Eの海   作:瑞穂国

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BOBシリーズの三作目!

やっと投稿できた・・・

真面目に戦闘もするよ!多分!

どうぞよろしくお願いします


引っ越し

いつもの癖で、私はセットした目覚ましよりも十数秒早く目を覚ましました。ベッドの上でもぞもぞと体を動かし、頭を動かし、枕元の右側に置かれたデジタル時計をやっとの思いで視界に捉えることができました。

 

それを狙っていたかのように、画面が六時に切り替わりました。当然のように、アラームが甲高く鳴り響きます。

 

ジリリリリリッ

 

「ふぇあっ!?」

 

臆病な私は、その音だけで反射的に飛び起きてしまいました。

 

跳ね退けた掛け布団が宙を舞います。ベッドでひとしきりあたわたとした私は、とりあえず時計の上面を叩いて、アラームを停止させました。二回三回と肩で息をします。

 

「・・・起きよ」

 

そのまま固まっていた私は、一言呟くと両手で伸びをして、床に足を下ろしました。立ち上がって、壁に嵌められた大窓のカーテンを開けようと歩み寄ります。端から光が漏れるカーテンは、日光に照らされてほんのり温かくなっています。

 

ザッ。一気にカーテンを引くと、眩い朝陽が私の顔を照らしました。あまりの眩しさに、目を細めてしまうほどでした。と、

 

ジリリリリリリリッ

 

ほのぼのとした空間を台無しにしてしまうアラームが、再び響き渡りました。私の心臓が止まるかと思いましたよ、もう。

 

アラームをオフにするのを忘れていましたね。オンのままだと、止めてもまた鳴り出すんです。

 

タッと時計に駆け寄った私は、今度こそ、アラームを切りました。

 

 

 

私の名前は、エンタープライズ。といっても、これは私の記憶の中にある、かつて第二次世界大戦を戦った軍艦の名前ですから、私の名前という表現が正しいのかはわかりませんけど。この艦隊の皆からは、エミリーって呼ばれてます。

 

 

 

午前六時という早い時間に私が起きたのには、理由があります。身支度を素早く済ませた私は、基地庁舎内のレストラン・カフェエリアに足を向け―――

 

 

 

「おー、皆早いなー」

 

一時間後、朝にもかかわらず賑わいを見せるレストラン・カフェエリアに、艦隊を率いる提督が姿を見せました。ウィリアム・ハルゼー大佐。この艦隊―――第七方面艦隊を任された若き指揮官で、頭のてっぺんのくせっ毛がトレードマークの、長身でハンサムな男性です。

 

「グッドモーニング、提督。はい、朝食です」

 

「まーた朝食付きか」

 

提督―――いえ、こんな時ぐらい、ブルって呼んでもいいかな。ブルは、私の差し出したトレーを見て苦笑しました。

 

「シリアルで十分だろ」

 

「ダメです。朝食は生活の基本だって、マスターも言ってたじゃないですか」

 

「いや、そうだけどさ」

 

朝食と言っても、大層なものじゃないんですけどね。焼いたベーコンと野菜炒め、目玉焼きにトーストが付いただけです。それでも、朝食を取るのと取らないのとではかなり変わってくるんですよ?

 

「秘書艦の言うことは聞くものよ、提督。実際、ちゃんと朝食を取るようになってから成績は上がってるんだし」

 

賛同の意を示してくれたのは、二つにまとめた赤毛にそばかすの、快活な印象を抱かせる少女です。私と同じ空母艦娘のワスプでした。

 

「グッドモーニング、ワスプ。はい、ワスプの分ね」

 

「サンキュ」

 

私はワスプの分の朝食を乗せたトレーを手渡します。それを受け取って、テーブルへと足を向けたワスプは、ふと振り返って、

 

「せっかくエミリーが愛情込めて作ってくれたんだから。食べなきゃ損よ」

 

「愛っ・・・!!」

 

よ、余計な一言を残していきました。ボンッと、私の頭がわかりやすく沸騰する音がした気がします。

 

「そういうことなら、ありがたくいただくとするか。エミリーは、もう食べたのか?」

 

「あぅっ・・・ま、まだです」

 

「んじゃほら、早く来いよ。もう全員揃ってるだろ?」

 

ブルはそう言ってから、口の端を吊り上げて笑いました。

 

「一緒に食おうぜ」

 

「・・・は、はい!」

 

 

「えー、今日も一日お疲れ様」

 

執務に演習、近海の哨戒と、今日やるべきことを一通り終えた夕食の席、珍しく、ブルが皆の前に立っていました。重要な話があるとかで、レストラン・カフェエリアに全員が集められています。

 

「ここで、重大発表がありまーす」

 

艦隊全員の前で、控えめにバーボンの入ったグラスを片手に、高らかに宣言しました。

 

一体何のことでしょうか。秘書艦である私にも、詳しいことは知らされていません。そう言えば、今日届いた書類の中に、サンディエゴのニミッツ中将からの指令書がありましたね。ブルは一読した後、中将に直接電話を掛けていたみたいでしたし、そのことと関係があるのでしょうか。

 

「それでは、早速発表しよう!」

 

ブルの掛け声に合わせるようにして、グリーブス級四姉妹が豪華な前振りを演奏します。口真似ですけど。これがなかなか上手いんです。最後のドラムの音が終わると、待ってましたとブルが口を開きました。

 

「我が艦隊は、お引っ越しをすることになりました!」

 

・・・。

 

・・・・・。

 

「えええっ!?」

 

その場にいた全員が、同じような驚きの声を上げました。

 

当然ですよ!そ、そんな急に・・・唐突に言われても・・・。誰だってびっくりせずにはいられませんよ。

 

「引っ越しって・・・パナマ基地から出てくってこと?」

 

全員を代表して、ヘレナが質問しました。

 

「そうだ」

 

「パナマ周辺の警備は?」

 

「新設の第三沿岸警備隊が引き継ぐから心配いらない」

 

「ふーん。ならいいわ」

 

続いて元気よく手を上げたのは、フレッチャー―――レッキーと、私たちは呼んでいます。

 

「引っ越し先は?寒いところはヤダなー」

 

「言うと思ったー」

 

レッキーの横で頬杖をつくオバノン―――オズが、呆れたように呟きました。

 

「レッキーはそればっかじゃん」

 

「大事なことじゃない?」

 

「・・・まあ、そうだけど」

 

オズ自身も思い当たる節があったみたいで、渋々といった様子でしたが、レッキーの意見に頷きました。それを確認したブルは、不敵に笑って親指を立てます。

 

「安心しろ。南国のホットなビーチ付きだ」

 

「本当!?」

 

「本当だともー。提督、嘘付かない」

 

「やったー!!」

 

駆逐艦の何人か・・・後、それ以外も何人か、キラキラと目を輝かせて歓声を上げました。

 

「それで、場所は?」

 

「南方、オーストラリアの上。珊瑚海のポートモレスビーだ」

 

全員の頭上に、大きなクエスチョンマークが浮かびました。

 

「・・・どこ?」

 

「さあ?」

 

ちょっ、確認しておいてくださいよ、ブル!?

 

「ま、いいところらしいし。大丈夫だろ」

 

「相変わらず適当ですね、提督は」

 

ほら、艦隊の名参謀、グアムも頭を抱えてますよ?

 

咳払いをすると、ブルは詳しい引っ越しの説明を始めました。

 

「とにかく。出発は一週間後。オーストラリアへの輸送船団護衛後、そのまま現地に入るから、そのつもりで。各自の私物積み込みは四日後な」

 

それだけ伝えたブルは、グラスのバーボンをぐいっと一気に飲み干して、小気味よい音を立てて机に置きました。ほんのりと朱の差した頬が、若さ由来の色気を醸し出している気がします。

 

「残り一週間、色々忙しくなると思う。が、かれこれ一年、世話になった基地だ。きっちりお別れして、新天地に向かうとしようか」

 

ブルが座ったことで、夕食が再開されます。いつもと同じような風景に見えますが、いたる所でグラスの交わされる音が聞こえ、会話の色も変わってきます。それが寂しいような、なんというか。不思議な気持ちに囚われながら、私も皆とグラスを交わし、新鮮な海の幸を頬張りました。

 

 

 

「・・・頭、痛い」

 

「もう。お酒弱いのに、一気飲みなんてするからですよ」

 

執務机で痛む頭を押さえるブルに、私は頭に響かないよう声を控えて、注意を促しました。ブルは、海軍将校に珍しく、お酒に弱い性質です。たしなむ程度に飲むと、後はコーラやジンジャーエールのビンを空にしていきます。

 

「はい、お水です」

 

「ん、サンキュ」

 

グラスに入った水を差し出すと、受け取ったブルはゆっくり飲み干しました。適度に焼けた喉元が、それに合わせて上下します。

 

・・・って、やだ私ったら!うう、お酒が入ったのは私も同じでした。こんなはしたないこと・・・。

 

いえ、見るだけなら・・・見てるだけなら許されるのでは・・・。

 

邪な考えをブンブンと頭を振って振り払い、咳払いを一つ挟んでから、私は話題を切り替えました。

 

「ところで、提督?」

 

一息を吐いて落ち着いたブルは、置いた軍帽をいじる手を止めて私を見ました。

 

「どうした?」

 

「ニミッツ中将から直々にということは・・・何か、特別な任務でもあったんですか?」

 

うっ、とブルが答えに詰まりました。図星だったみたいですね。

 

「さすがだな、秘書艦殿」

 

「やっぱりですか」

 

ブルも私も、中将とは個人的に知己の仲です。そもそもブルは、中将の指揮下で参謀をしてましたし、私の着任もその頃ですから。そういうこともあって、中将はたまに、特殊な任務を持ち込んできます。今回もその類だったようです。

 

ブルは一呼吸を入れると、滅多に見せない真剣な眼差しで私を見ました。

 

ゴクリ。生唾を飲み込みます。

 

「続きは明日ということで」

 

「なんでもったいつけたんですか!?」

 

「いや、エミリーがあまりに真剣な眼差しなんで、からかいたくなった」

 

「・・・心配して損しました」

 

なんだかどっと疲れが。ブルはこうして、よく私をからかいます。

 

ハッハッとひとしきり笑ったブルは、席から立ち上がると、私の肩にそっと手を置きました。

 

「軽くシャワー浴びて、今日はもう寝るわ。エミリーも早く寝ろよ」

 

「はい。お休みなさい、提督」

 

「ああ、お休み」

 

最後のふっとした微笑みに、自然と私の頬が緩みました。こういうところ、ブルのズルいところだと思います。

 

ドアへと向かうブルを見送ります。ノブに手をかけたところで、何かを思い出したように立ち止まり、こちらを見ることなくポツリと呟きました。

 

「今度は、Z海域を調査することになる」

 

「・・・え?」

 

Z海域。不穏な言葉に、ブルの背中を見遣ります。私が何かを質問する前に、その背中はドアの向こうへと消えました。




なんか、アメリカ艦娘実装するらしいのですが・・・

もし、今後こちらで出ている艦娘が実装されても、設定等変更する予定はありませんので、ご容赦ください

これで、一通りBOBシリーズは投稿できたわけだが・・・果たして、どこまで回せるか
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