油断したら艦娘に拉致されました   作:断空我

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LS-04 小さな異変

 

「随分と懐かしい所へ来たものだ」

 

幻想的な深い森の中。

 

そこに俺はいた。

 

俺の格好はユグドラシルの時に纏っていたスーツ。

 

体も当時に戻っている。

 

「よう、久しぶりだなぁ」

 

「俺をここに呼んだのは貴様か?相良」

 

民族衣装をまとった男。

 

その男を俺は知っていた。

 

沢芽市のネットでビートライダーズを解説していた男、DJ相良。

 

その正体はユグドラシルの情報操作を担当していた。しかし、それすら偽りでこいつの正体は蛇といわれる存在、一説ではユグドラシルそのものだといわれている。

 

「お前は知っているのか?俺の今の状態を」

 

「本当ならお前はあの日の戦いで消滅するはずだった……人間として生きようとするあまりヘルヘイムの力に体が耐えきれず消滅、だったんだが“始まりの男”がなんとかしようと心が死んでいた異世界の黒崎廉太郎の体へ意識を転移させた」

 

「始まりの男……アイツが?」

 

 最後まで、人として生きる。

 

 はじまりの男へ俺はそう宣言した。

 

 彼がなんとかしたことは別として気になることがあった。

 

「別世界の俺は心が死んでいたとあるが、どういうことだ?」

 

「あの世界はお前が生きてきた世界と同じであり異なる道を進んでいる。お前も知っていると思うがあの契約の事実を知るのはお前が艦娘とやらに襲われた時だ。だが、あの世界のお前は早い段階で知ってしまったのさ。お前のおやじと誰かが話をしている会話を聞いて」

 

「……成程、だいたいわかった」

 

「本来ならお前は普通の人間として生きていくのだが、ここで問題が発生した。始まりの男が予期せぬ事態だ」

 

「戦極ドライバーとロックシード、俺の体が成長したことだな?」

 

 そうだ、と相良は頷く。

 

「始まりの男はお前の意識を異世界へ飛ばすのみにとどめていた。残った体は崩壊を始めていたからな、しかし、お前の成長していたオーバーロードの力は消滅することを抗い、反抗の証としてロックシードを残す。復活の方法はお前がアーマードライダーに変身すること……完全な力は変身しない限り戻ることはなかった。だが、予想外にお前のオーバーロードの力が強かった。持っているだけで肉体に影響を与えたのさ」

 

「……俺は、人間じゃないのか?」

 

「安心しろ、まだ人間だ。力を抑制する形で俺がドライバーをプレゼントした。あれは森の力を扱うために作られているからな」

 

「なぜ?」

 

 相良の言葉に俺は続きを促す。

 

「プレゼントであり、これから活動するプレイヤーは全員フェアでないといけない。お前だけデメリットを抱えたままじゃ、意味がないからな」

 

「プレイヤー?」

 

「黄金の果実をめぐる争奪戦だ」

 

「なんだと?」

 

「お前のいる世界はヘルヘイムの浸食を受ける。その際に黄金の果実を見つけろ、それならば」

 

――オーバーロードの力の暴走を阻止できるだろう。

 

「ヘルヘイムの浸食……また、あれが」

 

「俺は見守る者だ。お前がどういう選択をするのかみさせてもらう」

 

 相良の言葉と共に意識が落ちていく。

 

 どうやら現実へ戻るようだ。

 

「あぁ、気を付けておけよ?悪意はお前の身近にある。油断はしないほうがいい。油断したら」

 

 

 最後に相良がなんかいっていたがそれを理解する暇もなく、俺の意識は闇の中へ消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を覚ますと心配そうにこちらをのぞき込んでいる不知火の顔があった。

 

「……ぬいぬい?」

 

「不知火です」

 

「呼び名だ」

 

「嬉しいです。ですが、不知火です。廉太郎……自分の事がわかりますか?」

 

「問題ねぇよ。それより、俺はどのくらい意識を」

 

「ほんの一日です。もう少し安静に」

 

「しっかり寝たから大丈夫」

 

 体を起こす。

 

 どうやら年齢は元に戻っているようだ。

 

 心配そうに不知火はこちらをみている。

 

「あれからどうなった?状況を教えてくれ」

 

「……屋敷の正面は大破状態。家具妖精達が修理してくれています。襲撃者達は確保して憲兵へ差し出しています」

 

「憲兵から連絡は?」

 

「ありません」

 

「……ないだと?」

 

「はい」

 

「そうか」

 

 どうやら今回の騒動、犯人は大本営側にいるようだ。

 

 犯人の情報、しいて言えば艦娘とゆかりのある黒崎家が襲われた。どうして狙われたのか最低限の情報くらいはすぐに開示する。それがないということは。

 

――海軍、しいては大本営辺りが絡んでいるという事だろう。

 

 マズイ情報を狙われた相手に伝えることはしない、加えて俺には艦娘という強力なコマがある。彼女達が本気を出したら大本営や国など関係ない。

 

 圧倒的な武力で支配する事すら可能。

 

 牽制かはたまた別の目的か。

 

「それよりも、あの道具だな」

 

 ロックシードとは別系統の力。

 

 ロックシードはインベスを呼び込むため、戦極ドライバーを用いることでアーマードライダーとさせる。戦極ドライバーはヘルヘイムの森の誘惑、果実をロックシードへ精製させる。だが、あの道具は違う。

 

 ドライバーを用いず、人を異形の姿へ変えてしまう。

 

 だが、あの力はどこか危険なものだと思った。

 

 何がと言われるとはっきりしないが、長年の経験で片づけることしかできない。

 

 

「(外で何か起こっているのかもな)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一日安静にしてほしいという言葉で俺はベッドで休んでいる。

 

 休んでいる俺の所に次々と艦娘がやってくる。

 

「廉太郎さん、大丈夫ですか?」

 

「あぁ、問題ない。扶桑、その手にあるものは?」

 

「おかゆです、その御口に合うかわかりませんが」

 

「扶桑姉さまが作ったのよ。食べないなんていわないわよね」

 

「山城、失礼なことを言ってはいけません」

 

 扶桑と山城がおかゆをもってはせ参じたり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご主人様、お休みという事ですが!漣と遊びましょう!」

 

「ゲームだよな?変な遊びだったら容赦しないぞ」

 

「おや、ナニするわけじゃありませんから!」

 

「仕方ない、今は信じといてやろう」

 

「ツンデレですねぇ」

 

 漣と遊びに興じたり。

 

「あぁ、そうだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「赤城」

 

「なんでしょう」

 

「どうして、俺の傍にいるんだ?」

 

「廉太郎が勝手に抜け出さない、誰かに連れていかれないように防止しているんです」

 

「防止って、拉致するわけじゃないだろ」

 

「暗殺が行われたばかりです。警戒は必要でしょう?」

 

「味方うちで疑うとかは反対だね」

 

「……そうですね、でも、油断はできないんです。限られた者で貴方を守るべきかと」

 

「なぁ、赤城」

 

「はい?」

 

「いや、何でもない」

 

 続けて訊ねようとした言葉を飲み込む。

 

 もし、俺がお前達を置いて姿を消したらどうする?

 

 そう問いかけることに恐怖を覚えた。

 

 あの日を繰り返すことになるかもしれないと俺は考えてしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後、俺の部屋に漣がやってくる。

 

「ご主人様~」

 

「すまないな」

 

「いえいえいえ!ご主人様のためなら火だって水の中だって、ご主人様のズボンの中にも入ってみせます!」

 

「入らなくていい」

 

 部屋へやってきた漣は周りを調べてからひそひそと話し始める。

 

「明日、この屋敷の近くに風都呼び寄せた探偵さんがきます。何でも怪しい事件専門らしいので、この破片についても何かわかるかもしれません」

 

「悪いな」

 

「いえいえ!漣は何でもやりますよ!ご主人様のためですから!」

 

 献身的な漣の言葉に俺は苦笑しかけた。

 

 普段はふざけた物言いが多い艦娘なのだが、ここぞという時は色々と役に立つ。あまり頼りすぎることも問題だが。

 

「悪いな、屋敷へ招くと危険が起こる可能性があったからな、明日は少し外出する。後は任せるぞ」

 

「はーい、あれ、そういえば、武蔵さんは?」

 

「……最近、様子がおかしい」

 

「おかしい?」

 

 漣へ俺は静かに話す。

 

 武蔵はあの事件から俺と会おうとしない。

 

 それどころか部屋に閉じこもって出てこないのだ。

 

 心配した赤城が様子を見に行っても反応しなかったという。

 

 何もなければいいのだが。

 

 俺の中で嫌な予感という感情が膨れていく。

 

 その予感が的中していたことに俺は明日になって気づくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、漣に後を任せて俺は屋敷を抜け出す。

 

 提督のための勉強を放り出していることから見つかったら叱られるだろう。しかし、漣が時間を調整してくれたおかげでばれる心配はない。

 

 私服を着て外に出る。

 

 周囲を警戒してから約束した喫茶店に入った。

 

 目的の人物はすぐに見つかる。

 

 白いスーツとソフト帽をかぶった男。

 

 漣から特徴を聴いていたがまさか本当にその恰好をしていたことは驚く。

 

「失礼」

 

「アンタが黒崎廉太郎か?電話で聴いていた通り子供だな」

 

「金はある。心配しなくていい」

 

「そんなことじゃない。俺が言いたいのは別の事だ」

 

「鳴海壮吉、アンタに依頼したいことがある」

 

「率直だな」

 

「時間が惜しくて……親に雁字搦めにされていて、こうして抜け出すことも一苦労だ」

 

 懐から袋を取り出す。

 

「コイツは……ガイアメモリ」

 

「ガイアメモリ?」

 

「人を超人に変える禁断のアイテムだ。コネクタと呼ばれる接続先を作り、そこにメモリを差し込むことで人外へ変える。尤も超人的な力を与える代わりに精神に異常を生み出す力だ」

 

「……そんなものが」

 

「この残骸をどこで?」

 

「少し前に屋敷を襲撃した奴らが使った。只の雇われ者だった」

 

「雇われた暗殺者がガイアメモリを使ったというわけか」

 

「そうだ」

 

「それで、坊主、お前が俺に依頼したいこととは何だ?」

 

「…………暗殺者を雇った人物が知りたい」

 

「わかった」

 

「何も言わないんだな」

 

「目を見ればわかる。お前がどれほどの覚悟を持っているか……視たことろ十代の子供にしては男の目をしている」

 

 鳴海壮吉から目をそらす。

 

 中身を探られることに恐怖したのだ。

 

「誰かわかったらここに連絡してほしい……それでは」

 

 席から立ち上がる。

 

 一度も振り返らずに喫茶店を後にした。

 

 

 

 

 

 

 後は屋敷に戻るだけだった。

 

 それだけだったはずなのだ。

 

「ガッ!?」

 

 屋敷の塀が見えてきたところで背後から何かに襲われる。

 

 相手は一撃で意識を刈り取ろうとしたのだろう。

 

 しかし、打ち所が悪く、意識が残る。

 

 倒れそうになりながら俺は相手の顔を見た。

 

 そして、言葉を失う。

 

「お前は……は」

 

「気絶できなかったか、本当は一撃で沈めるつもりだったのだが、まぁいい。動けないようだしこのまま連れて行こう」

 

「……お前」

 

 やってきた女性に抵抗することもできず、拉致される。

 

 相手は――。

 

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