「……え? 俺を部下にするってどういうことですか?」
「簡単なことだ。俺は今のギルシュにはお前のような人材が必要だと考えている。だから今のうちにお前を俺の部下にしようと思ったのだ」
アルハレムの疑問にライザックは当たり前のように答える。
「我らがギルシュは先人達の活躍によって中央大陸の南半分を支配する大国となった。しかしそのせいか今のギルシュの貴族達には『驕り』が生じている。
実力主義を掲げて常に上昇志向を保っていると言えば聞こえはいいが、実際にやっていることと言えば格上の貴族王族に媚を売り、領地の開発に精を出す商人の真似事だ。別にそれを悪いとは言わん。自らの領地を豊かにすることは最終的に国を豊かにする必要なことだからな。
だが国は豊かなだけではいかんのだ。国は豊かさと同時に外敵を跳ね除ける強さを持たなければならない」
ライザックの口から出た演説のような話に後ろにいるお付きの貴族達が同感だとばかりに頷く。
「……言っていることがアレですけど意外と慕われているのですね」
「しっ」
心酔した表情でライザックの言葉に頷いたお付きの貴族達を見てロッドの姿でアルハレムの腰に収まっていたアルマが呟く。幸い小声で言ったので持ち主にしか聞こえておらず、アルハレムは腰のインテリジェンスウェポンの柄を軽く叩いてから第一王子の話を聞く。
「だがこのギルシュを今より更に豊かにして強くするというのは容易いことではない。その為にはこの俺を筆頭に、国を引っ張っていけるだけの力ある者達が必要だ。俺はそんな者達を探している。……そしてアルハレム・マスタノート。お前は合格だ」
「合格……ですか?」
「そうだ。ギルシュ建国の頃より隣国との国境を守護してきたマスタノートの家に生まれ、権力に興味を見せずに力を求め、冒険者になればすぐさま魔女を五人も従えて勇者に認められた。お前こそ俺の部下に相応しい。ギルシュの未来の為にお前の力、俺の下で振るってはみないか?」
「ライザック皇子。俺は……」
「ライザック兄様」
アルハレムがライザックに何か返事をしようとした時、さっきまで向こうの方でヨハン王と一緒にアストライアとアリスンの二人と話をしていたローレンがやって来た。
「ローレンか。何のようだ?」
会話に水を差された形になったライザックが僅かに不機嫌そうな顔となってローレンを見る。
「いえ、父上がライザック兄様に例の件について話があるらしいですよ」
「父上が? ……では仕方あるまい。アルハレムよ。俺への返事、よく考えておけよ? まあ、どう考えても返事は一つしかないだろうがな」
ライザックはアルハレムに自分の申し出が断られるとは全く思っていない自信溢れる笑みを見せると、お付きの貴族達を連れてヨハン王の元へと向かった。そして第一王子の姿が小さくなって話し声が聞こえない所まで行くと、うんざりとしたローレンが口を開いた。
「……ホント、相変わらずだよね。ライザック兄様は」
「ライザック皇子はいつもあの様な感じなのですか?」
アルハレムの言葉にローレンは一つ頷いて答える。
「そうだよ。いつもあんな感じ。真剣にギルシュの未来を考えているとは思うんだけどなんて言うか……。考えているのは『自分のものになったギルシュ』の未来って感じでね……」
「そうですね……。あの人が言いたいこと分かりますけど、少し極端過ぎる気もしますね」
「………」
「何、だか、危、ない、感じ、した」
「しかもお付きの貴族達はすっかり心酔しているようで危険度が倍増でござるな」
「聞いていて少し怖かったです……」
ローレンの言葉にリリア、レイア、ルル、ツクモ、ヒスイの五人が頷く。
「まあ、ライザック兄様じゃないけど返事はよく考えて慎重に答えた方がいいよ? あの人は自分の味方以外は全て敵だって考えな上、敵には一切の容赦がないから」
「……ええ、分かっています。初めて会った時にライザック皇子がアンジェラを殺す場面を見て、それは充分に理解しました」
アルハレムはライザックと初めて会った時のことを思い出しながらローレンに頷いてみせた。