魔法少女リリカルなのは Sunlight   作:朱槍

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就活中の学生諸君に告げる!!
夢を捨てるな!!安易な気持ちで就職すれば待ってるのは精神の破滅だ!!!
~朱槍心の叫び・第83項~


第4話 炎を越えて

6番・8番ゲート連絡通路

 

スバル・ナカジマ捜索から30分が経過しカズキ達は6番館の人達を無事全員避難させた。

現在は炎に包まれつつある8番館で作業をしていた。

 

「大分、火の手が回ってきたな。

 ギンガ、大丈夫か?」

 

「はい。

 一応、自分の周りに結界を張ってますんで。」

 

「魔法かぁ。

 実際に見ると興味が湧くな。」

 

「私はブラボーさんの力の方が気になります。

 デバイスに似てる気もするけど何か違う感じもしますし。」

 

ギンガはカズキの帽子を見ながら言った。

 

「まぁ、この力の事は他言無用で頼むよ。

 扱いが難しいから簡単に話せないんだ。」

 

「はぁ、わかりました。」

 

「それより、思ったより火の回りが速い。

 急がないと何の対策の無い人は体がもたな・・・・」

 

走りながら捜索をしていたカズキの足が急に止まった。

 

「どうしました?」

 

「今、声が聞こえた気がするんだけど。」

 

「声ですか?」

 

ギンガも立ち止まって耳を澄ます。

辺りには火の粉が爆ぜる音などが聞こえるだけ。

しかし・・・

 

「・・・け・・・・すけ・・さい・・・。」

 

「!?

 今のは!?」

 

「聞こえたか。

 場所は・・・・・上か!」

 

カズキ達は階段に向かって走り出す。

そして、上に向かって階段を上り始める。

しかし・・・

 

「っ!?

 危ない!!」

 

「キャ!??」

 

カズキはギンガを抱えて後ろに飛んだ。

次の瞬間、上から崩れた瓦礫で先程まで上っていた階段が埋まってしまった。

 

「階段が!??」

 

「別の階段は?」

 

「此処から反対斜線の位置です!

 でも、此処まで戻るのにかなりの時間が!」

 

「なら・・・」

 

カズキは拳を握り実を屈めて天井を見る。

 

「道を創るまでだ!!!

 昇天!ブラボアッパー!!!」

 

「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!??」

 

「きゃ!??なになに!???」

 

「きゃぁぁぁぁ!??」

 

カズキのジャンピングアッパーはものの見事に天井を破壊した。

あまりの出来事にギンガと助けを求めてた人達も驚愕の声を上げる。

 

「救護者を発見。

 ギンガ上って来い。」

 

「色々と無茶苦茶ですねブラボーさん・・・・・。」

 

カズキは下の階にいるギンガに手を差し出し引っ張り上げる。

 

「あなた達は?」

 

「アナタ達を助けに来ました。」

 

「管理局の方ですか?」

 

「その協力者といった所かな?」

 

「いや、私に聞かないでくださいよ。」

 

「まぁ、それは置いといて。

 脱出します。

 歩けますか?」

 

「わたし達は平気ですが・・・・。」

 

黒髪のショートの女性が金髪の髪を束ねた女性を見る。

 

「すみません。

 足を挫いてしまって。」

 

「見せて下さい。」

 

カズキは女性の足を見る。

女性の足首の部分が赤く腫れていた。

 

「この程度なら。」

 

特殊核鉄[VS]が収められているポーチを取り外す。

何故態々ポーチごと外したかには理由がある。

それは、核鉄の存在の隠蔽の為。

彼の潜入、変装術、裁縫の師【防人千歳(旧姓:楯山)】。

彼女は嘗てこれを怠った為に【赤胴島事件】の悲劇の原因を作った。

弟子の自分がそれを犯さない為の処置だった。

カズキは女性の足にポーチを押し当てる。

すると足の腫れがみるみる退いていった。

 

「どうですか?」

 

「い、痛くない!?

 動かせます!」

 

「ブラボーさん何なんですかそれ?」

 

「ん~、企業秘密ってことで。」

 

そう言って再びポーチを腰のベルトに取り付ける。

 

「よし、脱出だ。」

 

「でも、どうします?

 大分、火の手が回ってますから余り連れて動き回るのは危険なんじゃ?」

 

「彼女達を下の階まで下ろす。

 その後は壁に穴を開けて外に逃がす。」

 

「待ってください!

 さっきも天井が崩れたんですよ!

 これ以上迂闊に建物を破壊するのは危険です!!」

 

「だが、彼女達を放って置くわけにもいかない。

 ましてや、一緒に行動など危険過ぎる。」

 

「私に任せてください。」

 

そう言ってギンガは手持ちの簡易デバイスを取り出す。

そのまま女性達に手を翳して何かを呟く。

すると女性達の周りにドーム状の膜が形成された。

 

「これで暫くは持つ筈です。

 多分、管理局ももう動き始めてる筈ですから。」

 

「わかった。

 お嬢さん方、少しよろしいかな?」

 

「はい?」

 

「彼女の妹なんだが。

 ショートの青髪で薄いピンクのスカートを履いて。

 茶色いポーチを持ってる10歳くらいの女の子を見ましたか?」

 

「いいえ。」

 

「私もです。」

 

「わたしも見て無いです。」

 

全員首を横に振るう。

 

「わかりました。

 ギンガ移動するぞ。」

 

「はい。

 次は何処へ?」

 

カズキは空港内の地図を見る。

その後、炎の海を見て言った。

 

「エントランスホール中央部だ。」

 

彼等は獄炎の地獄へと捜索を開始する。

 

~Subaru side~

 

熱いよ・・・・。

 

「お父さん・・・・。」

 

苦しいよ・・・・。

 

「お姉ちゃん・・・・。」

 

逸れた姉を呼ぶ。

でも、返事は返ってこない。

 

ミシッ

 

「ふえっ?」

 

何かが軋む音が聞こえた。

瞬間・・・

 

「ふあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!??」

 

壁が爆発した。

小さいわたしは爆風で吹き飛ばされ床に叩きつけられる。

痛い。

でも、心配してくれる人はいない。

辺りには炎が爆ぜる音だけ。

痛さと寂しさで涙が零れ始める。

 

「痛いよ・・・・熱いよ・・・・。」

 

なんで・・・こんな事に・・・・・。

 

「こんなの嫌だよぉ・・・・。」

 

なんで・・・わたしばっかり・・・・・。

 

「帰りたいよぉ!」

 

ピシッ

 

何か聞こえた気がする。

でも、わたしの心はそれどころではない。

 

「助けて・・・。」

 

心が叫ぶ!

 

「誰か・・・助けて!!」

 

わたしをこの状況から助けて!!

 

ガシャン!!

 

わたしの前に大きな影が現れた。

わたしは何なのか気になって後ろを向いた。

すると・・・

 

 

 

 

 

大きな女神の石造がわたしに向かって倒れてきていた。

 

 

 

 

 

「ああっ!??」

 

わたしは迫る恐怖に眼をぎゅっと固く閉じた。

でも、こんな事は何の意味も無い。

きっと次の瞬間物凄い痛みと共にわたしは死んじゃうんだろう。

次の瞬間・・・

 

 

 

 

 

わたしが感じたのは誰かに抱えられた感覚だった。

 

 

 

 

 

わたしは恐る恐る眼を開く。

するとそこには。

私が立っていた場所から離れた位置からの光景だった。

わたしに倒れてくる筈だった石造は何かの魔法で止められていった。

確か・・・捕縛魔法のバインドだったはず。

それから、わたしは辺り見渡す。

そこには・・・

 

 

 

 

 

石造の近くで驚いた顔で此方を見ている【純白の魔導師】。

 

誰かの背中越しでわたしを心配そうな目で見ている【優しい姉】。

 

そして、わたしを護る様にしっかりと抱えている【白銀の戦士】だった。

 

~Subaru side end~

 

時間は彼らが現れる少し前まで遡る

 

「此処の火の回りは他とは段違いだな!」

 

「そうですね。

 火の付いてた倉庫にかなり近かったですしね。」

 

「それよりギンガ平気か?」

 

「大丈夫です。

 すみません。

 足手纏いになってしまって。」

 

現在ギンガはカズキの背中に負ぶさって移動中である。

原因は魔力不足。

人を見つける度にその周りに防壁を張り。

自分の周りには移動しつつ防壁を張る。

まだ、正規の管理局員にすらなれていない少女がこんな無茶をすれば当然の事である。

今は自分の回りに防壁を張るだけで精一杯の状況だ。

 

「気にしなくて良いよ。

 キミの力で多くの人の安全が確保された。

 寧ろ、誇っていいぞ。」

 

「・・・・はい。」

 

暫く進むと中央部の入り口付近に到着した。

中央部は予想通り火の海と化していた。

入り口前には消防隊員らしき人達がいた。

 

「ダメだ!

 ダメだ!!

 こっちじゃダメだ!!」

 

「この先に子供が取り残されてるんだ!

 何とかならないのか!?」

 

「さっき本局の魔導師が突入した!

 救助は彼女がしてくれる!!」

 

カズキは消防隊員達に近づいた。

 

「すまないがこれは一体どういう状況だ?」

 

「うおぉ!??

 何だぁ!?」

 

隊員達に驚かれた。

現在のカズキの格好は特殊核鉄[SS]を発動させてることで彼の師キャプテンブラボーとそっくりなのだ。

つまり全身を隠した怪しい奴。

驚かれて当然の結果だった。

 

「あ、アンタは?」

 

「見ての通り只の?一般人だ。」

 

「ぎ、ギンガ・ナカジマ。

 陸士候補生です。」

 

「この際、只のは置いておこう。

 何故、一般人がこんな所に!?

 それにナカジマって!?」

 

「ナカジマ三佐の娘さんか!?」

 

「今日の昼近くに次元漂流してうろうろしてる時に彼女と知り合った。

 で、妹を探してるとの事なので協力しているとこの災害。

 妹さんが逃げ遅れてないか確認の為に回っているところだ。」

 

「あの、妹を見ませんでしたか?

 10歳位のショートの青髪で薄いピンクのスカートを履いた女の子を?」

 

『っ!?』

 

ギンガの質問に隊員達は一瞬動揺した。

しかし、カズキはその一瞬を見逃さなかった。

 

「知っているみたいだな。

 彼女は今何処に?」

 

「・・・・・・・。」

 

隊員達は炎の海を見る。

やがて一番若い隊員がその重い口を開いた。

 

「この先に取り残されている。」

 

「何だと!?」

 

「スバル!!」

 

「オレ達の装備じゃこれ以上進むことが出来ねぇ。」

 

それを聞くとカズキは入り口の前に立つ。

 

「ギンガ、自分の周りに全力で防壁を張れ。

 此処を走り抜ける。」

 

「・・・・・・はい!」

 

『なっ!??』

 

隊員達は今度こそ声を上げて動揺した。

若い隊員が怒鳴るように言った。

 

「アンタ正気か!?

 中は火の海!!

 そんな所つっきたら火傷どころか最悪死ぬぞ!!」

 

「問題ない。

 このコートはこの程度の炎でどうにか出来る様な代物じゃない。」

 

「はぁ!?

 と、とにかくアンタは一般人!

 しかも次元漂流者!!

 此処はオレ達に任せてその子と一緒に避難しろ!

 それに中の子の救助は本局の魔導師がしてくれる!!」

 

「その本局の魔導師は絶対に彼女を救えるのか?」

 

「そ、それは・・・・。」

 

「キミもその仕事をしているなら解るだろ?

 この場所に【絶対】など存在しない。」

 

話は終わりだとばかりにカズキは走り出そうとする。

しかし、若き隊員の質問が彼の足を止める。

 

「何で?

 何でそこまでする!?

 アンタは今日此処に来たばかりの次元漂流者なんだろ!?

 何で平気で危険な場所に飛び込める!??」

 

「この先に救えるかもしれない命がある。

 理由はそれだけで十分だ。」

 

『・・・・・・・。』

 

隊員達はその言葉に呆然とした。

彼等は消防隊員。

危険な場所から助けを求める者を救うのが仕事だ。

だが、カズキは違う。

今日いきなり異世界に投げ出された次元漂流者。

つまり只の一般人。

普通ならこんな面倒な状況からさっさと立ち去るはずだ。

しかし、彼はこう言った。

救える命がある。

それだけで十分。

性別・立場・状況そんなものは関係ないと。

彼らにはそんなカズキが眩しく見えた。

 

「アンタ・・・・名前は?」

 

「ブラボー。

 ガーディアン・ブラボーだ。」

 

そしてカズキ達は炎の海に飛び込んだ。

 

「ガーディアン・ブラボー・・・・・。」

 

これが【武藤カズキ】と【ロニ・マックスウェル】の最初の出会いだった。

 

 

 

 

 

「ふぅ・・・。ようやく抜けたか。

 ギンガもう緩めていいぞ。」

 

「はい。

 それにしてもブラボーさんて足速いんですね。」

 

「まぁ、鍛えてるからな。

 ギンガも鍛えればこれくらい速度は簡単に出せるぞ。」

 

「が、頑張ります。」

 

この時、カズキの走る速度は一般車両の速度を軽く超えていた。

そんな速度を鍛えた程度で出せる訳がなく。

彼の説明には【死ぬ気で】が抜けていたのは言わずもがな。

 

閑話休題

 

カズキ達が角を曲がると広間に出た。

そして、天使の石造の下で蹲ってる少女を発見した。

 

「あれは・・・・スバル!?」

 

「ふぅ・・・・やっと見つけたか。」

 

カズキは安堵の溜息を吐いた。

だが次の瞬間。

石造がスバルに向けて倒れだした。

 

「なっ!?

 マズい!!!」

 

「スバルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」

 

~Kazuki side~

 

「スバルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」

 

ギンガの絶叫が耳に響く。

このままでは石造はあの幼い命を押し潰すだろう。

今から走っても此処からでは間に合わない。

 

『不条理か?』

 

そんな声が聞こえた気がした。

ならば諦めるか?

 

否!!

 

ではどうする?

決まっている全力で助ける。

オレには【戦友】が残してくれた力が有るのだから!!

 

「特殊核鉄[MG]起動!!!」

 

展開された歯車は足に吸着し高速で回転を始める。

オレは凄まじい速さで少女に接近する。

そして・・・

オレの腕は少女の体を捉えた。

その後、そのままの速度で石造の近くから離脱し止る。

上から視線を感じたので見てみると白い服の少女が空を飛んでいた。

恐らく彼女が本局の魔導師という人なんだろう。

魔法と言う単語で何となく空を飛んでいる姿はイメージ出来たので然程の驚きは無かった。

向こうはかなり驚いた顔をしているが。

 

「ん・・・・。」

 

腕の中から声が聞こえたので見てみた。

少女スバルちゃんは今の状況をゆっくりと確認している様だ。

オレは少女を安心させるように言った。

 

「もう大丈夫だ。」

 

~Kazuki side end~

 

カズキはスバルとギンガをゆっくりと降ろした。

 

「スバル!!」

 

「お姉ちゃん!!」

 

二人の姉妹はお互いの無事を確かめる様に抱き合う。

 

「もう!心配させて!!

 本当に凄く心配したんだからね!!」

 

「ごめんなさい!ごめんなさい!」

 

ギンガは目尻に涙が溜まる。

スバルに至っては大泣きだ。

そんな二人をカズキは穏やかな顔で見ていた。

 

「あの、時空管理局です!

 大丈夫ですか?」

 

上空にいた少女はカズキの近くに着地する。

 

「ああ、大丈夫。

 彼女達にも怪我はないよ。

 キミが本局の魔導師ってヤツかい?」

 

「はい。

 時空管理局、本局所属の高町なのはです。」

 

「そうか。

 彼女達を早く安全な場所へ。」

 

「わかりました。

 今、バリアを・・・」

 

「それじゃあな。

 早くお父さんを安心させてやれよ。」

 

なのはが防壁を張ろうとすると。

カズキはギンガとスバルの頭を軽く撫でて立ち去ろうとした。

 

「あの!どちらに!?」

 

「まだ、取り残された人がいないか見てくる。

 キミは早く彼女達を頼む。」

 

「そんな!?

 危ないですよ!??」

 

「問題ない!」

 

「ちょっと!??」

 

カズキはなのはの静止を振り切り再び火の海に飛び込んでいった。

 

「行っちゃった・・・・・。」

 

なのはは呆然と見送ってしまった。

そしてスバル達を見る。

 

(とりあえずこの子達を安全な所に連れてかなきゃ。)

 

なのはは脱出作業を開始した。

 

空港離着陸所

 

「203!405!

 東側に展開して下さい!

 魔導師陣で防壁張って燃料タンクの防御を!!」

 

現在、一人の少女がトレーラーの上で指示を飛ばしていた。

そんな少女の所に妖精の様な少女が報告に来た。

 

「はやてちゃんダメです!

 まるっきり人手が足りないですよぉ!!」

 

「そやけど、首都からの航空支援が来るまで持ち堪えるしかないんよ。

 頑張ろう。」

 

「はい。」

 

暫くするとはやての元に一人の男が現れた。

 

「はやてちゃん。

 応援部隊の指揮官が到着です。」

 

「すまんな。

 遅くなった。」

 

はやてはトレーラーか飛び降りて男の前に立つ。

 

「いえ。

 陸士部隊の研修中の特別捜査官、八神はやて一等陸尉です。

 臨時で特別部隊の指揮を任されてます。」

 

「陸上警備隊108部隊のゲンヤ・ナカジマ三佐だ。」

 

お互い敬礼をし挨拶を交わす。

 

「はい。

 ナカジマ三佐、部隊指揮をお願いしてよろしいでしょうか?」

 

「ああ、お前さんも魔導師か?」

 

「広域型なんです。

 空から消火の手伝いを・・・」

 

はやてがゲンヤに用件を伝えてると通信が入った。

 

『はやてちゃん。

 指示のあった女の子をお姉さんと一緒に無事救出。

 名前はギンガ・ナカジマとスバル・ナカジマ。

 さっき無事に救護隊に渡してきた。』

 

「ナカジマ?」

 

「うちの娘だ。

 二人で部隊に遊びに来る予定だった。」

 

「そうですか。

 無事でよかった。

 なのはちゃん報告は以上?」

 

『それが、ギンガと一緒に行動してた次元漂流者の人がまだ中に居るんだけど。

 まだ取り残されてる人が居ないか確認しにどっかに行っちゃったんだよ!』

 

「な、なんやって!?」

 

『名前はガーディアン・ブラボーさん!

 全身が隠れるようなコートと深く被った帽子で姿までは判らなかった!』

 

「了解!

 わたしもすぐ空に上がるよ。」

 

『了解!』

 

なのはは報告を終え回線を閉じた。

 

「ガーディアン・ブラボー・・・・。」

 

「恐らく偽名だな。」

 

「はい。

 では、ナカジマ三佐。

 後の指揮をお願いします。

 リインしっかりな。

 説明が終わったら上でわたしと合流や!」

 

「はいです!」

 

リインの敬礼を確認するとはやては走り出す。

そして、一瞬で騎士甲冑に換装し空に上がった。

 

7番ゲート

 

「全員いますか?」

 

「え~と・・・大丈夫です。」

 

カズキはあの後施設内に8人の逃げ遅れた人達を発見していた。

今は火の回っていない7番ゲートまで壁を破壊して避難してきたのだ。

 

「よし。

 全員其処から動かないように。」

 

カズキはそう言って走り出す。

だが次の瞬間カズキの目の前が壁が爆発した。

何事かと思いカズキは身構えた。

すると、壊れた壁から金髪の少女が出てきた。

 

「管理局・・・・・です。」

 

「管理局・・・・。

 キミも本局の魔導師というヤツか?」

 

「えっと・・・そうです。

 あの、アナタは?」

 

勢いよく突入してきた彼女だったが。

突入した先には姿不明の見るからに怪しい長身の男がいたのだ。

警戒するなというのが無茶というものだ。

 

「まぁ、只のお手伝いさんだ。

 それより魔導師ってことは防壁とか張れる?」

 

「はい・・・・張れますけど。」

 

「じゃあ、彼らの事よろしく!」

 

カズキは片手を挙げて走り去っていった。

 

「なっ!?

 ちょっと待って!!」

 

少女はカズキを追おうとした。

しかし、逃げてきた彼らを放置しとく訳にもいかず。

結局、彼らに防壁を張ってからカズキを追った。

一方カズキは8番ゲートの広間に到着し上を見上げる。

そして自分の左胸に手を当て発動の言葉を叫ぶ。

 

「武装錬金!!!」

 

空港上空

 

「仄白き雪の王、銀の翼以もて、眼下の大地を白銀に染めよ!」

 

空港上空ではやては広域魔法の詠唱を行っていた。

 

「八神一尉。

 指定ブロック避難完了です。」

 

「お願いしま・・・・」

 

局員の一人が安全確認の終了の言葉を言い終えようとした時。

 

ズガンッッ!!!

 

『なっ!??』

 

太陽の光が空港の天井をブチ破って現れた。

 

「よし、脱出成功!

 海は・・・あそこか!」

 

「え!?あの!??」

 

はやては突然の乱入者【カズキ】を引き止めようとした。

しかし、カズキの耳にその声は入らずそのまま海の方へ飛び去ってしまった。

 

「待って!」

 

「あれは!?

 それにフェイトちゃん!」

 

カズキを追っていたフェイトと他のエリアから出てきたなのはもその後を追う。

やがて、カズキは空港近くの海面に制止する。

なのは達はもう一度カズキに呼び掛けた。

 

「あの!!

 時空管理局です!!

 少しよろしいですか!?」

 

「ん?

 キミ達か。

 悪いが今から消火作業を行うから。

 オレから少し離れてくれ。」

 

「消火作業って・・・・。

 こんな所からどうやって。」

 

カズキはサンライトハート改を胸に仕舞う。

そして・・・

 

「両断!ブラボチョップ!!!」

 

カズキは勢いよく手刀を海面に叩きつける。

すると・・・・

 

ズバババババババババババババババババババババババババッッッッ!!!!!

 

 

 

 

 

海が真っ二つに割れた

 

 

 

 

 

『ええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!???』

 

なのは達を含むこの光景を見ていた空港の人達の声が重なった瞬間だった。

そのままカズキは海底に着地し海水の壁に拳を構える。

 

「一撃必殺!!ブラボー正拳!!!」

 

カズキは海水の壁に必殺の一撃を放った。

踏み込みの衝撃で海底が踏み砕かれる。

その驚異的破壊力は海水の塊を上空へと吹き飛ばした。

やがて、海水の塊は空港上空で分解を始める。

海水はまるでスコールの様に空港に降り注いだ。

火は徐々に弱まっていった。

それを見たはやては。

 

「これはチャンスや!」

 

そう言って中断した詠唱を再開する。

 

「来よ、氷結の息吹!アーテム・デス・アイセス!!」

 

圧縮した気化氷結魔法が空港に打ち込まれる。

海水の水滴の助けもあって空港はあっという間に凍結した。

 

これにて新暦71年ミッドチルダ臨海第8空港大規模火災事件は幕を閉じた。




[次回予告]
その男は強かった。
だが男も人間だ。
最初から強いわけではなかった。
俺達は希望を見た。
次回魔法少女リリカルなのは Sunlight【秘密】

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