魔物使いのハンドレッドクエスト   作:兵庫人

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第九十二話

「来い、クエストブック。………うわっ!? 本当に来た」

 

「ははっ。だから呼んだら来るって言ったろう?」

 

 呼んだ途端に空中に自分のクエストブックが現れて、アルハレムは驚きながら本をキャッチをする。そしてその彼の姿にローレンは笑いながら言った。

 

 夜会でヨハン王と会った次の日。アルハレム達は今、シャイニングゴッデスの与えられた部屋にいて、そこにはクエストに挑戦する旅の予定を話し合いに来たローレン達も来ていた。

 

 話し合いの途中でアルハレムはローレンに、昨日の夜会でどうやって空中にクエストブックを出現させたのかを聞くと、王子は冒険者が呼んだらクエストブックはどこにでも現れると答えた。そして実際に読んでみたら本当に何もない空中にクエストブックが現れたのだった。

 

「クエストブックは最初に開いて所有者となった冒険者と魂で繋がっている。だからクエストに三回失敗するか、本人が放棄すると決めて冒険者の資格を失わない限り、クエストブックは冒険者とどれだけ離れても持ち主の元に帰ってくるようになっているんだ」

 

「そうなんですか。それにしても呼ばれたら何もない空中に現れるだなんて思いもしませんでしたよ」

 

 ローレンの説明にアルハレムは驚き半分感心半分の気持ちで頷く。

 

「女神イアスが創造した書物クエストブックにはまだ知られていない秘密があるかもしれない。そしてそれを調べるのも僕達勇者の役目なんだ。もしかしたらクエストブックが所有者を定める基準というのもあるかもしれないしね」

 

「クエストブックが所有者を定める基準? そんなものがあるんですか?」

 

 クエストブックは「冒険者に選ばれる可能性がある」という種族特性「冒険者の資質」を持つ種族ヒューマンから無作為に百人の所有者候補を選んでその前に現れ、彼らがクエストブックを開いて冒険者の契約が結ばれる。そこにクエストブックが己の所有者を選ぶ基準があるなんて考えたこともなかった。

 

「まあ、そんな基準もあるかもしれないって話さ。それよりも今はアルハレム君のクエストを……」

 

 キンコーン♪

 

 ローレンがそこまで言ったところでアルハレムのクエストブックから、新たなクエストが記されたことを報せる音が聞こえてきた。

 

「噂をすればなんとやら、だね」

 

「本当に、この本はいつも都合がいいタイミングでクエストを出してきますね」

 

 アルハレムは苦笑を浮かべながらローレンに答えると、クエストブックを開いて新たなクエストの文章を確認する。

 

 

【クエストそのきゅう。

 ぼうけんしゃのひととたたかいのれんしゅうをしてください。

 かってもまけても、ぼうけんしゃのひととたたかいのれんしゅうをするのは、いいけいけんになるとおもいますよー。

 それじゃー、あとじゅうよんにちのあいだにガンバってください♪】

 

 

「きゅ、九回目のクエスト……だと……!? じゃあ、これともう一回クエストを達成すれば……!」

 

 アルハレムのクエストブックに記された文章に目を通してローレンが戦慄の表情を浮かべるが、当の本人はそれに気づかずクエストの内容を考える。

 

「戦いの練習? 模擬戦のことか? この場合、冒険者の人ってのはローレン皇子のことだよな。勝っても負けてもって、ローレン皇子と模擬戦をするだけでクエストが達成されるってことなのか?」

 

「何をしている、アルハレム・マスタノート! 早く外に出ろ!」

 

「え?」

 

 考え事をしていたアルハレムにローレンが、それまでの友好的な笑みを浮かべていたのが嘘だったかのように厳しい表情で怒鳴る。

 

「ろ、ローレン皇子?」

 

「時間が惜しい。中庭で模擬戦を行うからすぐに仕度をしろ」

 

 驚くアルハレムに構わずローレンは部屋から出ていき、彼と一緒に部屋に来ていた戦乙女達も驚きながらも彼について部屋から出ていく。

 

「ローレン皇子、一体どうしたのでしょうか?」

 

 ローレンが部屋から出ていった後、リリアが自分の主に話しかけるがアルハレムも訳が分からず首をかしげた。

 

「分からない。……でもさっきのローレン皇子の態度、どこかで見たような……?」

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