ラフィールの修技館時代   作:いち領民

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ラフィールの修技館時代 第44話

ナシーカは少し変わったかもしれないな、とラフィールは思った。気だてや優しさは昔と変わらないが、以前よりも生き生きとしているように思えた。ついさっきナシーカと話した事の大部分は子供や子育ての事だった。子供を持った事がナシーカを変えたのかもしれない。

 ふとラフィールはジントの事を思い出した。ラフィールにとってジントは特別な人間である。しかし、想人と言えるほどでもない。

 

「(ジントは私にとって何なのであろうか)」

 

 ラフィールとジントを結びつけているものの正体は一体何なのだろうか。愛とは少し違うように思われた。しかし友情でもないだろう。愛でも友情でもないとしたらジントはなぜ自分にとって特別な人となったのだろうか。生まれて初めて名前を聞いてくれたからだろうか。クラスビュールで行動を共にしたからだろうか。<バースロイル>に乗り込んだからだろうか。ロブナスで置き去りにしたからだろうか。考えれば考える程ラフィールは分からなくなった。

,「何かお悩みですかな?」

 

 不意に声が聞こえた。ラフィールが顔を上げるとそこにはヤフェトがいた。

 

「久しぶりだな男爵。元気そうでなによりだ」

 

「殿下もお元気そうで何より」

 

「今帰ってきたのか?」

 

「ええ、ついさきほど帰ってきたところです。ところで先程も申しましたが、何かお悩みですかな?」

 

「悩んでいるように見えたのか?」

 

「違うのですか?」

 

「いや、違わぬ。何故そなたとナシーカが想い合えたのか考えていた所だ」

 

「言ってくれますね。ま、確かにそうですが。私がナシーカをここまで愛する事が出来た理由はいくつでも見つかるのですが、ナシーカが私をここまで愛してくれた理由は未だに分かりません。更に言えば、陛下が私を愛してくれていた理由も未だに見つけられないでいますが」

 

 ヤフェトは笑いながら言った。ヤフェトは容姿はアーヴとしては平均かそれより少し上といった程度、さらにアーヴでありながら個人的な目的の為にいくつかの地上世界に行った事があるのだから、これはもう変人と言われても文句は言われないだろう。

 

「ちなみにそなたはなぜナシーカをここまで愛する事が出来たのだ?」

 

 ラフィールは尋ねた。

 

「そうですね・・・」

 

 ヤフェトは暫く考えてから言った。

 

「私にとってナシーカは、自分の命に代えてでも守るべき存在です。しかしこれは親が子に対して抱く感情、所謂親子愛です」

 

 その事についてはラフィールも同感だった。ヤフェトは続けた。

 

「私はナシーカが良いのなら、誰が想人になってもいいと思っていました。ナシーカの幸せは私の幸せでもあるからです。そしたら何を思ったのか、ナシーカは私を、こんな私を想人にしたいと言ったのです。勿論私は驚きました。何度もナシーカの気持ちを確認しました。お前は本当にそれでいいのか、ひょっとしたらお前が思っているほど私は立派な男では無いかもしれないよ、と。しかしナシーカは考えを変えませんでした。『私は、お祖父様がいいの。お祖父様でなければ駄目なの。想人にしてください』ってね。そして、私はナシーカの思いを受け入れました。あの子の幸せは私の幸せでもあるのですから」

 その時ナシーカが帰ってきた。

 

「あれ、お祖父様、帰ってきてたの?」

 

 ナシーカは意外そうに言った。

 

「ああ、ついさっきな。アリユーシュは?」

 

「ちゃんと育児室に寝かせてきたわ」

 

「そうか。お疲れ様、お母さん」

 

 ヤフェトは微笑みながら言った。つられてナシーカも微笑んだ。

 

 

 

 

 帰りはナシーカが見送りに付いて来てくれた。

 

「今日は楽しかった」

 

「また来てね、待ってるから」

 

「ナシーカ、最後に1つよいか?」

 

「何?あらたまって」

 

「その・・・想人に抱かれるというのはどういう気持ちなのだ?」

 

「えっ!!」

 

 ナシーカはあまりにも意外な質問に仰天した。ラフィールはと言えば、耳まで真っ赤にしていた。

 

「ど、どうなのだ?」

 

「い、一体何があったの?・・・ひょっとして、想人が出来たの?」

 

「・・・まだ分からぬ。その者は私にとって特別な人である事は間違いないのだが、これが恋なのかどうか、私にはわからぬのだ」

 

「・・・貴方はその人に抱かれたいと思っているの?」

 

「分からぬ。しかし、もし向こうから私を抱こうとするのなら、私は拒まないかもしれない」

 

「そっか。・・・参考になるかどうか分からないけれど、とりあえずさっきの質問に答えるね。私の場合は、まず恥ずかしかった。次は、くすぐったい、かな。でもどういう訳か、それが段々快感になって行くの。合体する時は・・・えっと、まだ聞きたい?」

 

 ナシーカは真っ赤になりながら尋ねた。ラフィールは、やはり真っ赤になったままコクリと頷いた。

 

「が、合体はね、最初は痛いけれど、そのうち痛みは和らいで、その・・・・・・御免なさい、口じゃ上手く言えないわ」

 

 ナシーカはすっかりしどろもどろになっていた。

 

「いや、わざわざすまない・・・・・・・・・私はもう行く」

 

 ラフィールは交通艇に乗り込もうとした。

 

「あっ、ラ、ラフィール」

 

 ナシーカがラフィールの後ろから声をかけた。

 

「何だ?」

 

「あ、えっと、その、が、頑張ってね。それと・・・・・・死なないでね」

 

 前半の言葉はともかく、最後の言葉は切実だった。

 

「・・・ああ。また、来るから」

 

 ラフィールはそう言うと交通艇に乗り込んだ。そして、恒星アブリアルの光を反射させながら、交通艇は飛び去っていった。

 

 

 ナシーカが来た通路を戻っていると、その途中にヤフェトがいた。

 

「殿下はもう帰ったのか?」

 

「うん」

 

「そっか。・・・心配するな。また、会えるさ」

 

「うん、そうよね」

 

「そうさ。アブリアルの乗り込む艦がそう簡単に沈むものか」

 

 ヤフェトは少し戯けながら言った。それを見たナシーカは笑った。

 

「ふふっ、そうね」

 

「『信仰うすき者よ、なぜに疑いしぞ?』ってな。アーヴに宗教は無いけれど、信じていれば、きっと帰ってくるさ。ところで、本当にもう大丈夫なのかい?」

 

「ええ、もうすっかり体力も回復したし。だから、今夜は久しぶりに、ね?」

 

「分かった。それでは今夜は遠慮無くやらせていただくよ。今までに無いほどのあつい夜にしてみせるさ」

 

 ヤフェトは笑った。それにつられてナシーカも笑った。

 

「あ、そうそう、実は最近巷で人気の<戦場から愛を込めて>の記憶片が手に入ったんだが、今夜ついでにどう?」

 

「恋愛物は良くないわ」

 

「そりゃまた何で?」

 

「だって、これから最高の恋愛劇が始まるんだもの」

 

 

<完>

 




この話は個人サイトのリレー小説をもとにした話で私は2割ほどしか書いていません。オリジナルキャラクターや皇帝が出てきてとんでもない話になりましたが、とにかく完結できたのは当時みなさんで色々と書いて盛り上がったの思い出しました。

当時は書きながらそう来たかとか、それならばこういう展開で好き勝手に書いていたことを思い出します。

これからも星界の紋章・戦旗シリーズの二次小説書いていこうと思うのでよろしくお願いします。
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