君は落とされるかもしれない」心配するファラムンシュ
「いいですよ。陛下と帝国が助かるなら。甘んじて地獄に落ちます。最も、こいつらを倒してからの話ですけどね。それより、早く陛下を。そして、この船に乗っている他の翔士達を脱出させる指揮をやってください」
「わかった。あいつは、頼む。」そういって、ラマージュを抱えて、艦橋からファラムンシュは出ていった。
そして、艦橋にはハーデスとサタン・ジュニアが艦の爆発する警告音の中で二人だけとなった。
「ハーデス、君はタトゥースの弟だから特別にオレのことを話しておこう。どうして、この器の中にいたのかということをね。これは、いやゆる保険だったのだよ。この器がサタンに協力していればオレの出番は永遠になかったわけだ。でも、こいつは、裏切った。だから、しょうがなくオレがでてくるしかなかったんだよ。そして、器をサタンが殺せない理由は、器にあるのではなく、オレが中にいたからさ。」面白そうに話すサタン・ジュニア
「彼女は、器じゃない。ラフィール殿下だ。お前、絶対に殺す。絶対にだ。」怒りの表情を見せるハーデス
「ほー、お前でも怒るのか。人の生き死になんて数多く見てきた。お前が。だが、おしゃべりもここまでだ。決着をつけようか。ハーデス。もっともお前の銃技などすでに見きっているがな。」余裕の表情を浮かべるサタン・ジュニア
「そうか、では、勝負だ。」
こうして、二人は間合いをとり、腰につけた銃を手に接近させながら円を描くように移動してタイミングを見はかっていた。
艦橋の一角が爆発して振動した瞬間、二人は動いた。
銃を持ち、発射するタイミングも全く一緒だった。だが、ハーデスは、サタン・ジュニアとは見当違いのところにむけて、発射した。その弾は跳弾になり、サタン・ジュニアが予想していないところから飛んできて、銃を持っている右手を襲った。
一方、ハーデスもわき腹と肩に銃弾をうけた。だが、その痛みを耐えて、サタン・ジュニアに突進した。
右手を貫かれて、一瞬凝集光銃を撃つタイミングが遅れたのをハーデスは見逃さずに『アース』をなげつけて、そこについているワイヤーで右手をまきつけた。
これで、サタン・ジュニアは凝集光銃を撃つことが不可能になった。
その攻撃にサタン・ジュニアが驚いている間に、完全に間合いに入った。ハーデスは、ファリース子爵だった体の額につめを立てて空識覚器官をえぐりだした。
「なぜ、貴様、それを…・・」声にならないほど苦しむサタン・ジュニア
そして、えぐりだした空識覚器官を握りつぶした。
「ギャーーーーーーーーーーーーーー」とこの世のものとは思えない奇声をあげて、サタン・ジュニアは絶命した。
「ふー、やっと、終わったか。銃技だけで、戦闘に勝てるとはかぎらないさ。サタン・ジュニア。それと、お前の弱点を知ったのは、ダリシュのおかげさ。」
ハーデスとダリシュの回想
「どうした、ダリシュ、ファリース子爵殿下のカルテなんかみて、何か気になるのか?」熱心に見ている息子に声をかけるハーデス
「うん、父さん。ちょっとね。このレントゲンに映っている空識覚器官、ちょっと、形が微妙におかしくないかな。ファリース子爵の担当医に聞いても別に問題はないといっているのだけど、気になるんだ。」横にあったレントゲン写真を眺めるダリシュ
「うん、そうかい。私には普通の空識覚器官にしか見えないよ。多少、形が変っていても、それは、個人によって、差があるものだしね。ユーリルなんて金色の空識覚じゃないか。それに比べれば、子爵殿下のは普通だと思うけどな。」息子の疑問を不思議に思うハーデス
「うん、そうなんだけど、あまりにも機械的という感じがするんだ。まぁ、僕の勘違いならそれでいいんだけど。これを取り出して調べるわけにも行かないし。まぁ、父さんがそういうなら、たぶん、問題はないか。」
その場面をハーデスは、ファリース子爵がサタン・ジュニアに変って、次々と他の翔士が倒されている間に思い出していた。
「ふー、私にはここを脱出する余力は残っていないか。陛下に謝罪する機会もなくしそうだな」
わき腹からの出血がひどくなっている状態で爆発寸前のガフトノーシュの艦橋の中で座り込むハーデス、
ハーデスは、朦朧としている意識の中、息子のダリシュと娘のユーリルの思い出に浸っていた。
すると、
「父さん、起きて。起きてよ。起きなさい。シュリル・ウェフ=キルヒム・ハーデス」
その声と同時に顔面に急激な痛みを感じた。
「ユ、ユーリル、どうして、ここに?ダリシュと一緒にサタンに乗りこんだのではないのか?」娘の金色の瞳をじっとみつめて、おどろくハーデス
「兄さんが、ガフトーシュに帰れと命令したの。私は足手まといだって。父さんの援護でもしていろとね。そのときは、不満だったけど、このことを意味していたのね。さぁ、父さん、肩をかすわ。救命夾まで急ぎましょう。それとも、私と一緒に死にたい?」にっこりと微笑むユーリル
「馬鹿、そんなことさせられるか。絶対に生き残って見せるからな。そうしないとお前まで死んでしまう。子供をこんなところで死なせる悪い親にはなるきはないよ。ここまで、親としての自信は帝国で1番だと思っているんだ。それを最後まで通すよ」そういって、残った力でユーリルに肩を借りて、救命夾までたどり着いた。
その救命夾を発射した直後、ガフトノーシュは爆散した。