最優の魔法使いめぐみん!   作:ダンまち×このすば

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 シリアス成分多め!(キャラ崩壊注意)


世界と現実と憧景 - C

【ベル・クラネル視点】

 

 デートのために軽装で、武器の一つも携えず、ベル・クラネルにシルバーファングを倒せるだけの力もない。それでも誰かを守ろうとするだけなら自分でもできる!

 

『……ゥ?』

「こっちだッ!」

 

 シルバーファングの注意を引いて、ヘスティアとめぐみんから距離を引き離そうとする。両名を見つけられないモンスターは首をひねり、ベルの挑発に乗せられる。

 

『……ガァアアアアアアアアッ!』

 

 背後から聞こえる獰猛な雄叫びが振り返らずともベルを追走してきているのだと実感させる。逃げ足だけには自信のあるベルも格上モンスターに隠れようともせず、振り切らずに逃げ続けることなど不可能だった。

 

「――ゥグアッ」

 

 シルバーファングから繰り出された渾身の一撃が無防備な背中を強烈に猛打する。たった一撃浴びただけで身体は宙を浮き、前方に吹き飛ばされながら何度も地面をバウンドした。

 痛みよりも先に気持ちの悪さがベルを支配し、デートで食べたものが勢い良く吐き出される。そんなベルを気に留めず、シルバーファングはゆっくりとベルに近づく。

 これまでか。諦めに近い感情を抱きながらも、体調不良から不快感を抱きながらも、彼は1つの達成感に浸っていた。

 めぐみんとヘスティアは無事に別の居住区まで避難できただろうか。最後まで他人を思い続けながら目を閉じる。

 瞼の裏に浮かぶのは祖父が死に、オラリオで過ごしてきた輝かしい日々。灰色だったベルの世界が色づき、貧しいながらも充実した毎日。

 ベルが選んだ道。めぐみんが進ませた道。彼は英雄に憧れるただの少年。そのはずだった。今の彼は憧れを抱かない。

 彼は英雄を目指さず、英雄に成ろうともしない。少女の英雄であろうとする。仮定をすっ飛ばし結果を得る。知りもしない誰かに憧れず、自分の手の届く誰かを守る英雄でありたい。

 

『勝手に自己完結しないでください! 死ぬにはまだ早すぎます!』

「……えっ?」

 

 重い瞼を開ける。幻聴なら幻覚を見せないでくれ。目の前の少女はベル・クラネルの期待を粉々に粉砕した。ベルの望んだ物語は幕を閉じた。

 

 ―――――

 

 無抵抗なヘスティアの手を引っ張りながら薄暗いトンネルを疾走するめぐみんだったが、幾らヘスティアに言葉を投げかけても返事がない。

 

『帰ってきてくれ』『一人にしないでくれ』『寂しいよ』『ベル君』

 

 トンネル内で木霊するヘスティアの声はベル・クラネルを求める懺悔。神の祈りは世界に届かず、裏切られ続けるだろう。

 

「いつまで腑抜けてるつもりですか!? 私達は家族なのでしょう!? 迎えに行きますよ!」

「でも……ボクはベル君の足を引っ張ってしまう」

 

 やっと耳を傾けたと思えば、口から吐き出される言葉は自虐行為。めぐみんの言葉を聞いているようで、その実、めぐみんの言葉はヘスティアの心に届いていない。

 

「ボクのせいでベル君が危険な目にあってる。ボクがいなければ、ベル君とめぐみんは一緒に逃げられた」

 

 正論ながら的を外れた言葉に溜息を飲み込む。迷惑だからどうした? 足を引っ張ったから何が悪い? 絆で繋がる家族同士が迷惑かけて、足を引っ張り合っても、怒り叱ることはあれど、責任を追求し、責められる筋合いはない。

 

「それを言い出したら、ベルだってヘスティアを悲しませて、心配させてる」

「……」

「子は親を困らせる者。子供の反抗期に拗ねても仕方がありません」

「――」

「ベルは私やヘスティアに迷惑をかけず、私達だけ助かる選択をしました。そんな綺麗事だけを並べた結末なんて受け入れられないから、ヘスティアは立ち止まっているのでしょう? それは私も同感です。勝手に助けて勝手に死ぬなんて認められません。だから……私は、ベルとは真逆の道を、皆に迷惑かけて、仲良く怒られながら笑い合える明日を目指します!」

「……めぐ、みん?」

 

 ヘスティアの顔に生気が、瞳に光が宿る。その様子にあと一息だと悟っためぐみんは、飴と鞭を使い分けて畳み掛ける。

 

「それにベルが死んでもヘスティアは1人じゃありませんよ? 私がいるじゃないですか」

「めぐみん!?」

 

 ヘスティアが正気を取り戻し、めぐみんも軽い冗談が言えるほど余裕が生まれる。二つの影が常世の闇を駆け抜け、一筋の光を目指して疾走する。

 

 ―――――

 

「めぐみんさん!? なんで戻ってきたんですか!」

「女を泣かせた駄目男ッ! 耳を澄ませてよく聞きなさい! 貴方は間違っている! 貴方が教えてくれた家族を失った気持ちを……ヘスティアに同じ思いをさせる気ですか!」

「……ッ!」

 

 シルバーファングに追われながら、ベルの疑問とめぐみんの説教が木霊する。ベルと出会って間もない頃、彼から聞かされた祖父の顛末を持ち出す。

 ヘスティアは足を引っ張らないように隠れているが、二人が危ないと感じたらモンスターを惹きつけると言っていた。

 

「いつまで逃げても敵は待ってくれませんよ? 追われている以上、戦わなければ生き残れません。敵わない。なんて妄言に耳を傾けるほど余裕も残っていません。今の私たちに残された選択肢は勝つか、負けるかの二択でしょう?」

「――でもッ!」

「武器がない。手段がない。策がない。だったら、私を使ってください! 貴方が勝ちたいと望めば、私がベルを勝たせてあげます!」

 

 ベルでは勝てないと銘打っていながら、自分がいればベルは勝てると進言する。その大胆な発言に驚きを隠せないベルだったが、容赦ないめぐみんの一言で、揺れ動く感情の逃げ道は塞ぎ込まれる。

 

「ヘスティアが泣いています。さっさと倒して私達の主神を迎えに行きましょう!」

「……ッ!」

 

 泣き虫な神様。彼女を泣かせてしまった私達が、彼女を泣かせている敵を排除しなければならない。守ると誓った相手を泣かせて、英雄気取りも甚だしい。

 渋い顔をしていたベルの表情に闘争心の火が灯される。彼女の言葉に根拠はない。彼女の激励がベルに活力を与えて、何度も窮地を救ってきたが、今のめぐみんから感じる頼もしさはそれだけでは言い表せられない自信の表れが滲み出ていた。

 

「11階層のシルバーファング。なんだ雑魚じゃないですか。私達の大将が困り果てていますよ? さっさと倒してしまいましょう」

「……そうだ。僕はめぐみんさんや神様たちを守るために戦ってるんだ。皆を残して、自分一人が犠牲になっても意味なんて無いんだ!」

 

 何を勝ち誇った顔をしている? 何を追い詰めたと勘違いしている? 勝利の女神はヘスティア・ファミリアに微笑んでいる。

 

「ベル・クラネル。私はこんな相手に負けてる余裕はありません。私を、家族を信じて下さい! 爆裂魔法(エクスプロージョン)の詠唱を終えるまで、時間稼ぎをお願いします!」

「――はいッ!!」

 

 ―――――

 

【ベル・クラネル視点】

 

 爆裂魔法(エクスプロージョン)。実際に見たことはないが、聞いた話では高い火力を誇る攻撃魔法で、ダンジョンを倒壊させるほどの威力を秘める危険な魔法らしい。

 頭の隅に追いやっていた情報を引き出し、今は目の前のシルバーファングに意識を向ける。爆裂魔法(エクスプロージョン)の準備が整うまで目前のデカ物に立ち向かわなければならないのだ。

 先ほど背筋に食らった重い一撃の痛みが収まることを知らず、ベルの動きを鈍らせる。丸腰のベルに敵の攻撃を立て続けに受けれるだけの体力も、ダメージを与えられる武器もない。

 言い換えれば、身軽な状態だからこそ、今のベルでもシルバーファングと渡り合うことができる。ダンジョンで戦えば条件も違ってくるだろうが、時間稼ぎするだけなら申し分ない。

 

『グガァッ!』

「僕を舐めるな!」

 

 めぐみんを巻き込む横薙ぎに飛び乗り、彼女に攻撃が当たるよりも先にシルバーファングの顔面を蹴り上げる。こちらの攻撃はまるで通じないが、怯んだ横薙ぎは彼女が詠唱中でも避けられる速度まで低下した。

 シルバーファングもお返しとばかりに、もう片方の手で着地するまで無防備なベルを、ハエ叩きするように地面へ叩きつける。

 背筋の一撃と比べれば屁でもない傷も、数を増やせば無視できない。持久戦に持ち込む筈が、戦いが長引くほど不利になるのも自分達なのだ。

 起き上がろうと足に力を入れると激痛が走る。自分の足を見たベルが顔色を真っ青にして表情を引きつらせる。最悪のタイミングで足を潰されたのだ。

 その場から動かなくなったベルを怪訝そうに眺めたシルバーファングが痺れを切らして拳を振り上げる。思わず目を背けたくなる一瞬の出来事が終わりを告げる。

 

「ベル、ご苦労様です! 何という絶好のシチュエーションでしょう! 貴方との出会いに感謝を! シルバーファング、貴方との鬼ごっこもこれで終わりです!『エクスプロージョン!』」

 

 ベルの世界が爆炎の光に包まれる。解き放たれた輝きが住宅区の窓という窓ガラスを砕け散る。割れたガラスが飛び散る中、地面を揺らす轟音がシルバーファングを容易く圧殺し、付近にいたベルも吹き飛ばされた先で背中を打ち付ける。

 遠のく意識の中、最後に目にした光景は、想像絶する生々しい破壊の爪痕。そして不敵にほくそ笑むめぐみんが倒れる瞬間だった。

 

 ―――――

 

【レフィーア・ウィリディス視点】

 

 ロキ・ファミリアに所属するレフィーア・ウィリディス、ティオナ・ヒリュテ、ティオネ・ヒリュテの三名はガネーシャ・ファミリアから救援要請を受けたロキからアイズ・ヴァレンシュタインが討ち漏らしたモンスターを駆逐する役目を押し付けられた。

 事の発端はガネーシャ・ファミリアが怪物祭で披露するモンスターを逃がしてしまったこと。アイズは敵を討ち漏らすどころか的確に屠っているので、援護無用と判断したレフィーア達は家屋の屋根手伝いに向かった。

 その道中で地面から出現した顔のない蛇に酷似する巨大なモンスター。レフィーアを後方待機、ティオナとティオネが敵の体当たりを回避して拳と蹴りを叩き込んだが、凄まじい硬度の皮膚に阻まれて陥没させたばかり。

 

『解き放つ一条の光、聖木の弓幹。汝、弓の名手なり』

 

 魔法効果を高める杖もなく、片腕を突き出して呪文を編む。アイズは常日頃から武器を携帯し、ティオナとティオネは怪物祭観戦の邪魔になると判断して装備を全て置いてきたのだ。

 目標はアマゾネス姉妹に夢中でレフィーアが眼中に入ってない。山吹色の魔法陣を展開しながら速やかに魔法を構築する。

 

『狙撃せよ、妖精の射手。穿て、必中の矢!』

 

 解放前に魔力を集中した直後、それまでこちらに無関心だったモンスターがレフィーアに振り向いた。その異常な反応速度にレフィーアは顔を真っ青にして身体を震わせる。

 

「――ぁ」

 

 地面から伸びる黄色の触手。無防備な腹に尖った触手が叩き込まれる。体内から破裂音が鳴り響き、唇から血を吐き出す。

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』

 

 顔が咲いた。毒々しい花弁が開かれる。蛇と思い込んでいた細長い胴体は茎、顔のない頭部は蕾だった。醜悪な僧帽を晒す食人花はレフィーアへ敵意を向ける。

 嫌だ、嫌だ、もう嫌だ。颯爽と現れる黄昏れの少女を幻視する。また守られるだけの存在に成り下がるのか。花開く牙が迫ってきて――。

 その口を止める。食人花が放っていた悪意の重圧から開放される。レフィーアの背後に視線を向けているが、その先には何もない虚空。

 アマゾネス姉妹の行動を妨害していた触手すら退けた食人花は何もない虚空に確固たる敵意を向けて触手を伸ばす。

 ティオネに抱き起こされたレフィーアは目撃する。背後の空間が捻じ曲がり、触手を全て焼きつくした爆炎が食人花すら飲み込んでいくさまを。

 

「……ぇ?」

「めぐみんの悲鳴が聞こえたかと思って駆けつけてみれば、モンスターが街中で野放しにされているのなんて……」

 

 誰もいないと思っていた空間から一人の少女が姿を現す。透明状態(インビジビリティ)になれる魔導具が存在するが彼女がそれを使った痕跡はない。

 モンスターを含めて注目を浴びていた少女は軽い溜息をつくと背を向けて立ち去ろうとした。背後の巨体が最後の力を振り絞って彼女に襲い掛かるまでは。

 

「魔力に反応する新種のモンスター……めぐみんには荷が重いわね『ライト・オブ・セイバー!』」

 

 何を言っているのか理解できないほどの早口で構築されていく高速詠唱。長文詠唱を三秒で済ませた彼女の右手から光の刃が出現する。

 肥大化する光はモンスターを飲み込むと灰も残さず抹消した。その光景に誰もが息を呑む。少女はモンスターの死亡を確認すると再び背を向けて立ち去ろうとした。

 

「あ、あのっ!」

 

 呆気に囚われていたレフィーアが我に返り、お礼を言おうと少女に声をかけようとして、その現象は何の前触れもなくオラリオを震わせた。

 思わず耳を塞ぎたくなる轟音が鳴り響き、子供を吹き飛ばしかねない強風が周囲を震わせる。ダイダロス通りに爆炎の柱が立ち上り、その火花がオラリオを覆い被さる。

 

「まさか……爆裂魔法(エクスプロージョン)!? こんな街中で使ったの!?」

 

 驚愕の表情を張り詰める少女は、レフィーアの言葉を無視してダイダロス通りまで走り去ってしまう。レフィーアを介護するティオネは兎も角、ティオナとモンスターを発見して駆けつけたアイズは少女と同じくダイダロス通りに向かって走りだした。




 やっとめぐみんが人物像に収まってきました。
・お調子者・常識人っぽい(抜けてるところあり)
・カズマに説教する(今回の説教はキャラ像と乖離)
・デレがヤバイ
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