ラフィールの修技館時代   作:いち領民

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ラフィールの修技館時代 第34話

そのころ、仮設医療室の食堂では、ラマージュと、

「レーグルス男爵閣下、無事でよかった。私、そなたの遺伝子を譲り受けた事を誇りに思います」

 

「有難う。でも、もう2度と“妖精の指”の技術を見られないとなると、悲しいな。お前もだいぶ成長したしのにな」

「でも、私は艦より大切な物を戴きました。ありが…とう」

ファリースは涙を見られぬように、顔を押し付けたが、

「存分に泣くが良い」

そう言ったラマージュも鳴いていた。

「有難う、ラマージュ、ラフィール」

一方ナシーカは自分に割り当てられた翔士個室にいた。ナシーカは部屋の灯りを消して真っ暗にして音楽をかけ、部屋の隅で小さくうずくまって声を殺して泣いていた。音楽の題名は<帰らぬ日々>。悲しげな音楽が部屋の中で流れていた。

 

 

『私は・・・・・なんてたくさんの人を・・・・・・・・殺してしまったのだろう。・・・・・・友人を殺した・・・・・恋人を殺した・・・・・・・どうして?・・・・・どうして私ばかりこんな目にばかり遭うの?・・・・・私・・・・どうすればいいの?・・・・・誰か・・・教えて・・・・・誰か・・・・助けて・・・・・』

「ヒック・・・・・・・・・・ヒック・・・・・・・・・・ヒック・・・・・・・・」

 

その時ナシーカのクリューノに通信が入った。プラキアからだった。

 

「ちょっと入れてもらえるかな?」

 

ナシーカはクリューノを操作して扉を開けた。扉の向こうにはプラキアとラフィールがいた。

「わ、私、……どうすれば……いいの?」

「落ち着いて。それに、こんな暗い音楽だと、心まで暗くなるわ。貴方に涙は似合わない。笑えとは言わないわ。でもね、死んでしまった人の事を想うのなら、その人の分まで一生懸命生きなさい。死んでしまった人も、それを願っているわ」

 

「お姉さま、私、人を救える所へ転出したい。もう2度と悲しむ人を見たくないの」

 

「小喬も同じ事を言っていた。もっと技術を身に付け、人々を救いたい、とな。闇の狩人の本来は影の護衛で、皇帝はもとより、国民を守るのを仕事としているからな。しかし、そなたが居なくなるのは悲しいな。寮は同じかもしれぬ。しかし、私との約束は…」

ナシーカは、まだ泣いていて、

 

「ご、ごめんね。わったし、の……我ままを……許して…ヒック」

 

 

「よい。そなたのことは責めぬ。ただ、時々は思い出してくれぬか。生死の境を共に歩いた親友を」

 

「絶対に……忘れないわ…!…」

,

 

<カールティルジュ>を始めとする艦隊は数日後ラクファカールに帰還した。修技館に戻ったナシーカはすぐに自主退学の届け出を提出したが、手続き等の関係で退学するのは届け出を提出してから三日後となった。その間ナシーカは残り少なくなった自分の飛翔修技館での生活を悔いの残らぬ様に楽しんだ。ナシーカが自主退学する事を知った同級生はみな驚いた。ナシーカのスポールらしくない性格は人気があり、みな別れを惜しんだ。中には考え直してくれないかと言う者もいた。しかしナシーカの意志が揺らぐ事は無かった。そして、あっという間に三日が過ぎ、その日がやって来た。

,「ナシーカさん、もう一度考え直してくれないかしら」

「そうだよ、今ならまだ間に合う」

と、同級生が言う。

 

「御免なさい。私には、……」

その先を困っていると、ラフィールが、

 

「そなたの人生だ。そなたが行くというのならば、私は止めぬ。私を忘れぬのであれば、好きにするがよい」

 

 

こうして、ナシーカは、飛翔科の修技館を退学して、後に看護科の入学試験を受けたのだった。

 

 

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