そこのたなのリンゴとってリンゴ   作:鳧三

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ヨロイさんとミスミさんは乗せられそうな2人組だと思ってたらこんなことに


そうだ、鬼ごっこしよう

「ミーースミーーー」

「何だよチビ」

「……ヨーローーイーー!!」

「落ち着けチビ」

 

「うなあああああ!!!少しは儂に対する対応を改められんのか小童どもがあああ!!」

 

キーッ!と今にもヒスり出しそうな勢いで地団駄を踏んでいる枝付きは今日も元気そうである。

もうすぐ始まる中忍試験に潜入するカブトと共に、標的を探ってくる役目を大蛇丸から賜った剣ミスミと赤胴ヨロイ。

 

「もしそうだとしてもチビなのに変わりはないだろ」

「年食ってるのなんて口調だけだし」

 

こうやって枝付きが話しかけるたびにチビだチビだと言ってきては枝付きがそれに憤慨するのが彼らのコミュニケーションと化していた。

 

「お主らなんてカブトより実力無いじゃろこのへっぽこ先輩!!」

「何だとこのガキ!!」

「あいつは特別大蛇丸様に気に入られてるだけで俺のほうが上だ!!!」

 

今にも取っ組み合いでも始まりそうな雰囲気だ。

ミスミはもう苦無まで取り出している始末で、構えをとるヨロイとミスミを歯軋りしながらジトっと睨みつける枝付きの足は、ダンダンダンダンと地面を勢いよく打ち鳴らしている。

 

「というかお前も新入りでガキのくせにナチュラルに溶け込みやがって!!!」

「……それは、儂のこみゅにけーしょん能力だかの高さを評価してることになるのう?」

 

地団駄から一変、カカ、と腕を組んで笑う枝付きを見た二人のこめかみに青筋が浮かぶ。

言葉にするなら「こいつ絶対締める」だろう。

そこに追い討ちをかけるが如く、ふんすと鼻を鳴らすと清々しいくらいのゲス顔を二人に向けて言葉を放つ。

 

「しかもこんなガキに一々反応してしまうお主らもお主らじゃの」

「「この……っ!!」」

 

外見9歳の子どもにあるまじきゲス顔は他人の神経を逆なでするには十分だったようで。

ブチリ、と二人の脳内で何かが切れた音がした。

般若の如く歪められた二人の表情に「きゃー」とわざとらしく悲鳴……もはや歓声のような叫びを上げた枝付きは、ぶんぶんと楽しそうに袖を振って「じゃあの、じゃあの」と言葉を投げかける。

 

「鬼ごっこしよう鬼ごっこ!」

「儂がこれから一時間お主らに捕まらなかったら儂の勝ち!捕まったらお主らの好きにしていいぞ!」

 

煮るなり焼くなりの、と外見に見合わないニヤリとした笑いを浮かべた枝付きに二人は一瞬ぽかんとしたものの顔を見合わせて不敵な笑みを浮かべる。彼女の遊びに付き合わされていることにも気付かずに。

 

「……上等じゃねえかチビ」

「後で泣いてちびっても知らねえぞ」

 

その言葉にぱあっと表情を輝かせた枝付きといえば、まるで日曜日に親とキャッチボールでもする約束をしてもらった子どものような輝きぶりで。

コホンと咳払いを一つ

 

「ではでは、今から一時間……」

 

せーの、と一息

 

「始め!!」

 

 

■+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+■

 

 

赤胴ヨロイは合図と共に少女の姿を見失った。

それを脳が疑問に思う前に、頭に軽く来た重み。上から自分を地面に押し込んでくるような重み。

 

「おっそいのう全く」

 

そして頭上から笑い声。

それと共に頭の重みがふっと消えた。

 

「んなっ……!いつの間に!」

 

ヨロイは自分が振り向いた先に、こちらを見据えてプークスクスと笑っている枝付きに刮目する。

ミスミに至っては、先程枝付きが立っていた先とヨロイを交互に見つめて唖然としていた。

そしてヨロイは、たった今自分の頭を枝付きに跳び箱のようにされたことを今しがた理解したのだった。

 

どういうことだ。大蛇丸様によれば、こいつはチャクラを練ることが出来ないというのに、瞬身の術のように目の前から消えて、見事な身のこなしで俺たちを越えていった。

確かにチャクラを感じることは無かった……しかし、常人の動きでは不可能な速度だろうアレ

 

混乱する頭を叩き起こしたのは、枝付きの「あと59分じゃよー」という声で。

 

「ほらほら、早くせんと儂の勝ちじゃぞ?」

「ああクソっ!!待てコラアア!!!」

 

横でハッと我に返ったミスミも怒声を上げて枝付きに飛びかかって行こうとする。

ミスミの軟の改造であれば、いくら先にいようと届くはずだ。

その間少しでも油断を見せたら、俺があいつのチャクラを根こそぎ……

 

「って速っ!?」

 

どこかの看板よろしく両手を万歳させたまま突っ走っていく小さな影は、瞬きをした一瞬でいつの間にか更に小さくなっていた。

飛びかかって行ったミスミの攻撃すら届かず、ミスミがどうすんだよこれ!!と叫んでいる。

しかしこちらには決定的なハンデがある。

 

「地の利はこっちにあるんだ!!どこかに追い詰めてしまえばこっちのもんだろ!!」

「そうか、あいつはこのアジトの全貌を知らないだろうしな!!」

「先輩の怖さってやつを身に染みさせないとなァ!?」

 

 

30分後。

 

 

「くそっ……行き止まりか……っ!」

「とうとう追い詰めたぜ……残念だったなあ?」

「大人しく痛い目に逢って貰うから覚悟しろよガキ」

 

じりじりと近づく俺たちから逃れるように、後ろへと追い詰められる枝付きの姿。

先ほどまでの余裕は何処へやら、その表情はすっかり怯えきっていて、見ていて加虐心が湧いてくる。

さしずめ蛇に睨まれた蛙ってところか。

後ろの壁と背中を合わせた枝付きはビクリと肩を揺らして俺たちを見上げた。

手を伸ばせばもう首に手が届く距離まで近づいた。

 

さあそのまま一飲みに……と手を伸ばしたその時

 

「人間は優位に立ったとき、一番の油断をする」

 

目の前の少女の口元がニイッと弧を描く。

と同時にまた姿が消えた。

 

「また後ろか!!!」

 

これ以上逃がしてたまるか、そう焦りを感じて身体を旋回した先。

 

「「いな……い゛っ!?」」

 

膝から身体が崩れる。

というよりも膝がガクリと力を失った。

何が起こったのかわからないまま体勢を立て直そうとするが、一度力の抜けた膝から崩れ落ちた身体に思考が混乱する。

 

「お主ら……こうもうまく膝カックンを入れさせてくれるとは……」

 

消えたと思っていた本人の声が何故か後頭部から耳に入ってくる。

ギギギ、と軋むように首を回すと、枝付きが

呆れ半分、愉快さ半分といった様子で「壁に背をつけたまま」立っていた。

お前今、移動した筈じゃ……

 

「下にしゃがんで視界から消えたのをお主らが勘違いしたんじゃぞ?そこにガラ空きの膝裏があってのう、つい?」

 

しゃがんだだけ?

俺たちはそれだけのことに易々と引っかかったのか?

えっ?

てへへと照れくさそうに「つい」と口にしている目の前の外見9歳児に自分が情けなくなってきた。

 

 

「というわけで、あと20分、まだまだいくぞー!」

 

俺たちが呆然としている目の前で、そんな楽しそうな声が聞こえた後、声の主の姿がまた消えた。

音もなく気配もなく消えた。

まるでそこに存在していなかったかのように。

 

もう、やだあの子

打ちひしがれそうになりながら、俺たちは無言で立ち上がって走り出したのだった。

 

 

20分後。

 

 

「はい終了ー」

「あああくっそおおおおお!!」

「ちくしょおおおおお!!!」

 

俺たちはものの見事に枝付きの尻に敷かれていた。物理的に。

この感覚はゲームでラスボスの体力をあと1くらいまで削ったのにラスボスがスキルで全回復した後にコテンパンにやられた時と似ている。あの失望感と同じだ。

 

「お主らまだまだじゃのう」

 

俺の背中の上でプークスクスと口元に手を当てる枝付きは、息切れ一つ、汗一つかかず、ただ楽しそうに笑みを浮かべている。

俺がこんなガキ如きに逃げられるとは。

しかも忍術すら禄に出せないままで逃走劇を終わらせることになるとは。

横で転がっているミスミも呪詛のように「畜生畜生畜生畜生畜生」と呟きながら枝付きの下敷きになっている。かけていたメガネはあの20分間のうちに枝付きに盗られていた。

 

あー悔しい。

 

忍術を禄に使っていないのに、酷く疲れた。

たかだか一時間なのに体力よりも精神力がごっそり削られた気がする。

そもそもこの一時間だけでアジトの中を20は周回した筈だ。一体何キロ走ったことやら。

ため息をついていると、ミスミのメガネで遊んでいた枝付きが俺たちの上からすっと退いた。やっと気が済んだらしい。

そのまま、ミスミの前にしゃがんでミスミの顔にメガネをかけると「メガネないとしっくりこないのう」と呟いてへへへと笑う。

 

「今日は楽しかった」

「ありがとな二人とも、遊んでくれて」

 

そう言葉を口にすると、ぐったりしたままでいる俺たちの頭をわさわさと撫でていく。

なんだこれ。ガキのくせに。

 

「あーもうやめろよガキじゃあるまいし!!」

「儂からすればガキじゃ」

「そのガキと鬼ごっこし始めたお前もガキだわ畜生!!」

 

俺の言葉に一瞬目を丸くした枝付きは、それもそうかもな、と珍しく否定しに来ず、その返答に対して、ミスミが「否定しないのかよ」と突っ込んでいた。

 

とりあえず、と枝付きが俺たちを交互に見やって一声。

 

「また鬼ごっこしてくれんか?」

 

その言葉で今日一日のうちのたった一時間が再生される。

ほぼ手も足も出なかったのが現実だった。

忍なのにこれはマズイだろ、そうとも思った。

……まあ、鍛錬ついでに付き合ってやらんこともないだろう。それに

 

「勝ち越されても癪だから付き合ってやらんこともない」

「俺も鍛錬の暇つぶしにぐらいなら子守りしてやる」

「ミスミお前ー!ヨロイはまだしもメガネまで儂に盗られておいて子守りとはなんじゃ子守りとは!!!」

 

フンと顔を背けたミスミに枝付きが床を叩く。

 

「ま、中忍試験終わってからな」

「中忍試験でコテンパンにやられて帰ってきたら笑っていいか?」

「またこいつは……!!」

 

ミスミがギリィ……と恨めしげに枝付きを睨むと枝付きはそれに臆すことなくヘラリと力の抜けた笑顔を見せる。

 

「ま、二人とも気をつけるんじゃぞ?」

 

また遊べるのを待っておるからの、と笑いながら言い残せばゆっくりと立ち上がり、スキップしながら上機嫌で実験室に戻っていった。

残された俺たちは何かを言うまでもなくそのまま、疲労した身体を床に横たえることにした。

 

「……上等じゃねえのあのチビ」

 

いつかこの借りは必ず返してやる

 

 

 

 

 

 

(カブトー、ヨロイとミスミと鬼ごっこしてきた)

(えっ?)

 




現在の本人から見た状況
枝付き→大蛇丸:家主、探究心の塊、蛇、おっ?
カブト:頭良い、保護者、肩凝ってる、おっ?
君麻呂:実験体、カグヤじゃなかった、マロ眉
ヨロイ:自分より吸引力の低いチャクラ吸引機
ミスミ:よく伸びる、メガネ

ヨロイとミスミのことは一方的に遊び相手と思っている節あり。
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