最優の魔法使いめぐみん!   作:ダンまち×このすば

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世界と現実と憧景 - B

めぐみん Lv.1

力:I2→I3 耐久:I1→I2 器用:I19→I21 敏捷:I13→I15 魔力:I28→I32

《魔法》

爆裂魔法(エクスプロージョン)】【初級魔法】

【テレポート】

・一度視認した場所を登録して転移することが出来る。

・登録回数残り1回(一度登録した転移先を変更することは出来ない)

《スキル》

【】

 

 更新してもらったステイタスを確認すると合計上昇値が10も上がっていた。一日だけでここまで上がるのはめぐみん基準なら驚異的である。

 支援魔法とサポーター紛いなことをしているだけなのでステイタスの上昇値が前衛より低いのは当たり前。攻撃魔法にも乏しいのでレベルアップなど絶望すら伺える。

 そんな伸び代高い前衛のベルがステイタス更新を終えてヘスティアから一枚の紙切れを受け取った。めぐみんも釣られてベルのステイタスを盗み見る。

 ステイタスの盗み見は仲間同士だろうとご法度だが、二人しかいないファミリアに隠し事も何もない。お互いに信頼関係も構築しているので他のファミリアに告げ口するような人物ではないと分かっている面も大きい。

 

ベル・クラネル Lv.1

力:I77→I82 耐久:I13 器用:I93→I96 敏捷:H147→H172 魔力:I0

《魔法》

【】

 

 合計上昇値10に対してこの数値。合計上昇値33はあるだろう。前衛と後衛でここまで差があると自信をなくしそうになる。

 一緒にパーティを組んでダンジョンに潜ってきたが、ベルには冒険者としての素養が十分にあると思う。このまま上昇値が安定してくれば2年以内にランクアップも夢ではなくなる。

 ただ風の噂だと誰もが限界に突き当たると上昇値も大して伸びなくなるらしい。そう考えると今のベルは成長期なのかも知れない。

 

「僕、いつになったら魔法が使えるようになるんだろう」

「それはボクにもわからないなぁ。主に知識に関わる経験値が反映されるみたいだけど……」

 

 ベルには暇さえあれば魔法の知識を教え込んでいるが、上級魔法すら全ての魔法と詠唱を覚えて習得可能になるのだ。

 魔法とは紅魔族や一部の種族の専売特許に過ぎなかった代物だったが、神々の恩恵を受けると魔法を発現させることが可能となる。

 最低でも1つ、最大で3つと、魔法が発現する数は決まっている。1つ使えて一般的。2種類扱えるだけで引っ張りだこになる。

 

「ベルの魔法スロットは1つだけなので、私の知識が空振りすれば気長に待つしかありませんね」

 

 ベルは頭を垂れてがっかりするが、魔法使いが仲間にいると自分も使いたくなってしまうのだろう。私も日常的に使っているのでベルの気持ちも分からなくもない。

 変に焦ったり、ないものねだりして期待するのも、発現した魔法がめぐみんの魔法と被っていたり、使い道のない魔法だったりしたら、期待した分だけ損をする。

 

「君たちはまだ駆け出しの冒険者なんだ。焦らずゆっくり頑張っていけばいいさ!」

「そうですね、はい!」

 

 ―――――

 

「あっ、そこの友達に恵まれていそうな貴女! じゃが丸くん買っていかないか?」

「あ、あの、それ買ったら友達に喜んでもらえますか?……じゃないや、ごめんなさい。今は人を探しているので、商品はまた今度買わせてください!」

「おう、そういった商品じゃないが期待して待ってるぜ!」

 

 めぐみんはどこか聞き慣れた誰かさんの声にあわてて振り返ると、そこにはじゃが丸くんを販売している店員さんしかいなかった。

 落胆しながらも節約のために朝食を抜いてきたことを思い出す。普段から資金面に余裕のないヘスティア・ファミリアだったが、腹が減っては戦もできぬ。

 昨日はミノタウロスに遭遇するなどのハプニングもあったが、収穫は上々。そこまで切羽詰っているわけでもないので無理して我慢する必要も見当たらなかった。

 

「ベル、ちょっと小腹が空いたのでじゃが丸くん買い食いしていきましょう」

 

 懐からベルが換金した資金を取り出すとじゃが丸くんを腹が満たせる程度に購入してその場を離れた。腹が減って力が出なかったり、食べ過ぎて動きが鈍くなっても問題だ。

 そもそも朝食抜きでダンジョンに潜るなら街中を歩かず、テレポートで1階層から入ってしまえばいい。ベルもそれが分かっていて口出ししなかったのだろう。

 

「昨日遭遇したミノタウロスの件もありますし、今日はいつも以上に慎重して行きましょう」

「そうですね、次に出会ったら私の魔法で瞬殺ですよ!」

「はい! ……えっ?」

 

 打倒ミノタウロスを掲げるめぐみんの様子に困り果てながら、彼らはダンジョンの入口を潜った。ダンジョン1階層の主な敵はコボルトで、奴らが群れを成して行動することは極めて稀である。

 

「粉砕! 玉砕! 大喝采!!」

「めぐみんさん、前に出過ぎです!」

 

 クリエイト・アース、ウインドブレスなどの魔法でコボルトの群れを目潰しても接近戦は避けられず、足場を凍らせて敵の動きを封じてしまうと味方の足を滑らせる地形に変化するため、ベルの足まで引っ張ってしまう。

 それでも着実に成長期を迎えているベルやめぐみんにとって取るに足らない敵でもあった。それがソロなら数の暴力に舌を巻いて逃げ出していただろう。

 肩を並べて背中を任せられる仲間が隣りにいるだけで敵の強さもダンジョンの難易度も大きく変わってくる。

 

「そろそろ、4階層まで潜りませんか? ミノタウロスは5階層で遭遇しましたよね?」

「駄目ですよ! 神様にも焦らず、無理はするなと言われたじゃないですか!」

「そうですけど、いざとなればテレポートでいつでも離脱することが出来ますよ?」

 

 無事にベルを説得できためぐみんは今日も豊作。ギルドに立ち寄って換金を済ませるとポーションや道具一式を買い漁り、教会までの帰り道のことだった。

 

「結局、6階層まで潜ってしまいましたね」

「……やってしまった」

「そう落ち込まないでくださいよ。ウォーシャドウは強敵でしたが、その分、実りもあったじゃないですか」

「そうですけど……」

 

 言いつけを破ってしまった罪悪感に蝕まれているベルを余所にめぐみんはホクホク顔で帰り道を歩く。彼らが危険を顧みず、ダンジョン6階層まで潜れるのもテレポートなどの恩恵が何よりも大きい。

 

「ベル、明日の予定は空いていますか?」

「ダンジョンに潜らないなら何もないですけど」

「それを聞いて安心しました。ベル、私とデートしましょう!」

「はい、えっ? ぇえええええええええええええええ」

 

 涼しい顔でそう告げた。

 

 ―――――

 

【ベル・クラネル視点】

 

 ベル・クラネルは思い出す。めぐみんと名乗る不思議な少女との出会いを。気怠げな赤い瞳、貴族を連想させる上質な黒髪。

 黒マントに黒いローブ、黒いブーツに杖を持ち、トンガリ帽子まで被った魔法使い。まるで人形のような容姿をした少女を前に見惚れてしまう。

 彼女こそが世界の中心に佇んでいるかのような錯覚を受けながら少女は口遊む。

 

『我が名はめぐみん! 紅魔族随一の魔法使いにして、爆裂魔法を操る者!』

 

 これこそがベル・クラネルとめぐみんの運命的な出会いだった。

 

『……ベル……起きて、下さい……デートの日ですよ! ベル!』

「う、うん……おはよう、ございます。めぐみんさん……」

 

 懐かしさを感じる夢見心地に浸りながら、ぼんやりとした頭を働かせようとする。意識がはっきりしてくる内に、今日がめぐみんと約束したデートの日であることを思い出す。

 今日は人生で最高の一日にしよう。

 

「今日のデートは存分に楽しみましょう」

 

 ガネーシャ・ファミリア主催の怪物祭。年に一度開かれる催し物で、闘技場を一日貸し切って、ダンジョンから引っ張ってきたモンスターを調教するらしい。

 間接的な関係者でありながら、縁もゆかりもないと思い切って、知ろうともしなかったが、デートスポットには調度良い。

 仮にも冒険者なので書物では得られないモンスターの生体を知るまたとない機会。一石二鳥のチャンスを逃す手はない。

 

「ふっふっふ、このボクを除け者にして楽しもうたってそうはいかないぜ!」

 

 両手に華。ベルの腕を絡ませるようにして左腕にヘスティア、右腕にめぐみんが身体を引っ付けるようにして街中を歩いていた。

 ベルも周囲から感じる猛烈な敵意や羨ましいぞと言わんばかりの視線、ヘスティアの膨よかな胸とめぐみんから感じる甘い匂いに心躍らされて参っていた。

 

「美少女二人も侍らせてベルも隅に置けませんね!」

「……胃に穴が空きそうです……」

「何がそんなに不満なんだい?」

 

 これに肯定して周りの目を気にしなくなると、いよいよ殺意を向けられていたことだろう。彼の不安そうな顔に同情する一部の人達がいるだけでも今のベルにとってせめてもの救いだった。

 

「険しい顔をしていますよ? 男の夢だったのではないのですか?」

「僕の夢はもっと健全的な出会いですよ!?」

 

 東のストリートでは周りの人達が、ベル達のことが気にならなくなるほどお祭り騒ぎに興じていた。ベル達もお祭りの熱狂に呑まれて、アビリティが若干伸びると噂されているキャベツ炒めやじゃが丸くんを三人で食べたりなど、食べあるきデートとなりつつあった。

 

『ガァアアアアアアアア!!』

 

 夢の終わりは唐突だ。人の群れは絶叫を放って散らばっていく。僕は二人の手を取ると身を翻して逃げ出した。

 

 ―――――

 

 シルバーファング。11階層に生息するモンスターでLv.1の冒険者が単独で倒せる相手では到底ない。そんな強敵に追い掛け回される駆け出し冒険者2名と神様1柱。

 事の発端は考えるまでもなく、フィリア祭の準備のため地上へ持ち出されたモンスターの脱走だろう。理屈は理解できるが、興奮状態のシルバーファングが執拗に三人を、主にヘスティアを付回しする理由がまるで浮かばない。

 

「ヘスティアのお知り合いですかぁ!」

「あんなモンスター知るもんか! ボクは無実だ!」

 

 どこをどう走ったかなんて覚えていない。気に留める余裕すらない。最近では命を賭けるダンジョンすらここまでの恐怖を感じたのはミノタウロス以来だ。

 左を振り向くと息も絶え絶えなヘスティア、背後にはシルバーファングの姿は見えないが歩みを止める気はさらさらない。

 

「シルバーファングは嗅覚を頼りに追ってきている可能性があります。ほとぼりが覚めるまでここから遠く離れたダンジョンにテレポートするのはどうでしょう」

「駄目だ! 神様は……ダンジョンに入れないッ! 許可もなくダンジョンから地上へ戻ると嫌でも悪目立ちします!」

「四の五の言ってる場合ですか!」

 

 全員の安全を最優先にするならテレポートしてダンジョン1階層まで転移すればいいだろう。シルバーファングの嗅覚は線で相手の居場所を捉えているので、点で移動する相手には意味を成さない。

 身の安全は確保できてもヘスティアの立場を著しく悪くする。事情を知るベルが反対する所以だ。敵の姿が見えなくても臭いを線で追ってきているので油断もできない。

 ヘスティア・ファミリアの立場が悪化せず、身の安全が約束された計画。ヘスティアを置いてベルと二人でテレポート。

 浮かんだ邪念を即座に切り捨てる。主神を見捨てて逃げるなど人生最大の汚点だ。浮かんだ事実すら唾棄すべき邪悪でしかない。

 

「ベル君、駄目だ! この先は……!」

 

 ヘスティアの悲痛な叫びを聞いて意識を目先へ向ける。その先にはダイダロス通りが、一度迷い込んだら二度と出られない言われている、オラリオに存在するもう1つの迷宮。

 人を惑わす性質だけならダンジョンよりよっぽど悪質、人工の迷宮と呼ばれる貧民層が住まう広域住宅街。複雑怪奇な迷路では、いつ袋小路に出くわして追い詰められるか分かったものではない。

 

『グガァ!』

「――ッ!? 迷っていられません!」

 

 三人がダイダロス通りに突入すると闊歩する住人がちらほら見えた。誰もがシルバーファングに目の色を変えるとダイダロス通りから姿を消した。

 シルバーファングと鬼ごっこしてから暫く、奴の目を盗んで逃走する我々の前に、隣の居住区に出られるトンネルを発見する。

 めぐみんとヘスティアの両名は、掴まれていた片手を前に押し出される格好になった。思いがけない行動に驚きを隠せないめぐみんとヘスティア。

 

「これは何の真似です!?」

「ベル君、どうしたんだよ……?」

 

 感情を消し悟った表情をするベルと乱れた呼吸を整えようとするヘスティア。嫌な予感が渦巻き軽い頭痛を覚えるめぐみん。

 彼女たちの問いに答えず、ベルは封鎖用の鉄格子を固く閉じる。鉄格子が閉まり切って、ベルと私達の間に冷たい溝が深まる。

 

「……ごめんなさい。神様、めぐみんさん……!」

 

 彼はそう言うと踵を返して走り出す。彼の向かった先はシルバーファングの唸り声が答えを教えてくれた。ベルは逃げるための戦いよりも、逃がすための戦いを選んだ。

 大切な人を守るために。めぐみんが気の迷いで思い描いた最低最悪のシナリオ。真逆の道を選びながら最愛の女を泣かせるバッドエンド。

 全てを理解したヘスティアは身体の力を抜いてその場にへたり込む。ベルの名前だけをブツブツと呟き、その顔は絶望一色に染まりきっていた。

 その様子にめぐみんの声が届くことは一生ないだろう。ベルが命をかけて守ろうとした少女は、彼が死んでしまった世界こそが間違っている。

 彼のいない世界に意味はない。救いなんていらないと言わんばかりに。彼の期待に答えようとしない結末を選ぼうとしていた。




絶対キャラとか設定とかブレまくってるよね……。闇堕ちオルタ・ヘスティア。
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