魔物使いのハンドレッドクエスト   作:兵庫人

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第五十三話

 見渡す限り広がる遮蔽物もない草原を武装した大勢の集団が進んで行く。

 

 マスタノート家とビスト家に所属している兵士達だ。

 

 マスタノート家の兵の数は五十数名。これはマスタノート家の全兵力の半数であり、残りの半数はマスタロードの防衛の為に待機している。そこにビスト家の当主であるライブが引き連れてきた二十数名の兵達が加わって、合わせて八十名近くの大人数となっていた。

 

『……………』

 

 魔物を生み出す森、大昔のエルフのダンジョンに向かっているからだろうか。

 

 八十名近くの兵士達は皆、眼の中に激しい感情の炎を燃やしていた。その顔は胸に宿る思いによって険しい表情が刻まれていて、表情を険しいまま変えることなく黙々と歩を進める兵士達の姿はまるで動く彫刻のようだった。

 

 しかし兵士達は彫刻ではなく生身の人間であるため、彼らの口からは呼吸の音とともに呟きが聞こえる。

 

 その呟きは兵士達の胸の内にある感情をそのまま現したものであった。

 

 

「チックショウ……! あのクソガキ、いつの間にハーレムなんか作りやがった……!」「突然消えたかと思えば、あんな美人の魔女を三人も連れて来やがって」「当てつけだな? 俺への当て付けなんだな? 今まで可愛がってやった恩を仇で返しやがって、アルハレムの野郎」「羨ましくなんてない。羨ましくなんてない。羨ましくなんてない。羨ましくなんてない。羨ましくなんて……」「あのサキュバス、スゲェエロい衣装だな」「ラミア、初めて近くで見たけどいい女じゃねぇか」「あのグールの鎧……ビキニアーマーをこの目で見る日がこようとは……」「あんな美人達を独り占めしやがって……!」「憎しみで人を殺せたらいいのに。憎しみで人を殺せたらいいのに。憎しみで人を殺せたらいいのに。憎しみで人を殺せたらいいのに。憎しみで人を殺せたらいいのに……」「俺達はダンジョンを攻略しに行くんだぞ? デートじゃないんだぞ? あの馬鹿、分かっているのか?」「美人の母親に姉と妹、その次は美人の仲間達ってか……!?」「というか何で仲間にしたのが全員魔女? しかも巨乳の。もしかしてアルハレム様って女好き?」「大事なところがもげればいいのに。大事なところがもげればいいのに。大事なところがもげればいいのに。大事なところがもげればいいのに。大事なところがもげればいいのに……」

 

 

「……………なぁ? 何だか兵士達の視線が俺に集中している気がするんだけど、気のせいか?」

 

「いえ、気のせいではないかと。私も尋常ではない負の感情を感じますから」

 

「………」

 

「我が夫。気を、つけて。あの、兵、達、あぶ、ない」

 

 兵士達の突き刺すような視線を背中に感じて馬に乗ったアルハレムが冷や汗を流しながら呟くと、彼の回りを徒歩でついてきているリリア、レイア、ルルが頷く。

 

「にゃはは♪ アルってばアリスンやリリア達だけでなく、兵士達にも人気でござるな♪」

 

 いつの間にかアルハレムの後ろで馬の上に座っていたツクモが笑う。

 

「笑い事じゃないですよ、ツクモさん。何だか今にも後ろから刺されそうで怖いんですから」

 

 気がつけばツクモがいるのはいつものことなのでアルハレムは特に気にせずに答えると、回りにいたリリア達が憤怒の表情で猫又の魔女を見る。

 

「何でアルハレム様の後ろに座っているんですか貴女は! 羨ましい真似をしてないで早くそこから降りなさい!」

 

「固いこと言いっこなしでござるよ♪ ……それよりもアル? その煙管の吸い心地はどうでござるか?」

 

 ツクモはリリアの怒声を軽く流すとアルハレムの右手にある煙管について聞く。彼が持っている煙管は、城を出発する時にこの猫又の魔女から渡されたもので、彼女に吸っておくように言われていたのである。

 

「え? ああ、はい。この煙管を吸っていると体力が回復してもう大分楽になりました。ほら、ステータス」

 

 

【名前】 アルハレム・マスタノート

【種族】 ヒューマン

【性別】 男

【才能】 4/20

【生命】 942/1260

【輝力】 0/0

【筋力】 29

【耐久】 30

【敏捷】 34

【器用】 32

【精神】 33

【特性】 冒険者の資質、超人的体力

【技能】 ☆身体能力強化(偽)、☆疾風鞭、☆轟風鞭、★中級剣術、★中級弓術、★中級馬術、★初級泳術、★契約の儀式、★初級鞭術

【称号】 家族に愛された貴族、冒険者(魔物使い)、サキュバスの主、ラミアの主、グールの主

 

 

 アルハレムがステータス画面を呼び出してツクモに見せると、今朝には数値が底をついていた【生命】が八割近くまで回復していた。

 

「凄いですね、この煙管。最初はただの煙草だと思っていましたけど違ったんですね」

 

「当然でござるよ♪ その煙管には猫又の一族秘伝の薬草を仕込んであるので、効果が出るまでちと時間がかかるでござるがよく効くでござろう? アル達にはやってもらうことがあるでござるから、その煙管と薬草はやるでござる。これでリリア達と何度肌を重ねても安心でござるな♪」

 

「ほ、本当ですか!? ありがとうございます、ツクモさん!」

 

「………!?」

 

「あり、がと、ございま、す。ツクモ、さん」

 

 ツクモが胸を張ってアルハレムが吸っている煙管の説明をすると、「何度肌を重ねても安心」という言葉にリリア、レイア、ルルが今まで見たことないくらいに腰を低くしてお礼を言う。

 

 流石は魔女、自分達の欲望を助ける相手には礼を尽くすようだ。

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