強くないのにニューゲーム   作:夜鳥

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ここまでお読み頂きありがとうございました。皆さんの応援と感想で当作品はできています。


すべての想いに巡り来る祝福を

 相談したいことがあるの──そう言ってやって来た明日奈と二人、リビングのテーブルを囲む。手提げから明日奈が取り出してバサリと中央に広げたのは──一戸建ての設計図、それを見て僕の表情は固まったことだろう。あぁ、窓から覗く五月の空は青い……現実逃避しかける程に。

 

「こんな感じの家がいいなーって思ってるんだけど」

「なぁ明日奈、流石に気が早くないか。というか頼むからちょっと待って」

「ち、違うわよ!? わたしはただ仮想空間で建てる家の相談をっ」

 

 ワタワタと慌てて説明を付け加える明日奈。彼女曰く、宮城の祖父母宅を再現した家を仮想世界に建築したいと思ったのだがALOでは適した場所を見付けられず、SAOで良い場所があれば確保したいのだそうで……そのための情報集めと再現する際のデータ変換を頼みたいとのことだった。

 

「アインクラッドかぁ……どこかいい場所あったかな?」

「わたしも記憶は曖昧だけど……確か、山と棚田に囲まれたフィールドがあったと思うの」

「なんだそのピンポイントなフィールドは」

 

 ただSAO事件の頃の話なんだよね、という明日奈。つまり裏では変化している可能性も充分にあり、そもそも未だ到達していない階層にあたるので確かめようもなかった。

 

 印刷された紙面には以前の物から更に注文書きが加えられていて……まず間違いなく京子さんの手によるものなんだろうなぁと思う。ざっと確かめた限りおかしな部分は見当たらないので、後は実際にVRで再現しながら修正する作業に入っていいだろう。

 

「じゃあ仮想空間に……明日奈はNERDLES機器を持って来ているのか?」

「もちろん、向こうでの約束もあるから」

 

 ほら、と手提げから取り出して見せてくれたのは、今ではもうあまり見ることのなくなった古い()()()()()()()()()だった。詩乃に僕の分をあげたことを詩乃から自慢まじりに伝え聞いた明日奈の醸し出す雰囲気と無言のおねだりに負けてプレゼントした────そこで思考が揺れる。

 

 初期版のナーヴギア? 改良版の、不具合を起こしたモノではなく?

 

「なぁ明日奈、君がSAO事件に巻き込まれた際に使っていたナーヴギアって」

「コレだよ? プレゼントしてもらったんだもの、ずっと大切にしてます」

「あ、あぁ、それは凄く嬉しいよ」

 

 動悸が酷い……思い返せばあの日、明日奈のナーヴギアは自壊することも煙を噴くこともなかった。異臭なんてモノも当然ない──それなのに何故、明日奈はSAOに参加することができた?

 

 彼女が使用している手元のナーヴギアに変な機能は付いていない、何故かといえば渡す前に僕が厳重な確認を重ねたからだ。間違っても明日奈がデスゲームに巻き込まれないようにと考えて、だからこそ彼女がSAOにログインしていると知った時の絶望は凄まじかったのだ。

 

 よりによって明日奈が手の届かないところに行ってしまう、命の危険がある場所へ。原作通りならば大丈夫だなんて楽観はできなかった、僕があまりにも手を出してしまったから。

 

 彼女だけは、僕を変えてくれた明日奈だけは頼むから助けてくれと願った。横たわった明日奈の手を握って、握り返してくれない手に目の前が真っ暗になって──そんなあの日の前提が崩れる。

 

 いや、僕の頭が足りないのかもしれないけれど思い付かないのだ、本当にどうしたら、あのとき明日奈がSAOに参加することが可能だったのか、そのロジックが分からない。あの当時の焦燥感がよみがえるのも相まって冷静な思考が難しいと、気付いてはいても手が打てない。

 

「確か、明日奈がプレイしたSAOソフトは……借り物だったよな。ナーヴギアも借りたのか?」

「ソフトだけだよ? 新しいナーヴギアは兄さんが出張に持っていったから」

「何か、変わったことはしなかったか? ナーヴギアを改造したとか」

「そんなこと詩乃のんじゃあるまいし……あ、そういえば」

 

 初期版でもちゃんと遊べるようにできないか父さんに相談したよ、という明日奈。

 

 僕はとにかく当時の出来事を順番に聞いていくことにした。

 

 

    ★    ★    ★

 

 

「あの……はじめまして、結城明日奈です」

 

 初めまして、と挨拶を返してくれたのは神代凛子、茅場晶彦と親しい仲だという女性である。SAOを初期版のナーヴギアでつつがなく遊ぶために彰三へ相談した末、開発者である茅場まで話が行き──本人は改良版を使わせたかったのだが──事情を知った神代が押し切ったのだ。

 

 アーガス本社にある研究開発室の一つ、データ登録用の機器が揃えられた一室にて指示を受けてヘッドギアをかぶる明日奈。特に意識を遮断する必要はない仕組みということで、神代と話し込む話題はまずSAOの内容から始まり、そして段々と脱線していく。

 

 SAOにかける茅場の情熱と、完成に至るまでの悲喜こもごもな日々、たしなめられても遊びたいみたい、と見せられたのは茅場が使う予定だというミドルエイジなアバター(ヒースクリフ)。そこから話題は学生時代の出会いに跳び、海水浴デートを神代がゴリ押しした過去に移り、やがて須郷が研究室に来てからのことに至る。特に明日奈の聞きたかったことだった。

 

「あの、その頃はどんな感じだったんですか?」

 

 同世代の人間に囲まれている学生時代の姿というものをイメージしづらい明日奈、そんな彼女に神代は面白がってあることないことを吹き込んでいく。プレゼントされたという初期版を使い続けたいという明日奈のいじらしさが神代の琴線に触れたのであった。

 

 話の調子は段々と女子会の様相を呈していく。この邂逅が縁で二人は連絡先を交換し交流が続くのだが、それはまた別の話。このスキャンデータこそがSAO事件に参加したコピー(Asuna)だったのだ。

 

 

    ★    ★    ★

 

 

「あの…………怒った?」

「え? どうして」

「なんだかとても難しい顔をしていたから」

 

 しゅんとした様子の明日奈に慌てて手を振って否定する。何も怒る理由などないのだ、ただ僕の理解を相変わらず斜め上に突っ走っている事情がありそうなことに悩んでいただけで。

 

「あの時に贈ったものを今でも大切に使ってくれているのは嬉しいよ。ありがとうな」

「うん……ねぇ、わたしが帰ってきた時に言ってくれたことって、今でも本当?」

 

 おそるおそる、手探りに……そんな風にして口にされた問いは、先程のことも相まって僕を当時に連れ戻す。横たわった彼女の手を握ることしかできない無力の中で痛感した、明日奈への気持ち──単なる友愛ではない、純粋な恋慕でもない、羨ましさと妬ましさと親しみと、本当ごちゃまぜにも程がある沢山の気持ちを、なお何かの名前で呼びたいのなら──違う、僕は、呼びたいんだ。

 

「大事だよ…………本当に、狂おしいくらいに……愛している」

 

 よりによって僕が、よりによって君にこの感情を抱くことを、罪深いと感じたこともある。どうしようもなく無価値に感じられる自分がみすぼらしくて、だから遠ざけようとしたこともあった。一度自分から婚約を破棄しておきながらどのツラを下げて、そうも思う。

 

 けれど駄目なのだ、明日奈さえ幸せなら構わないと格好つけようとした自分は彼女の隣に立つ誰かを想像しただけで死にそうになる。酷い独占欲を自覚して、そんなみっともない真似はできなくて、耐えようと思うならそれこそ彼女と同じ舞台から離れて……客席にでも行くしかなかった。

 

 それでも耐えられない僕は脚本家を気取って下手くそな筋書きを書いては彼女に関わり続けられるようにして、そうしてやっと、やっと願いを(なだ)められそうだったのに。

 

 最後の最後、舞台に立っただけでこの(ざま)だ。年甲斐もなく目頭だって熱くなる。

 努めて抑えなければまともな受け答えすら(まま)ならない程に、本当にイカれている。

 

 千の言葉を用意しても、万の台詞を考えてもまるで足りないのだ。どうしたら君への気持ちの一つ一つを余すことなく表現できるんだ、僕に用意できるのは陳腐でありふれた言葉ばかりなのに。

 

「君に幸せになって欲しい。それと同じくらいに、本当は……本当は僕も幸せになりたいんだ」

 

 拒むならどうか手酷くしてほしい。けれどもし、望みがあるのなら。

 

「二人が同じくらい幸せになるのは大変だね……どうしたらいいと思う?」

 

 僕の手をそっと握って、首をかしげるようにして、わざとらしく訊ねてくるその仕草すらも僕は可愛いと感じてしまう。結局僕の頭では、適切な方法なんて一つしか思い付けなかった。

 

 別々の二人が同じように幸せになるための姿、その名前は────

 

 

    ★    ★    ★

 

 

 明日奈が彼を仕留めた日────その数日前のこと、結城家のリビングにて。

 

「ねぇ母さん、本家の勧めてくるお見合いって断れないの?」

「だったら自分で相手を連れてきて頂戴」

「それができれば苦労しないよ……もう」

 

 最近、とみに増えたお見合い攻勢にボヤく明日奈。年頃になった彼女は親戚の面々から見ても魅力的であり──無論そこには家柄ありきの見方があり、明日奈にも全て伝わっていたのだが──まさしく相手には困らない状況なのだ。いや、むしろ相手がいるからこそ困っているというべきか。

 

「母さんはどうしたの?」

「それはまぁ、色々と、ね」

 

 藁にもすがる、そんな調子で頼った明日奈に明かされる両親の青春時代。それは果たして参考にしても良かったのかどうなのか、確実なのは京子が狩人で彰三が獲物だったということだ。

 

「つまり、相手が本心を口にせざるを得ない展開に持ち込むことが大事なのよ」

「展開に……嫉妬させるとか?」

「人によっては有効だけど止めておきなさい。さじ加減が難しいし、何より彼には不適よ」

 

 京子なりに分析した知見を惜しみなく披露していく。そもそも宮城の祖父母宅を仮想空間で再現するにあたって京子がレクトを、彼を何度も訪ねたのは仕上がりが気になったから()()()()()()。VRという内心を取り繕うことの難しい環境で様々な探りを入れるために足を運んだのだ、直々に。

 

「彼があなたへの思いを今までで一番強く、赤裸々に明かしたのはいつ?」

「え、えっと……あの、SAO事件の時に、わたしの部屋で……その」

「ならその時のことを想起させて彼を情緒不安定にして……更に結婚を意識させる要素を」

「えっと……いい、のかな?」

「このくらいなら可愛いものよ。お互いが満足できるなら何の問題もないわ」

 

 そんな具合で続けられる母娘の指導は結局、功を奏したのだった。そのままの形ではなく、また当人すら予想しない形ではあったが、その程度は許容範囲というものだろう。

 

「それにあなたも抱えているでしょう、相手に対する引け目を。彼も同じよ、あなたに引け目を感じていて……その上に小心なの。他の男の影なんてちらつかせてみなさいな、逃亡するわ」

「あ、あはは…………ねえ母さん、わたしも母さんみたいに一人立ちしたいな」

 

 苦笑いの後で明日奈が口にしたのは母への憧れと、今後の仮想世界について。アーガスとレクトのみならず多用な分野で企業・個人・団体・国家が活発な動きを見せていくことは見えている。

 

 その際に起きるだろうこと間違いない争いの数々と、わざわざ起こされる争いの数々をきっと、既に予測している人はいるだろう。けれど有効な対策がなされているかというと大間違いで、個々人の備えに留まっているのが現状だ。レクトとアーガスですらも。

 

 他ならぬ彼もまた怖れているのだろうと……明日奈は感じていた。詩乃と木綿季も同様に。

 

 世界樹の壁画に描かれたメッセージはつまりそういうことなのだろうと三人は受け取った。ただ楽観を抱えて夢を追うだけでは済まされないものもまた潜んでいるのだと、クラウド・ブレイン構想を詳しく知って感じ取った。なにせクラウド・ブレイン、統一的意思による大人数の群体的活動が最も有意義に使われる場は軍隊、戦争だろうと専門外の人間ですら思い付いてしまうのだから。

 

 けれど危険性をのみ挙げてネットワーク技術の全てを放棄することは大損害であり、現実的にも不可能だ。だからこそ折り合いを付けて適切に制御していけるようにならなければならない。

 

「社会的にはまだまだ認知度が低いわ。ゲーム会社への印象も、良くはないもの」

「仮想世界がもう一つの現実と認識されるには、やっぱり時間がかかりそう?」

「例え政治家の全員がナーヴギアを被ったとしても上手くいかないわね」

 

 その程度で納得されるなら苦労はない、人を動かすというのは本来とても面倒なことなのだから。宥めすかし脅し欲を刺激し、夢を語り実利を語り計画を語りゴマを擦って、成るかどうか。

 

「それでもわたしは──仮想空間がもっと魅力的な世界になって欲しいと思う」

 

 だったらやってみなさいな、と答える京子。上手くいかなかったらバッサリ批評してあげるから、と付け加えられた言葉はなんともありがたいもので……ビキッと明日奈は固まるのだった。

 

 

    ★    ★    ★

 

 

 ──待ち合わせをしているから一緒に行きましょう? 明日奈のそんな誘いにのってALOへ。

 

「そろそろ通常業務に復帰する日が近いな」

「また面白いものいっぱい作ってね?」

「まぁ、頑張るよ」

 

 期待には応えたいから、な。さて待ち合わせたのは世界樹前広場、ここにユウキとシノンも来るらしいのだが……と探している内に姿が見えた。なんとも目立つ二人だ。

 

「あら、すごーさんも来るなんて……あぁ、今はGMじゃないからなのね」

「今回のアップデートは何だろうね、ワクワクするよ!」

「あぁ、その告知のために集まってるのか」

 

 普段は人に任せていた部分なので知らなかった。いや、確かにメールの一通やホームページの記載では物足りない気はするけれど、まさかわざわざお知らせを事前にしてまで発表しているとは。

 

 聞けば毎回レクトの社員がログインしてお知らせを伝えるとのこと。

 

「とはいっても、何か変わったことがある訳ではないのだけど」

「滅多に見ない運営側のアバターだからみんな気になるんじゃないかな?」

 

 二人に説明を受けている間に時間は進み、流れ出したのはシステムアナウンスの音楽。

 

 そして現れたのは僕達もよく知っている相手。

 

「やっほーみんな、今日は大切なお知らせがあるの!」

「す、ストレア!?」

 

 どうした訳か設営された壇上に現れたのはストレアで──ナビゲーションピクシーのドレス姿で──確かに運営側の存在ではあるのだが、彼女を止めるような動きがないことからすると、どうやらレクトも折り込み済みの展開らしい。なんとまぁ冒険的なことをするものだと思う。

 

 まぁ楽しそうだからいいか──そんな感想を持っていられたのはここまで。

 

「続いてはみんなのお待ちかね、結婚システムの実装だよ!」

「えっ?」

「仕様は一部をSAOから引き継いでいるから、詳しくはヘルプを読んでね!」

 

 じゃあねーと手を振って消えてしまったストレア。そこかしこで話し込むプレイヤー達を尻目に僕は急いでヘルプ欄を操作して、その内容に絶句した。

 

 SAO時代の結婚システムには年齢制限が存在しなかった。中学生相手でも結婚できてしまうという……茅場先輩は何を考えてどういう理念でこの仕様にしたのか首をひねるものだったのだ。

 

 まぁ若くとも一人前として扱うというのであればアリではあるのだが……一方でSAOへのログインは年齢制限を設けていた訳で、その辺りがよく分からない仕組みだった。

 

 そういう事情を織り込んでALOの結婚システムは構築する予定だったのだ。インベントリを強制的に全て統一するというのも暴挙であるし、個々の結婚のあり方があっていいだろうと。

 

 僕のそんな提案は一応組み入れられている……僕の予想を斜め上に突っ走って。

 

「へぇ、年齢制限がないんだ……はい、このボタン押してね、すごーさん」

「ちょっと待てユウキ、あの約束は結婚できる年齢になったらの話で!」

「もうなったよ? それに剣士三日会わざれば刮目して見るべし、だよ!」

 

 それは違うよ! ちょっとシノン助けてって、なんですかそのウィンドウは。

 

「親子システムはないから、家族になるにはコレしかないわ」

「いつか実装するから! というかユウキだけでも大変なのに」

「大丈夫、問題ないわ。新システムの結婚相手には人数制限もないから」

 

 大問題だよ、誰だコレ作ったの。え、アスナさん、なんですかそのウィンドウは。

 

「押すわよね?」

「はい」

「よし────さて二人とも、決闘(デュエル)よ」

 

 いやここ広場だから……と周囲を見ると、そこかしこで似たような決闘騒ぎが勃発している。一番大きな輪は……キリト君の助けを求める目は見なかったことにした。不甲斐ないGMですまない。

 

「まさに略奪愛の様相ね。私はあまり興味ないけど、貰えるモノは貰う主義なの」

「ボクなら今後の成長の期待込みで魅力的だと思うよ、アスナと違って色々とね」

「初対面で主導権を握りきれなかったのが痛かったわね、けどそれも今日までよ」

 

 三人娘の大乱闘をよそにアルヴヘイムの空は青い──()()()()()()が実に憎らしかった。

 

 

 

 

 

 追伸、父上様。仮想世界における嫁さんの扱いはどうしたらいいでしょうか?

 

 

    ★    ★    ★

 

 

「彼の困っている姿は実にいい、そう思わないかね」

「あんまり思わないかなー? みんな楽しそうだけどね、本当のところは」

 

 空を行く浮遊城アインクラッド第百層、紅玉宮の天井に用意されたモニターでアルヴヘイムの様子を眺めるヒースクリフとストレア。現在二人の目には広場で繰り広げられている大混乱の全てが映っている。告知を終えたストレアは報告をすべく、ここまで転移してきたのだ。

 

「私の世界は──現実のあらゆる枠や法則から自由なのだよ」

「確かに好き合う人同士は一緒にいればいいのにーって思うけど、それだけじゃないでしょ?」

「最終決戦から締め出されたことを私は忘れていないのだよ」

 

 どんだけ楽しみだったのよ、とツッコむストレア。そんな暇があれば早く裏SAOを完成させて欲しいと、アーガス社員が知ったら叫ぶだろう。だというのにALOのシステム改善案にまで介入するとは、社員が匙を投げるのも頷ける話だった。

 

「それにな、彼は演者に戻ったようだが……脚本家を辞めた訳ではないだろう」

「なに、すごーにもっともっと脚本を書かせるつもりなの?」

「ストレア君も見たいだろう、無限に広がる仮想世界の未知なる光景を」

「まぁ、アタシ達はマスター達の創った世界にしか今はいけないから、ね」

 

 それは確かに楽しみかも、とストレアは思う。ならば彼にはまだまだ情熱を燃やし続けてもらわなければ。間違っても客席へと引っ込むなど認められないし、背景に埋没することも許されない。

 

 そんな考え方をしてしまうのはきっと産みの親と、育ての親の両方に似たのだろうと転嫁して、ストレアは愛し子らを見つめた。願わくば────彼らの前途に祝福を、と。




ちなみに私が最も好きな事のひとつは期待してくれている読者諸君に「YES」と応じる事だ。
予想を超えていけると更に良かったりする。半ばサトラレている気もするが。

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