魔法少女リリカルなのは Sunlight   作:朱槍

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仕事中に危うく薬指と小指が泣き別れになる所だった……
ああ、転職したい……

そんな訳で投稿遅くなりました5話です。


第5話 秘密

陸上部隊 女子寮 八神はやての部屋

 

それなりに大きな部屋からテレビの音声が流れている。

 

『おはようございます。

 さっそく現場を呼んでみましょう。』

 

司会者の女性がそう言うと画面が切り替わる。

映し出されたのは【ミッドチルダ臨海第8空港】。

その焼け残りだった。

 

『こちら現場です。

 火災は現在完全に沈下しています。

 現在は時空管理局の局員によって危険の調査と事故原因の解明が進められております。

 幸いにも迅速に出動した本局航空魔導師隊の活躍もあり民間人に死者は出ておりません。』

 

ニュースを聞いていたあられもない格好をしている部屋の主。

八神はやては起きて呟く。

 

「はぁ~、やっぱりなぁ~。」

 

「ん~?」

 

その声に反応して隣で寝ていた友人。

高町なのはも起きだす。

 

「実際に働いたんは災害担当と初動の陸士部隊となのはちゃんとフェイトちゃんやんか。」

 

「あはは、まぁ休暇中だったし。」

 

そう言ってなのはは寝返りをうつ。

 

「民間の人たちが無事だったんだし。」

 

特に問題ないと言う感じにフェイトもうつ伏せのまま言う。

 

「あんな、なのはちゃん、フェイトちゃん。」

 

「「ん~?」」

 

はやての改まった声に二人は顔を上げる。

 

「わたしやっぱ自分の部隊持ちたいんよ。

 今回みたいな災害救助はもちろん。

 犯罪対策も発見されたロストロギアの対策も・・・

 なんにつけミッドチルダ地上の管理局部隊は行動が遅すぎる。

 後手に回って承認ばかりの動きじゃあかんし。

 わたしも今みたいにフリーで呼ばれては、

 あっちこっちまわってたんやちっとも前に進めてる感じがせえへん。

 少数精鋭のエキスパート部隊!

 それで戦果をあげてったら、上のほうも少しは変わるかもしれへん。

 でな、私がもしそんな部隊作ることになったらフェイトちゃん、なのはちゃん。

 協力してくれるかな?」

 

はやてはそう決意を口にする。

それを聞いたなのはとフェイトはお互いの顔を見合う。

その様子を見たはやては不安そうに慌てだす。

 

「もちろん二人の都合とか進路とかあるんはわかるんやけど・・・・・・。」

 

なのはとフェイトは呆れた顔をしつつ軽く睨む。

 

「はやてちゃん、何を水臭い。」

 

「小学3年生からの付き合いじゃない。」

 

「それに!

 そんな楽しそうな部隊、逆に誘ってくれなきゃ怒るよ。

 ね、フェイトちゃん?」

 

「うん。」

 

そう言って二人は微笑む。

はやては薄っすらと涙を浮かべて二人に感謝した。

 

「おおきに!

 ありがとうな。

 なのはちゃんフェイトちゃん!」

 

「でも、その前に・・・。」

 

なのは達はテレビに目線を向ける。

 

『ですが民間人の方々によると。

 「実際に消火したのは銀色の変人。」

 「海を割って雨を降らせたスゴイ人?」との事です!』

 

『銀色の変人?

 それに海を割ったとはどういう事でしょうか?』

 

『詳しい事はまだ判っていません。

 現場で活動していた局員達に聞いたところ。

 「そんなの人間はいなかった。」との事です。』

 

はやてはテレビの電源を切る。

 

「まずはあの人の事を聞いてからだね。」

 

なのはの声に同意するように二人は頷いた。

 

陸士108部隊 隊舎 取調室

 

「八神はやて一等陸尉です。」

 

「高町なのは二等空尉です。」

 

「フェイト・T・ハラオウン執務官です。」

 

三人は目の前の男。

ゲンヤ・ナカジマ三佐に敬礼をする。

 

「ゲンヤ・ナカジマ三等陸佐だ。

 ようこそ、陸士108部隊へ。」

 

ゲンヤも三人に敬礼を返す。

 

「今回は事情聴取の参加の許可を頂きありがとうございます。」

 

「ああ、アイツならもう中で待ってる。」

 

そしてゲンヤは取調室のドアを開けた。

そこには・・・

 

「やはり注目すべき所はうなじやへそだと思うんだ!!!」

 

「絶対変ですってそれ!

 やはり胸とか尻とかでしょ!!」

 

「いやいや、へそはねぇけどうなじはアリだろ!」

 

「ロニ!わかってるな!!」

 

「ハッ!恐縮であります!!」

 

何故か局員とカズキによる猥談が繰り広げられていた。

それを見たゲンヤは頭を抱え溜め息を漏らした。

15歳の少女達の顔は真っ赤である。

 

「お前らなぁ~。」

 

さて、何故カズキが此処にいるのか。

時は、昨夜の消火作業まで巻き戻る。

 

昨夜 ミッドチルダ臨海第8空港

 

空港の火の鎮火を確認するとカズキは海底から飛び上がりそのまま空港に着地する。

カズキが飛び上がるのと同時に海も元に戻り始め穏やかな海に戻った。

なのはとフェイトも後を追う様に着地する。

 

「あの、次元漂流者のガーディアン・ブラボーさんですよね?」

 

「そうだが。」

 

カズキは空港から目線を逸らさずに短く答える。

 

「少々お話を伺いたいのでご同行お願いできますか?」

 

「・・・・・・。」

 

カズキは言葉を発さない。

その様子を不思議に思ったなのは達は声を掛け様とした。

だが、やはり空港から視線を外さずカズキは重い口を開けた。

 

「あの魔法と思われる力。

 中の人達は大丈夫なのか?」

 

「え?」

 

「中に居る人達は大丈夫なのかと聞いているんだ。」

 

二人は最初カズキの言ってる意味が理解できなかった。

しかし、彼の視線の先を見て直ぐに理解した。

八神はやての魔法は強大である。

それは魔法の事を知らない人でも感じ取れることだ。

だから、彼は聞いたのだ。

【民間人が居るかもしれない建物にそんな力を叩き付けるとはどういうつもりだ?】と。

思い返せば少々強引さはあったが全ては救いを求める者達の為。

なのは達はその姿勢がなんだか嬉しく感じた。

 

「大丈夫です。

 着弾地点の避難は完了してますし残ってる人達にも防壁を張ってますから。」

 

「そうか・・・・。」

 

「それで、ついて来てくれますか?」

 

「・・・・断ると言ったら?」

 

「申し訳ありませんが拘束させてもらいます。

 アナタの力を野放しにしておく訳にはいきません。」

 

「・・・・・・・・。」

 

二人はデバイスを構えカズキは目を細くし軽く睨む。

辺りには一触即発の空気が漂う。

そこに一人の男が割り込んだ。

 

「アンタがガーディアン・ブラボーか?」

 

「・・・・・・アナタは?」

 

「ゲンヤ・ナカジマ三等陸佐。

 まぁ、ギンガとスバルの父親だ。」

 

「アナタが・・・・。

 ギンガ達とは会えましたか?」

 

「お陰様でな。

 娘達を助けてくれてありがとう。

 色々と面倒も掛けちまったみたいだな。」

 

「気にしないでくれ。

 こっちは好きでやっただけだし。」

 

「そうかい。

 あ、お嬢ちゃん達。

 この人の件はこっちに任せちゃくれねぇか?

 娘のことでも礼がしたいしな。」

 

「はぁ、ナカジマ三佐がそう言うなら・・・・。」

 

「お任せします・・・・・。」

 

年齢も階級も上の人間に反論する訳にもいかず。

ゲンヤの提案になのは達は一応納得した。

 

「まぁ、そう言うことだ。

 アンタもそれで良いかい?」

 

「いや・・・それで良いかって。

 それにお礼なんて・・・・。」

 

「そう言わずに来てくれないか?

 ギンガ達もアンタの事を心配してるんだ。」

 

「ふむ・・・・。」

 

カズキは腕を組んで考える。

暫くして返答を返した。

 

「わかった。

 ついて行こう。」

 

「助かる。

 それじゃ隊の車まで案内する。

 ついて来てくれ。」

 

カズキはゲンヤについて行きその場を去った。

その後の展開を聞いたはやてはゲンヤに後日の事情聴取の参加を申し込んだっだ。

 

現在 陸士108部隊 隊舎 取調室

 

そして、その夜はこの隊舎で一夜を過ごし現在この状況である。

 

「お前ら・・・少しは自重しろ。

 見ろ。

 お嬢ちゃん達が気まずそうじゃねぇか。」

 

ゲンヤは溜め息を吐きながら親指で後ろにいるはやて達を指差す。

 

『す、すみません。』

 

バカ話をしていた男達は一斉に頭を下げて謝罪した。

 

「ブラボーも頼むぜ・・・・。」

 

「いや~申し訳ない。

 あれ、キミ達は昨日の・・・・。」

 

カズキがはやて達の存在に気付くと彼女達も我に帰る。

そして、カズキに挨拶をした。

 

「どうも。

 八神はやてです。」

 

「高町なのはです。」

 

「フェイト・T・ハラオウンです。」

 

「ガーディアン・ブラボーだ。

 昨日はすまなかったね。

 現場を掻き回す様なことしちゃって。」

 

「でも、そのお陰で空港の消火も人命救助も早く済んだし。」

 

「うん、結果オーライだよ!」

 

カズキの謝罪にはやて達は気にするなとばかりに笑顔で答えた。

 

「それじゃ、挨拶が済んだ所で聴取を始め・・・」

 

「待ってください、ナカジマ三佐。」

 

聴取を始めようとしたゲンヤにフェイトが待ったを掛けた。

 

「どうした?」

 

「何故、彼は武装を展開してるんですか?

 というより押収してないんですか?」

 

現在のカズキの格好は特殊核鉄[SS]を展開した状態。

つまり、フェイト達と会った時の姿なのだ。

 

「でもアレって普通?の服なんじゃ・・・・。」

 

「なのは考えてみて。

 あの人は昨日何も使わずに海を割ったんだよ。

 という事はあの服自体に何か仕込まれてるとしか思えない。」

 

「確かに・・・・。」

 

三人は警戒の眼差しでカズキを見る。

そこえゲンヤは割って入った。

 

「まぁ、待て。

 その事は昨夜散々調べたがそれには防護機能しかなかった。

 展開してるのはそれが取り調べに応じる条件だったからだ。」

 

「何故そんな条件を?」

 

フェイトの疑問にカズキが応える。

 

「キミらはデバイスというのがあれば何時でも魔法が使えるんだろ?

 そんな相手に武装を渡して話し合いなんてフェアじゃない。

 第一何処の組織かもハッキリしない相手に此方の最高機密を渡せるわけがない。

 まぁ、キミらが実力行使で奪いにくるならこちらも少し暴れさせてもらう事になるが?」

 

「とまぁ、こんな感じなんでな。

 隊舎を全壊にされた上に逃げられましたじゃ笑い話にもならねぇ。

 そう言う訳で話を飲んだんだ。」

 

「そういう事なら・・・・。

 ですが、せめてあの槍型のデバイスは取り調べの間だけ預からせてくれませんか?」

 

渋々納得するがフェイトはサンライトハート改の提示を要求した。

その要求にカズキの代わりにゲンヤが応えた。

 

「あ~、そっちの方はもっと無茶な要求だぞ。」

 

「え?

 何でですか?」

 

はやては疑問を口にする。

なにも管理局に寄越せと言っている訳ではない。

確かにそんな無茶な要求には思えない。

カズキの事情を知らない彼女達からすれば。

 

「その事は取り調べしながら話す。

 てか、ブラボーいい加減帽子くらい取ったらどうだ?」

 

「ん。

 そうだな。」

 

ゲンヤに指摘され帽子と顔の部分のボタンを外す。

するとカズキの素顔が露になる。

 

(((中は普通の人だった・・・)))

 

三人揃ってとても失礼だった。

 

「それじゃあ、ボチボチ始めるか。」

 

ゲンヤの声で室内の全員が姿勢を正す。

 

「それじゃまず名前は?」

 

「ガーディアン・ブラボー。」

 

「よし、次は・・・」

 

「「「ちょっと待った!!」」」

 

次の質問をしようとしたゲンヤに三人は声を揃えって待ったをかけた。

 

「あん?どうした?」

 

「いや、明らかに偽名やんか!?

 何、さらっと無視して先に進んどるんですか!?」

 

あまりの行為にはやてはいつもの口調でツッコむ。

対するゲンヤはあまり気にしてない様子でカズキに尋ねる。

 

「本名は?」

 

「本名は秘密!

 何故ならその方がカッコイイから!」

 

「だそうだが?」

 

「もうええです・・・・・。」

 

どこか諦めた声で溜め息を吐いた。

 

「まぁ、最低出身世界さえ判れば良いしな。

 本名かどうかはこの際別に構わないだろ。

 それで何処に住んでたんだ?」

 

「日本の銀成市と言う所だ。」

 

「「「日本!??」」」

 

「日本・・・・・。

 確か、お嬢ちゃん達の出身世界の大陸だったよな?

 名前は・・・・第97管理外世界【地球】。」

 

「あ~、少しいいかい?

 その言い方だと地球は存在するか?」

 

昨日の時点で此処が地球ではないのは解っていたが。

まさか地球が存在するとは思っていなかったのだ。

 

「えっと、次元世界の成り立ちについては?」

 

「あ~、すまん。

 あまり昨日の時点では必要なかったから説明してねぇわ。」

 

「じゃあ、まず次元世界について説明しますね。」

 

一時取り調べを中断しカズキはなのは達から説明を受けた。

 

 

説明終了

 

 

「とりあえずこんな所かな。」

 

「ありがとう。

 解りやすかったよ。」

 

親切丁寧に説明してくれたなのは達にカズキは礼を言う。

同時にカズキはこの世界の事を考えていた。

 

(しかし・・・次元世界か。

 多分、平行世界とは別の概念だよな。

 となると銀成市は・・・・。)

 

「おい、ブラボー!」

 

考えているとゲンヤから声が掛かる。

少し声が大きい所を見る限り何度も呼んでいた様だ。

 

「大丈夫か?」

 

「ああ、大丈夫だ。

 少し考え事をな。」

 

「そうか。

 とりあえずお前さんの出身地の調査は明日にでも終わるだろ。

 さて、ここからが本題だな・・・・。」

 

若干緩んでいた空気が引き締まる。

 

「お前さんの武装について説明してもらおうか。

 と言っても俺達は昨日の時点で粗方の説明は受けてる。

 お嬢ちゃん達が聞きたい事を訊いたらどうだ?」

 

「ほな質問や。

 そのデバイスの名称。

 開発目的。

 機能を教えてください。」

 

カズキはポーチから特殊核鉄改[VS]を取り出す。

そのまま机の上に置く。

はやて達は手に取り観察する。

 

「それの名前は【核鉄】。

 開発目的とかは組織に大きく関わるから言うことは出来ない。

 機能については回復機能を高めて負傷等を迅速に治癒する事が出来る。」

 

「回復機能って言いますがこれは武器でもありますよね?」

 

「否定はしない。

 でも、キミ達が見た程の武装はそれは展開できないよ。

 それの正式名は【特殊核鉄改】云わばサポート用の核鉄だ。」

 

「あの、出来ればそちらの方も見せてもらえませんか?」

 

「あ~、それはちょっと無理かな。」

 

カズキは少し困った顔をして頭をかく。

 

「・・・・それは先程の提出が出来ないこと関係が?」

 

「・・・・・そうだ。

 オレは昔に致命的な重傷を負ってね。」

 

そう言ってカズキは左胸に手を当てる。

その様子を見てはやては何かを感じ驚愕した顔をする。

 

「ま、まさか・・・」

 

「キミの想像通りだよ。

 オレの核鉄はね、心臓そのものなんだよ。」

 

それを聞いて残りの二人も驚く。

同時にはやては考える。

 

(サポート単体で治癒魔法並みの力。

 オリジナルに至っては臓器の代替まで出来るなんて・・・・。

 この力があれば現場の人達の安全性をもっと高く・・・。)

 

はやては持っている核鉄を強く握り締める。

その様子に気付いたカズキは少し目を細めた。

 

「次の質問いいですか?」

 

質問が一段落ついたのを見計らいフェイトが新たにカズキに質問した。

 

「何だい?」

 

「その服。

 防護機能しかないって言ってましたが何か証明出来る物はありますか?」

 

「ああ、それについては・・・・コイツを見てくれ。」

 

フェイトの質問にゲンヤが代わりに応えて何かの映像を出す。

其処にはナカジマ一家とラフな格好をしたカズキと何人かの魔導師がいた。

場所はトレーニングルームの様だ。

 

『さて、お前さんが言う様に本当に自分の力だけでアレをやったのか確認させてもらうぞ。』

 

そう言ってゲンヤは一番右端の一際大きなサンドバックの前に立つ。

 

『このサンドバックはちょいと特別性でな。

 中の砂と上の鎖は魔力によって強化されちょっとやそっとじゃ揺らす事も出来ない。

 さらにその周りにうちの部下達に障壁を張らせる。

 お前さんはそれを思いっきり殴れ。

 もし本当に言った通りなら障壁ブチ抜いてそいつを揺らす事が出来るはずだ。』

 

『ふむ・・・・。』

 

カズキはサンドバックの周りを触ったり軽く叩く。

やがて前に立ち・・・・。

 

『わかりました。』

 

構えをとった。

 

『よし、お前ら目標に障壁を張れ。

 他の奴らは一応ある程度離れとけ。』

 

『了解。』

 

魔導士達がサンドバックの周りに障壁を張る。

ナカジマ一家も少し後ろに下がる。

 

(さて・・・見せてもらおうか。)

 

『13のブラボー技の一つ!!』

 

カズキは腕を振り抜いた。

 

『修正!ブラボービンタ!!!』

 

次の瞬間有り得ない事が起きた。

 

 

 

 

 

バツンッ!!

 

 

 

 

 

カズキの平手は障壁をブチ抜きサンドバックへ。

サンドバックは衝撃に耐え切れず上の鎖が引き千切れる。

そのまま本体は一回転。

そして重力に従って落ちた。

 

 

 

 

 

ドスンッ!!

 

サラサラ・・・

 

 

 

 

 

表面が破け中から砂が漏れ出しサンドバックはくの字から戻ることはなかった。

そこで映像は途切れた。

 

 

 

 

 

(((な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!????)))

 

三人の念話が重なった。

 

(いやいや、これどう考えても人間技じゃないでしょ!?)

 

(しかも、修正てことはこれってお仕置き用の技・・・・・。)

 

(こんなんでお仕置きされたら首もげるわ!!?

 これお仕置きちゃう!?OSHIOKIや!!??)

 

「ははは・・・改めて見るとやっぱり異常ですね。」

 

「少なくとも人間技じゃねぇだろ。」

 

三人の念話を他所に一度見た局員達は苦笑いしながら話す。

 

「お嬢ちゃん達、大丈夫か?」

 

「ええ、一応・・・・・。」

 

「まぁ、見ての通りだ。

 これで納得してくれたか?」

 

「凄く認めたくありませんが・・・・。

 これは納得せざる得ませんね。」

 

その後も取り調べは続いた。

しかし、大半それも組織については秘密で終わった。

 

「そろそろいい時間だな。

 取り調べはここまでにするか。

 ブラボーはもう一日此処にいてくれ。」

 

「わかった。

 それじゃあ、そろそろ核鉄を返してくれないか?」

 

カズキははやてに手を差し出す。

 

「あ、すいません。

 ・・・・・どうぞ。」

 

核鉄を返却してもらい受け取った。

しかし、はやてはまだ何か言いたそうにカズキを見ていた。

 

「どうしたんだい?」

 

「ブラボーさん。

 その核鉄の技術、治癒機能だけでもええんで管理局に提供してくれませんか?」

 

「ちょ!?はやてちゃん!??」

 

カズキは顔が険しくなる。

この部屋の空気が一瞬で重くなった。

はやてもカズキから発せられる威圧感に冷や汗を垂らす。

 

「何故知りたいんだい?」

 

「ブラボーさんの言った通りの回復効果があるなら。

 これを現場に回せばもっと多くの人達が救えます!

 局員の人達の安全性だって・・・・」

 

「ストップ。

 言わなかったがこれの回復機能をあまり当てにするな。

 やってる事は人体の回復機能を無理やり上げてるんだ。

 多用すれば肉体は崩壊するぞ。」

 

「それでも!

 有ると無いとじゃ・・・」

 

「第一。

 オレはこの世界も時空管理局の事も知らな過ぎる。

 そんな所にこちらの重要機密をホイホイ話せる訳がない。」

 

カズキはきっぱりとはやてに拒絶の意思を向けた。

しかし、それでもはやては諦めきれず・・・

 

「なら、この世界や管理局の事を理解できたら教えてくれますか?」

 

「・・・・・考えておこう。

 だが、オレは明日には消える身だ。

 その可能性はゼロだよ。」

 

「・・・・・わかりました。

 取り調べのご協力ありがとうございました。」

 

はやては肩を大きく落とし三人は部屋を出ていく。

部屋のドアが閉まる時にカズキの呟く様な声が聞こえた。

 

 

 

 

 

「もっともその可能性は低そうだがな。」

 

「え?」

 

 

 

 

 

部屋のドアが閉まった。

 

翌日、地球には銀成市という場所は存在しない事が判明した。

 

陸士108部隊 隊舎 取調室

 

昨日と違い中にいるのはカズキとゲンヤのみだ。

しかし、中の空気は昨日より圧倒的に重い。

 

「さて・・・どうするか。」

 

「・・・・・・。」

 

「お前さんの話が嘘じゃないのは判る。

 だがこのままだと身元不明の次元漂流者として強制的に保護しなきゃならねぇ。

 しかも、下手に逃げだしゃ次元漂流者から次元犯罪者にクラスチェンジだ。

 そうなればお前さんの所の技術を無理やりでも調べてくるだろう。」

 

「・・・・・・・。

 日本の適当な場所に送ってもらうことは出来ないのか?」

 

「無理だな。

 報告の時にボロが出る。

 なにより俺達の恩人にいい加減な事をしたくねぇ。」

 

「・・・・・・・。」

 

再び沈黙が部屋を支配する。

やがてその沈黙は破られた。

 

「よし。」

 

破ったのはゲンヤだった。

 

「ブラボー、うちに来ないか?」

 

「・・・・・はい?

 うちって・・・・ナカジマ家にか?」

 

「ああ。

 まぁ、ただでとはいかないがな。

 滞在中の間はうちの部隊に協力してくれないか?」

 

「・・・・・それは管理局に協力しろってことか?」

 

「違う。

 俺は陸士108部隊に協力してくと言ったんだ。」

 

「・・・・・どういう事だ?」

 

ゲンヤは何か面白そうに笑いながら語る。

 

「知ってるか?

 うちの部隊の連中。

 それも魔力が高くない奴らにお前さんヒーローみたいに見られてるんだぞ。」

 

ゲンヤの発言にカズキは目を点にする。

 

「オレが・・・・ヒーロー!?」

 

「一昨日。

 お前さんがサンドバックをぶっ壊した後、局員の一人が訊ねただろ。

 『どうしたらそんなに強くなれるのか?』って。

 そしたらお前さんは『ただ一向に修練を続けた。』なんて言いやがる。

 アイツらにはお前さんが希望に見えたんだろうな。」

 

「希望?」

 

カズキは以前にも多くの人達の希望を背負っていた。

戦団の未来・ブラボーの意志・妻子達の幸福。

だが、それは彼の戦士としての姿勢やホムンクルス達に対する姿を見せて得たものだ。

ここではそんな行動をとった憶えはない。

彼らが何故自分に希望を抱くのかカズキは疑問に思った。

しかし、その疑問はゲンヤが答えてくれた。

 

「誰もがあのお嬢ちゃん達みたいな魔導師じゃねぇんだ。

 アイツらみたいに一人で大半の事が片付けられる魔導師なんて希少なんだよ。

 この世界は質量兵器は禁止されている。

 だから何だかんだで結局魔力がものをいうんだよ。

 魔力が少ない奴、魔力がない奴。

 そいつらは必ずと言って良いくらい悔しい思いをした。」

 

「ゲンヤもか?」

 

「・・・・妻を・・・・亡くした。

 深くは話せねぇがな・・・魔法が使えねぇ自分が悔しくて仕方がなかった。」

 

「・・・・・・。」

 

カズキの頭には斗貴子の死に顔が脳内に過ぎった。

彼女の死因は癌だった。

癌はリンパに転移していて既に手遅れだった。

医術的な事にカズキが手を出せる事は何も無い。

しかし、彼は思わずにはいられなかった。

当時のカズキは大戦士長に就任したばかりで家族に目を向けていられる余裕が無かった。

【もっと自分が上手く仕事をこなせる力があれば家族に目を向けられたんじゃないか!?】

【もっと早く斗貴子さんの体調に気付くことが出来たんじゃないのか!?】

彼は自分の不甲斐なさがたまらなく悔しかった。

 

「だが、俺を含めてアイツらはお前に希望を見出した。

 魔法が使えなくても強くなれるんだと。

 ガーディアン・ブラボー頼む!

 俺達に力を貸してくれ!!」

 

ゲンヤは手を差し出す。

カズキは腕を組その手を見つめる。

そして・・・

 

その手を取った。

 

「オレの特訓は厳しい。

 ついてこれる奴がいなくなった時点で辞めるからな。」

 

「ありがとう・・・・。」

 

カズキは微笑むと部屋のドアに目を向ける。

 

「さて、キミ達はいつまで聞き耳を立てているのかな?」

 

「むっ!?」

 

カズキの言葉にゲンヤはドアに向かい勢い良く開けた。

すると・・・

 

『うわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!??』

 

ナカジマ姉妹と数十人の局員が流れ込んできた。

 

「ギンガとスバルはともかく・・・・お前らは仕事もせずになにやっとんだ!?」

 

ゲンヤはこの惨状に頭を抱えた。

カズキは笑いながら彼らの前に立つ。

 

「まぁ、そういう訳だから・・・とりあえずよろしくな。」

 

局員達は慌てて立ち姿勢を正し敬礼をする。

ギンガとスバルも釣られて敬礼をした。

 

『よろしくお願いします!!』

 

この行動により未来(物語)は崩壊した。

そして新たな未来(物語)が形成される。

その先に待つものはまだ誰も知らない。




[次回予告]
オレ達は知る自分たちの弱さを……
オレ達は見る自分たちの可能性を……
そしてオレ達に選択が提示される……
次回魔法少女リリカルなのは Sunlight【井の中の蛙】

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