アルハレムのステータス画面に新たに記された特性を見てアストライアは顎に手を当てて考える。
「力の模倣、か……。アルハレム、どの様な特性なのか分かるか?」
「ちょっと待って」
ステータス画面にある「力の模倣」の文字にアルハレムの指が触れると、ステータス画面の表示が変わって新たな特性の説明文が現れた。
【力の模倣】
「信頼する相手が持つ力を模倣して己のものとする固有特性。
相手の体に触れることで、その相手が持つ特性や技能の一つを使用できるようにする。ただし、それには模倣する特性か技能の効果を理解して、相手の許可を得る必要がある。
一つの特性や技能を模倣すると、それまで模倣していた特性や技能は上書きされる」
「なるほど。力の模倣とはそういう意味か。アルハレム、ある意味お前にはお似合いの特性だな」
「そうだね」
力の模倣の説明文を読んだアストライアは興味深そうに言うとアルハレムも頷いて同意する。
何しろアルハレムの周りには強力な特性や技能を持つ魔女達や戦乙女が揃っているのだ。模倣して使用できる特性や技能が一つだけとはいえ、使い方次第では非常に強力な力となるのは間違いなかった。
「神力石を使用して新たな特性や技能を修得する確率はかなり低いと聞く。それなのに初めての使用でここまで便利な特性を手に入れるとは、お前も運がいいな。それで? 残った神力石はどうする気だ?」
「あー、それはまだ決めてなくて。また今度でいいかな?」
「構わんよ。その神力石はお前のものだ。いつ使うのかはお前が決めろ。なんだったら売ってしまってもいい。使えば才能を強化してくれる文字通りの女神イアスからの贈り物だ。王族でも金に糸目をつけずに買ってくれるだろうさ」
「いや、それは流石に勿体無さすぎるって」
母親の言葉に神力石を持つ息子は苦笑して答える。アストライアの言葉は嘘ではなく、神力石を一つ売るだけで王都に豪邸を建てられるほどの大金が得られるのだが、アルハレムはそれに何の興味を持たなかった。
大金よりも力を求めるのは、やはりつい最近まで魔物の出現が多発する領地を持つ辺境伯の一族といったところで、そんなアルハレムの反応にアストライアは口元に笑みを浮かべた。
「まあ、これからもクエストブックの試練達成に尽力することだ。そうすれば更に神力石が手に入って選択の幅が広がるし、それに聞いた話によればクエストブックは十のクエストを達成するたびに特別な……!?」
そこまでアストライアが言ったところで馬車は大きく揺れた後に急停止をした。
「これは……?」
「一対何事だ?」
アストライアが馬車の運転をしている御者に問いかけると、外から「ま、魔物の襲撃です!」という恐怖で上ずった声で返事が返ってきた。しかし馬車の中の親子は特に驚かず、冷静に状況を理解した。
「ふん。魔物の襲撃か……。すぐに片をつけるぞ」
「この一行に襲撃を仕掛けるなんてその魔物達も気の毒に……」
アストライアがつまらなそうに言ってアルハレムが敵に同情するように呟くと、二人の親子は魔物の襲撃を撃退するべく馬車の外に出た。