そこのたなのリンゴとってリンゴ   作:鳧三

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今回は新たに二人、オリジナルで音忍が増えます。
中忍試験の一次と二次の間は留守番組ということで。


お留守番サービス

「気をつけるんじゃぞ……それと、カブトはそれなりに頑張ってきての。ミスミとヨロイに宜しく」

「ああ。君麻呂君のことは教えたことだけそのとおりにね」

「うむ。大蛇丸からもらった料理の本もあるからきっと大丈夫じゃ」

 

任せろ!と胸を張る枝付きが掲げる「料理ぱっど」とお洒落なデザインで書かれた料理本は、この前木ノ葉の視察の帰りに大蛇丸様が気まぐれで買ってきたものだ。

テーブルの上に置いていたのを枝付きが試し読みしたらしいが、驚いたことに甚くその本を気に入ってしまったらしく、今までにないほどワクワクした表情でその本を読み耽っている枝付きを見た大蛇丸様が「そんなに気に入ったならあげるわ」と苦笑を浮かべていたのは記憶に新しい。

 

鼻歌交じりの彼女曰く「大蛇丸が研究に力を注ぎたい気持ちがわかった気がする」とのこと。

彼女自身は別に食べ物を摂取せずとも生きていけるらしいが、何かを作るということに興味が湧いたようだった。

 

「大蛇丸、本当に譲ってもらっていいんじゃな?」

「ええ、もう彼には器としての価値がないから」

「呪印は引っぺがしていいのか?」

「そっちの実験に支障が出るならね」

 

ん、ありがと、と感謝を告げていつも通り、にっと笑顔を浮かべる。

 

「帰ってきたら実験結果を見せてちょうだい」

「うまくいけばの」

「あと他のは触ったらダメよ 文献とかはいいけれど……あと外にも出ないこと」

 

大丈夫じゃ、と頷く枝付きと、念を押す大蛇丸様は見る側からすれば保護者と子どもだ。

年齢は全く逆であるというのだから面白い。

 

「大蛇丸様、そろそろお時間です」

「あら、じゃあ行ってくるわね」

 

部下の音忍に声をかけられ、顔を上げた大蛇丸様に枝付きが行ってらっしゃいと手を振る。

彼女の監視役としてつけている音忍にも見送られながら僕たちはアジトを後にした。

 

 

■+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+■

 

 

「というわけでじゃ、おはよう君麻呂」

「…………」

 

確かに、昨日カブト先生から「少しの間大蛇丸様も僕もここを空けるから、代わりに『枝付き』って子が見てくれるからね」という前置きはいただいていたが、流石にいきなり入り口に立たれていると対応に困る。

 

この前、突然やってきた"樹"が来た。

ぽかんと入り口に立つ少女の自信満々といった表情を見ていると、後ろからバタバタと足音が続いてくる。

 

「おいこら猿みたいにちょこまかと……!」

「ったくなんで俺らが子守しないとならないんだ!!」

 

程なくして少女の横に辿り着いたらしい、音忍たち二人が本人を目の前にしてそんな愚痴を暴露している。

 

「お主ら二人揃って儂より年下じゃろうが!しかも儂は猿じゃなくて登られる側じゃ!!」

 

自分の身長の倍近くありそうな男二人に憤慨している様子で地団駄を踏んでいる自称:樹。

樹の癖にやけに表情豊からしいそいつは、監視役であろう二人のうちの片割れに頭をグリグリとされていた。

何を騒いでいるんだと呆れてきたころ

 

「あたたた……それでじゃよ、君麻呂とやら、このまま死ぬのは嫌か?」

 

彼らからの叱咤に頭を抱えながらいつの間にかベッドの横に立っていた"樹"は唐突に僕の目の前に顔を出すと話を振ってきた。どこから湧いたんだ、などという言葉を発する前に、僕は耳を疑う。

 

思わず見下ろした自分の身体。

病魔に蝕まれる身体はあともって二ヶ月もないかもしれない。

大蛇丸様に見放された身体。

 

沈黙が空気を満たす。

 

もう僕という器に大蛇丸様は興味をお持ちになっていない。

しかし、生きることが出来るならば、大蛇丸様の牙にも、盾にもなることならできる。

かぐや一族の最後の生き残りとしてなら、大蛇丸様の腕となれるかもしれない。

 

「……このままこの寝台の上で命を燃え滓にはしたくない」

「ならお主を「でも」」

 

でも、

 

「カブト先生にすら治せなかった病が治ることなんて……」

「お主のそれは世間一般で言う『不治の病』であるからのう……しかもこれからしようとしている"治療"も、まだ臨床実験すらしておらぬ上、かなり無茶苦茶でお主にかなりの負担をかけるかもしれん……そして何より」

 

最悪死に至るかもしれん。

その言葉に心に影が落とされる。

しかし、成功する可能性もある。

成功すれば自分の存在意義を、大蛇丸様を守ることが出来る……

大蛇丸様に拾っていただいた時のことと、来たる先の自分の死が、頭の中で吐き気を催しそうなほどぐるぐると回って絡み付いてくる。

あの日頬に触れた手の温度。

普通の人間には冷たいその温度が僕にとって初めての人の体温で。それが全てで。

 

「……どうせ、実験が失敗したとしても死期が少し早まるだけか」

 

点滴の管の刺さった手首を見つめ、拳を握り締める。

握り締めようと微塵も色づくことがない拳は今の状況をよく体現している。そう思う。

やはりこのまま死を迎えるなどということにはしたくない。

 

「……良いだろう、僕の身体は任せた。しかし、大蛇丸様にもカブト先生にも許可はいただいているのか」

「案ずるでない。二人が少しの間不在であるからな、お主のことを全面的に任せられた。許可もとってある」

 

そう"樹"が胸を張る。

外見はかなり幼いはずなのに妙に自身に満ち溢れた笑顔をぼーっと見つめていれば、手元に手が差し出された。

手と言っても、肝心の手の部分は袖ですっぽりと覆われてしまっていて手指は見えなかったが。

しかしまるであの時のように。

大蛇丸様が僕に差し出してくださった手よりも、今差し出されている手は細く、小さいのが袖で見えずともわかる。

しかし幼さを感じないその手。酷く安心感を覚えるその手。

僕は握り締めていた拳を開いて、真っ直ぐと伸ばされた手を袖越しに握った。

 

「改めてよろしくな、君麻呂。儂のことは"枝付き"とでも呼んでくれ」

 

 

■+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+■

 

 

「なんで俺らが料理の手伝いせにゃならんのだ……」

「口より手を動かしたらどうだハマチ」

「そうじゃそうじゃ、しばらく儂らはここで仲良く自炊生活なんじゃし」

 

ハマチと呼ばれた男……もとい俺は、水道でじゃがいもを洗いながらがっくりと項垂れる。

 

元々自分たち二人は、音隠れがない頃から田の国にいたのだが、そこの大名が半ば乗っ取られる形で音隠れの里ができた。数年ほど前のことである。

ヨコテと幼馴染だった俺には両親がいなかったが、ヨコテにもまた両親がいなかった。まあいわゆる戦死というやつだった。

まあそれはとりあえず置いておこう。せっかくできた就職口なのだから、自分たちも忍者目指そうぜということでヨコテを連れて毎日忍者になる勉強をした。忍術も独学だった。

才能がそれなりにあったらしく、基本的な忍法帖の内容は一通り網羅できた。

体術においては、田の国の大名が軍事拡張を前々から豪語していたため、小さな頃から叩き込まれてきた。

ついでに言うと、俺の方がチャクラのコントロールなどに向いており、忍術などが得意なようで、逆にヨコテは体術のほうにセンスがあるらしい。

音隠れに就職したいと言いに行ったとき、カブトさんがそう仰っていた。

ちなみに里長である大蛇丸様には「器にはできないけど大した実力ね、採用」というお言葉をいただいたので結構誇りだ。

器ってなんだろなと思ったが、後に教えてもらったことによると、どうやら大蛇丸様が長生きするために乗り換える身体のことらしい。最近の忍者は身体の乗り換えもできるんだなと驚かされた。

 

まあそれは今より一年ほど前のことだった。

無事音隠れに就職できたと思ったら、今度は謎の実験に連れ込まれ、その後はしばらく覚えていない。目が覚めた時に隣にヨコテがいて、目の前でカブトさんが「二人とも成功だね」と不穏な笑みを浮かべていらっしゃったのは覚えている。

どうやら、この左肩にある刺青みたいなものがドーピングみたいな作用をするらしい。

たまに痛むから少し困る。

最近の忍者ってドーピングもするのかと感慨深く感じたのだった。

 

そうして現在。

なぜか留守を任された俺たちは、ついこの間カブトさんに拾われてきた自称:樹と名乗った「枝付き」という謎の少女の子守をしている。

外見10歳児のくせにどうも話し方と雰囲気が老人くさく、枝付きという名前の通り頭から枝が生えているから本当に謎だ。

今は俺が洗った芋を見事な包丁捌きで皮を剥いている。10秒足らずで芋一個が丸裸だ。忍術なのか。

ヨコテはその隣で鍋に火をかけており、その蒸気で眼鏡を曇らせて「見えない……幻術か」と真顔で言って鍋に向かって構えている。奴は見かけがインテリエリートに見えるが、見えるだけだ。眼鏡外せ。

 

先程枝付きが何やら話していたのは君麻呂さんといったか。あまり会う機会は無いが、かなり強いらしい。しかし不治の病を患っているとのことでカブトさんが色々頑張っていらっしゃるそうな。

 

まあとりあえず色々とわからないことだらけだが、ヨコテとともに新入社員よろしく、下っ端の俺たちは今こうして留守番を頑張っている。

子守りも頑張っている。

「料理ぱっど」を目の前に開いて野菜洗うのも頑張っている。

天国の両親も微笑ましく見ていてくれることだろう。

給料上がらないかな

 

 

■+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+■

 

 

暗闇の中のなか、誰かが語る

その声は子どものようで、大人のようで、また老人のようで、赤子のようで、そして男のようで、女のようで、それはまた、木々のざわめきのようで

 

 

世界にはチャクラがあった。

チャクラは二種類……正確に言うならば三種類あった。

大きく二つに分けるならば、「そのもの自身に宿るチャクラ」と「自然から取り入れるチャクラ」の二種類と分けることが出来た。

「そのもの自身に宿るチャクラ」は、量に差はあれど誰しもが持っていた。そしてそれはまた二つに分けることが出来た。

「身体エネルギー」そして「精神エネルギー」

前者は自身の細胞に、後者は自身の経験や修行によって生まれる"内在するもの"であり"人間がもともと持ち合わせることとなったもの"であった。

この二つにより忍術は生まれた。

この二つを練り合わせ、印を結ぶことで人々は忍術を使えるようになった。

 

では仙術は?

 

この"持ち合わせた"エネルギーに加え、更に"外に存在するもの"を組み込んだものが仙術となった。

"外に存在する"エネルギーつまり"自然エネルギー"を指す。

なぜ自然界にしか存在していないのか。自然に生きる筈の人間になぜ元々存在していないのか。

そしてなぜ数少ない人間……しかも秘境に住まう動物たちから術やエネルギーを授かることが必要となるのか。

まるで全ての人間が使えないようにしているように見える。

選ばれた者たちにしか使えないような。

 

そう、例えばかの六道仙人は忍術や仙術を駆使し、弟と共に「十尾」を封印したそうな。

 

しかし、その「十尾」自身が元々はチャクラの実を奪われた神樹だとするならば、チャクラの大本である神樹が仙術に対抗できないということは果たして有り得たのか?

もし、仙術を扱う上で必要な"自然エネルギー"自体を封印された「十尾」が元々持ち合わせていなかったとしたら。

"内在するもの"を抑えるのが"外に存在するもの"であったとしたら。

 

ある疑問と矛盾が生まれる。

 

"自然エネルギー"はどこから来たのか?どこから生まれたのか?

 

しかしその問いの前にもう一つ問いを増やそう。

なに、これは答えのための問いかけでもあり、答えでもある。

 

もう分かってしまった人もいるかもしれないな。

さあ問おう。

 

「本当に神樹は一本だけだったのか?」

 




新たに増えた二人について

ハマチ(刃区)
22歳。
チャラい人かと思いきやツッコミ担当。テンション高めの音忍。
枝付きの監視役。枝付きとヨコテのストッパー。順応性が高い。
田の国出身。ヨコテとは幼馴染。
別に音忍だからって音の忍術使える訳では無い。見た目チャラいくせにチャクラコントロールが上手かったり頭もそれなりに回る。
髪色が銀髪で、黄色のメッシュを入れているため、枝付きに「まさに魬」と言われたのが最近のハイライト。
呪印は左肩につけられている。


ヨコテ(横手)
22歳。
常識人かと思いきや135度くらい常識からズレている眼鏡。ハマチとともに枝付きの監視役である音忍。しかし枝付きのアクセル。
田の国出身でハマチとは幼馴染。
眼鏡をかけているため、インテリ系で目が悪いのかと思いきや、遠視で運動神経抜群のパワータイプだった。大体の武器は扱えるし体術もそれなり。眼鏡がないと手元が見えない。
初対面の枝付きから「カブトとキャラ被りそう」と言われ、日々それに戦きながら被らないように頑張っている。しかし頑張らずともパワー系クレイジー枠に収まった。
外での作戦は大体ハマチに任せっきりで自分は動くのみ。
そしてやっぱり音の忍術は使えない。
髪色は深い緑で癖毛。
呪印は右肩にある。
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