…ピピッピピッピピ
断続的な機械音で意識が覚醒する。
自分は何をしていたのだろうか?
ぼやける視界の中には見慣れた機械類。やがて意識がはっきりとしてくると“視界が割れている”ことに気付く。
男はその「ヒビ」の入った視界が煩わしくなり、かぶっていたヘルメットを乱暴に脱ぎ捨てた。呼吸が出来なかった訳ではない。しかし、確かな解放感がある。
男に放られたヘルメットが慣性に従って足元の方へと流れていく。
それを空虚に見つめていた男はハッと何かを思い出した様に視線を縦、横へと鋭く飛ばした。
「アクシズは!?」
口をついて出た言葉がそれだった。
やがて男は遠くに地球を見つける。
どうやら男が懸念していた事態は起きていないらしい。
「無事なのか?良かった…」
安堵した男は仲間と連絡を取るために通信機に手を伸ばす。
「おかしい…計器類に異常はないようだが…」
手元の機械を弄っても思うような成果は得られずに男は小さく舌を打ち、自分が置かれている状況があまりにも絶望的であることに頭が痛くなるのを感じていた。
次に男は自分が座っているシートから少し身体を乗り出し、辺りを見回し始めた。
男の周囲には数多の星の輝きが遠くに見え、男は周囲に浮く用な形で自分の置かれている状況の把握に努めていた。
「酸素はまだ少しは持つか…推進剤もなんとかなる。ここからだと一番近いのは月のアンマンか?いや、そこまで持つ保証はないな…」
男は救難信号を出しつつ一縷の望みにかけて、自分の乗る機体…MS(モビルスーツ)を動かし始める。
「…!?」
その時だった。
男の脳髄に何か天啓めいたモノが駆け巡る。
「…まだ戦闘が続いているのか!もうアクシズは落ちないだろうに!」
男は確かに見た。
自分と共に地球に降ろうとする脅威を退けようと敵、味方なく結束する光景を。人類の暖かさを…
しかし、現実にあの光景の後にもかかわらず戦闘が続いている。
男の脳裏にまるで宿敵が笑っている様なビジョンが浮かぶが、軽く頭を振りそれを打ち消す。
先程までは気付かなかったが、戦闘が行われているのは一カ所のようだった。MSのデュアルアイを通して見る光景には、遠巻きに光の筋が幾重かに通っているのが解る。
「ちぃっまだ、抵抗する部隊がいるのか?劣勢なのが友軍でなければいいが…」
男…"アムロ・レイ"は愛機"νガンダム"のフットペダルを軽く踏み込み、その動きを確認するように十字機動をさせた。
「止めればいいんだろう?シャア…」
一人呟き、アムロはνガンダムを戦闘の中へと向かわせた。