IS~転生者は頑張って生きるそうです~(凍結) 作:赤い変態
凪side
ソードシルエットとマルチパックを解除し、シールドストライカーに換装する。
そして右に『ウイングソー』、左に『アーマーシュナイダー』を持つ。
「よし…黒兎さん、痛かったらごめんな!」
『―――――!』
瞬時加速を使い、一気に距離を詰めると同時に『アーマーシュナイダー』を投げつけ、
払われたところで『ウイングソー』を叩き込み、刀で反撃してきたところにシールドストライカーにあるアームを稼働させシールドで防ぎ、もう一度斬りつける。
そして今度は下段からの攻撃を避け、少しだけ離れる。
「しかし、贋作とはいえマジで再現してるのか、『雪片』を…」
エネルギー残量をチェックすると僅かにだが減っていた。
だが武器を完全に再現できても、動きまで完全に再現は出来てないようだがな…。
まあ、あと一、二撃…最大まで振動させた『ウイングソー』をぶつければ倒せそうだ。
左肘のアーマーから残りの『アーマーシュナイダー』を取り出し、いつでもいけるように構え、一夏にプライベート・チャネルで合図する。
『いいか、次に俺が叩き込んで下に移動した瞬間を狙え』
『了解!』
「さあ、幕引きと行こうか! 贋作さんよ!」
『――――!!!』
俺の言葉が気に入らなかったのか、一直線に向かってくるラウラを取り込んだ『贋作』。
一撃目が来ると同時に『ウイングソー』を最大振動させ、奴の剣にぶつける。
すると微かにその刀身にひびが入っていくが、同時に俺の『ウイングソー』にもひびが入り、崩れ去ってしまう。耐久度限界まで最大振動をしてしまったようだ。
「ちっ! 一夏ァ!!」
「ああ!!」
『贋作』の腹を蹴り、その力を利用して真下に移動、そこへ一夏が最後の瞬時加速で接近して来て『贋作』を最大振動させたもう一本の『ウイングソー』で斬りつけようとするが―――
『―――――!!』
「なっ! ちぃ!!」
『贋作』は刀でその一撃を防ぎ、一夏はエネルギー切れでISを強制解除となる。
だが、『贋作』の方も刀が今の一撃で完全に崩れ去った。
「凪! すまないが後は!!」
「言われなくとも!!」
左手の『アーマーシュナイダー』を逆手に持ち直し、高速切替でシールドストライカーからマルチパックとフォースシルエットに換装、スラスターを全開にすると同時に瞬時加速し、『贋作』を下から切り裂く!!
「せええぇぇぇいいいぃぃぃ!!!!!!!」
『――――ァ!』
頭の先まで切り裂き終えると、『贋作』だったものは消えていき、中からラウラが出てきた。
「……ァぁ…」
「っと」
そのまま落下しそうになるが、腕だけISを解除して両腕で優しく受け止める。
そのとき偶然見えた目は、とても弱々しいものだった。
「…とりあえずは一件落着だな、お姫様?」
凪side out
ラウラside
暗い、どこまでも暗い所に居た。ここは何処だ?
何故私はここに居る?
いつまでもそこで待って居たが、何も起きない。
怖い、何故だかわからないがここは怖い。
初めてだ、孤独が怖いと思ったのは。
「い…いや…嫌だ…怖い…!!」
『やれやれ、転入した日から見せてた冷徹そうな顔は何処に行った? 黒兎さん、いや、お姫様?』
ふと声がした方へ振り向くと、ことごとく私の邪魔をした男がいた。
『おいおい、そんな怖い目で見るなよ。折角の可愛い顔が台無しだぞ』
「なっ!?」
『なんだ、普通の顔も出来るじゃないか』
「ぐぅ……そ、それより! 何故貴様がここに居る!」
『さぁ?』
「さ、さぁ!?」
『いや、気が付くとここに来てな? そんで放っておけない奴の声に似たのが聞こえたからそっちに進んでいったらお前を見つけたんだ』
「放っておけない奴? まさか、私がそう見えたとか言うんじゃないだろうな!」
『ふむ…かなり放っておけない奴に見えたがな。ただ強さを求めすぎて、いつか絶対無茶しそうに見えた。……なあ、お前にとって強さって何よ?』
「強さだと? そんな…もの……」
奴の質問に私は答えようとしたが、何故か言えなかった。
いや、答えることが出来なかった。
今まで私は強さとは力が強いことと考えてきた。
だがどうだ、実際はこの男によって『織斑一夏』を倒せなかったばかりか、何度も邪魔された。
そして極めつけは先ほどの戦いだ。
途中までしか覚えて無いが、邪魔なこの男から倒そうとした私はコイツ一人にやられた。
AICも、ワイヤーブレードも、レールガンも、全てを使っても倒せなかった。
何故だ、強さとは力じゃなかったのか?
教官から教わったものからは力こそが強さだと理解したのに……。
『当たり前だ、力だけが強さなわけがない。もしそうなら今頃世界中が主権めぐって戦争してもおかしくないぞ?』
「……私は間違っていたのか?」
『確かに間違っていたな。織斑先生もお前が強さを間違ってると言ってたし』
「では、何が正しいんだ? 何が正しい強さなんだ?」
『そのくらい自分で考えて見せろよ。お前も俺も、まだ若い。考える時間ならまだ約六十年か七十年くらい余裕があるしな』
「…随分と長いな。…では、お前にとっての強さは何だ?」
『俺か? そうだな……とりあえず、頑張って生きていくこと…だな』
「頑張って生きていく?」
『おう、そうだ。なんせ人間、生きているうちは色々なことがあるだろ? 楽しいことや悲しいこと、苦しいこととか…いっぱいな……。特に悲しいことや苦しいことから逃げずに、足掻いて、踏ん張って、背筋伸ばして、胸張って、頑張って生きていく…それが俺なりの強さ、かな?』
「……すごな、お前は。それに比べ、私の強さなど薄っぺらいな…」
『なら、目指してみるか? 俺と同じものを…』
「お前と同じものを…?」
『おう。それに案外いいもんだぞ、頑張って生きるっていうのは。誰にでも目指すことが出来て、そして何にも負けない強さだ』
「出来るのか? 私に…」
『出来るとも! ま、俺が上手い具合にエスコートしてやってもいいが?』
その顔を見て、私は決めた。新しい強さを…頑張って生きていくということを。
「…フフッ、良いだろう。なら、頼めるか?」
『任せておけよ…じゃ、また後でな』
そう言うと、奴は消えていき、私が居たところも明るくなっていった。
「…こ、ここは……?」
「気がついたか」
「きょっ、教官?! ど、どうして…というよりここは?!」
「保健室だ、高天原兄がお前をここまで運んできたんだ。ほら、ちょうどそこで寝てるぞ」
教官が言う方向を見ると奴が…高天原凪が寝ていた。椅子に座ったまま。
「大方疲れが出たんだろう。お前をベッドに横たわらせた後、椅子に座ったと思ったらこの有様だ。…そうだ、VTシステムを知ってるか?」
「っ、何故…その名が…」
「それが何か解るか?」
「は、はい…」
「そのVTシステムがお前のISに搭載されてたと、先ほど偶然来ていた有名なIS技師によって無理やり調べられ発覚した。かなり巧妙に隠されてたようだ。とても悔いていたぞ、ドイツで調べた時気付けなかった、と。しかし…まさか私に化けるとはな…」
「私が、望んだからですね…力を…」
「はぁ……ラウラ・ボーデヴィッヒ!」
「はっ、はい!!!」
教官の声に反応し、寝ながらの状態でも背筋を伸ばす。
「お前は誰だ?」
「私…は…」
「…誰でもないなら、探せ。お前はこれからこの三年、ここで過ごすことになる。
その後も、精々六十年、七十年と先があるんだ。せめて、自分が何か…求める強さが何か・・・探し出して見せろ」
それだけを言うと、教官は去ってしまった。
「まったく、あなたも…そしてこいつも…私を困らせてくれるな……」
未だに寝ている男の顔を見る。
そこには、とても優しい顔があった。
「高天原…凪。私も…足掻いて、踏ん張って、背筋伸ばして、胸張って、頑張って生きていくことにする。だから―――」
あの空間のことは良く解らないが…あの言葉、そして良く解らないこの感情…。
たしかにあった。そして、今もこの胸にある…。
「だから、今後も頼むぞ? エスコートすると言ったのだから…」
ラウラside out
凪ママside
保健室前に来ると、中からラウラちゃんの声が聞こえ、中を覗くととても優しい笑顔で笑っていた。
…ドイツで会った時と比べると、随分変わったようね。
さて、とりあえず彼女に謝らないと。
いつもの感じを一度隠し、中に入る。
「こんにちは、ラウラちゃん。大丈夫?」
「あ…那美さん…来てたんですか?」
「ええ…一応、試合の方も見てたわ」
「あ、あれは……その…」
「ごめんなさい、ドイツでVTシステムに気付けなかった私が悪いわ」
「…では、無理やり調べた…偶然来ていた有名なIS技師というのは…」
「そう、私よ。まあ、今回は騒動を止めた息子には感謝しきれないわね」
椅子に座って寝ている我が子を見て苦笑する。
「え、息子…って、ええ!?」
「あら、気付かなかったの? 同じ高天原って苗字だから知ってたかと思ってたんだけど…」
「い、いえ! 全然気づけませんでした」
「そう。でも、本当にごめんなさいね、あなたの『シュヴァルツェア・レーゲン』を…」
「いえ…那美さんに非はありません…」
「一応、予備のパーツも調べさせてもらったけど、全部VTシステムの影響を少なからず受けてたわ。多分、修復は無理ね。コアは無事だったけど」
「そう…ですか……」
「でも、安心して。お詫びにあなたの機体のコアには新しいボディーと名前をあげたから」
「新しい?」
「そうよ。私が一から設計、製作したものよ」
「ちなみに…どんな名前ですか?」
「レーゲンデュエル…凪の機体と同じ機能を持った万能型よ」
凪ママside out
凪side
VTシステムによる暴走の翌日。トーナメントは中止となった。
そして、クラスでは女子達の屍の様なものがあった。
「優勝…交際……」
「ノ―――――――――――!!!!」
「神は私を見捨てた!!」
「ブツブツブツブツ……」
うわぁ…何があったんだ一体…。
「ま、まあこの結果にはある意味感謝、かな?」
「でも、かなり悔しがってましたよね?」
「空ちゃん?」
「――――ごめんなさい」
うん、なんかシャル姉と空も変だ。
「一体何なんだろうな?」
「わからん。あ、それよりも凪、今度さ…」
そして一夏と今後の予定を話し合おうとしていた時だった。
「あ、ボーデヴィッヒさん…」
誰かの一言に全員がラウラの方へ視線を向ける。
しかし、彼女はそれらの視線を無視し、俺と一夏の前まで来て―――
「すまなかった、織斑」
「「え?」」
なんか謝った。一夏に対して。
「今まですまなかった。全部とは言わないが、許してくれ」
「い、いやいいよ。謝ってくれたんだから。今までの分もチャラでいいさ」
「ほ、本当か!? 良かった!」
「お、おう…って、ISの方は大丈夫なのか?」
「ああ、その辺は大丈夫だ。ほら」
そう言い、ラウラはISを展開する。
しかし、それは『シュヴァルツェア・レーゲン』ではなく…
「…おい、ウソだろ…『レーゲンデュエル』って…」
ラウラが展開したのはまさかの『レーゲンデュエル』だった。
そしてラウラはすぐに解除し、説明を始める。
「これは高天原、お前の母親の那美さんが私にくれたんだ」
「…うそん」
とうとうラウラにまで手を出していたのか、うちのお袋は!?
というか、全然そんな話は一度も――――
チュッ
「え?」
…よし、状況を確認するぞ?
ラウラが呆けてた俺に対し、キスをしてきた。
つまり、フラグが一夏ではなく…俺に立ったようで…。
「きょ、今日からお前を私の嫁とする! 那美さん公認だ! 異論は認めん!」
「はぅ!?」
「凪兄さん、おめでとうございます。でも、くーはまだ叔母さんになりたくありません」
「凪? どういうことかな?」チャキッ
空、安心しろ。まだ俺は結婚できる年じゃない。
そしてシャル姉、教室で『アグニ改』を構えないでくれ。
とりあえず、大変なことになりそうだが…頑張っていきますか…今後も。