東京都の国立魔術学園では、今日入学式が行われる。満開の桜を見つめながら少年は立っていた。少年の名は
「ねぇ、そこの貴方」
「ん?」
不意に後ろから声をかけられ、純也は振り向く。純也の目の前に立っていたのは、少女だった。髪は金で、フェミニンロング。純也より、少し背が低い。
「私、シャルロット=アルテュセールっていうの」
「俺は白鳥純也。宜しく──それで何の用だ?」
シャルロットは手を差し出す。握手か? と純也は思い、シャルロットの手を握る。
その時のシャルロットは、小さく微笑んで純也を見つめていた。少し間を空けて、シャルロットは手を離す。
「そろそろ行かなきゃ! それじゃあね」
「おう!──じゃねぇ! 俺も行かなきゃ!」
純也は走り出すシャルロットに並んで走る。体育館に入り、純也は適当な椅子に座る。シャルロットは純也の隣に座る。
30分して、生徒が全員集まった。学園長が教壇の前に立ち、話を始める。これから新たな学園生活が始まると思うと、いても立ってもいられなかった。
「終わった終わった!」
純也は大きく伸びをして、叫ぶ。その純也を、シャルロットは見つめていた。純也を見つめる顔は、紅潮していた。
「それじゃあ、帰るかな」
純也は校門に向かって歩き出す。そのあとに、シャルロットはついて来る。
「ねぇ、貴方の武器は何?」
「俺か? 俺は二刀流」
「奇遇ね! 私も二刀流なの!」
使う武器が一緒だったという事に、シャルロットは随分と驚いている。
「そいつは驚いた」
「私もよ」
いつの間にか校門を通り過ぎていた。純也は校門の前で止まりシャルロットに「お前の家は何処なんだ?」と尋ねる。
「あそこよ」
シャルロットは此処から1kmは離れた場所を指差した。シャルロットが指差した処を見ると、立派な館が一つ建っていた。
「ふ~ん──って! あそこは外国から来た名門の館じゃねぇか!!──もしかして、あそこのお嬢様?」
シャルロットは「そうよ」と気軽に答える。
「おいおいおい。アルテュセールってどこかで聞いたような苗字だと思ったら、あの名門のアルテュセールかよ!」
「驚いた?」
「驚かないはずねぇよ。しかも、俺の目の前にいるのはお嬢様だぜ?」
シャルロットは苦笑して、「確かにね」と言う。
「まぁ、良いや。俺はお嬢様だからって敬語を使うとか敬ったりしないからな?」
「ええ。それで結構。あっ、貴方の事ジュンって呼んでいい?」
「良いぜ。俺もシャルって呼ぶぜ」
そういうとシャルロットは、顔を赤くして「まるで仲良しみたいね」と言った。
「っと、もうこんな時間か……俺、もう帰らなきゃ」
シャルロットはほんの少し悲しげな表情をしたが、すぐに戻して「ええ。それじゃ、さようなら」
「おう! 同じ小隊だったら良いな!」
「ええ!」
そう言ってシャルロットはさっきから駐車している黒い高級車に乗って、行ってしまった。
「にしても、美人だったなぁ……」
純也は歩きながらそう呟く。その純也に後ろからついて来る者がいた。純也はついて来ている事は知っていたが、正体は分からなかった。
純也が止まるとついて来ている者も止まり、走れば走って来る。とうとう純也はしびれを切らして、振り向く。
「おい」
「はい?」
ついて来ている者の正体は、純也の背丈の半分もない少女だった。純也は高校生の平均身長と全くもって一緒のため、背丈の半分もない少女は高校生の中ではかなり低い方だ。髪は黒のミディアムレイヤーだ。
「さっきから何なんだ?」
「お兄さんの後をつけているんです!」
純也は何言ってんだこいつ、という目で少女を見つめる。そんな視線をもろともせずに、少女は微笑んでいる。
「──よくよく見たらうちの制服きてるじゃん。お前、あそこの学生かよ」
「そうですよ~!」
少女は嬉しそうに首を振る。
「そうか……それじゃあな」
「は~い!──って! ちょっと待ってください! 一緒に帰りましょうよ!」
少女は純也の腕を引っ張る。
「一緒に帰ってくれたら良いことしてあげますよ♥」
「ほ~! それは良いな「なら!」だが断る「えぇ!?」この白鳥純也の好きなことの一つは、自分が絶対的有利にあると思っている奴に、NOと断ってることだ!!」
「「……」」
少しの間の沈黙。
「──じゃあな」
「──はい」
少女は諦めたようで、手を振りながら純也を見送る。純也は見向きもせず家に向かって歩いていく。
何事もなく、家に着いた。ドアを開くと家に妹がいた。
「ただいま」
「お帰りなさい! お兄様!」
「ただいま。
彼女の名前は
「お兄様、お帰りなさいのキスです「んむっ!?」ん……ん──『ジュル──チュプレロレロレロ』」
摩耶は唐突にキスをしてくる。純也は抵抗できずにされるがままだった。
「んー──はぁー。お兄様大好き!」
「おー、帰ってきたか! わが弟よ! それじゃあ、私とキスしようぜ!」
純也の姉、
「駄目。純也は私とキスするの」
同じく、純也の姉、
「何言ってるんだい? 純也は僕とキスするに決まってるよ?」
「いや、あんたは男だろ!!」
純也の兄、
「男だから何? 男が男に惚れるのは駄目なの? 法律で決められてるの?」
「き、決められてません」
「なら良いよね」
純也は四人からキスを迫られる。
「ええい!!」
純也はやけくそになり、四人にそれぞれキスをした。そして、自分の部屋に戻っていく。
部屋に入り、扉を閉めてベットに寝転がる。純也はチラッと時計を見る。まだ四時にもなっていなかった。
でも何故か眠たかった。瞼が重い。
「お兄様! お兄様! 起きてください!」
「ん……んん? あれ?いつの間に寝てたんだ」
純也は目を擦りながら起き上がる。目の前にはお玉を回している摩耶がいた。
「もう夕飯が出来ています」
「おぉ。すぐいく」
純也はベットから出て、部屋を出る。そして、皆が待っている居間に向かう。居間にはテーブルがあり、皆、回りの椅子に座っている。
純也は隣の席が無い椅子に座った。摩耶は亮太の隣に座る。さっきの事については、誰も何も言わなかった。
「「「「「いただきます」」」」」
純也達五人は手を合わせて、言う。
「そういえば姉様達って第何小隊だっけ?」
「私は第1小隊だ」
加奈が、肉を頬張りながら言う。
「私は第38小隊」
菜月が純也の写真を撮りながら言う。
「僕は第21小隊」
亮太が携帯を弄りながら言う。
「俺は何処行くんだろう?」
「純也は強いからね。もしかしたら、他の強い新入生と一緒に新たな小隊の小隊長になるかもよ?」
純也は満更でもなさそうな顔をする。加奈、菜月、亮太の三人はそれぞれの小隊の小隊長である。もし、純也が小隊長になったのなら白鳥の名に恥じない小隊長にならなければいけない。それ程のプレッシャーが強いられる。
「勿論、推測だけどね」
亮太はニヤリと笑いながら、純也を見る。その目はいつもの亮太の目ではなく、心の奥底までも見つめられていそうな程、真っ黒な目だった。この後は、気まずい空気になり一言も喋らずに純也は部屋に戻った。
ベットに寝転がり、天井を見つめる。
「小隊長か……」
純也はそう呟く。時計を見ると、既に9時を回っていた。
「もう──寝よう……」
純也はゆっくりと瞼を閉じて、眠りにつく。明日の小隊発表に、期待と不安を胸に秘めて。
「うう~ん」
純也はゆっくりと身体を起こす。カーテンの隙間から日の光が差し込んできて、純也にとっては良い朝だった。
純也は学生服に着替えると、部屋を出て居間に向かった。居間では、亮太以外の三人が朝食を食べていた。
「おはようございます。お兄様」
「おはよう! 純也!」
「おはよう。純也」
摩耶、加奈、菜月の順で挨拶してきた。純也は「おはよう」と挨拶すると、摩耶の隣に座る。
「いただきます」
純也は味噌汁から食べはじめる。
「相変わらず、摩耶の料理は美味しいよ」
そういいながら、純也は摩耶の頭をくしゃくしゃと撫でる。摩耶は気持ち良さそうに、「ふふ」と笑い、
「もっと撫でてください♥お兄様♥」
「ハハハ、本当に撫でてもらうの好きだな。摩耶は」
そういいながら、純也は撫でるのを止める。
「あ……」
「悪いな。俺も学校に遅刻しちゃうから」
そう言って、一気に朝食を平らげる。食器を洗い場に置くと、「行ってきます」と言って家を出る。
家の前には、昨日シャルロットが乗っていた黒い高級車が停まっていた。中からシャルロットが出てくる。
「迎えに来てあげたわよ」
「いや、でも俺、大丈夫だから」
純也は断るが、シャルロットは不満そうな顔をしている。
「お嬢様の誘いを断るつもり?」
「──わ、分かりました」
純也はしぶしぶ、車に乗り込む。純也の後にシャルロットが車に乗り込む。シャルロットが入った瞬間車が自動で閉じる。
そして、発車する。この車は揺れが全く無くて、本を読むのには最適だった。
「着いたわよ」
シャルロットが、学園を指差し言った。純也は車から降りて、学園へ向かう。その隣にはシャルロットがいる。今回も、体育館に集合する予定だったはずだ。
体育館に入り、純也は適当な椅子に座る。シャルロットはその隣に座る。殆どの人が体育館に集合しており、もう始められそうな雰囲気になっている。少しして、学園長が出てくる。
「では、小隊発表を始める! 既に知っているとは思うが説明しよう。今回は1~41小隊までの何処かに諸君らは配属される。ただし、今回だけは五人。第42小隊として動いてもらう者もいる」
その言葉に、生徒たちはざわめきはじめた。
「ではまず、新たな第42小隊として動いてもらう5名の人物を発表する!」
生徒たちは皆、緊張している。学園長は、手に持っているファイルを開く。きっとあれに5名の人物の名前が印されてあるのだろう。
「では、発表する! シャルロット=アルテュセール!」
純也は驚きの表情を隠せなかった。そんな、純也を余所に、シャルロットは小声で「行ってくるわ」と言って前に出る。
「
前に出たのは、昨日の少女だった。彼女も強いと純也は初めて知った。
「
前に出たのは、緑色の髪をツインテールにした女の子だった。
「
前に出たのは、髪は青でストレートロングの女の子だった。中学の頃、純也と仲が良かった。
「そして、第42小隊小隊長は──」
生徒の全員が緊張した顔で控えている。自分かもしれないと思うと、胸のドキドキは抑えきれなかった。そして、学園長がついに口を開く。
「白鳥、純也」
聞き間違いか? 一瞬、純也は自分の耳を疑った。自分の名前が呼ばれた?
「もう一度言う。第42小隊小隊長は、白鳥純也だ。前に来い」
純也は前に出る。前に出る純也を、生徒の全員が見つめる。
「以上、この5名が第42小隊だ」
生徒の全員から、拍手と歓声が沸き上がって来る。小隊長になったからには、白鳥の名に恥じないようにする、純也は心の奥底で決心した。
「以上で小隊発表を終了する。後は各々の小隊の持ち場で絆を深めろ」
そう言って、学園長は体育館から出て、何処かへ行った。
「シャル、同じだったな」
「そうね。ジュン」
「ねー、ねー、皆で自己紹介しようよ」
緑髪の女の子が言った。「そうだな」と純也は返事をする。
「それじゃあ、私から! 私の名前は伊藤木乃実! 武器は弓! これから宜しく!」
「それじゃあ、次は私が」
青髪の女の子が手を挙げる。
「私の名前は花村純子です。使う武器は杖。回復ならお任せください」
純子は丁寧にお辞儀をする。純子は名門の家なのか、礼儀正しい。
「あの──私は雨宮恵美って言います。サポーターです」
どうやら恵美はサポーターのようだ。サポーターは相手の動きや攻撃方法等を戦いの中から分析し、戦っているものに教える役だ。
「私はシャルロット=アルテュセール。武器は二刀流の剣」
純也以外の者が、全員自己紹介した。純也の番が回ってきた。
「知ってると思うが、第42小隊の小隊長に配属した、白鳥純也だ。使う武器はシャルと同じ二刀流の剣」
これで全員の自己紹介が終わった。純也は生徒会長に受け取ったプリントを開く。そこには、小隊の持ち場が書いてある。第42小隊は3階の空き部屋と書いてある。家具の持ち込み可能。
「空き部屋か──取り敢えず行くか」
「そうね」
五人は横に並んで歩き出す。体育館を出て、校舎に入り3階へ向かう。3階へ着くと、プリントの地図の通りの場所の空き部屋に入る。中は、まるで新築の家の部屋の様に綺麗だった。
「思ったより綺麗だね~!」
木乃実が部屋を見回す。部屋の真ん中に机。その回りに椅子が置いてある。後はホワイトボード。それ以外は何も無い。椅子は五つある。
「それじゃあ、ミーティングするか」
純也は隣の無い一人席に座る。他の皆も座る。魔術学園では、昼休みまでが普通の授業。昼休み以降は小隊での会議、ミーティング、訓練等小隊メンバーと一緒であるのなら、自由である。
「まずは戦略からだな。雨宮、筆記頼む」
「分かりました~」
恵美はノートを開き、上部分に戦略と書く。
「純子は回復が得意なんだよな?」
「はい」
純子は、頷きながら返事をする。
「それなら、伊藤と純子は比較的後方支援の方が良いだろう」
「構いませんわ」
「うん。そっちの方が良いよ」
純子と木乃実は純也の意見に賛成している。
「それで、俺とシャルが前線と──単純だがこれが1番ベストだと俺は思う」
「そうね。それに、私達は実力があって、第42小隊のメンバーに選ばれたのよ? そうそう負けやしないわ」
少々自信過剰だが、その通りだと、純也は思った。同時に、シャルの性格も少し知れた。恵美はノートに書き込んでいる。
「と、これだけだな」
「今日のところは解散で良いかしら?」
「あぁ。それじゃあ、ミーティングを終了する。後は各々自由に行動してくれ」
純也は席を立って、部屋を出る。
「ちょっと待ってください」
誰かに腕を捕まれる。振り向くと、掴んでいたのは純子だった。
「貴方に少しお話があります。二人っきりで」
「? 別に良いけど?」
純子は、純也の手を引いて、校舎裏に連れていく。校舎裏に着くと、純子は手を離し、純也と向き合う。純子の顔が紅潮している。その顔は余りにも妖艶で、純也は思わず胸がドキドキしてしまった。
少しの沈黙の後、純子は決心したかの様に口を開く。純子が放った言葉は余りにも驚きのものだった。
「中学の頃から貴方の事が大好きでした♥なので、私の
その言葉が放たれた瞬間、純也の意識は深い闇の中に沈んでいった。
どうでしたか?
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