魔法少女リリカルなのは Sunlight   作:朱槍

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復活祭その2!!


第2話 追憶

???

 

此処は何処だろうか?

オレは今よく解らない空間を漂っている。

確か碓氷を追うために次元の裂け目に突入したとこまでは覚えてる。

ということは此処は次元の狭間か?

それとも無茶な突入して死んで死後の世界か?

そんな事を考えていると目の前に映像が流れ出す。

 

―生まれて両親を見上げている記憶―

 

―小学校に入学した時の記憶―

 

―まひろと縁日に行った記憶―

 

―中学校に入学した時の記憶―

 

―修学旅行で馬鹿騒ぎした記憶―

 

―銀成学園に入学した記憶―

 

―六舛、岡倉、大浜と出会った記憶―

 

懐かしいな・・・・。

というか、これは走馬灯?夢?

そんな事を考えていると・・・

あの運命の出会いの記憶が流れ始めた。

 

『あのコ、気付いてない!?』

 

『シャァァァァ・・・』

 

『危ない!』

 

ズガアッ!!

 

『しまった、巻き込んだ!!』

 

―勘違いで飛び込んで殺された記憶―

 

『キミは死んだ、もう心臓は使い物にならない。』

 

『・・・・・・。』

 

『事態を測らず力量を省みず。

 考えもなしに飛び込むからだ。

 ・・・けれど私を助けようとしたのだな・・・

 キミに少し興味が湧いた。

 これは人間の精神の深い所、本能に依って作動する。

 これを心臓の代用品にして生存本能を揺り起こす。

 キミはもう一度生きる力を手にする。

 そして同時にもう一つ別の力を手にする。』

 

―斗貴子さんに核鉄を与えられ命を救ってもらった記憶―

 

『まひろとオレの命は返してもらうぞ!!』

 

『武・・・武装錬金・・・!!

 何故、貴様如きがソレをォォォォ!?』

 

―初めて武装錬金を発動させた記憶―

 

『そんな・・・あんな化物がまだ。』

 

『思ったより悪い状態だ。

 今度こそキミは手を引け!』

 

『いや、だったらなおさら引けない。

 まひろや六舛達が危ない!』

 

『・・・・・・。』

 

『オレはキミがくれた戦う力を持っている。』

 

―自らの意志で戦いの世界に飛び込んだ記憶―

 

『そして!

 自分の力では命すら保てない最弱のイモ虫!

 けど彼は見つけてしまった!!

 偉大なる錬金術の力を!!』

 

―初めて蝶野と対峙した記憶―

 

『勝手と承知してる・・・が。

 一つだけ頼み・・・が・・・ある・・・。

 創造主を・・・。』

 

『殺さないよ。

 最初からそんな気はない。

 止めるだけだ。』

 

『・・・それを聞いて・・・安心して死ねる・・・。

 ・・・安心・・・して死ね・・・る・・・・・・か・・・。

 そん・・・な死があるとは・・・知らなかっ・・・た・・・・・・。』

 

―鷲尾と蝶野を殺さないと約束した記憶―

 

『バカな。

 不完全とは言え超人の俺が。

 ただの人間の貴様などに・・・。』

 

『ただの人間だけど命懸けの戦いをくぐり抜けてココに来たんだ。

 だから 、今まで自分では戦わなかったオマエより少しだけ強くなれた。』

『・・・フン、で。

 強くなったお前は俺を倒してどうする?

 ホムンクルスになった俺は元には戻れないし人食いも止められない。

 ましてやあの女の解毒剤の鍵はもう腹の中だ。

 糞に混じって出るまで待つか?

 さあ お前は俺をどうする?』

 

『すまない、蝶野攻爵。』

 

『(嗚呼―俺の名前・・・・・)謝るなよ。偽善者。』

 

―斗貴子さんを救う為、これ以上犠牲者を出させない為、蝶野を殺した記憶―

 

『オレ頑張ったんだ。

 でも・・・オレ偽善者なのかなぁ・・・・・・。』

 

『カズキ・・・。』

 

『善でも!悪でも!

 最後まで貫き通せた信念に偽りなどは何一つない!!

 もしキミが自分を偽善と疑うのならば、戦い続けろ武藤カズキ!!』

 

―蝶野を殺した事で落ち込んでいたオレに道を示し錬金の戦士にスカウトしたブラボーの記憶―

 

『キミは妹や友人とコイツらと、どちらを守りたいんだ!』

 

『どっちも!

 オレはどっちも守りたい!!』

 

『フ、フザけるな、ちゃんと選べ!!』

 

『無理!!

 命の“取捨選択”なんて俺には無理!

 拾える命は全部拾う!』

 

―人間だった先輩達を守る為、斗貴子さんに人殺しをさせない為、斗貴子さんと争った記憶―

 

『どうする?

 全員でやらないと開かないぜ。』

 

『うるさい!』

 

『片手に?』

 

『ピストル。』

 

『あ、まだ進めないで。』

 

『心に?』

 

『花束。

 頼む、斗貴子さん!』

 

『・・・・・・。』

 

『唇に?』

 

『火の酒。』

 

『背中に?』

 

『今だ!』

 

 

 

 

 

『『『人生を!!』』』

 

―全員でL・X・Eのアジトに決戦に行った記憶―

 

『・・・斗貴子さん。

 この机・・・。』

 

『ああ、私達を狙ったものじゃない・・・。』

 

『オラオラ油断してんじゃねーよ!

 てか、イチャついてんじゃねー!

 みんながしっかり見てんだぜ!』

 

ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!

 

『さっきはありがとーー!

 ちょっとカッコ良かったよーー!』

 

ワー!ワー!

 

『ごめんなさい!

 私、誤解してた!

 本当にごめんなさい!』

 

ワー!ワー!

 

『頑張れおに・・・じゃなくて知らない人ーーー!!』

 

『もう誰も間違えねェ!

 お前達が”俺達みんなの味方”なら俺達みんなが”お前達の味方”だぜ!』

 

―みんなの声援で力が湧いた記憶―

 

『戦う!

 戦う!

 戦う!

 戦う!

 戦え!!』

 

『カズキッ!?』

 

(二ヵ月前の春の夜・・・私はカズキに何をした?何をしてしまった・・・・・・!?)

 

『逝くのはオマエ独りだ!

 ヴィクター!!』

 

『・・・そうか、キミはオレと同じ・・・。

 ”黒い核鉄”を命に変えた者だったか。』

 

―ヴィクター化した記憶―

 

『善でも悪でも。

 最後まで貫き通せた信念に偽りなどは何一つない。』

 

(オレを・・・スカウトした時の言葉・・・・・・。)

 

『俺の信念は一人でも多くの命を守るコト。

 そのためなら戦士殺しも厭わない。

 俺は悪にでもなる。』

 

―ヴィクター化したオレに再殺命令が下りブラボーと戦った記憶―

 

『大方、キミのコトだ。

 六週間後もし全てが徒労に終わってしまった時は独りで自分に始末をつけるつもりだったのだろう。』

 

『!?』

 

『そんなコトはさせない!

 私はキミから離れない!

 これから六週間キミと私は一心同体。

 キミが死ぬ時が私が死ぬ時だ!

 いいな・・・。』

 

『わかったよ。

 でも、一方通行の一心同体なんかゴメンだ。

 だから、斗貴子さんが死ぬ時がオレが死ぬ時だ!!』

 

―斗貴子さんと一心同体を約束した記憶―

 

『オマエさ。』

 

『ん?』

 

『もし運良くヴィクター化を阻止出来たら。』

 

『たらってなんだよ。』

 

『出来たら錬金戦団の戦士に戻る気か。

 一度自分を殺そうとした者達と本当に共に戦えると思っているのか?』

 

『・・・・・・・少なくとも・・・。

 同じ気持ちを持っている人達とは戦える。

 守りたいモノが同じならきっと必ず戦友になれる!』

 

―剛太とほんの少しだけ解り合えた記憶―

 

『答えは変わらない。

 俺はカズキを葬りヴィクターを斃す。

 戦士長キャプテンブラボーの任務を果たす。

 果たした後、部下殺しの罪人【防人 衛】として自分自身に始末をつける。』

 

『!』

 

『お前一人に死を押しつけたりはしない。』

 

『それって・・・』

 

『まさか・・・・。』

 

『だからカズキ。

 今一度ここで問う。

 命を・・・諦めてくれないか?』

 

『オレだけじゃなくてブラボーまで死ぬなんて言うなら。

 だったら尚更諦められるか!!

 キャプテンブラボー!

 オレはアンタに勝つ!!』

 

大事な存在を死守せんとする強い意志・・・・・・

 

『勝ってアンタを死なせはしない!!』

 

―ブラボーとお互いの信念をかけて戦った記憶―

 

『ブラボーこれは?』

 

『戦士長!?』

 

『お前達には随分と辛い目に遭わせてしまったな。』

 

『ブラボー!』

 

『戦士長!』

 

『すまなかった。

 許してくれ。

 斗貴子。(俺の過去の希望と・・・)

 カズキ。(そして未来の希望・・・)

 生きろよ。』

 

―火渡から命をがけで護ってくれたブラボーの記憶―

 

『つまり仮面の男は二人一組で。

 この奥に、本人と言うべきもう一人が・・・・。』

 

『初めまして。

 私が黒い核鉄の開発者・・・ヴィクターの妻アレキサンドリア。

 そして、その子は私達の娘ヴィクトリアです。』 

 

―ヴィクターの過去と黒い核鉄の秘密を知った記憶―

 

『黒い核鉄の力を全て無効化する白い核鉄!!

 黒い核鉄の力を-とするのならこの白い核鉄の力は+。

 二つの力を一つに合わせれば力は相殺し合い0となる!!』

 

『これを使えばヴィクターの問題も。』

 

『カズキンのコトも全て解決!』

 

『斗貴子さん?』

 

『良かった・・・。

 本当に良かった・・・・・・。』

 

『答えろのーみそ。

 これは一体、何を基盤にして開発した?』

 

『キミは本当に察しがいいわね。

 冷徹で残酷な程に・・・・・・。

 冊子の通り使ったのは試作型と同じ黒い核鉄。

 三つのうちの最後の一つ黒い核鉄の”Ⅱ”。』

 

『今すぐ一から・・・黒い核鉄の精製から始めてもう一つ造るまでにどれ程かかる?』

 

『黒い核鉄の製法はもう100年前に失われてるの。

 この老いた脳から100%再現するのは残念だけどほぼ不可能・・・。

 つまり。

 二人の”ヴィクター”に対して白い核鉄は一つ!

 元の人間に戻れるのはヴィクターか武藤カズキのどちらか一人!!』

 

―ヴィクターと自分のどちらを人間に戻すか選択を余儀なくされた記憶―

 

『どっちを選ぶか決まったか?』

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・。』

 

『そうか、なら今のうち一つだけ言っておく。

 お前がどっちを選ぶにしろ。

 絶対に先輩に辛い想いをさせないと誓うなら。

 俺はいくらでもお前の力になってやる。』

 

『!』

 

『守りたい者が一緒なら俺達は戦友だ。』

 

―剛太と解り合った記憶―

 

『お前・・・白い核鉄をもう一つ作る気か?』

 

『俺の目的は!

 「人間・武藤カズキを蝶・サイコーの俺が斃す」!!

 そのためには白い核鉄が必要不可欠!!!』

 

『でも、アレクさんはもう作るコトは出来ないって・・・。』

 

『フン!

 俺は人間だった頃会う医者全てに余命幾許と宣告されて来た。

 だが今ではこの通りもうビンビン!

 選択肢なんてのは他人に与えられるのではなく自ら作り出していくものだ!

 武藤お前がどの様に決めようと俺はお前との決着を諦めない!』

 

―蝶野が決着を諦めていなかった記憶―

 

『決まったよ斗貴子さん。

 (守りたい・・・・・・。)

 でも・・・まだ少し勇気が足りない。』

 

『そうか・・・。

 それなら足りない分は私から補え。』

 

『ウン。』

 

『いつかの夜に言った通りキミが死ぬ時が私が死ぬ時。

 キミと私は一心同体だ・・・・・・。』

 

―斗貴子さんと一心同体を誓った記憶―

 

『武藤!

 先輩!!』

 

『『!!』』

 

『また任務?』

 

『こんな急に・・・。

 でも仕方ないっか。

 お兄ちゃんは”みんなの味方”だもんね。』

 

『まひろちゃん・・・。』

 

『時間がありません、お早く!』

 

『まひろ。

 今度は少し長いお別れになるけど。

 必ず帰ってくるから心配するな。』

 

―まひろに別れを告げた記憶―

 

『来るぞカズキ!

 手を放すな!

 キミと私は一心同体キミが死ぬ時が私が死ぬ時だ!』

 

『・・・・・・・・。』

 

『え?』

 

『ゴメン斗貴子さん。

 その約束守れない。

 本当にゴメン。』

 

『カズキッ!!!』

 

『武藤ォ!』

 

『武藤カズキィィィッ!!』

 

『うおおおおおお!!

 エネルギー・・・全開!!!!』

 

―誓いを破った記憶―

 

『フェイタルアトラクションの特性は俺自身の体には直接作用しない。

 いや・・・それ以前に二人分の重量を打ち上げるエネルギーは残っていない。

 行け。

 お前が守った者達がお前の帰りを待っている。』

 

『ダメだ!

 オマエも来るんだ!

 ヴィクトリアが待っている!!

 もう戦う意志がないならヴィクター、共に生きる道を新しく探そう!!』

 

『・・・・・・・どうなっても知らんぞ。

 (同じが如き境遇の下・・・・。

 絶望にしがみついた男と・・・。

 希望を手放さなかった男・・・。

 ”絶望”が”希望”に敵うはずなどない・・・・・・・。)』

 

―ヴィクターと月を脱出した記憶―

 

『カズキ!!』

 

『斗貴子さん!!』

 

―キミが死ぬ時が私が死ぬ時―

 

―いや・・・キミと一緒に生きていく― 

 

―もう離れない―

 

 

 

 

 

―今度こそキミと私は一心同体だ!!―

 

 

 

 

―斗貴子さんと共に生きていくことを誓った記憶―

 

『・・・蝶野。

 オマエまだ人を喰いたいとか。

 この世界を燃やし尽くそうとか思っているのか?』

 

『!』

 

(・・・食人衝動がないって聞いていたけど、どうやら本当みたいね。)

 

(主の望みはただ一つ。

 武藤カズキとの決着。)

 

『・・・蝶野。

 オレはオマエを二度も殺したくない。

 これがオレが選ぶオマエとの決着だ。

 決着だ。

 命のやりとりはもうここまでに。

 命を甦らせる武装錬金があったらと思うけど。

 やっぱりそんなのないから。

 死んだ命をしっかり弔ってこれで全部終わりにしよう。』

 

『・・・以前にも増して大層な偽善者振りだな。』

 

『いいよ、それで。

 オマエを殺すよりはずっといい。

 蝶野、オマエの名前はオレがずっと覚えている。

 オマエの正体もずっとずっと覚えている。

 だから、新しい名前と命で新しい世界を生きてくれ。』

 

―蝶野功爵と決着をつけた記憶― 

 

『カズキ・・・・・。』

 

『斗貴子さん・・・・・。

 もしかして・・・緊張してる?』

 

『あ、当たり前だ。

 私は初めてなんだ。

 それに・・・キミを満足させられるか不安なんだ・・・・・。』

 

『斗貴子さん・・・・・。

 オレも初めてだし不安もあるよ。』

 

『え?』

 

『斗貴子さん魅力的だから・・・やさしく出来る自信がない。

 もしかしたら痛い思いだけさせて終わってしまいそうで不安だよ。』

 

『カズキ・・・・。

 ・・・・私を愛してくれ。

 求めてくれ。

 ただそれだけで私は・・・。』

 

『斗貴子さん・・・・・。』

 

―初めて斗貴子さんと肌を重ねた記憶―

 

『うおおおおお・・・・・。』

 

『もう、お兄ちゃん少しは落ち着きなよ!』

 

『けど・・・』

 

『戦団の医療チームを信じろ。

 お前が慌てたところで事態は変わらんぞ。』

 

『そうだけどさ・・・・・・。』

 

『全く目の前をウロチョロと鬱陶しい。』

 

『いや、何でお前は平然とこの場に居るんだよ!?

 此処は仮にも戦団の施設だぞ!?』

 

『なに宿敵の男に子供が出来るんだ。

 祝いにこの俺が蝶サイコーの花火を揚げてやろうと思ってな。』

 

『病院で火薬なんて使うな!!』

 

おぎゃあ・・・おぎゃあ・・・・

 

『!』

 

『おめでとうございます!

 元気な男の子です!』

 

『カズキ行ってこい。』

 

『ウン!』

 

―ソウヤが産まれた記憶―

 

『照星さんが引退・・・・。

 で、次の大戦士長は俺か・・・・・。』

 

『ま、オマエが次のトップなら誰も文句は言わねぇだろ。』

 

『おめでとう防人君。』

 

『柄じゃないんだがな。』

 

『なぁ、ブラボー。』

 

『何だ?カズキ。』

 

『これを機に名前戻したらどうかな。』

 

『『『!?』』』

 

『・・・・カズキ。

 それは無理だ。

 お前も知っているだろ。

 この名前に籠められた意味は・・・。』

 

『わかってる。

 でもブラボーは再殺任務でキャプテンを放棄してまでオレの味方になってくれた。

 だから、ブラボーもう無理をしないでくれ。』

 

『だが・・・』

 

『ブラボーの名はオレが引き継ぐよ。』

 

『ダメだ!!

 それにお前の信念は・・・』

 

『ブラボーの信念とオレの信念が違うことは理解してるよ。

 だけどオレは多くの人を大切な人達を守りたくて錬金の戦士になったんだ。

 だからブラボーが無理をしてるなら見過ごせない。』

 

『カズキ・・・・・・。』

 

『オマエが防人の覚悟を背負う気か?』

 

『オレの性格や信念じゃブラボーみたいなキャプテンにはなれない。

 だから、オレは救える命は全て拾う。

 そんなブラボーを目指すよ。

 ブラボーが嘗て目指した戦士にオレはなるよ。』

 

『救える命を全て救うか。

 防人君がキャプテンなら武藤君は守護者。

 ガーディアンね。』

 

『ガーディアン・ブラボーか。』

 

―ブラボーが防人衛に戻りオレがブラボーの名を引き継いだ記憶―

 

『キミは昔から無理ばかりするな。』

 

『ゴメン。』

 

『ゴメンじゃない!!

 こんな・・・ボロボロになって・・・・傷付いて・・・・。

 ・・・・人間ですらなくなって・・・・・。』

 

『・・・・・・・。』 

 

妊娠とその後の子育ての為に戦えなくなった斗貴子さんの分もオレは戦った。

結果、度重なる戦闘による負傷の高速回復とヴィクター化でオレは簡単に死ねない不老不死になってしまった。

 

―人間を捨ててしまった記憶―

 

『突然ですが新しく家族が増えます!!

 さぁ、こっちにおいで。』

 

『・・・・・智依です・・・・よろしく・・お願いします。』

 

―ホムンクルスに孤児院を襲われ唯一人生き残った少女【智依】を家族として迎え入れた記憶―

 

『父さん。母さん。』

 

『どうしたソウヤ?』

 

『何か相談事か?』

 

『オレ・・・錬金の戦士になりたい!』

 

『『ぶっ?!』』

 

『ソウヤ・・・・・錬金の戦士はなりたいからなるて言うほど簡単なもんじゃないんだぞ。』

 

『大丈夫!

 パピヨンの所で基礎訓練とかは受けてるから!』

 

『あの変態は人の息子に何してくれてるんだ!?』

 

『・・・・・ソウヤ。

 錬金の戦士それも戦闘部隊だよな。

 お前が言ってるのは。』

 

『ウン。』

 

『戦闘部隊がどれだけ危険かも知ってるよな?』

 

コクリ

 

『お前はまだ子供だ。

 この先、やりたい事やなりたいものと沢山出会うと思う。

 その可能性を潰してまで何で錬金の戦士になりたいんだ?』

 

『・・・・父さん。

 智依は・・・ホムンクルスの被害者なんだよね?』

 

『!?

 ・・・・どこで知った?』

 

『パピヨンから聞いた。』

 

『はぁ~、アイツは・・・・。』

 

『アイツが此処に来てもう6年以上経つけど今だに襲われた時の事で苦しんでるみたいなんだ。

 時々アイツの部屋から聞こえるんだ物凄く魘されてる声が・・・・・。』

 

『・・・・・・・。』

 

『オレは・・・・妹を・・・智依を守りたい。

 オレの大切な人達にも智依の様な辛い目にあって欲しくない。

 だからオレは大切な人達を守れる力が欲しい!』

 

『・・・・・わかった。』

 

『カズキ!?』

 

『ただし!

 戦士候補にするのは中学を卒業してからだ。

 いいな?』

 

『!

 ああ!!』

 

 

 

 

 

 

『何で止めなかったんだ?』

 

『昔の自分と重なったからかな。』

 

『昔の?

 ああ、そういえばキミはそうだったな。

 妹と友達を守りたくて平穏な日常を捨てて戦士になったんだったな。』

 

『本当はその平穏な日常を息子に捨てて欲しくないから止めるべきなんだけどね。

 アイツの理由を聞いたらとてもじゃないけど止められなかった。』

 

『・・・・なるからには心身ともに強くなってもらわないとな。』

 

『大丈夫。

 強くなるよアイツは。』

 

―ソウヤが錬金の戦士を目指し始めた記憶―

 

『ブラボーバックブリーカー!!』

 

『みゃぁぁぁぁぁぁ!??』

 

『もらった!!』

 

『甘い!

 ブラボー背負い投げ!!』

 

『ぐはっ!!』

 

『よし、柔軟終わり。』

 

『毎回思うんだけどコレは絶対柔軟じゃない気がする・・・・・。』

 

―ソウヤと碓氷を鍛えた記憶―

 

『父さん、母さん。』

 

『どうした?』

 

『実は、今付き合ってる人を紹介したいんだけど・・・・・。』

 

『・・・・・それは、智依のことか?』

 

『!?

 なんでそれを!?』

 

『あのなぁ、オマエらの親何年やってると思ってんだ・・・・。

 だいたい、智依が壁の後ろに隠れてる時点で怪しいだろ。』

 

『・・・・気付いてたんだ。』

 

『伊達に戦士長を名乗ちゃいないさ。』

 

『もしかして母さんもオレ達の事を?』

 

『カズキが気付いてるんだ。

 私が気付かないはずないだろ。』

 

『あれ?

 斗貴子さん。

 今さらっと酷いこと言わなかった?』

 

『それで、私達に付き合ってる事を話してお前達はどうしたいんだ?』

 

『オレ達が付き合う事を二人に認めて欲しいんだ。』

 

『別に構わないが。』

 

『『・・・・・・・・え?』』

 

『カズキなにか問題あるか?』

 

『別にないよ。』

 

『えっと・・・・お母さん達なんか軽すぎません?』

 

『別に子供の恋人ごっこに口を出すほど私達も暇じゃないだけだ。』

 

『ごっこ・・・・?

 違う!!

 オレ達は本気で!!』

 

『落ち着けソウヤ。』

 

『でも、父さん!』

 

『本気か・・・・。

 なら、お前達はこれからの人生を共に歩んでいく覚悟があるというのか?』

 

『共に歩む覚悟・・・・。』

 

『そうだ。

 言ってしまえば結婚だな。

 確かにお前達は血は繋がってない。

 法律的に何の問題なく結婚出来る。

 だが、世間から見ればお前達は兄妹だ。

 その意味は解るな?』

 

『『・・・・・・・・。』』

 

『世間はきっとお前達を良い目では見ないだろう。

 そして、それは母さんと父さんにも及ぶだろう。

 当然だ。

 恋人同士まで発展した兄妹、それを容認した両親。

 私達は世間でそう見られるだろうな。』

 

『別にオレ達の事は構わない。

 子供の幸せの為なら悪評くらいなんて事ないさ。 

 でも、もし少しでも辛いと思うならやめるんだ。』

 

『兄さん・・・・。』

 

『・・・・オレは智依を守りたくて戦士になった。

 それは兄としてもう妹に辛い思いをして欲しくなかったから。

 でも今は違う!

 オレは智依を一人の女性として守りたい!幸せにしたい!

 父さん達に迷惑を掛けるかもしれない!

 それでも、オレは智依と共に生きていく覚悟はある!!!』

 

『私も一人の女として兄さんを・・・ソウヤを支えていく覚悟は出来てます!!!』

 

『・・・・・・・。

 そうか。

 なら、もう私達から言うことはない。』

 

『しっかり支え合えよ。』

 

―ソウヤ達の関係を認めた記憶―

 

『武藤、話は聞いたぞ。

 あの二人の仲を認めたそうだな。』

 

『蝶野、アイツ等の関係知ってたのか?』

 

『お前の娘が桜花に相談しているの偶然聞いただけだ。』

 

『なるほど。

 ・・・・ん?

 オマエと桜花先輩がいる所っていったら地下ラボだよな。

 なんでそんな所に智依のやつが居るんだ?』

 

『なんだ知らなかったのか?

 去年くらいから娘の方もラボで訓練を受けてるぞ。』

 

『はぁ、アイツもか・・・・・。』

 

『当然だな。

 お前はともかくブチ撒け女は絶対反対するだろうからな。』

 

『オレもアイツが戦士になるのは反対だ。

 アイツのトラウマはオマエも知っていたはずだ。

 何で止めなかったんだ?』

 

『「兄さんを支える為には兄さんと同じ立場にならないといけない。

  過去の辛い記憶なんかで足踏みなどしてられない。」だそうだ。

 それを聞いた桜花も思うところがあったのだろう。

 あっさり訓練の許可してたな。』

 

『そんなことが・・・・・。』

 

『ブチ撒け女と同じ境遇でここまで違うとはな。

 母親と娘の心の純粋差がはっきりと解る。』

 

―智依の成長を聞かされた記憶―

 

『現在49敗中か・・・・。

 このままでは結婚まで半世紀過ぎそうだな。

 一時はこの蝶天才の俺に弟子入りしたくせに随分と無様な結果だな。』

 

『うるせぇよ!!』

 

『ならさっさと勝て。

 手加減してもらってる上に二人がかりで勝てんなど無様でなくて何なんだ?』

 

『智依ちゃん。

 しっかりね。』

 

『はい、桜花先生!』

 

『それじゃあ、確認するぞ。

 カズキ対ソウヤ・智依の1対2。

 カズキを戦闘不能または降参させれば勝利。

 時間切れ戦闘不能になったら敗北。

 勝ったら二人の結婚を認める。

 以上でいいな?』

 

『問題ないよ。

 ソウヤ、智依。

 全力でかかってこい。』

 

『今日こそ勝つ!!』

 

―二人の結婚を賭けて戦った記憶―

 

『大戦士長防人衛の名の下。

 戦士長ガーディアン・ブラボーを次期大戦士長に任命する。』

 

『謹んで拝命いたします。』

 

『カズキ・・・戦団を頼んだぞ。』

 

『任せてくれ。

 ブラボーもゆっくりと休んでくれ。

 そして、お疲れ様。』

 

―ブラボーが引退しオレが大戦士長になった記憶―

 

『斗貴子さん・・・・・。』

 

『カズキ・・・今更だが本当にすまなかった。

 キミを戦いに巻き込み・・・・人間さえやめさせてしまった。』

 

『戦いの世界に入ったのも人間を捨てたのも自分の意志だ。

 斗貴子さんの所為じゃないよ。

 それに後悔もしてない。

 あの出来事のお陰でオレは斗貴子さんにブラボーや剛太に出会い。

 斗貴子さんと結ばれ。

 ソウヤが産まれて。

 智依を引き取り。

 その二人が結ばれ孫まで出来た。

 オレの人生は間違いなく幸せだよ。』

 

『そうか・・・・私も幸せだった。』

 

『母さん・・・・。』

 

『お義母さん・・・・・。』

 

『二人共・・・何時までも仲良くな・・・・。』

 

『ああ。』

 

『はい・・・・。』

 

『オレも今更だな・・・・・。』

 

『何・・・がだ・・・・?』

 

『今になって最終決戦の時に置いてかれた斗貴子さんの気持ちが解った。』

 

『辛いだろ。』

 

『ああ・・・辛い。

 身を引き裂かれるみたいだ。』

 

『そうか。

 私も・・・置いていった・・・・カズキの気持ちが・・・解った。

 辛くて・・・・そして・・悔しいな。』

 

『そっか。』

 

『カズキ、どうか私に囚われないでくれ。

 私は・・・・幸せだった・・・・。

 だから・・・キミも・・・新しい・・・相手と新しい人生を・・・・生きてくれ。』

 

『何言ってるんだよ・・・・斗貴子さん。

 オレの・・・・無茶に付き合ってくれるのは斗貴子さんだけだよ。』 

 

『はは・・・それもそうだな・・・・・。

 カズキ・・・なんだか・・・眠くなってきたな・・・・・。』

 

『!

 そっか・・・寝るまで・・・側にいるから。』

 

『ありがとう・・・・・。

 ・・・カズキの・・・手は・・・・・暖いな・・・・。』

 

『そう?』

 

『ああ・・・・まるで・・・太陽・・・・みたい・・・・・だ。』

 

『斗貴子さん?』

 

『・・・・・・・。』

 

『おやすみ・・・・斗貴子さん。

 そして・・・ありがとう・・・・・。』

 

―斗貴子さんを喪った記憶―

 

『ソウヤッ!!』

 

『ゴメン・・・・父さん。

 油断しちまった・・・・・。』

 

『そんな事はいい!!

 今核鉄で治療する!!!』

 

『なんとか・・・・超・蝶・成体は破壊した。

 ・・・碓氷は・・・・取り・・・逃がしたけど・・・・手傷は・・・ゲホッ・・負わせた。』

 

『わかった!後で聞くから喋るな!!

 (血は止まったけど明らかに血を流しすぎてる・・・このままじゃ・・・・・。)』

 

『なぁ・・・・父さん・・・・・。』

 

『黙ってろ。』

 

『自分の体の・・・・事くらいは・・・解っているつもりだ。』

 

『諦めるな!

 智依達がオマエの帰りを待ってるんだぞ!!

 (何か・・・・何か手があるはずだ!!・・・・・・あった。)』

 

『父さん・・・・何を・・・・・する気・・・・・・だ?』

 

『オレの核鉄をオマエに譲渡する。

 黒い核鉄の治癒力とヴィクター化してエネルギードレインすれば大丈夫だ。

 その後は蝶野を頼れ。

 出力制御をしてくれる筈だ。

 (斗貴子さん・・・・オレももうすぐそっちに行くよ。)』

 

『ダメだ・・・・受け取れないよ。

 そんな事を・・・・すれ・・・ば父さんが・・・・。』

 

『オレはもう十分生きたよ。

 オレの命でオマエが助かるんだ。

 悔いなんてあるはずがない。』

 

『・・・・・ダメだ。

 受け取れない。』

 

『何でだ!?

 オマエは智依や息子を置き去りにする気か!?』

 

『父さん・・・・・いや大戦士長・・・・・。

 戦団のトップが・・・・・・戦士長・・・如きに命を・・・・賭けて良い訳が・・・ありません。』

 

『ッ!!』

 

『それに・・・オレは皆を・・・・大切な人達を守りたくて・・・戦士になった。

 だから・・・・仲間を・・・ましてや父親の・・・命を奪うようなことは・・・・・したくない。』

 

 

 

 

 

(勝機を捨てる気か?

 私のコトいいんだ覚悟は出来ている!)

 

(俺もかまわねぇよ。

 斗貴子先輩の望みだ。)

 

(オレはヤバくなったら自動解除になるからノープログレム。)

 

(ゴメン。

 でも、オレは嫌なんだ。

 オレは多くの人をみんなを守りたい、そう思って錬金の戦士になったんだ。

 だから、この場で負けて終わろうと仲間を傷つける戦いはしたくない。

 信念なんだ。)

 

 

 

 

 

 

『頼む・・・・父さん。

 この信念・・・・だけは・・・最期まで貫かせて・・・・・くれ。』

 

『ああ・・・・わかっ・・た。』

 

『ありが・・・・とう・・・・・。

 父さん・・・・・オレは・・・・・幸せ・・・・・だったよ。

 智・・・・・依達に・・・・すまないって・・・・・・・・・・。』

 

『ソウヤ?』

 

『・・・・・・・・・・・。』

 

『ソウヤ!!

 おい!!ソウヤッ!!!

 ああ・・・ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

 あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

 あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

 あああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!』

 

―ソウヤを救えなかった記憶―

 

楽しかった事。

 

嬉しかった事。

 

悲しかった事。

 

辛かった事。

 

全てが忘れてはならない大切な記憶だ。

 

視界が晴れ始める。

 

どうやら現実世界に戻るようだ。

 

オレはどうなったのだろうか・・・・・?




[次回予告]
何もかも知らない世界。
情報を得る為に巨大な建物に入っていく。
そこで、オレは必死に妹さんを探す少女と出会い妹さんを探すのに協力することにした。
しかし、突然の爆発音と共に事態は急変していくのだった。
次回魔法少女リリカルなのは Sunlight【燃える空港】

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