寄生少年の学園生活日誌   作:生まれ変わった人

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仕事が忙しく、投稿が遅れて申し訳ありません。

地方は車社会であり、車の運転にまだ慣れていない私にとってはかなりの重労働に等しいです。
今では最初より慣れましたので他の車に道を譲る余裕はできました。

しかし、軽トラとトラック。てめえらは駄目だ


覚醒

何が起こったかまるで分からなかった。

 

新一以外の、パラサイトから確認できない物陰で待機しながら新一たちの動向を覗っていたくるみたちの感想はまさにそれだった。

 

一人でパラサイトに会おうとする新一を止めたのだが、パラサイトに関しての理解が深いという理由で渋々と彼の策には賛成したが、本当にヤバくなったら加勢する気でいた。

もちろん、新一のことを疑っていたわけではなく、パラサイトという化物を相手に一秒でも長く時間稼ぎできたら、と思いながらシャベルなどの武器を持って待機していた。

 

しかし、たった今、自分たちの認識の甘さを垣間見た。

 

パラサイトの頭部が変形した光景に悲鳴が漏れそうになるのを我慢した瞬間、パラサイトの刃が姿を消した。ここまでは『奴ら』を有象無象と思わんばかりに斬り捨ててきた光景から超速度によるものだと理解はできていた。

 

真に驚愕すべきだったことは、新一の動きそのものだった。

 

パラサイトの刃がブレた瞬間、同時に新一の動きも同様にブレた。

 

それから一瞬だった。

彼の姿をはっきりと確認した時にはパラサイトの懐に入りこんでいた。

入り込み、心臓を目指してナイフを突き出していたのだ。

 

「くっ!!」

「ぬぅ!!」

 

刹那の間に、戦況は大きく動いていた。

 

新一の突き出したナイフはパラサイトの腕によって阻まれていた。

片腕にナイフが深々と突き刺さっているが、パラサイトにとっては微々たるものでしかない。

実に恐ろしきは、致命傷を避けるなら体の部位など簡単に捨て去る潔さにある。

 

新一は奇襲に失敗した焦りから

 

パラサイトは生物的な恐れを新一に感じて

 

短い声と共に互いに距離を取った。

 

 

距離を取った瞬間、パラサイトは刃の数を2本に増やし、新一へと襲い掛かる。

同時に新一もナイフを構えて動いた。

 

漫画でしか見たことがないような残像同士のぶつかり合いで火花が散る。

パラサイトの刃とナイフの刃がぶつかり合う度に火花だけが残される。

ただ、新一の動きを目で追えるものは……この場にはいなかった。

 

「なに、これ……」

 

ユキの言葉はこの場の全員の心情を語っていた。

 

新一と共に今日まで生き抜いてきた面子は新一の身体能力というものを理解した気でいた。

美樹と圭は少しだけとはいえ、新一の驚異的な身体能力の片鱗を見ただけだった。

 

それを差し引いても、今回の光景は誰もが言葉を失わせるには十分すぎる。

新一もパラサイトも、自分たちの理解が及ばない領域だったことを無慈悲に見せつけられた。

 

「はは……あんなの、手が出せる訳ねえじゃねえか」

 

この面子の中では新一の次に身体能力が優れているという自負があったくるみでさえも目の前の戦闘を前に武器として構えていたシャベルを下ろさざる得なかった。

もし、新一がピンチになったらいの一番に加勢する気でいたはずだったが、その自信も木っ端みじんに砕かれた。

 

美樹たちに至っては声も出せずに、唾をのむこと以外に動くことができなかった。

 

(泉先輩……あなたは一体……)

 

そんな時、不意に鳴り響いていた金属音がひと際大きく響いたと同時にパラサイトと新一の動きが同時に止まった。

弾かれるように目を向けると、刃の触手から切り傷による出血を起こしたパラサイトと付け根から折られたナイフを投げ捨てる新一の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

(馬鹿な……こんな人間がいたなんて……)

 

表情一つ変えず刃をチラつかせて牽制するパラサイトの内心は焦りで一杯だった。

 

パラサイトの一掃作戦以前から人間を喰らい、もはや人間はパラサイトの食料という認識で固定されていた。

パラサイト一掃も特殊訓練を受け、武器を許可されていた人間によるもの……要は武器さえなければ人間など敵ではない、そう思っていた。

 

しかし、目の前の人間は自分の攻撃を見切り、あろうことか反撃までしようとしている。

常人ならば見切れることもできない速度で斬りかかっているにも拘わらず、だ。

 

だが、パラサイトはもう一つの懸念を新一に抱き、恐れた。

 

(こいつ、こっちの攻撃が届くか届かないかのきわどい所を意識している……いやな距離だ)

 

最初は単なる偶然かと思った。

こっちの触手の長さに応じた攻撃範囲があり、目の前の人間はその攻撃範囲ギリギリの場所にいる。

攻撃は届く、でも致命傷を負わせることができないというギリギリの、嫌な距離だった。

 

しかし、こちらの攻撃が見えてることを考えると、最初の嫌な予感はもはや確信的なものとなった。

そして、反撃は決まってナイフによる超至近距離……触手を長くすればするほど攻撃を防ぐ反応も遅くなる。人体の性能の差も考えると刃を必要以上に増やすことは混乱を招きかねない。

 

ここまで露骨に弱点を責められると、すぐに分かる。

 

(もしや、我々との戦闘を経験したとでもいうのか!?)

 

ただの人間がパラサイトと真っ向勝負をして未だに生き残っていることがその事実の裏付けと言える。

 

(信じられん……だとしたらこいつ、人間では……!!)

「考えている暇があるのか?」

「!?」

 

一瞬の動揺が動きを鈍らせ、その隙をつかれた。

間合いに入られたナイフの切っ先が人体急所に向かっていることに気付き、咄嗟に動く。

 

刃で防ごうにも既に手が届く範囲にあるナイフを防ぐことはもちろん、弾くことも不可能。

その前に新一を切り裂くことも不可能。

 

 

しかし、万策が尽きたわけではない。

 

咄嗟に心臓部を手で庇うとナイフは手を貫いただけで肝心の心臓部に届かせることができなかった。

 

「っ!?」

 

苦虫を潰したように顔を歪める新一のナイフを貫かれた手で固定し、お返しとばかりに複数の刃を新一の背中へ振るう。

しかし、一瞬の判断でナイフから手を放した新一は常人離れした跳躍でパラサイトから距離を置き、推定できる攻撃範囲ギリギリの場所までさがった。

 

息もつかせぬ攻防戦が一時的に停まったものの、両者の間に流れる緊張は増すばかり。

肉体にストレスがかかり、両者の動きに鮮明さが欠いてきたことを理解する。

手に刺さったナイフを捨て、新しく補充したナイフを向けてくる(新一)を思案する。

 

(我々との戦闘経験からくる立ち回りと異常なまでの身体性能で中々手強い……だが、奴には決定的な武器がない。確実に仕留められる武器が)

 

 

実際の所、新一は現在、間合いの短いナイフだけで戦っている。

それは接近戦において新一の身体能力をフルに活かせるということではあるが、本来の用途は人殺しでないため殺傷能力は極めて低い。

刺さっても急所に至るか分からない短い刀身、骨にぶつかれば簡単に壊れるほど脆く、頼りない。

スーパーなどで調達したナイフ程度では毒針のない蜂の針と同じだった。

 

故に、いくらナイフを持っていようともパラサイトを殺せる確率は二、三割程度でしかない。

 

相手の狙いはパラサイトを倒すか、もとより追い出すことでもいいのだろう。

自然と勝利条件を見定め、パラサイト相手の戦い方には一切の無駄がない。

新一の手腕にパラサイトは思わず感心してしまいそうになるが、このままで終われないのはパラサイトも同じだ。

 

食料の貴重さを理解しているパラサイトは友情や愛情などの“情”に無関係な分、生きたいと思う生物本来の欲求が純粋で強固なものとなっている。

だからこそ、生にしがみつくパラサイトにとって新一は最大の天敵であり、倒さねばならぬと決めていた。

 

それ故に、パラサイトが新一のわずかな隙を見逃さなかった。

 

(ここだ!!)

 

疲労が溜まったかのように動きが鈍くなった刃を難なく避け、ナイフで肉の部分を狙い、刃を一つ切り落とそうとした。

運動性能で勝っている自分からの振り下ろしに避けるそぶりすら見せない様子に新一は勝利を確信してナイフを力の限り振り下ろした。

 

 

ナイフの刃が肉にめり込む様子を確認し、敵の無力化に成功したと内心で歓喜した。

 

 

(よし! これで無力化……っ!?)

 

 

ただ、新一が予想してなかったことさえなければ新一の勝利は揺るがなかっただろう。

 

新一のナイフが刃を斬り落とせなかったことを除けば。

 

(斬れない!? まさか、刃の部分を……いや、違う! 逆だ! 硬いんじゃなくて、柔らかい!!)

 

突き刺した刀身は折れることなく、パラサイトの肉にめり込んでいるが、感触で理解した。

あの不快な、肉を引きちぎる感触がない!!

 

それどころか押し返されるような感触を感じ、新一は違和感の正体を過去の光景から思い出した。

 

 

今までのように刃で弾かれたのではなく、ゴムみたいな弾力で押し返されたのだと。

 

 

パラサイトは何も、刃のように乗っ取った部分の肉を固くさせるだけではない。

その体の硬度を自由に操作できるのだ。

 

ミギーのように右腕をゴムのように伸ばすこともあれば、田村玲子のように銃弾の雨から我が子を護り抜いたときのように硬化以外にも軟化させることだってできたのだ。

ただ、ミギーを含め他のパラサイトは刃が少ない無駄で命を刈り取ることができると知っていたから共通して刃の形状で戦うことが多いのだ。

 

パラサイトは敵を切り裂く。

 

そんな無意識的な偏見が長い戦いの中で新一の中で根付き、その隙を付かれたのだった。

 

「くそっ!! 離せ!!」

 

脱出を試みるも、既にパラサイトはナイフを持った手に柔らかくした部分を巻きつかせた。まるで鞭のように。

 

人ひとり持ち上げることなどパラサイトにとって容易い。触手で持ち上げられた新一は抵抗するも、そんな暇を与えられることなく地面に背中から叩きつけられた。

 

「がっ!!」

 

「新ちゃん!!」

「先輩!?」

 

背中から伝わる痛みに苦し紛れの声が空気と共に吐き出さされた。その直後、耳に入ったのがユキとあって間もない美紀の悲鳴だった。

しかし、それを気にする余裕などない。

 

今の叩きつけだけで終わらせる気はなく、再び高く持ち上げられた。

それから、パラサイトは体を走らせたと思えば、新一の掴んだ触手を大きく円の字を描くように回し始めた。

 

 

長い触手の先端にいる新一は増加された遠心力に晒され、抵抗もろくにできなくない。

そして、耐える新一のとどめを刺すかのように、パラサイトは遠心力をのせて新一を力の限り投げ飛ばした。

投げ飛ばされた先の……ガラスのショーウィンドウに新一の体が突っ込んだ。

 

けたたましいガラスの割れる音と店の中の棚が壊れる音に全員の顔が真っ青になる。

 

 

「新一ぃ!!」

 

 

 

 

皆のいる場所だと丁度真下の部分だから新一の姿が見えない。

だが、音からして無傷ということではないと分かる。

 

考えうる最悪の可能性に少女たちは誰もが絶望する中、パラサイトの複眼の一つと目が合った。

 

「ひっ!」

 

目が合った、それだけで全員が恐怖し、立っていられずに座り込むのが数人。この中では新一を除いて戦闘能力があると自負していたくるみもシャベルを握る手が震えている。

僅かな時間でパラサイトの恐怖を体の芯まで理解してしまったのだから。

 

(あれらは後にするか。優先すべきはあの男の始末)

 

しかし、パラサイトはユキたちを脅威として見ず、新一を投げた場所へと向かっていく。

 

 

見えなくなったパラサイトに皆は足を震わせ、自分の無力さを呪いながら新一の無事を祈ることしかできなかった。

 

 

 

 

 

決して警戒を怠らず、刃を複数用意して反応があれば即座に切り捨てる準備は整っている。

店の中へ乗り込み、倒れた棚に刃の切っ先を向ける。

 

 

このまま棚ごと新一を串刺しにする。

抵抗させる暇すら与えない、そう考えたパラサイトは無慈悲に、容赦のない斬撃を振り下ろした。

 

 

殺った、そう思ったときだった。

 

 

強烈な反応が刃の向かう先から感じた。

 

 

(な、に……!?)

 

突然のことに思考が一瞬停止し、反応も鈍った。

 

 

相手はただの人間であり、これで仕留められると思った一撃は

 

 

 

棚を突き破って出てきた

 

 

 

異形の右腕によって防がれた。

 

 

 

「なんだと!?」

 

何が起こったか分からない。ただ、自分の理解を超えることが起こったとだけしか分からない。

 

 

混乱し続けるパラサイトの刃を防いだ右腕の元は、その場から立ち上がった。

 

「また、俺と戦ってくれるのか……ミギー」

 

何を言っているか分からない。

だが、これだけは分かる。こいつは人間なんかじゃない、と。

 

頭から血を流し、手傷を負った人間は血を左腕で拭って変化した右腕を握った。

 

 

「予定変更……お前は、ここで仕留める」

 

 

パラサイトは一歩引く。

 

 

 

自分を映す、新一の目から逃げるように

 

 

 

 

本当の殺し合いが幕を開けようとしている。




右腕の変化ですが、これについては次回に触れます。

(追記)新一の最後のシーンはメンバーには見えてないので、まだバレていません。その部分の表記を
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