ノワール達を探しにネプギア達がいる部屋から出て、気が付けばどこかの地下室。壁に設置されたロウソクの明かりを頼りに静寂の道を歩み、ノワール達を探す。
ベール「一体どこに…」
ベールは進む度に名前を呼び掛ける。しかし帰ってくるのは鳴り響く自身の声だけ。
ベール「早く見つけないと…イタっ!」
ベールは咄嗟に左腕を動かしたが、どこかで負ったか分からない傷跡から激痛が走る。深く確認は出来ないが、おそらく筋肉に深い傷が付いてるかも知らない。こうなれば包帯を巻いて安静にする必要があるが、教師であるベールは自分の状態より生徒の身の安全の確保を優先的に動く。
進み始めてから数十分。ベールは右方向から初めて物音が聞こえた。しかしその物音は一般的な音ではなく、木製の物が折れたような音だった。
ベール「……誰か、いらっしゃいますの?」
音が鳴った方向に向かうように進んでみると、T文字の分かれ道が現れた。その中心まで来た瞬間、鼻をつまみ、吐き気を誘う異常な臭いが漂っている。その臭いは音が鳴った方向、右からやって来ているのが分かる。
ベール「…う……何ですの?この強烈な臭い。さっきの音はあそこから?」
右に続く道を覗くと、そこには開きっぱなしのゲートが見えて、その先には刑務所の中のような構造が見える。雰囲気は殺風景と言わざる得ない程の恐怖感が漂っており、その雰囲気にベールの全神経から拒否反応を起こす。
ベール「い、嫌な場所……どうか、ここに皆さんが居ませんように…」
ベールは覗いた先の道とは別に、左に続く道へ早歩きで場を後にする。その道をまっすぐ進んでいくと、幾つか扉のない部屋がある。しかしその近くに行けばいくほど寒気して不気味に感じる。
ベール「………」
意思を固めてその部屋の調べに入る。まず右側にある手前の部屋から調べる。中に入ると、ダンボールやビニールシートなどが散乱していて、その構造は物置場とも思える部屋になっている。
ベール「っ…!?」
ベールは咄嗟に左に向いた。何故なら、耳元から左から誰かの声で「お姉ちゃん」と聞こえた。しかしその声が聞こえた先には何もなく、ただダンボールが置かれているだけ。
ベール「げ…幻聴…?」
非汗が自然に流れ始めた。他に調べる事がないので、一度部屋から出る。次は左側にある部屋に入ると、そこには曲がり角が現れ、曲がった先に顔を出して覗くと、隙間が空いた扉が見える。隙間から見える先の部屋は明るいが、そのせいでベールは見てはいけない、非日常的な物を見てしまった。
ベール「っ!?」
その隙間から見えたのは、骨の山だった。ベールは咄嗟に逃げ出した。精神が狂いそうな、気分が悪くなる物を見てしまい、座り込む。
ベール「まさか……あの中……なんて、ありえませんわよね」
頭がおかしくなりそうになり、嫌な想像をしてしまう。もしかしたら、あの骨の山の中に自分の教え子が居るのではないかと思ってしまう程に病んで来ていた。その時、座り込んだベールに誰かの手が指し伸ばしてるのに気付いた。それが誰なのかを確認すると、ベールは沈みそうになった気持ちが晴れる。
ベール「プルルート!」
プルルート「ベール先生〜。ここに居たんだ〜」
手を差し伸ばしてきたのはプルルートだった。合流した事で表情が明るくなった。彼女の手を右手で掴んで立ち上がる。
ベール「無事で良かったですわ」
プルルート「うん。ベール先生?その血の跡、どうしたの?大丈夫?」
プルルートは相変わらず説得力ないのんびりした話し方をしているが、その表情は心配そうにしていた。
ベール「大丈夫ですわ。でも左腕を動かしますと激痛で」
プルルート「そうなんだ〜。痛いの痛いの〜飛んでいけ〜!」
プルルートは怪我負ったベールの左腕に痛みをなくすおまじないをする。その行動にベールは思わず苦笑い。
ベール「プルルート。それで痛みがなくなったら苦労しませんわ。でもありがとう、プルルート」
プルルート「あはは〜」
プルルートも流石に効果がないのはやる前から当然ながら分かっていた様子。でもそれでもやってくれた事をお返しに頭を撫でると、プルルートは気持ち良さそうに微笑む。
ベール「………?」
しかしベールは何かプルルートに対して違和感を感じた。それはプルルートの髪色による違和感。彼女の髪色がいつもより濃く見えるのは気のせいだろうか?
プルルート「どうしたの〜?ベール先生」
ベール「いいえ……何でもありませんわ」
ベールが感じ取った違和感は一度置いて、調べていない別の部屋に行く。でもその前にプルルートはどこから来たかを問うと質問する。
ベール「プルルートは、一体どうやって、どこからここに来たんですの?」
プルルート「え〜と〜。気付いたら周りが生臭い檻の中で寝ていたの〜」
生臭い檻。それを聞いたベールはさっき拒否反応を起こしたあの場所を指すのだと感付く。
ベール「そうですの…ブランとピーシェちゃんとは、どうしたんですの?」
プルルートと一緒に行動していた2人が居ない事を理由に質問すると、プルルートは顔を伏せたまま何も答えない。
ベール「…………」
ただでさえ寒気が感じるこの空間でベールは顔を青ざめた。プルルートが何も答えず顔を伏せている様子に想像が簡単に付いてしまう。しかしベールは自分の想像を捻じ曲げて、はぐれてしまったと無理やり考える。
ベール「は、早く皆さんを探しましょう」
プルルート「うん……」
まだ調べていない部屋の探索を再開する。物置場の隣にある部屋、そこに入ると、古びた教会のような小さな場所にたどり着いた。しかし何故かプルルートが入ろうとしない。様子を確かめると、両手を抱いてぶるぶると震えていた。ベールは見えるところで待つように伝え、1人で教会の中に入る。
ベール「教会…こんな暗いと、聖域とは感じられませんから、ますます不気味に思えてきそうですわ」
そういいながら、ベールは祭壇の横にあるグランドピアノに触れる。その瞬間。
ベール「あぁ!?」
プルルート「っ!?」
ピアノが急にメロディー奏でた。誰もいないのに、ピアノが弾かれている。その状況にベールは焦り、入口まで走り出す。そこで待っていたプルルートを無理やり連れてその場から離れ、T文字に別れたところまで逃げてきた。
ベール「はぁ…あ、くぅ…痛い…」
急いで場を離れたベールは左腕の痛みを忘れて走っていたせいで収まりつつあった痛みがまた増した。その痛みに耐えようとするが……
ベール「プルルートちゃん?お、お待ちになって!プルルート!」
プルルートは何も言わず、振り返らずに異常な臭いを漂っている檻の方へとぼとぼと歩いていってしまった。ベールは痛みを耐えながらプルルートの後を追う。
ベール「待って下さいまし!」
プルルートの右腕を掴んで、プルルートと正面に向き合うようにする。
ベール「あっ……」
プルルートは無表情で死んだ魚の目で自分を見つめる。目に光がない瞳を見たベールはプルルートの様子がおかしいと感じ取る。その時、プルルートが無言のまま檻の奥に向けて指を指した。
ベール「え?」
プルルートが指を指している事に疑問を持ったが、無言のままひたすら檻に指さす。それに従って、檻の方に向かうと、通り過ぎたゲートから激しい音を鳴り閉ざされ、更にプルルートの姿が消えていた。
ベール「そ、そんな!プルルートも居ない…っ!」
あぁ!いや!やめてえぇぇ!
ベール「プルルート!」
奥からプルルートの悲鳴が聞こえた。ベールは急いで奥に向かう。走りながら檻の中に覗き、プルルートを探す。
ベール「な…なんて場所ですの……」
その際に見た物は、多数の拷問道具と大量の血痕。ベールは精神的に病みそうになるが、プルルートの悲鳴が今も続いている事に無理やり持ちこたえる。段々悲鳴が近くまで聞こえるとこまで来た。そしてもう目の前ってところで悲鳴の声が突然止む。その時、元から拒否反応を起こしていたこの場所で、プルルートがいると思われる檻の前に行く事に対して更に拒否反応を起こす。
ベール「な…何ですの?この…空気」
プルルートはもう目の前にいる。あとは助け出すだけ、しかし何故か胸騒ぎがする。見たら後悔する。そのような感覚を感じた。しかしこんなところで止まっていたら、せっかく見つけた生徒がまた危ない目に会うと思うと、止まっていられなかった。
ベール「プルルート!今助け……」
胸騒ぎを無視して、プルルートを助けようと檻の前に立った瞬間。ベールは悲鳴を上げた。檻の中に全身をXになるように鎖で縛られ、床から天井にまで伸びた槍で貫かれて、無残な姿に変わり果てたプルルートが居た。
ベール「あ……あぁ……」
変わり果てた生徒。さっきまで元気だった生徒が今、目の前で死んでいる。下半身から上半身、頭蓋骨を貫いた槍による即死。見開いた目、光を失ったその瞳を見たベールは自然に涙を流す。1人の犠牲を認識してしまい、絶望に染まった精神で後ろに倒れる。左腕の激痛が走るが、それを気にする気にもなれなかった。しかし、そこで倒れた事をベールはすぐに後悔する物体を見てしまった。
ベール「はぁ……っ」
天井からベールをジーッと見つめる青い幽霊がいた。それ気付いたベールはすぐさま立ち上がり、その場から逃げ出す。
ベール「はぁ!っ……くぅ!」
恐怖と悲しみが頭の中をぐちゃぐちゃなる。今はただ青い幽霊から逃げる。それしか考える事が出来ず、無我夢中に来た道を走り抜く。
ベール「どうして……こんな事に……」
ひたすら走ってきたベールの正面から誰かが走って来た。
ベール「っ!?プルル…あっは!?」
プルルートだった。ベールがプルルートに呼び掛けようとした時、言葉が詰まった。手にはナタを持ったプルルートが飛び掛り、のしかかる。
プルルート?「捕まえた……どう思った?私の亡骸を見て?」
ベール「……く…あなた……誰……」
プルルート?「ククク…私が誰かなんてどうでもいい。ただこの世界に迷い込んだお客さんは、さよならだ!」
彼女はナタをゆっくりと振り上げた。そして……
ベール「っ…!」
ベールの言葉は最後まで言い切ること無く、周りに血が飛び散った。プルルートの姿をした彼女は楽しげに笑いながら生々しい音を何度も何度も鳴らす。血痕で染まったナタを止まる事なく、色んな部位に刺す、引き抜いてはまた刺す。それが長い時間が続いていった。
プルルート?「さあ…次は誰を狩ろうかな…顔を何回も刺したから……次は何にして殺そうか……ククク…アッハハハハハハハハハハ!!!」
ネプテューヌ「…う」
アイエフ「ちょっとネプ子?さっきから吐き気が止まってないけど、大丈夫なの?」
2人は青い怪物から逃れた後、ネプテューヌはさっきから吐き気を連続に起こしていた。ベッドで横にさせ、安静させているところ。ネプテューヌのこの状態は珍しかった。知り合ってから一度も吐き気を見せなかったネプテューヌに一体何があったのか、アイエフはそれを気にする。
アイエフ「こんな時に、コンパが居れば……」
こんな時、病人になった時に一番頼りになるのがコンパの看護技術。かと言って今更ネプギア達に戻りに行ける自信もない。そう思った時。
うわあぁぁぁぁぁ!!
いやあぁぁぁぁぁ!!
アイエフ「今の声は!ピーシェと男性の悲鳴!?」
ネプテューヌ「ピー子!?」
近くから2人の悲鳴が聞こえた。横になっていたネプテューヌはベッドから飛び出し、アイエフと共に悲鳴が聞こえた方に行こうと、廊下に出た。その時。
ピーシェ「あぁ!アイエフとねぷてぬ!」
左の廊下からピーシェと一人の男子が走ってきてるが、その様子は逃げて来てるように見えた。
ガルド「そこの2人!ボーッとせんで逃げるで!」
アイエフ「ちょ、何が…」
状況を掴めていない2人をピーシェはが腕を掴んで無理やりその場から逃げる。
ピーシェ「武器を持った青い幽霊が追いかけて来てるの!」
アイエフ「くっ!止む得ないわね!」
とりあえずピーシェと男子の言う事を聞いて、その場から逃げる。先頭を走る男子の後を追いながら、穴が空いた床に注意を向く。
ネプテューヌ「はぁ!…はぁ!」
ネプテューヌが男子の背後を追う。さっきまで吐き気を起こしていたとは思えないその動きにアイエフは内心で驚く。それから約数十分後、逃げ切る事が出来た。
ガルド「はぁー!お前ら、無事か?」
ピーシェ「大丈夫だよ。でも、流石に疲れたよ〜」
皆が同じように膝に手を置く。息を整えながら現在どこにいるかを確認する。
アイエフ「これはまた、ずいぶん豪華な場所まで逃げて来たわね」
明かりは相変わらず薄暗いが、金持ちが住みそうな館の廊下にみんながいる。そんな場所にいる事を認識した瞬間、ネプテューヌが動揺した。
ネプテューヌ「ちょ、ちょっと待って、どうやってここまで走って来たの?」
ピーシェ「ここがどこなのか、分かるの?ねぷてぬ」
ネプテューヌは口調からして何か知っているように聞こえた。一体何があったのかを聞くと、予想外の言葉をアイエフ達が聞いた。
ネプテューヌ「だってここは、ネプギアと一緒に探索した階層で、私達が初めて迷い込んだとこなんだよ?」
アイエフとピーシェとネプテューヌはとっさにネプギア達がいる部屋へ急ぐ。目の前まで行き、勢いのままドアを開ける。
ネプテューヌ「ネプギア!みんな!」
アイエフ「いない?…!」
ピーシェ「な、何この変な…生臭い」
部屋に入ると、部屋には異常な臭いが漂っていた。みんなの姿が見えず、どこに行ってしまったのか、探しに行こうとした時、男子のガルドが室内を漂う臭いの正体を理解した。
ガルド「おい…この臭い……血の臭いやで…」
3人がガルドの言葉に反応する。嫌な予感がした。まさかと思いながら、血の臭いが誰の物かを探すと、それを最初に発見したのは。
ピーシェ「い……いやあぁぁぁ!」
ピーシェが突然悲鳴を上げた。そこに他の3人が駆けつけると、ピーシェに続きみんながこれまでに無いほどの動揺を顕にした。
アイエフ「……くっ……」
ネプテューヌ「そんな……なんで!なんでえぇ!?」
皆が見たのは、部屋の隅に血の水溜りが広がっており、顔の外形がまるで分からない程にぐちゃぐちゃにされた人。
ネプテューヌ達にとってかけがえのない存在であるベール先生が壁に背中を預けて殺されていた。