ガンダムSEED×UC   作:レジエ

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"お前に出来ることをしろよ"


ファーストコンタクト

 キラ・ヤマトはアークエンジェルの一室で自ら組んだ指の先を眺めていた。

 

 

“僕は戦いたくないんだ!”

 

“お前はお前に出来ることをしろよ”

 

 

 数分前のやり取りが頭にフラッシュバックする。

 突然やってきたムウ・ラ・フラガに言われた言葉が何度も頭に繰り返される。

 

 

(僕に出来ること…戦うことが…僕に出来ること?…アスランと僕は…)

 

 

 ビービービーッ!

 

 

 突然、艦内に響くアラート。キラはビクリッと身体を震わせると顔を上げた。

 

 見るとドアの横にあるディスプレイが点滅していた。誰かの訪問を表しているのだ。

 

「…誰?」

 

「キラ、いるか?俺だ」

 

 声は友人のトール・ケーニヒのものだった。

 

 ドアの前に立ちロックを解除する。

 

 プシュッと空気の抜ける音と共に友人達の姿が見えた。

「みんな…」

 

 キラの目に飛び込んで来たのは意外すぎる光景だった。

 友人達が連合の制服姿で立っているのだ。

 

 

「へへ、お前ばっかり戦わせる訳にはいかないからな」トール・ケーニヒが鼻の頭をかきながら言う。

 

「俺たちもさ、やれることやるって決めたんだ」サイ・アーガイルが眼鏡の位置を治して笑顔を向ける。

 

「MSは扱えないけど、サポートぐらいは任せてよ」ミリアリア・ハウが頷いて見せた。

 

(僕は…僕はみんなを護りたい…例え…アスラン。君と闘う事になっても!)

 

 キラ・ヤマトは確信する。自分には大切な、護りたい友人達がいることを。その為に自分に出来る事があることを。

 

 キラは力強く頷くと急ぎ格納庫に向かう。

 

 小さく揺れる船体。恐らくは既に戦闘が始まっているのだろう。

 

(アスラン…君もいるの?)

 

「坊主!」

 

 考え事をしながらパイロットスーツを着こみ、格納庫に入った時、コジロー・マードックが叫ぶようにキラを呼び止めた。

 

 

「なんて顔してやがる。そんな面したヤツがノコノコ出てっても悪戯にGを墜とされるだけだ」

 

「…せてください…」

 

「なんだって?」

 

「行かせて下さい!僕には、僕にはまだやれることがあるからッ!」

 

 コジローの腕を振りほどきストライクに向かうキラ。ただならぬ雰囲気にコジロー・マードックの部下たちがキラを抑えつけようと動くが、コジローはそれを片手で制する。

 

 

「いい!坊主が出るぞ!準備急げッ」

 

 コジローの言葉に整備兵が蜘蛛の子を散らすように作業に戻る。

 

(全く、ガキの癖になんて顔してやがるんだよ)

 キラの鬼気迫る表情にコジローは内心でひとりごちるしかなかった。

『キラ、聞こえる?』

 

 ストライクのコクピットにキラが収まるのとほぼ同時にワイプ画面にミリアリア・ハウが映りこむ。

 キラはヘルメットのバイザーを下げる前に、聞こえてるよ、と一言いって無理矢理笑顔を作って見せた。

 

『キラ…』

 

 キラの表情に感じるものがあったミリアリアは思わず声を漏らす。

 それに見兼ねたのか、ミリアリアの隣にサイ・アーガイルのワイプが現れた。

 

『キラ、今の状況を伝えるぞ。このアークエンジェルは前後で挟み撃ちを受けてる。目指す航路は連合の要塞“アルテミス”だ。このまま突っ切れれば直ぐに連合の制空圏に行けるはずだ』

 

「解ったよ。持たせて見せる」

 

『正規軍のフラガ大尉もいるんだ。無理するなよ?逃げ回ればいいんだからな?』

 

「ありがとう。サイ」

 

 サイ・アーガイルの心底心配している言い方に、今度は自然な笑顔を向けてキラは言った。

 

 グレーのストライクが発進するためにカタパルトに入る。ソードストライカーパックを装備したストライクが発進のシグナルを待っていた。

 

 

『キラ、無理しないでね…ストライク、発進どうぞ』

 ミリアリアの言葉を受けてキラはバイザーを下ろして頷く。

 そしてー

 

「キラ・ヤマト。ガンダム、行きます!」

 発進と共にフェイズシフト装甲が展開し、トリコロールカラーのストライクが戦闘空域に到達した。

 

※※※※※※

「妙だな…ミノフスキー粒子の濃度が殆どない」

 アムロは独り言を呟くと更なる違和感に気付く。

 

 モビルスーツの残骸すらないのだ。

 

 

「俺は何処まで流されたんだ?一体…ん?」

 

 男はいい知れぬ感覚を覚える。複数の思念が頭に流れていく様な感覚。

 

 

「怖がっている?そんなことじゃ墜ちるぞ」

 

 男は思念が流れ込んでくる方に目を向ける。

 

「やはり、まだ終わってなかったのか…」

※※※※※※

 

 ゴウッ!

 

「くぅっ!当たったの?ダメージはないけど…このままじゃっ!」

 

 キラ・ヤマトの駆るストライクガンダムの目の前に、兄弟機である、ブリッツ、バスター、デュエル、そしてイージスが立ちはだかる。

 アークエンジェルにダメージが行かないのが奇跡的である状態だ。

 

 

「キラッ!こんなことはもう止めろっ!」

 

「アスランっ!」

 

 紅いMS、イージスがビームサーベルで斬り掛かって来るのを、ストライクもサーベルで応戦する。

 

 直ぐに旧友、アスラン・ザラが呼び掛けてきた。

 

 

「キラ、お前もコーディネーターだろっ!ナチュラルと馴れ合うんじゃない!」

「アスラン!お願いだから退いてくれ!もう僕は誰も殺したくないんだ!」

 

「なに!?」

 

「アスラン、貴様っ!敵との戯れ言は止めろ!」

 

 ストライクとイージスの間に、イザーク・ジュールの駆るデュエルがビームライフルを放って割り込む。

 ニ機は弾かれる様に離れ、その間を一筋の光が通り抜けた。

 

 

「アスラン、一人で背負い込まないで下さい。僕らもいますから」

 

 そう言ってイージスの横に来たのは黒いMS、ブリッツのパイロット、ニコル・アマルフィだ。

 

 

「すまない、ニコル。でも、あいつは俺が止めないと…」

 

(アスラン…どうしてそこまで…)

 

 ニコルはアスランの焦燥に危機感を覚えた。戦場で固執することは危険なのだ。

 

 

 ゴウッゴウッゴウッ

 

 前方の3機に気をとられていたストライクが背後からのミサイル攻撃にバランスを崩す。

 振り返ると遥か後方にバスターが構えているのが見えた。

 

 

「あんな所からっ!これじゃ持たない!ムウさんは?」

 

 ムウ・ラ・フラガはガンダム達の戦いの隙間を縫うように抜け、敵の旗艦“ヴェサリウス”へと向かっていた。

 レーダーの方向指示機は未だ直進を続ける、メビウス・ゼロを捉えている。

 

 キラは歯を食い縛るしかなかった。

「連携をとってバッテリー切れまで持ち込むぞ…アスラン、貴様も従えよ?」

 

「イザーク…」

 

 デュエルがビームライフルを吐き出しながら、ストライクに肉迫して行く。

 

 

「イザークなりの優しさなんですよ。アスラン、行きましょう」

 

 ニコルのブリッツもイージスの前に出た。

 

 

「実弾はよ。弾に限りがあんだよ。ちゃんと当たるようにサポートしな」

 

「…ディアッカ」

 

 3人が協力してくれている。アスランにはそれが嬉しかった。

 口惜しいがキラ・ヤマトのMSパイロットとしての素養はかなり高いものである。

 自分たちが墜とすつもりなく吐き出した攻撃ではまず致命傷にはならないだろう。

 

 しかし、4機相手に機動し続ければ、やがて避けられないのが。バッテリー切れである。

 

 その頃、ヴェサリウス内では、副官のアデスが紛叫していた。

 

「なんだ!?あの散漫な攻撃は!?CIC!4人に通信を入れろ!」

 

「待て、アデス。このまま彼らの思うようにさせてやろう。面白いことになりそうだ」

 

 遙か先に構えるザフト旗艦ヴェサリウスのデッキで、ラウ・ル・クルーゼが副官のアデスを抑える。

 

 このままストライクがバッテリー切れに陥れば、当初の目的達成である。 幸い、あの忌々しいムウ・ラ・フラガもいない。ストライク一機ならこちらの練度が遥かに高いと読んだのだ。

 

 

「…私の期待に応えてくれよ?ザフトレッド諸君」

 

 ラウ・ル・クルーゼは仮面の下に笑みを称えていた。

 

 

 デュエルの中距離からの射撃。

 

 イージスとブリッツの一撃離脱戦法。

 

 そしてバスターの回避箇所への精密射撃。

 

 全てがストライク、そしてキラ・ヤマトを疲弊させていく。

 

 やがて、その堂々巡りにも終わりがくる。

 

 

 ビー、ビー、ビー…

 

 

「パワーがっ!」

 

 ストライクが鮮やかなトリコロールから、鈍いグレーへと変わる。バッテリーが限界を迎えたのだ。

 

 

『キラ!』

 

 ワイプ画面にアークエンジェルのブリッジが映し出される。全員が一様に驚いた顔をしている。

 それはキラ・ヤマトも同じだ。

 

 

「くぅっ!このままじゃ…」

 

 ギリギリの機動で機体を動かすも、既に精彩は欠きもはや捕獲されるのを待つだけの状態だ。

 

 

「よし、アスラン、ヤツを捕えろ」

 

「あぁ!」

 

 アスラン・ザラのイージスが変形し四つ足の蛸の様な姿になる。

 そして、その姿のままでストライクに突撃、その“触手”を開いた。

 

 

「キラ!お前に戦いはさせない!」

 

「捕まる!」

 

 

 ガギィッ!!

 

 

 目を堅く閉じたキラ・ヤマトに衝撃はなかった。

 ゆっくりと目を開ける。

 そこには、白と濃紺の“G”が静かに佇んでいた。

 右手足にあたる部分を切断され、バランスを崩したイージス。

 

 その原因を作った新しい“G”は右腕にビームサーベルを構えている。

 

 その姿はザフトにあるどの情報とも合致していなかった。

 識別は勿論、他のGに比べ一回りは大きいその姿に至るまで完全なアンノウンである。

 

 

『こちら、地球連邦第13独立部隊ロンド・ベル所属…』

 

「貴様ぁぁっ!!」

 

 突如もたらされたアンノウン機の全周波通信。

 それに激昂したのはイザーク・ジュールだった。

 

 デュエルにライフルを構えさせ、放つ。

 完全に不意を突く一撃である。

 

 しかしー

 

「避けた!?」

 

 

 そう、アンノウン機はなんの予備動作もなしに機体を少し傾けて避けてしまったのだ。

 

「なにしてる!地球軍の増援だ!ディアッカ!ヤツを撃て!ニコルはアスランをっ!!」

「りょ、了解!」

 

「解りました!さ、アスラン!」

 

「しかし、キラが!」

 

「今はイザークに従いましょう」

 

「くっ!イザーク、すまない」

 

「フンッ、手負いの貴様はただの足手まといだ。せいぜい、この俺がストライクを墜としてしまわんように祈っていろ」

 

 ブリッツがイージスを抱えて離脱を始める。

 

 イザークはその間もアンノウン機にライフルで牽制し続けていた。

 

 

「ちぃッ!この純粋な怒りはなんだ?これじゃ避けてくれと言ってるようなものだ」

 

 アンノウン機の男…“アムロ・レイ”は機体を器用に回転させながらビームサーベルを再び振るう。

 

 その一撃はデュエルの右腕を間接から落とす芸術的とも言えるものだった。

 

 

「なっ!…ぐくっ!」

 

 腕を落とされた驚愕により隙が出来た胴体への蹴り。デュエルは勢い良く後方へ飛ばされる。

 

「いただきだぜ!」

 

 

 それを見逃さずディアッカ・エルスマンは高出力ビームランチャーを遥か後方から射ち放った。

「当たるものか!」

 

 アムロは後方から飛来するビームをいとも簡単に回避する。

 

 狼狽したのはディアッカ・エルスマンだった。

 

 

「コイツ!マジにナチュラルかよ?」

 

 言うより早くガンランチャーを牽制に、イザークに合流するディアッカ。

 右腕を失ったデュエルはそれでも負けじとイーゲルシュテルン(頭部バルカン砲)をアンノウン機に放っていた。

 

 しかし、そんな弾幕をも簡単な機動で回避していく。アンノウン機。

 

 イザークのストレスはどんどん溜まっていく。

 

 

「ビームライフルはないんだったな…ファンネルも放棄してしまってる…どうする?」

 

 自分自身に問いながらもアムロ・レイは反射的に動いていた。

 

 右腕に握らせたサーベルを“柄”だけの状態にし突撃を敢行する。

 

 デュエルのイーゲルシュテルンをシールドでいなし、後方のバスターへ。

 

 

「ディアッカ!避けろ!」

「コイツ!マジにヤベェ!」

 

 バスターが焦りインパルス砲を抱える。しかし、照準はアンノウン機に向くことはなく…

 

 ガキンッ!

 

 バスターの銃口にビームサーベルの柄が当たる。

 そこから、ビームの放流が銃口に流れて行く。

 

 やがてサーベルの刀身がインパルス砲の核に触れる。

 

 ドゴオッ!

 

 ディアッカも咄嗟にランチャーを離したものの、バスターの両マニュピレーターが爆発に巻き込まれてしまう。

 更には両手首の先をなくしたバスターが爆発の勢いで後方へ流されてしまった。

 

「ディアッカ!」

 

 イザークのデュエルが直ぐに駆けつけバスターに組み付く。

 

「クソッ退くしかないか…」

 

 再びデュエルはイーゲルシュテルンをアンノウン機に吐き出しながら、下がっていく。

 

 

「なんとかなったか…しかし、ガンダムが5機とは…ブライトは何も言っていなかったが…」

 

『あ、あの…』

 

 後方のグレーのガンダムからの通信。その声は少年のものだった。

 

 

「子供?なんだって子供がガンダムに…」

 

 アムロは既視感に襲われたが、ひとつため息をついてから通信機に手をかけた。

 

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