シンデレラの籠球部   作:すずう

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2Q 『挨拶』

「卯月、何で正座させられてるのかわかるよね?」

 

「はい…」

 

「杏言ったよね?『1人につき最低でも1人連れてきて』って言ったよね?」

 

「言いました…」

 

「連れてこれなかったらなんて何があるって言ったっけ?」

 

「お…覚えてないです…」

 

「そうだよね。『シャトル100本』って言ったよね?ね?」

 

「言ってました…」

 

「しかも卯月は2倍で『シャトルラン200本』なんだよね?」

 

「……………」

 

「…頑張ってね♡」

 

「り…りーなちゃ~ん…」

 

「……どんまい」

 

 

卯月を一通りいじり終えた杏は座椅子に座りながら横一列に並んでいる新入部員3人の方向を向く。

 

 

「諸君!!女子バスケ部へようこそ!!

入ってくれて杏はうれしいよ!!」

 

 

今までの一連の杏の行動を見ていた新入生3人は、1人は怯え1人は小動物を見るような眼をしもう1人はなぜか憧れのまなざしを向けていた。

 

 

「まぁまだ何にもわかんないからとりあえず自己紹介してよ。

それじゃあそこのツインテールの子からよろしく」

 

「わ…わわわわわわたしですか?」

 

 

杏はかな子が見つけてきた新入生の子に話を振る。

 

 

「あの…お…緒方智絵里(おがたちえり)…です。

中学校の時は…PG(ポイントガード)でした。

んと…よろしくおねがいします!!」

 

 

最後に元気よく礼をして自己紹介を終える。

 

 

「うん、よろしくね~。あとそんなにびくびくしなくてもいいんだよ」

 

「杏ちゃんが怖いんじゃないかにぃ?」

 

「え~そんなことないよ~ねぇ?」

 

 

智絵里はまだ少しおびえながら「は…はい…」と返した。

「まぁいいや」と杏は呟き李衣菜の勧誘してきたショートカットの子に自己紹介を頼んだ。

 

 

「1年C組、前川みく(まえかわみく)にゃあ!!

中学の時はSG(シューティングガード)だったにゃ!!

目標はりーなチャンに負けない3P(スリーポイント)シューターになることにゃ!!」

 

「あはは…いきなり宣戦布告されちゃったなぁ…」

 

 

李衣菜は「参ったなぁ」と言って頭を掻いてはいるがまんざらでもない表情でいる。

 

 

「それにしてもその『にゃあ』っていうの猫ちゃんなのかな?」

 

「そうにゃ!!キャラが濃いにゃ?」

 

「あっ!!本当だ!!語尾が変!!」

 

「んにゃ~!!りーなチャンなんで気が付いてないにゃ!!

会った時からずっとついてたにゃ!!」

 

 

「ごめんごめん」と李衣菜が誤りその場はいったん収まる。

 

 

「う~ん…みくには悪いけど杏はキャラそこまで濃いようには感じないなぁ…」

 

「にゃ!?なんでですかにゃ!?」

 

「だってねぇ…きらり?」

 

「うんとねぇ、みくちゃんもすっごくかわうぃけどキャラが濃いっていうと『ランコ』ちゃんのほうが上だと思うにぃ」

 

「「「「『ランコちゃん』?」」」」

 

 

2年組とみくは聞きなれない名前を聞き困惑する。

 

 

「あぁまだ自己紹介がまだだったね。杏ときらりが見つけてきた子なんだけど…

じゃあランコ、自己紹介お願いしてもいい?」

 

 

杏はランコと呼ばれたもう一人の新入生に自己紹介を頼む。

 

 

「降臨の時、同胞達よ!!我が名は神崎蘭子(かんざきらんこ)

我が武器は『グングニル』ぞ!!

わが魂の赴くままに!」

 

「うんよろしくにぃ~」

 

 

杏ときらりは軽く返しているが他のメンバーはまだぽか~んとしている。

 

 

「えっと…なんて言ったのかな?」

 

「我が言の葉の秘めたる真意を読み解くには少々時を刻む必要があるようね」

 

「う…うん、いまのはなんとなくわかったかも」

 

「とりあえずよろしくね!!蘭子ちゃん」

 

 

蘭子は「うむ!!」と元気良く返した。

「それにしても」と李衣菜が新入生たちの近くによる。

 

 

「流石に言葉がわからないとコミュニケーションがとれないなぁ

ポジションもわからなかったし」

 

 

李衣菜がそうつぶやくと「あの…!!」と智絵里が右手を上げる。

 

 

「ん?どうしたの智恵理ちゃん?」

 

「あの…えと…

わたし中学の時蘭子ちゃんのいた中学と何回か練習試合とかしてて…合同練習とかも何回かしてて…その…仲もよくて…

だから…少しだけなら蘭子ちゃんの言葉わかり…ます」

 

 

その言葉を聞き杏が真っ先に「おぉ!!」と声を上げた。

 

 

「じゃあ蘭子のポジションもわかる?」

 

「は…はい!!『グングニル』だから確か…SF(スモールフォワード)だったと思います」

 

「SF、蘭子それであってる?」

 

「うむ!!真意の開放に感謝するぞ!!四つ葉の申し子(よつばのもうしご)よ!!」

 

 

智絵里は「よ…四つ葉の申し子ってわたしのこと…かな?」と少し照れ笑いをする。

そして杏は座椅子から降り立ち上がる。

 

 

「今度は杏たちの自己紹介の番だね。

私は3年でキャプテンの双葉杏(ふたばあんず)。ポジションはPGだよ。

これからびしばし鍛えていくから覚悟しておいてね!!ってことでよろしく~」

 

「にゃっほーい! 諸星きらり(もろぼしきらり)だよ☆

3年生で部長で杏ちゃんと同じクラスなんだにぃ☆

ポジションはC(センター)みんなよりちょっと高いところでがんばっちゃうにぃ☆

好きなものはかわいい物とマシュマロと杏ちゃんと…」

 

 

このままだとずっと続いちゃいそうだし長いからそこまでと杏に制止されてきらりの自己紹介は強制終了させられて2年生組の自己紹介に移る。

 

 

「えっと、三村かな子(みむらかなこ)です。

選手ではなくマネージャーでみんなのサポートをしていきます。

これからよろしくね」

 

「2年の多田李衣菜(ただりいな)です。

ポジションはSGで日本一の3Pシューターを目指してます!!なんて言ってみちゃったりして…

とにかくこれからよろしく!!

んで最後にそこで正座してるのが」

 

島村卯月(しまむらうづき)です!!

ポジションは蘭子ちゃんと同じでSFです!!

これから頑張っていきましょうね!!いててて…」

 

 

最後に卯月が足をしびれさせながら自己紹介を終えた。

 

 

「とにかくこれからこの8人…いや、監督も入れて9人か。

まぁいいや、9人で頑張っていこう!!

って言ってもまだ1日目だしこれから増えるかもしれないけどね。

とりあえず今日は解散して明日から練習しよ」

 

 

と杏が締め今日はお開きということになった。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「じゃあきらりと杏ちゃんは電車だからここでバイバイだにぃ☆

あれあれ~?みくちゃんと蘭子ちゃんも電車かにぃ?」

 

「「はいにゃ!!(うむ!!)」」

 

「それではみくちゃん、蘭子ちゃんまた明日ね!!

智絵里ちゃんはこっちですか?」

 

「は…はい!!そうです」

 

 

そういって杏たちと別れ反対方向に2年生組と智絵里は歩き始める。

 

 

「智恵理ちゃんはバスケをしにここに入学してくれたの?」

 

 

李衣菜がそう聞くと「い…いえ、そういうわけでは…」と気まずそうに智絵里は答えた。

 

 

「あはは…やっぱそうだよねぇ」

 

「す…すみません…」

 

「あ~全然気にしないで!!こっちの方こそごめんね」

 

「も…もしかして本当は別の部活に入ろうとしてた!?」

 

 

かな子がそう聞くと智絵里は焦った様子で首を横に振った。

 

 

「で…でも本当はバスケはやめようかな、って考えてました」

 

「じゃあ何で入ってくれたんですか?」

 

「えっと…中学の時バスケは好きだったけど全然楽しくなくて…

『高校ではバスケはもうやめよう』って思ってたんですけどやっぱりバスケが好きなことに変わりはなくて…

それでかな子さんに会って『バスケが好きな子に入ってほしい』って言われてやっぱりバスケやりたいなって…だから入部しました」

 

「かな子の言葉で入ってくれたなんてなんかロックじゃん!!」

 

 

李衣菜がそう言うと「なんか恥ずかしいな…」とかな子は照れ笑いした。

 

 

「何はともあれさっき杏さんも言ってたけど入ってきてくれてうれしいよ!!

よろしくね智絵里ちゃん!!」

 

「は…はい!!」

 

 

その後も智絵里とおしゃべり、もとい智絵里に質問攻めをして帰っていった。

 

 

「あれ?ここら辺ってゴールのある公園がある通りじゃなかったっけ?」

 

 

智絵里とおしゃべりしたいがために遠回りして家に帰っていた李衣菜たちはその途中近くによく来ていた公園があったことを思いだしていた。

 

 

「懐かしいですねぇ、中学の時りーなちゃんの特訓に散々つき合わされてたのを思い出します…」

 

「あはは…ごめんって」

 

「あの…卯月さんは中学の時バスケ部じゃなかったんですか?」

 

「はい!!でもほぼ毎日りーなちゃんとかな子ちゃんと遊んでました」

 

「でも卯月ちゃん運動量的にはバスケ部と同じくらいやってたかもね」

 

「そんなにやってたんですか!?通りで毎回くたくたになってたわけですよ…」

 

「あの公園高校に入ってからは全然行ってないからすごい懐かしいな~

…智絵里ちゃん、ちょっと寄って行っちゃダメかな?」

 

「い…いいですよ。わたしの家も公園を行った先ですから」

 

「本当に!?ありがとう智絵里ちゃん!!

久しぶりだなぁ」

 

 

そのまま思い出話をしながら歩き公園の近くまでやってきた。

そして近くに連れて『ダム…ダム…』とボールを突く音が大きくなっていった。

 

 

「誰かやってるみたいだね」

 

「まだ16時くらいですから小学生の子ですかね」

 

「そうかもね~っと、到着!!

やってるのは…あれ?灰被(はいかづき)の制服着てる…

誰だろう?」

 

「………(りん)ちゃん…?」

 

「『凛ちゃん』?智絵里ちゃん知合いですか?」

 

 

卯月が聞くと智恵理は「はい…」と首を縦に振った。

 

 

 

『凛』と呼ばれた髪の長い少女のプレイは見事だった。

右に行くと見せかけてレッグスルーで右手にあったボールを左手に移し替え左にドライブ、ゴール手前で左足を踏み出し左のレイアップに行くかと見せかけダブルクラッチをし尚且つバックシュートで打ちシュートを決めた。

 

卯月達は完全に見とれてしまっていた。

最初のキレのあるフェイク、からのレッグスルー、そしてダブルクラッチとバックシュート。すべて一日一夕(いっちょういっせき)で身につくようなものではない高等技術、しかもそれの複合技を見せられた。

卯月達の目にはここは夕暮れの公園ではなく広い体育館のように映っていた。そこで一人の少女がドリブルをついている。

少女はぴったりとマークにつかれたディフェンスにドライブで真っ向勝負も挑もうと右にドリブル、ディフェンスもそれについていこうとする。

しかしそれはフェイクでレッグスルーでボールを移し替え左にドライブ、カバーに入ってきたもう一人のデイフェンスのブロックをダブルクラッチでかわしバックシュートでフィニッシュ、というような試合中に一人の少女が二人抜きをしたような光景に見えていた。

 

そのくらい少女のバスケには『魅了』するものがあった。

 

 

凛は決めたシュートのボールを拾い上げ顔を上げた時にこちらの気配に気が付いたらしく卯月達と目が合った。

 

 

「なんですか?」

 

「ご…ごめんなさい、そんなに見るつもりなかったんですけど…」

 

「あっ、部活決まってんのに勧誘されてたバスケ部の人」

 

「えっ、あ…見てたんですか?」

 

 

卯月がそう聞くと凛は首を縦に振った。

 

「卯月何やってたの…?」と李衣菜が聞くと

「うぅ…詳しく聞かないでください…」と卯月は焦りながら話をそらした。

 

 

「り…凛ちゃん!!」

 

「ち…智絵里!?何でここに?

ってその制服灰被の…そっか智絵里も灰被だったんだね」

 

「う…うん…それで凛ちゃんもしかしてもう一回バスケ部に「入らないよ」え…?」

 

「バスケ部にはもう入らないよ、ごめんね智絵里」

 

「あ…あの、あんなにバスケうまいのに何で入らないんですか?」

 

「そうだよ!!あれだけいろんなプレイ出来たらすごく楽しいだろうに」

 

 

凛の入らないという発言に卯月と李衣菜が反応する。

凛は二人を軽くにらみつけ「あんたらには関係ないでしょ」と返した。

 

 

「じゃあ私行くね。

智絵里はまたバスケ部に入ったみたいだね。頑張ってね。」

 

「あの…最後にいいかな?」

 

 

ちょっとだけとかな子が言うと「何ですか?」凛が切れ気味に返す。

「クラスと名前だけ教えてもらっていいかな?」とかな子が聞くと凛ははぁとため息をつき

 

「1‐C、渋谷凛」

 

と答え智絵里にだけ「じゃあね」と言ってその場を立ち去った。

 

 

「なにあの子?バスケ嫌いなのかな」と李衣菜が呟くと

 

「り…凛ちゃんはバスケ嫌いなんかじゃありません!!」と今までのおどおどした雰囲気からは想像できないような大声を出した。

 

そのギャップに圧倒されて李衣菜は少し後ろにたじろぐ。

 

 

「そうだね、恐らくだけどあの子バスケが大好きなんだと思う。

多分何か理由があるんだよね、智絵里ちゃん?」

 

 

かな子が智絵里に聞くと少し涙目になりながら智絵里は首をゆっくり縦に振る。

 

 

「かな子ちゃん、なんで凛ちゃんがバスケ好きだと思ったんですか?」

 

「だってあの子さっきバスケしてる時ほんのりだけど笑ってたから…」

 

 

とさっきのプレイを思い出しながらかな子は呟く。

 

 

「智絵里ちゃんに言ったように私はバスケが好きな子にはぜひ部活に入ってもらいたいんだ」

 

 

と智絵里をあやすように微笑みながらかな子は言う。

 

 

「それで名前を聞いた理由は?」

 

「名前よりもクラスのほうが重要だったんだけどね」

 

「かな子ちゃん、それはどういうことですか?」

 

「クラス聞いとけばクラスに行って説得しに行きやすいでしょ?

運いいことにみくちゃんと同じクラスみたいだしみくちゃんにも応援を頼んでさ」

 

「なるほど!!かな子ちゃん頭いいです!!」

 

 

かな子はふふっと笑いながら智絵里の顔を見る。

 

 

「智絵里ちゃんも勧誘のお手伝いしてくれるかな?」

 

 

かな子がそう聞くと智絵里は浮かべた涙をぬぐいながら

 

「はいっ…!!」

 

と返事をした。

 

 

 

 

 

 

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