ラフィールの修技館時代   作:いち領民

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ラフィールの修技館時代 第31話

僕です。今、艦橋に到着したのですが、兵士が1人もいないんです。廊下や昇降機には沢山いたのですが・・・」

状況を詳しく説明しようとしたダリシュの言葉を制した。

「破壊できる物は全て破壊せよ。それがそなたに与えた任務だ。次の通信は遂行という言葉をまっておる」

通信は切れた。後ろを振り向き、真っ青な顔をしているラフィールに気をかけた。

 

「そなた、大丈夫か?蘇生剤はどうした?」

ラフィールは、医師から聞いたことをそのまま話した。

「たかが貧血で蘇生剤は使えぬそうだ。ファリース子爵にかなり使ってしまったからな」

 

「私は“大丈夫か”と聞いておるのだが」

 

「ちょっと、いや。物凄く寒い」

「翔士個室に行って休息するがよい。まだ使用していない部屋が幾つもある」

 

 

 

お礼をいい、ナシーカとともに部屋へ入った。

「寒い…」

しかし、上等で一番暖かい毛布を2枚使用しても血液の少ないラフィールはまだ寒く感じた。

「これ以上毛布はもう、無いわ」

諦めて部屋を出ようと考えたが、命の恩人を放置するのも気が引けた。ナシーカはいつぞやのようにべッドに潜り込み、空識器官に唇を触れさせた。

,「御免ね。私なんかの為に・・・・・・」

 

「何を言う。そなたは私の友人だ。いや、ただの友人などではない。親友だ。そなたの為ならこの程度の事苦にもならぬ。・・・・・・・・・・そなたに感謝を。もう十分だ。次は私がそなたにする番だ」

 

「私は大丈夫よ」

 

「遠慮するでない。そなたも快調にはほど遠い体調であろ?」

 確かに死の危険は無くなったがナシーカの体調は良くなかった。ラフィールと同様血が不十分で貧血気味なのだ。

 

「それじゃあ、ちょっとだけ、お願いするね」

ナシーカはそう言って自分の頭環を外した。露わになった空識覚器官にラフィールが口を付けた。するとラフィールの口の中に鉄の味が広がった。ラフィールは驚いて口を離して空識覚器官を見た。原因はすぐに分かった。空識覚器官に小さな裂け目が入って、そこから僅かではあるが血が出ているのだ。

 

「どうしたの?」

ナシーカが不審に思って尋ねた。恐らく傷が小さすぎて本人も気づかないのだろう。しかしたとえ小さいとしても空識覚器官に傷がつくというのは飛翔科の人間にとっては重大な問題である。なぜなら万が一空識覚を失ってしまえば船の操縦が出来なくなる。そうなれば飛翔科に残る事は出来ないからである。

 

「・・・・・いや、何でもない。続けるぞ」

 ラフィールはまた空識覚器官に口をつけた。人間の唾液には殺菌効果があるというのを聞いたことがあったので。

他にも傷を癒し、痛みを中和させる事ができることも聞いていた。

「どうだ、楽になったか?」

 

「うん、少しはね。でもやっぱり思うけど、空識覚に異常がないとき、は、やってもしょがないよね」

ナシーカは全く良くならないので、それは、効かないと思い込んでいた。

 

「傷……い、いや、なんでもない。それより、大丈夫か?せき込んでいるが?」

思わず言ってしまったので何とか話題を変えようとするラフィール。

 

「傷?そう、傷…。有難う、教えてくれて。なんとも無い時は全身に稲妻が走るみたい感じるのよ。言葉では説明できないけど、ね。おかしいと思ったのよ。でも、隠し事が出来ない人って好き」

本当の事だった。そんな会話をしていると、小喬が入ってきた。

 

「失礼します。私がお2人の看護を致します。こう見えても私は看護科の提督なのよ」

と、看護、と言っても、話し相手でしかなかったが。彼女の話では、会話で痛みを忘れさせ、安心させるのだという。

 

「でね、“両家徴”は私の代で終わり。家徴は、『視力が悪い』ということよ。これも事実だけどね」

 

「ご息女は一体どのような名前を名乗っているのだ?」

と、疑問になったラフィール。小喬の言った通り、痛みを忘れていた。

 

「本名を名乗ってはいけない事をよく知っているわね。“委員長”よ。いま入学勉強をしているわ。主計列科に行きたがっていたから、上手くいけば、殿下や、閣下の部下になると思うわ」

と、言った瞬間、呼び出しがかかり、食堂へ戻っていった。

 

「安楽死を何人希望するであろ」

と、唐突に言うラフィール。

「見た感じ、5人は自分で頭を貫いていたわ。でも、どうして私を殺さなかったの?苦しませて私を殺すきだったの?」

 

「まさか!そなた程の大親友は二度と現れぬからな。手放したくなかった。結果苦しませたのも事実。でも、そなたの『火』何とか保てたぞ」

と、まるで自分の『火』のように話すラフィール。それを嬉しく思うナシーカ。こうしてまた、絆の糸を太くする2人だった。

 

「私の命の『火』を『炎』にしてくれて、有難う」

ナシーカが唇を合わせたのは、空識器官ではなく、なんと唇だった。

 

「そなたこそ、有難う」

 

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