魔物使いのハンドレッドクエスト   作:兵庫人

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第八十二話

「……これで全部のようだな」

 

「みたいだね」

 

 自分達が倒した魔物の死骸を見下ろしながらアストライアが言うとアルハレムが同意する。

 

 アルハレム達一行を襲ってきたのは五十を超えるゴブリンの集団で、最初二台の馬車を取り囲む形で攻撃を仕掛けたのだが、今更ゴブリンのような下級の魔物の集団程度に負けるはずがなく瞬く間に返り討ちにしたのだった。

 

「以前の俺だったら、これだけの数のゴブリンを見たら驚異に感じたのに、今は全く怖くなかったな」

 

「それだけお前も場数を踏んだということだ……と言ってやりたいが、今回はあいつらの活躍が大きいな」

 

 アストライアは苦笑しながら息子に声をかけてから視線を横にいる六人の戦乙女と魔女達に移す。

 

「アルハレム様♪ 見てくれましたか? 私の活躍を……って! 貴女達、何あまり活躍してないのにアルハレム様に近づこうとしているのですか? 離れなさい!」

 

「………! ………!」

 

「ルル、我が夫、の、ため、頑張っ、た。離れ、るの、貴女、達、の、ほう」

 

「にゃー。ツクモさん、今回一番多くのゴブリンを倒したでござるよ? ゴブリンを一番倒した者がアルハレム殿の側にいられるなら、その権利はツクモさんのものでござるな?」

 

「馬鹿言ってんじゃないわよ! 私がお兄様と一緒の馬車に乗るの! 家族三人で一緒の馬車に乗るんだから邪魔しないで!」

 

「ええっと……その……」

 

 アルハレムに近づこうとするのと同時に、他の女を牽制しあう六人の戦乙女と魔女達に、アルハレムとアストライアは内心でため息を吐いた。

 

 しかしゴブリンの集団をこの短時間で倒せたのは彼女達の活躍が大きかった。

 

 仲間同士であるがそれ以上にライバル同士である者達。それが長時間同じ馬車に押し込められていたせいで六人の戦乙女と魔女達のストレスは異常なほどに溜まっていて、そのストレスの全てを敵であるゴブリン達に叩きつけたのだ。

 

 そのせいでゴブリン達のほとんどはリリア達によって倒され、アルハレムとアストライアは自分に向かってくる二、三体しか倒していなかった。

 

「やっぱり戦乙女と魔女は強いよな……」

 

「あ、あの……」

 

「ん?」

 

 アルハレムがリリア達を見ながら考え事をしていると神妙そうな顔をしたヒスイが自分の主に向けて頭を下げてきた。

 

「ヒスイ? どうした?」

 

「その、すみませんでした。旦那様。私、今回の戦いで役に立てなくて」

 

 言われてみればヒスイはゴブリン達との戦闘中、何もできずにいてツクモが彼女を守りながら戦っていたような気がする。

 

「いや、ヒスイはまだ封印から解放されたばかりで、経験が少ないから仕方がないって。少しずつ慣れていってくれたらいい」

 

「……はい。ありがとうございます」

 

「……さてと。皆、ちょっといいか?」

 

 アルハレムはヒスイに慰めるように言ってから、まだ言い争っているリリア達に声をかけて懐にある神力石を取り出した。

 

「俺はこの神力石を使って自分を強化してみたいのだけど、皆はいいかな?」

 

『………………………………?』

 

 神力石を見せながら言うアルハレムの言葉に皆が訳が分からないとばかりに首をかしげるが、アストライアだけは呆れた顔をしていた。

 

「馬車で一個しか神力石を使わなかったのは何故かと思っていたが、まさかコイツらのことを気にしていたのか?」

 

「いや……。だって、俺が今までクエストを達成できたのはリリア達の協力があったからなのに、彼女達に黙って全部使うのはどうかな、と思って……」

 

「はぁ……。そんないらん遠慮をしなくても、コイツらはそんなこと気にしたりしないぞ?」

 

 照れた風に言う自分の息子にアストライアはため息を吐く。そしてアストライアの言う通り、リリア達はアルハレムが神力石を全て使うことに異論はないようで頷いてくれた。

 

「そうか……ありがとう。それじゃあ、使うぞ」

 

 アルハレムはリリア達に礼を言うとその場で六個の神力石を飲み込み、頭の中で「ピロロン♪」とステータスが更新される音をしたのを聞くとステータス画面を呼び出した。

 

 

【名前】 アルハレム・マスタノート

【種族】 ヒューマン

【性別】 男

【才能】 4/55

【生命】 1260/1860

【輝力】 0/0

【筋力】 29

【耐久】 30

【敏捷】 34

【器用】 32

【精神】 33

【特性】 冒険者の資質、超人的体力、力の模倣

【技能】 ☆身体能力強化(偽)、☆疾風鞭、☆轟風鞭、★中級剣術、★中級弓術、★中級馬術、★初級泳術、★契約の儀式、★初級鞭術

【称号】 家族に愛された貴族、冒険者(魔物使い)、サキュバスの主、ラミアの主、グールの主、猫又の主、霊亀の主

 

 

「……【才能】以外は【生命】が六百も増えているけど、何で【才能】と【生命】しか増えていないんだ?」

 

 自分のステータス画面を見てアルハレムは納得できない表情で呟くが、彼に従う魔女達は嬉しそうな笑みを浮かべるのだった。

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