IS~転生者は頑張って生きるそうです~(凍結) 作:赤い変態
嘗ての断片
これは、一人の少年の過去、青年だったころの断片。
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戦争、紛争などの一番残酷なところは、子供が犠牲になっている事だ。
中東の紛争が行われている国に来ていた、フリージャーナリストに成ったばかりの青年は、目の前の光景を見て、そう思わざるを得なかった。
戦火に焼かれた村の家屋や道端には、銃を抱え倒れている幼子、痩せ細った赤ん坊を抱えたままの女性、そして体を構成するパーツが足りない、黒焦げになった『亡骸達』と兵器の残骸で山がいくつも出来ていた。
皆、この紛争の被害者であり、加害者でもある者たちの家族でもあった。
その中には、青年が今回の取材で数日世話になった方々の亡骸も、当然のようにあった。
―――なんで、なんで罪のない人たちが…子供たちや赤ん坊までが、犠牲にならなきゃいけないんだ!?
初めての戦地取材、あまりの惨状に涙目になりつつも記録を続ける。
せめて、せめてこの光景を、この惨状を世界中の人々に知って貰わなければ……。
そう思い、シャッターを切る。
…今撮っているこの一枚一枚の写真が、この紛争に大きく影響を与えるとは思わない。
だが、それでも…。それでも一刻も早く、戦争が終わり、子供たちが平和に暮らせる日が来ることを祈りつつ、シャッターを切った。
ドサッ……
その時、ふと背後から何か音が聞こえ、青年はシャッターを切るのを止めた。
そして音が聞こえた方に注意深く、ゆっくりと振り向く。
生き残りか? もしそうならそうであってくれと願い、音の出処を視界に入れる。
「…た、助け……て……」
―――生き残り! よかった、まだ生きてくれていた!!
そこには、所々焼け、穴だらけになった服を着た10歳未満らしき褐色の男の子が俯せに倒れていた。
良く見ると、足や腕、胴から血が流れ出し、衣服は血染めになっていた。
青年はカメラを手放して男の子に駆け寄り、その痩せ細った体を抱き上げ、現地の言葉で呼びかける。
「大丈夫か?! 君!」
「みんっ…な…、殺さ…れ……た……。ボ…クも……コロ…さ…れ……」
傷が酷すぎるのか、それとも血が流れ過ぎたのか。その体は冷たくなり始めていた。
顔色も悪く、目の焦点がぶれ、声も途切れ途切れだった。
「しっかりしろ! まだ死ぬな!」
男の子の血濡れた冷たい手を握り、必死に呼びかける。
青年はこの紛争で、多くの子供たちが死ぬ瞬間を見過ぎていた。
銃を持った子ども同士の殺し合いや、政府軍やゲリラ側に巻き込まれ死んだりしたなど…。
その内の3割が、この国で彼が取材の合間に出会った子供達であった。
これ以上自分の目の前で、未来を担う役目を持つ筈の子供たちが死ぬのを、青年は耐えられなかった。
「み……な…燃や…さ…………『アイツ』……が…」
握っていた手から力が抜け、青年の手から血と共に滑り落ちる。
顔色も褐色なのが、もはや青白く見えていた。
「!? …死ぬな、死なないでくれ!! ここで死んだら駄目だろう!? なぁ!?
まだやりたい事とか、いっぱいあるだろう!? 生きろよ!! 生きてくれ!!!」
青年はその手を握り直し、再び呼びかけ続ける。
だが、その手は先ほどよりも冷たくなっていた。
「……こ…………い……こ…わ……………………」
そこまでが、彼の限界だったのだろう。
瞳から光が消え、呼吸も止まり、動かなくなってしまった。
青年は、物言わなくなった男の子の亡骸の瞼を優しく閉じさせ、力強く抱きしめた。
「…くそ…………なんで、なん…でっ! 子供たちを…罪の無い者を巻き込む!?
彼らにだって、生きてるのに……未来があるって言うのに……!!
くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
今まで彼の中に、心の中に溜まっていたモノが一気に吐き出された。
フリージャーナリストという仕事につき、この国に来て戦地取材を始めた時から『人の死』との対面は覚悟していた
公平な取材の為に取材対象に出来るだけ干渉せず、客観に務めようと…。
だがこの国で取材を重ねる度に、それは薄れていった。否、薄めざるを得なかった。
人の…罪の無い子供の死に無感情で居られるわけがない。
ジャーナリストとしては失格だろうが、人としては……。
そして青年は、男の子の亡骸を抱きしめたまま、泣き続けた。
出来が悪いかもしれませんが、今回の話は後に重要となる鍵です(汗
あとこれは『彼』のトラウマでもあり、ずっと心の奥底に巣食う記憶です。
本編では2学期編にて、本格的に『彼』の過去に触れ始める予定です。