魔物使いのハンドレッドクエスト   作:兵庫人

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第三十一話

「……はぁ。もう、いい。そこ、貴方」

 

 ミレイナの話を聞いていたルルはため息を吐くとアルハレムを指差した。

 

「え? 俺?」

 

「そう。貴方、この女、より、話せる。ルルの、話、聞いて」

 

「なるほど。ミレイナではまともな会話ができないと判断してアルハレム様に話しかけたと。……いい判断です」

 

「………」

 

「むぐぐ……!」

 

 アルハレムを指名するルルにリリアとレイアは感心したように頷き、一人だけ無視される形となったミレイナが悔しそうに歯噛みする。そんな神官戦士の表情を見たサキュバスが挑発するような笑顔を浮かべて口を開く。

 

「おやおや? あの神官戦士、生意気にも悔しそうな顔をしていますよ? 全てはまともに会話ができない自分の自業自得だというのに」

 

「リリア、余計なことは言うな。それでルル? 話というのは?」

 

「簡単に、言う。ルル、墓荒らし、しない。だから、ルルを、見逃して」

 

「なるほど」

 

「でしょうね」

 

「………」

 

「な、何ですって!?」

 

 細かく区切りながら「これ以上墓荒らしをしないから見逃してほしい」と告げるルル。アルハレムとリリア、レイアの三人はグールの少女の発言をある程度予想していたが、ミレイナだけは全くの予想外だったようで大袈裟なほどに驚く。

 

「まあ、馬鹿正直に現れて話しかけてきた時点でそんなことだろうと思っていたけどね。でもルル? 墓荒らしを止めてくれるのは助かるけど、それをしたら君は食糧をどこから調達するんだ? この共同墓地はもう荒らさないけど他の墓地は荒らす……なんてのはよしてくれよ?」

 

「安心、しろ。ルル、抜かり、ない。ルル、森で、魔物、しとめた。それから、牙や毛皮、他に、肉、剥ぎ取った。その肉、最近、食べ頃、しばらく、もつ」

 

 アルハレムの質問にルルは自慢気に答える。話をまとめると、どうやら彼女は魔物を倒した際に牙や毛皮の他に肉も手に入れていて、その肉が最近ようやくグールが食べられるぐらいに腐……熟成したらしく、しばらくは墓荒らしをしなくてもすむらしい。

 

(さて、どうするか……。ルルにも悪気があった訳じゃないし、手荒な真似をせずに墓荒らしを止めてくれるのだったら聞き入れても……)

 

「そんなの聞けるわけないのです!」

 

 アルハレムがルルの提案を聞き入れるか考えていると、ミレイナが大声で叫んだ。

 

「この正義の神官戦士ミレイナが貴女のような凶悪な魔女を見逃すなど絶対にあり得ません! それに墓荒らしをしないと言っていますが、そんなのは私達を油断させるための罠です! そうに決まっています! 邪悪なる魔女、グール! 今ここに正義の戦乙女ミレイナが裁きの鉄槌を降してあげます!」

 

「なっ!? ミレイナ、待て!」

 

「あの女、また……!」

 

「………!」

 

 ルルの言葉を否定して戦闘態勢に入ろうとするミレイナにアルハレムが慌て、リリアとレイアが不愉快そうに彼女に嫌悪の視線を向ける。だが、サキュバスとラミアの二人以上に、神官戦士の戦乙女を嫌悪の目で見る者がいた。

 

「さあ、覚悟するので……」

 

「黙れ」

 

 ミレイナの言葉を嫌悪の表情を浮かべたルルが一言で遮る。そのグールの少女が神官戦士の少女を見る目は冷たい軽蔑の目。

 

「貴女、いい加減、ウザイ。さっき、から、正義、正義、言うけど、違う。貴女、正義、愛して、ない」

 

「な、何ですって?」

 

「貴女、好きなの、正義、違う、貴女、自身。正義の、味方ごっこ、する、自分だけ、愛してる」

 

「………!?」

 

 ミレイナはルルの感情のこもっていない言葉に思わず体が固まるが、グールの少女は相手の様子など構うことなく言葉を続ける。

 

「貴女、正義でも、悪でも、ない。ただの、独善、ただの、自己愛。もう一度、言う。貴女、ウザイ」

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