ラフィールの修技館時代   作:いち領民

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ラフィールの修技館時代 第33話

そのころ、ナシーカは泣いていた。

「そ、そんな。私が殺したレオは、……」

声に出して泣いているのを見るのは2回目となったラフィール。

 

「でも、犯罪者として処刑されるよりも、そなたに殺された方が幸せかもしれぬぞ。知人で愛していたのだから」

その時、まるで超新星爆発よりもはるかに大きな爆発が発生した。

 

 

「ダリシュは無事であろな」

爆発が収まり、ラマージュは空識覚に注意する。僅かな質量も見逃さなかった。

 

「回収を急ぐが良い」

 

 

 

「姉さん、久し振り。それにダリシュ君も」

「まさか姉妹で“闇の狩人”だとは思わなかったよ」

「あっ、しっつれい~。私達そんなふうに呼ばれているなんて。私は王家専任の看護科よ?まだ提督だけどね」

小喬は、患者の血で全身が真っ赤に染まっていた。食堂は死臭が充満しており、悲惨さを物語っていた。

 

「これが、総負傷者数。こっちが、総死亡者数よ。酷いものだわ王家専属の看護科としては失格だわ」

重軽傷者が25000人、死亡者が245万5467人。その内身元不明者が20000人以上。カミンテール戦役との戦争でもこれほどの被害は出なかった。

 

「陛下の姿がお見受けできますが?」

と、ダリシュ。

 

「ええ、ヤフェトさんのお見舞いに。ファリース子爵殿下も一緒ですよ」

 

「ふぅ、何とか無事ね。ほら小喬、行きましょ、愛を邪魔しちゃいけないわ」

「あ、待ってよ姉さん」

「今度、お手合わせ願えませんか?どちらかとで構いませんから」

 

「一段落したらね」

と、小喬は本当の医療室へ行った。

 

「今のはOKのサインよ。小喬と戦って、技を盗んで、それで“二喬”を倒したって噂を持ちきりにしたいわ。貴方ほどの戦力だったら、看護科の小喬を倒すのは簡単だと思うわ」

 

 

「わかりました。…・・それでは、僕も父と各マスターのところへ行きます。」そういって、ラシェールのもとに去っていくダリシュ

 

 

ラシェールに帰ると、各マスターは、ダリシュの帰還を本当に喜んでいた。中には、ダリシュを抱きしめてなかなかな離さないものまでいた。

 

「結局、シータさんは、助けられなかった。…・」寂しそうに地面を見つめるダリシュ

 

すると、体じゅうに包帯をまいて、右目も眼帯をしていたが、もう一つの目が紅色の瞳をした人物がユーリルの肩をかりながら入ってきた。

 

「まさか…・・シータさん。生きていたのですか。本当に良かった。」といって思わずシータを抱きしめた。

 

 

「痛い、痛いですわ。ダリシュ坊や。確かに、私も死んだと思いました。でも、そこにいるスキールマスターが死の淵から私を救い出したのです。まったく、かっこよく、死ねると思ったのですけど、それは当分のおあずけになりましたわ」傷だらけだが、口は減らないシータ

 

「そうですね。私から説明しましょう。私が彼女を救ったのは、古代中国で使った蘇生術の一つです。この針で脳のあるつぼにさし、脳波を高めて、脳の機能と心肺機能の回復をはかる術なのです。これは、本人の精神力がないと成功できない術なのです。」針を持ちながら説明するスキールマスター

 

「そうなのですか、ありがとうございます。」

 

「さてと、一応、陛下に我々の撤退の報告をして帰りますか。」

一応、最後をまとめようとするハーデス

 

「そうね。ああ、そういえば、ヘルマスターはあなたでしたね。」と嫌味を言うシータ

 

「わかったよ。ダリシュに陛下への報告をやらせればいいのでしょう。クリューヴマスター」シータの意図を理解するハーデス

 

「ダリシュ、では、頼む。これが、今回の騒動の最後の仕事だ。」

 

「はい、わかりました。父さん」

 

こうして、最後の報告をするダリシュ

 

 

「陛下、敵サタン抹殺しました。これにて、今回の任務終了です。今回の詳しい報告は次の定例報告でまとめます。」敬礼しながら話すダリシュ

 

「そなた、ご苦労であったな。まずは、そなたに感謝しよう。ヤフェトを救った頭環はそなたが選んだものだったからな。あのときは、色々と忙しかったからな。そなたくらいしか、頼むのがいなかった。でも、どうして、あの機能をつけたのだ?」

 

「陛下に言ったではありませんが、あれは、お守りだって。でも、役に立って良かったです。では、陛下、我々は先に撤退して本来の任務に戻ります。それでは、また。」

 

「うん、わかった。とにかく、体を休めよ」

 

それを聞いて、敬礼をもう一回して、ダリシュは通信を切った。

 

そして、そのまま『青の牙』マスター専用特殊戦闘艦『影船』の8隻は、ミスティック門へ吸い込まれていった。

『影船』の中でダリシュはハーデスに話しかけた。

 

「父さん、ちょっといいかな?」

 

「何だ?」

ハーデスはダリシュの方を向いた。

 

「サタンを破壊する時<グランマ>という敵がいたんだ。バルグゼーデマスターは、その<グランマ>という敵は父さんとタトゥースの親だと言っていたんだけれど、それって本当なの?」

 

「確かに私の母さんは<グランマ>と呼ばれていた。まだその人物の詳しい情報を観ていないから、断言は出来ないが、バルグゼーデマスターがそう言うのなら多分その<グランマ>という人物は私の母さんに違いないだろう」

 

「どんな人だったの?」

 

「どんなって、そうだな・・・・・」

ハーデスは暫くの間遠くを見る時する様な目をして、それから話し出した。

 

「母性あふれる人、と言えばいいのかな。とにかく優しくて頼りになる人だった。任務の時は侵入する時は先頭に立って道を開き、退却する時はしんがりになって他の仲間の背後を守った。食料が不足している時は自分の分を他の仲間に全て与え、仲間が捕まった時はたった一人で救出に行った。一応コードネームはヘルマスターだったが、みんな古代英語でお婆さんという意味の<グランマ>と呼んだ。<グランマ>がいなければ私もバルグゼーデマスターも今頃ここにはいなかっただろうよ。<グランマ>はとにかく強かった。今の我々青の牙の人間の技術、技を全て持っていたから。本気になれば今の私でもかなうかどうか分からない。でも、訓練では滅多に本気を出そうとはしなかった。ところでダリシュ、」

 

「何?」

 

「その<グランマ>という人物は最初から本気を出していたように見えたか?」

 

「いや」

 

「やはりな。母さんは我々を訓練する際には滅多に本気を出さなかった。ある時私は母さんに何故かと尋ねた。そしたら、本気を出してしまったらやりすぎて相手を殺してしまうかもしれないから、って言った。実際、母さんが本気を出したらあの頃の私ではひとたまりもなかっただろうよ」

 

「ふーん。でも、そんな人が、どうしてこれほどの事を起こしたんだろう? 父さんは分かる?」

 

「恐らく、それは私のせいだ」

 

「どういうこと?」

 

「母さんは、タトゥースと私の両方を愛していてくれた。しかし、私とタトゥースは母さんに代わる新しいヘルマスターを選ぶ際に衝突、最後には真剣勝負で決める事になった。結果、私はタトゥースを殺し、新しいヘルマスターとなった。その日を堺に母さんは無口になった。きっと、愛する息子が愛する息子を殺した事にショックを受けたたんだろう。そしてある時、母さんはとうとう自分の部屋でナイフを自分の胸に突き刺して自殺した・・・・筈だった」

「死んだと見せかけて潜伏していた。と、言う事か。今回は、『闇の狩人』が居て助かったよ。今度のお手合わせはちょっと辛いかも」

 

「辛いってもんじゃねぇぞ。どっちだ?」

 

「小喬さんです」

そう言った瞬間、ハーデスのあごが落ちた。

 

「お、おい。二喬は、美しさだけじゃなく強さも銀河一だ。青の牙全員が一斉に攻めても指折り数えれる時間で全滅する。二喬で強いのは小喬の方なんだ。これだけは言っておく、あの2人の舞は、シータの舞と違って隙が全くない。昔、周瑜が使っていたとされる秘剣“美周郎”を手渡す。これでも勝てない。もっとも、一度見れば忘れぬ美しさだがね」

ダリシュは首をかしげ、

 

「どうしてそんなに詳しいのですか?」

と、聞く。

 

「タトゥースの想い人だったからだよ。それに、アーヴでもありえぬ美しさだしな。作戦としては、先手必勝」

ハーデスは、ワザと教えなかった。ある意味の抜き打ち試験なのだ。

「具体的な作戦は無しか。面白い、受けて立とう」

 

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