シンデレラの籠球部   作:すずう

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3Q 『交渉』

渋谷凛(しぶやりん)ちゃん…だよね?」

 

 

朝のショートホールルームが終わった後私の席の前に眼鏡をかけた女の子が来て話しかけてきた。

 

 

「そうだけど…何か用ですか?」

 

「あぁ、そんな警戒しないで!!

私同じクラスの前川みく(まえかわみく)!!よろしくに…ね!!」

 

「う…うん、よろしく」

 

 

私がそう返すと前川さんはニコッと笑った。

 

 

「それで凛ちゃんにお願いがあるんだけどいいかな?」

 

「お願い?」

 

「あのね…凛ちゃんに女子バスケ部にぜひ入ってほしいんだけど…」

 

 

なんだそういうことかと私はため息をつく。

 

 

「入らない」

 

 

そう言うと涙目で前のめりになりながらじっと目を見つめてきた。

 

「そこを何とかお願い凛ちゃん!!

みくの亡骸を見たくないでしょ!?」

 

「はぁ?何言ってんのあんた?」

 

「だって部長の杏先輩が朝集まった時にね…」

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

「なるほど…みくと同じクラスなのか…

じゃあ、かな子の言ってた子連れてこれなかったらみくもシャトル100本ね」

 

「『じゃあ』の意味が分かんないにゃ!!そんなの横暴だにゃ!!」

 

「おっとみく落ち着いたほうがいいよ。

もしこれ以上口答えするとシャトル200本にするからね」

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「…ということになってその後納得のいかないみくは口答えをしてしまいシャトルラン200本になっちゃったにゃ…

でも凛ちゃんを連れてこれたら免除にしてくれるらしいの。

だからお願い!!みくのためにも女子バスケ部に入って!!」

 

「はぁ…意味が分かんない…

話それだけならどっか行ってくれない?」

 

「んにゃーーー!!

凛ちゃんの人殺し!!」

 

 

大声で叫ぶ前川さんの口を少し焦りながら抑える。

 

 

「ちょっと!!変なこと叫ばないでよ!!」

 

「じゃあ入ってくれる?」

 

「だから入らないって…」

 

「うぅ…じゃあせめて放課後教室に残っててくれない?」

 

 

放課後...予定もないしまぁいいか。

 

私は少し溜息をつきながら「いいよ」とだけ返した。

 

 

バスケ部...か...

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「成程、君が渋谷凛ちゃんだね?」

 

 

放課後になると目の前に小学生と他多数が私を取り囲むようにして目の前に現れた。

 

いや、灰被(はいかずき)の制服を着ているからうちの生徒なんだろう、140cmも無いような女の人が私の目の前に仁王立ちしている。

 

 

「そうだけどなに?」

 

「お?先輩には敬語を使っておいた方がいいぞ?」

 

 

先輩だったの!?

外見はどっからどう見ても小学生だからてっきり同い年だと...

 

 

「杏ちゃんはちっちゃいくてかわうぃから年下だと思われたんだにぃ?」

 

「制服着てるし凛ちゃんは高1なんだから年下だと思うわけないだろ〜!!」

 

 

身長の1番大きい先輩に茶々を入れられて小さい先輩が怒っている。

でもごめんなさい、年下だと思ってました。

 

って、ん?『杏ちゃん』?

『杏』って確か...

 

 

「あなたが部長なの?...ですか?」

 

「ぎりぎり敬語にしたから許してやろう。

そうだよ、双葉杏(ふたばあんず)高校3年好きな言葉は『果報は寝て待て』と『働いたら負け』。

以後お見知りおきを」

 

「は...はぁ...」

 

 

なんで好きな言葉を言ったんだろう?

思わず生返事を返してしまった。

 

 

「もうめんどくさいからチャッチャといくね。

バスケ部に入って」

 

「お断りします」

 

「ですよね〜!!知ってた知ってた。

だからちょっと交渉に来たよ」

 

「交渉?」

 

「そそ、なに簡単だよ。

私達8人と1on1してよ」

 

 

1on1?それくらいならいいけど...

 

 

「んで一人にでも負けたらバスケ部に入ってもらうから」

 

「はぁ!?意味わかんないんだけど」

 

「杏さん、それは流石に...」

 

 

他の部員と思われる人も違和感があるらしく止めに入る。

あっ、この人昨日智絵里と一緒にいたポニーテールっぽい人だ。

 

 

「うん、流石にこれでは凛ちゃんにメリットがないからね。

凛ちゃんがもし全員に勝てたら『凛ちゃんが在学中ずっと学食奢ってあげる』でどう?」

 

「いや、ちょっとそれもそれで気が引ける...」

 

「在学中...杏さんそんなにお金持ってるんですか?」

 

「持ってるわけないじゃん。

みんなで一日交代でやっていくんだよ」

 

「それって私たちもデメリットがあるってことだよね」

 

「五月蝿いなぁ

んで凛ちゃん、これで交渉飲んでくれない?

これでも嫌だったら納得のいくメリットを提示してくれても構わないから」

 

 

いや、これでも豪華すぎて気が引けるぐらいなんだけど...

 

 

「それとも何かな?

 

 

 

『負けるのが怖い?』」

 

 

 

 

 

 

久々にカチンときた。

 

『負けるのが怖い?』

 

そんな訳ないじゃん。

 

 

「いいよ。その交渉乗った。

 

受けて立つよその勝負」

 

「決まりだね」

 

 

そう言って杏先輩はにやりと笑う。

 

 

「今日は体育館使えなくて外でラントレ行う予定だから明日の放課後バッシュ持って体育館に来て」

 

「わかりました」

 

 

「んじゃ帰ろっか〜」と言いながらバスケ部一同はぞろぞろと帰っていった。

 

 

「あの、凛ちゃん!!」

 

「どうしたの智絵里?」

 

「えっと...あの...その...

みんないい人達だから...その...前みたいには...」

 

 

智絵里が必死に何かを伝えようとしてきている。

その姿が可愛くて思わず笑みが零れた。

 

 

「わかったよ、期待してる」

 

「う...うん!!

それじゃあ私いくね、じゃあね凛ちゃん!!」

 

 

バイバイと手を振って智恵理の後ろ姿を見届ける。

その智恵理の後ろ姿に少し懐かしさを思い出しながら帰る準備をする。

 

 

 

 

 

「バッシュ...買いに行かなきゃなぁ」

 

 

 

 





バッシュ...バスケットシューズの略。
その名の通りバスケをするための靴。
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