「俺はフレッド。こっちがジョージ。それで、あのハリー・ポッターが俺たちになんの用かな?」
本当に顔がそっくりだ。見分けがつかない。
「えっと...」
ハリーは口をつぐんだ。何と言えばいいだろう...。
ハグリットの強引な計らいで、放課後に湖のそばで、ロンの兄である双子にこうして質問をする機会が与えられたのだが...ロンがなぜ無視をするのか?とストレートに質問をするのは少し違うだろう...。
「おっと、発熱ガムの発売はまだまだだぜ。成分の調整が難しくてな。1度上げるのに2000噛みもいるんだ。熱が上がる頃には夕食の時間になってるだろうな。」
フレッドがあごを触りながら思い出すように言う。
「全くだ。それで成分を強めにすると今度はひと噛みで40度ときた。先生に保健室へ行くと言う前に気絶してしまう。」
気絶をするようなアクションをしてジョージが言った。
「えっと...ロンのことなんですが...。」
ハリーが尋ねると、わざとらしくビックリした表情でフレッドが
「このモジモジは間違いない。恋する乙女のそれだ。まさか、あの鼻たれロニー坊やにモテ期が来るとはな。」
と言う。するとジョージが
「しかも薔薇色のホグワーツライフときた。俺たちに恋のキューピッドをやれっていうのは無理な話だぜ。」
と続けた。
「キューピッドならできる。だが、思い人は君からの贈り物であるはずのラブレターとガムでほんの少しだけ熱が上がりすぎるかも知れねえぜ。」
フレッドがデコをおさえながらおちゃらけて言った。
バカにされているのに少しイラッとしたハリーは、語気を強める。
「ロンが話しかけても無視するからあなた方の弟は実家に耳を忘れてないかと聞こうとしたんですよ。でも、どうやらあなた達兄弟は、ほんの少し脳ミソも置いてきたようですね。」
ハリーは、親指と人差し指で目一杯サイズを作って見せた。
しかし、双子はハリーの挑発には乗らず、いたって冷静だ。
「我々は君が困っているとハグリットに聞いてわざわざ来たんだけどなあ。発言に気をつけないと回れ右をして体ごと寮のベッドに置いてくることになる。」
わざとらしく首をかしげてフレッドが言う。
「フレッド。それなら発熱ガムのサンプルになってもらった方が有意義だ。心配するな少年。意識が朦朧として俺たちのことなんて告げ口する頃には忘れてる。」
ジョージはローブの中をごそごそしだした。
半分本気なのではないかとハリーは思った。
「あの...ごめんなさい。」
「名案だジョージ。成分11%のやつでいくぞ。」
「保留だフレッド。一応謝ってるんだ。もういいだろう。俺たちもレタス食い虫の駆除で泥まみれになるのはもう勘弁だぜ。」
どうやら、ハグリットに罰則と引き換えで相談に乗ってほしいという取り引きだったらしい。
ことの顛末を手短に話し、なぜロンがハリーを無視するのかを尋ねた。
「そら、新・闇の帝王に話し掛けられたら大概の子羊はビビって逃げる。違うかい?」
フレッドがそういうもんだという風にしゃべった。
「待って、新・闇の帝王ってどういうこと?僕のことを言ってるの?」
「知らなかったのか?うちの庭小人よりも鈍感だなこりゃ。君がスリザリンに組分けられてからレタス食い虫もビビッてる。」
ジョージが少し驚いて返す。
「だって、そんなのって...バカげてるよ!僕は違う!闇の帝王なんかじゃない!」
ハリーは声を荒げた。
「あぁ全くもってバカげてる。闇の帝王を倒したハリー・ポッターがスリザリンに入ったんだ。ニュー闇の帝王なわけがないね。」
ニヤリとしてフレッドが言った。
「嘘だろ...そんなのって...」
ハリーは体の芯を直撃した衝撃が離れない。
全くもってバカげている。だって僕は闇の帝王じゃない。
けどこうして聞いていると確かにそう思われても仕方がないのか...?
でもそんなのこじつけだ。いつ僕が人を襲った?
いつ僕が人を傷つけた?
「君とこうして話していると分かるよ。でも噂による疑念はなかなか払拭されるもんじゃない。」
ジョージが穏やかに言う。
ジョージの声に少し慰めの色が見えた。
「まあ鼻たれロニー坊やにはキツく言っておこう。俺たちの消費者をあまり困らせるなとな。ニュー俺たちのお客ハリー・ポッター、これはおまけだ。」
フレッドはハリーに発熱ガムを押しつけた。
フラフラと校庭を歩き城に入った。
寮に戻るまでの間に気づいたことがある。
それは、ハリーが歩いているとき、今までただコソコソと指を指したり話していると思っている人のほとんどは、ハリーが見ると微妙に顔がひきつっている。
ほとんどが恐怖心残りは好奇心?といったところだろうか。
自分が何かおぞましいものに思えてきた。
これほどまで自虐的になったことはない。
階段を降りていき、談話室に入った。
ラッキーなことに、皆ちょうど夕食を食べに行っているようで、誰もいなかった。
ソファーに座り込む。何か体の真ん中が空洞になったような気分だ。
ハリーは立ちあがり、ポケットから発熱ガムを取り出した。
前歯だけでガムを軽く挟むとすぐにガムを取りゴミ箱に捨てた。
しばらくガムを見つめたあと、膝がカクンとなりそうな軽い体を崩れないようにベッドへと運んだ。
とうとう発熱がなかったことを、暗い部屋で後悔しながら無理矢理に眠りについた。
「もう何も考えまい。」
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