ラフィールの修技館時代   作:いち領民

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ラフィールの修技館時代 第9話

こうして、再び、レオに狙われるナシーカだった。

狙う時は…ナシーカが一人の時だ』

1人になる時は以外にも少ない。そのため、もう少し考える。

『倉庫に連れ込むか……』

 

 

「ナシーカ、今日……どこへ行ったのだ?」

朝、起きてもそこにナシーカの姿はなく、切羽詰ったぺネージュが扉を乱暴にこじ開けていた。

「ちょっと、なにのん気に寝ているの?さっさと我が一族を探しなさい!」

エアロック式の頑丈な扉を力任せに開ける。

 さすがに眠りからさめたばかりの頭でも理解できた。

「判った、すぐ行く」

 

寮中を探し回っても見つからない。あと見ていないのは倉庫と教室だけとなった。

「私は教室を見ますから、倉庫を御願い」

一緒に探すより二手に分かれた方が効率がいいことは、幼きラフィールも理解できた。

「分かった。任せたぞ」

 

 

 

倉庫は全部で1000近くある。この中から探し当てるのは至難の業だ。

 

 「やめるがよい!」

倉庫の中に銃を向けるレオがいた。

「やあ、遅かったじゃないか。ナシーカの抱き心地はよかったよ」

ラフィールは敵を目の前にし、微笑んだ。“アーヴの微笑”と呼ばれるソレをレオに向ける。

「貴様は絶対に許さぬ」

レオは無言のままラフィールに狙いを定め、同時に引き金を引く。レオを避ける筈の凝集光は見事に胸を焼きつかせ、レオの弾丸は見事にラフィールを避けた。

「ぐ、な…なぜ…」

理解が出来ないレオは記憶をさかのぼる。

「思考結晶に詳しいのは、なにもそなただけではない。ナシーカは勉強してたんだ」

「く、小娘の分際で…この俺が……負けるとは」

しかし、心臓を外したらしく、走り去ってゆくレオ。

「待つがよい!」

想像以上に逃げ足が速く、あっという間に逃げ切られた。

「どこへ行ったのだ?そうだ、ナシーカ、ナシーカは!?」

先程の倉庫へ向かい、裸で放置されたナシーカをソッと抱き上げる。

「すまない。私は……。…もっと…早く気がついていれば、そなたの……大事な物を…奪われずに済んだものを…」

「いいの、私はこうして生きている。有難う、ラフィールちゃん」

,『皇族でも…一番信頼できる人が傷ついた時、ヤッパリ泣いちゃうよ』

と、心の中で呟いた。

『私、プラキアさんの実の妹なのに、目が赤いだけでスポール家にされちゃったし。プラキアさんの方がよっぽどスポールらしいわ。せめて、死ぬ前に“お姉さま”と呼びたい』

そんな思いを寄せながら、泣きじゃくるラフィールを眺めていた。

一方その”お姉さま”は日々ダリシュやユーリルと訓練にいそしんでいた。プラキアも修技館でいた時対人格闘戦の訓練はしたことがあり、成績はいつも上位だったが、この二人には全く歯が立たない。プラキアの攻撃は二人には全く当たらないが、二人の攻撃はその殆どが決まる。プラキアの柔肌は痣だらけ、傷だらけになった。しかしこれくらいの事で諦めるプラキアではない。レオを倒すためならばこの程度の事は気にもならなかった。

 そんなある日、いつものようにプラキアは訓練を終えて家に戻ろうとしていた。

「今日もありがとう。また明日もよろしくね」

「あ、ちょっと待って」

ユーリルが慌てて言った。

「どうしたの?」

「実は今日、お父さんが久しぶりに戻ってくるの。お父さんは私達より経験が豊富だからきっと私達よりも教えるのが上手いと思うの。だからもしよかったらもう少し待ってお父さんに少しでも教えてもらうといいとおもうんだけど」

勿論プラキアはそうする事にした。数時間後一機の交通艇がシュリル家に到着した。

「始めまして。シュリル・ウェフ=キルヒム・ハーデスです」

「レクシュ・ウェフ=ローベル・プラキアです。いつもお子さんにはお世話になっています」

「ユーリルから話は聞きました。復讐したい相手がいるとか」

「はい」

「ユーリル、そいつの情報を見せてくれ」

「これよ、お父さん」

ユーリルは一つの記憶片をハーデスに渡した。ハーデスはそれを端末腕環につないで情報を見始めた。しかしその次の瞬間ハーデスの顔が歪んだ。

「野郎、まだ生きていやがったのか・・・・」

「父さん、こいつを、ジョルジェ・ボルジュ=サレメーム・レオを知っているのか」

ダリシュが尋ねた。

「ああ、よく知っているとも。何て言ったって私の実の兄なんだから。本当の名前はシュリル・ウェフ=キルヒム・タトゥースと言うんだ」

「何だって!?(ダリシュ)」

「嘘でしょう!?(ユーリル)」

「本当ですか!?(プラキア)」

「本当だ。三十年くらい前に私が殺したはずだったんだが・・・・・・詰めが甘かったようだ」

「でも、『青の牙』から入手した情報にはそんな事は一言も書かれてなかった・・・・・」

ユーリルが言った。

「そりゃそうだ。私が全部書き換えたんだから」

ハーデスは当然の様に言った。

「わかったよ。父さん、我が家の恥と思って、殺して、その人物そのもの情報を消したんだね。でも、どうして、殺したやつが生きているの?僕の認識ではあんな弱い奴をやるのに父さんが失敗するはずないし、キルヒム家の一員だったらこれまで、こんな失敗(ナーシカを殺害の)をするなんて、おかしいよ。まるで不完全な・・・・。そうか、そういうことか」父の発言を聞きながらレオのことを分析するダリシュ

 

「ほー、何がわかったのかな。私も自分がミスしたことか、ダリシュ。」まだ、自分が失敗したとは思っていないハーデス

 

「違うよ。父さん、僕の叔父であるタトゥースは思考結晶については、かなりの知識を持っていたの?」唐突に質問するダリシュ

 

「ああ、そうだな。その点に関しては彼が私より一歩上だった。だが、他の部分で勝ったいたので、私が後を継いだ。でも、それが何の関係が?」息子の発言を興味深く感じるハーデス

 

「父さんは、この男の遺伝子情報からタトゥースと思ったのですよね。もし、タトゥースが自分と同じ遺伝情報の分枝体を作り、それを思考結晶によって、育てたら、あるいは、作られた記憶を埋め込んだらこういう人物になる可能性はないのですか?」自分の考えに自信を深めるダリシュ

 

「なるほど。確かにその考えはいち理あるな。もし、これが私が殺したはずのタトゥースならまっさきに私に復讐するはずだし、なにより、そんな失敗を絶対にしない。これは断言できる。それに兄にはナシーカという少女を狙う理由がわからん。それにしても、ダリシュまた、お前腕を上げたな。これだけの状況でその分析力、私を超える日もそう近いな。」自分の息子の分析力を嬉しく思うハーデス

 

 

「それで、彼は結局何です?私が戦っているレオという人物は?」真実を知りたいプラキア

 

「それは、たぶん、ダリシュの推測が正しいだろう。私の兄が作り上げた不完全だが極めて優秀で悪意に満ちた彼の息子、いや、彼自身といったところかな。思考結晶が育てたとしたら、心が捻じ曲がっていてもおかしくない。彼は狂った愛情表現しかできないのだろう。」この考えにすっかり納得するハーデス

 

「さすが、兄さんね。私はそんな考えは思いつかなかったわ。プラキア卿、私たちに関係ある人物なので、介入してもいいですが、あなたはそれを望みますか?」プラキアに確認するユーリル

 

「いいえ。残念ながらあなたがたの手は借りません。これはあくまでも、私の戦いです。だから、私を訓練してくれるだけで十分です。それに、相手がどこの出身であろうと私は彼をこの手で殺したいのです。この決意を変える気はありません。」決心は固いプラキア

 

「そうですか。わかりました。あなたの意見を尊重します。ただし、彼が私達家族を襲ってきたら、そのときは、容赦なく介入します。降りかかる火の粉は払わないといけないですからね。」ハーデス

 

「わかりました。とにかく、私も一刻でも早く彼に勝てるよう頑張ります。よろしくお願いします。」

 

こうして、再び激しい訓練にうちこむプラキア卿であった。

一方ハーデスは、今回の件を重く感じて、彼を『青の牙』として任命した人物に会っていた。

 

「クリューヴ・マスター、久々だな。今回は、君が以前、『青の牙』として、任命したミラーについて、聞きたい。」ハーデス

 

『青の牙』の担当家の人物のコードネームは、各王国の名前にマスターをつける決まりになっていた。ちなみに、ハーデスは、イリューシュ王国担当だったが、『青の牙』の長であったので、ヘルマスターというのがコードネームだった。

 

 

「ごきげんよ。ヘルマスター。ああ、あの子ね。知っているわ。でも、どうしたの?あの子が何か問題でも?」嬉しそうに答える青炎色の髪と赤い瞳をした美女が答えた。

 

「そうだ。そのミラーだ。君は知っていたのじゃないかな。彼が私の兄であるタトゥースの分枝体であることを。それを私に告げずに任命した。紋章院の通り名で言われている『青の牙のスポール』といわれている君らしいといえば、それまでだが、これは、問題でないのかな。」苛立ちを隠せないハーデス

 

「ええ、御存知だったわ。これは、後々あなたがキルヒム家をからかう良いネタが手に入ったと、でも、その子はあなたがたの家の血をついでいるわりには、無能だったわ。でも、私が誉めてあげたら、何だか嬉しそうに反応するのよね。」思い出に浸るクリューヴマスター

 

「そうか、それで、彼がどうしてここを抜けたのか詳しいことを聞きたいな。『青の牙』での人事は君らに任せているが、今回は異例の状況なんでね。詳しく聞きたい。これは、命令だ。」ハーデス

 

「わかりました。ヘルマスター。あの子を見たときは今でも思い出すわ。常に心が満たされない愛情に飢える子猫のようだった。理由を聞いても、黙って黙々と任務をこなすだけだった。だから、ちょっと、優しくしてあげたの。誉めてあげたの。そうしたら、私になついちゃって、なついちゃって。私の意のまま動くようになった。でも、私はそういう風になったらあきちゃったの。他のメンバーは道具として扱っていたけど、彼はオモチャとしてあつかったから喜んでいたけど、あまりなつかれるのもうっとうしくなって、捨てました。そうしたら、壊れちゃった。アハハー、面白いですね。壊れたオモチャを処分するのは面倒だからほうっておいていたら、勝手にここをぬけだしちゃたというわけですの。」悪びれもなくいうクリューヴマスター

 

「なるほど、これで、わかったよ。ナシーカという少女に固執するわけが、彼女の容姿は君に似ている。それで、しつこく狙ったのだろう。君は、指揮官の責任という言葉をしらないのか?問題があるなら処分するのが、常識だ。」ハーデス

 

「あら、各王国の担当者の部下の人事に口をはさむの非常識ではないの。ヘルマスター。いったでしょう。私は壊れたオモチャには興味ないの。これからもずっとね。その話はこれでおしまいにしましょう。気分が悪くなったわ。そうそう、命令ならいつでも受けますよ。でも、あなたは、命令する気はないのでしょう。私の自主性で彼を殺させようとしても無駄ですからね。」ハーデスの心を読み、嫌がらせをするクリューヴマスター

 

「そうか、わかった。まぁ、いい。彼はプラキア卿にまかせよう。君は自分の仕事へ戻ってくれ。」

 

そう告げて帰っていくハーデス

「では、私もこれで失礼します」

1日の訓練はみっちり18時間ある。今日もへろへろになって交通艇を走らせる“お姉さま”。

「うん?さっきから……突撃艦が付いて来ている…」

通信回線を開く。が、突撃艦は無人で、明らかに攻撃態勢を整えていた。

「やぁ、まったく君みたいな小娘が良く生き残れるね」

突然、通信回線が切り替わり、レオが現れる。その顔見た瞬間、プラキアには笑みが…。

「私の可愛い殿下に手を出したお礼をしなければなりませんね」

と、プラキア。

 

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