IS~転生者は頑張って生きるそうです~(凍結) 作:赤い変態
『…………』
海上二百メートルにて、『銀の福音』は胎児の様な格好で蹲っていた。
体を丸め、頭部から伸びた翼でその身を守るように包んでいた。
『――?』
ふと何かが来ることを感じ、顔を上げた瞬間、二つの砲弾と一筋の光が直撃する。
「命中確認、これより続けて砲撃を行う」
「いくよ!」
数キロ離れたところから砲撃を行う『ライゴウガンダム』サムブリット装備と『レーゲン・デュエル』ドッペルホルン装備。福音からの反撃が来る前に次弾を装填、発射する。
その衝撃に福音は揺れ、体勢を立て直そうとするがそれよりも早く『デルタアストレイ』が『ヴォアチュール・リュミエール』を展開した状態で接近、新たな武装であるタクティカルアームズで一閃。そのまま通り過ぎて、上空に飛翔する。
「私が注意を引き付けます! シャルロット姉さんとラウラさんはその隙に!」
「「了解!」」
福音は砲撃が着た方向より、『デルタアストレイ』へと高速で駆け、翼からエネルギー弾を放ち、仕留めようとする。
がしかし、『ヴォアチュール・リュミエール』を展開したことによって得ているその速度に追いつくどころか攻撃を当てる事すら出来ず、後ろから『ライゴウガンダム』と『レーゲン・デュエル』によって更に砲撃を喰らうだけだった。
『敵機1は除外、砲撃を行う敵機2と敵機3を最優先目標に変更する』
『デルタアストレイ』を追うことを辞め、今度は砲撃を行ってくる二機に向けて接近、翼からエネルギー弾を広範囲に放つ。それに対しシャルロットは肩のミサイルポッドからミサイルを全弾発射、可能な限り撃ち落とす。
撃ち漏らしは可能な限り回避、福音から距離を取る為二機はアグニ改とドッペルホルンの主砲を牽制代わりに撃つ。
だが、それらすべてを避けられ、音速をも超えるスピードによってあっという間に距離を一〇〇〇メートルまで詰められてしまう。
しかし―――
「他にも居ますわ!」
「無視して貰っては困ります!」
上空からセシリアが大型BTレーザーライフルで狙撃し、空が再び高速で接近してすれ違いざまにタクティカルアームズで斬りつける。
『優先順位を変更、現空域からの離脱を最優先に』
四人から距離を置くために全方向へエネルギー弾を放った福音は、次に瞬間全スラスターを開き強行突破をしようとする。
「させるかぁ!!」
「今度こそ落とす」
海面が膨れ上がり、爆ぜ、『紅椿』とその背に乗った『甲龍』が飛び出してくる。
福音へと突撃する『紅椿』、その背中から飛び降りた鈴は『甲龍』の追加パッケージ『崩山』を戦闘状態へ移行、全四門の衝撃砲が一斉に火を噴く。
通常の不可視の弾丸では無く、赤い炎を纏った弾丸が着弾していく。
だが、それでも福音は機能を停止させていなかった
『『銀の鐘』最大稼働―――開始』
両腕を広げ、さらに翼も外側へと向ける。
即座に眩いほどのエネルギー弾の雨が降り注ぐ。
「させるか!」
それと同時にラウラがドッペルホルンからマルチパック及びブレイズウィザードに換装、ミサイルを全弾発射しエネルギー弾へ直撃させ、撃ち落としていく。
撃ち漏らしはわずかだが、着弾を防ぐくらいは六人には簡単な事だった。
すぐにブレイズとマルチパックを解除し、バズーカストライカーに換装したラウラは腰にマウントしたグレネード付きのライフルを右手に、ストライカーのバズーカを左手に持ち更に放たれてくるエネルギー弾を撃ち落とす。
そして鈴、セシリア、シャルロットはそれぞれの火器で、空もタクティカルアームズを射撃モードにして福音に攻撃を集中させる。
『―――!?』
そして遂に右側の翼を破壊することに成功する。
翼を片方失ったことにより福音は体制を崩し、隙が出来てしまう。
「今だ! 箒!」
「はああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
箒が福音に突貫、両手の刀で斬りかかる。
体勢を崩していたところに来た『紅椿』の接近に反応が遅れる。
そして箒の一撃は残った左側の翼を切り裂き、福音は海に落ちて行った。
「お、終わった…のかな?」
「…少なくとも、上がっては来れないと思います」
空の言葉に全員が福音が落ちた辺りの海面を見る。
「私たちの勝ち―――」
誰かがそう言おうとした瞬間、海面が強烈な光を放つ珠によって吹き飛ぶ。
『!?』
光の珠が存在するところだけ時が停まったのかのように球状にへこんでいた。
その中心には、蒼い雷を纏った福音が体を丸めていた。
「ま、まずい! これは『二次移行』だ!!!」
ラウラがそう叫んだ瞬間、福音は顔を向ける。
無表情なバイザーに覆われた顔、しかしそこから確かな敵意を彼女たちは感じ取った。
『キアアアアアアアアアッ!!!』
獣のような咆哮を上げ、頭部からエネルギー状の翼を生やした。
「っ! この――」
「!? ま、待て空!!」
行動を起こされる前にと、空がタクティカルアームズをソードモードにして斬りかかるが、片腕で易々と掴まれてしまう。
そして新たな翼で空を包み込む。
刹那、エネルギー弾をゼロ距離で喰らい、『デルタアストレイ』の装甲を破壊された空が海に堕ちていった。
「よくも…空ちゃんをっ!」
「おのれ…っ!」
シャルロットがサムブリットからキャリバーンに換装してシュベルトゲベール改とカラドボルグの両刀を抜刀、ラウラも接近して福音の顔面にバズーカを当てる。
「うわぁぁぁ!?」
「ぐぅ!?」
しかし、斬りかかるよりも早く、引き金を引くより早く福音がエネルギー弾で二人を弾き飛ばす。
「これが本当に軍用機の性能ですの!? 異常すぎますわ!」
「っ、チートも大概にしなさいよ!」
セシリアと鈴も狙撃と衝撃砲による攻撃を行おうとするが、瞬時加速以上のスピードで福音が眼前まで接近、反応が遅れ両翼のエネルギー弾を避けることも出来ずに海に叩き落とされてしまう。
残ったのは箒一人だけ。
「くっ……私の仲間を…!!」
一気に福音の懐に入り込み、斬撃を行うが―――
『―――』
「なっ!?」
福音はそれを廻し蹴りで防ぎ、そのまま刀を弾き飛ばす。
そして丸腰になった箒の首を掴む。
「ァ…ぐっ…」
徐々に呼吸が出来なくなり、意識が薄らいでいく。
福音はそのまま両翼で箒を包もうとする。
(…一夏…すまん!)
もはやここまでと思った箒は目をつむる。
だが、
『―――!?』
しかし福音は手を離し、強力なビームによって吹き飛ばされていった。
箒はどうにか呼吸を整え、ビームを放ってきた方へ向く。
そこに居たのは―――
「よっ、待たせた」
自分の思い人が、二次移行した姿、『白式・雪羅』を纏って駆け付けてきた。
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一夏が箒たちと合流した頃、『テスタメント』によって落とされた凪は、
「…なんか、妙に懐かしいとこだなオイ」
廃墟や瓦礫の山がある、荒れた場所に居た。
見渡せば、煙や火が出ている家々や銃撃戦でもあったかのような傷跡がある壁、破壊された戦車の残骸も見受けられる。
そして彼の服装もISスーツではなく、普段着の様なもので首からカメラを提げたものとなっていた。
「…前世で何度か行ったよな…取材で。一体ここは…」
『『それはここが貴方の記憶から出来た精神世界だからですよ(だよ)』』
「…誰君たち?」
ふと隣から声が聞こえ、そちらに顔を向けると白色と水色の二人の少女が手を繋いで立っていた。
『少なくても今の答えで大体分かったと思うけどなぁ』
『もう、ちゃんと真面目にしなさい』
水色の少女が白色の少女に窘められる。
その姿に凪は困惑するが、水色の少女の一言に対しふと思ったことを聞く。
「…まさか、君たちは…『アウトフレーム』と『ゲイルストライク』なのか?」
『大・正・解!』
『はい、その通りですマスター』
水色の少女がどこから持ってきたのか、『大・正・解』と書かれたプラカードを持ち、白い少女はパチパチと拍手する。
「なるほど…ん? というか、一つのコアを使っているのに二つの意識ってどういうことだ?」
『それは私たちも分からないんです』
『そっ、気が付きゃ一緒に居たし……それよりも、大変なお知らせがあるよ』
「…? どうした?」
『今、マスターの仲間の皆さんに…マスターを落とした人が迫ってます』
『今はまだ接触してないけど、たぶんもうすぐだと思うよ』
「『テスタメント』が……」
自分を落とした相手を思い出す。
意識が堕ちる直前に一矢報いたが、あのウイルスがある限り仲間たちに勝機は無いだろう。
「…今俺の体はどうなっている?」
『左胸から右脇腹まで深く切られてます。幸い、心臓には傷がいってませんが…』
『傷だけなら塞いでるよ、中身はまだだけど。それに血がちょっとなぁ…』
「なら十分だ、今から行く」
『む、無茶です。仮に戦えたとしても数分しか持ちません!』
『そうだよ! 死に急ぐようなもんだよ!』
二人は必死に凪を止めようとする。
「だとしてもだ、仲間を見捨てるわけにはいかない」
『はぁ…頑固ですね、マスターは』
『仕方ないかぁ…やる? 『アウト』』
『ですね、『ゲイル』。…マスター、私たちもサポートします』
「…いいのか?」
『私たちはマスターのISですよ? その意思を尊重します』
「…ありがとうな」
『ウイルスは私たちが防ぐので』
『勝つよ! マスター!』
二人の少女に手を引かれ、凪は進む。
そして、風景が変わった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「大丈夫か? 箒」
「い、一夏……あ、あぁ」
「そうか、良かった……じゃあ、行ってくる!」
一夏は福音に向かって一気に接近し、左腕に付いた新たな武装、雪羅をキャノンに変形させる。
「喰らえ!」
そしてそこから大出力のビームを放ち、福音のシールドエネルギーを大幅に削る。
そして即座に右手の雪片弐型で斬りかかる。その雪片弐型自体も大型化しており、どこか凪のソードストライカーのシュベルトゲベールに似ていた。
「うおりゃあああああああああああ!!!!!」
『――!』
一夏の斬撃を避けた福音は一度距離を取ろうとするが、瞬間海中からの銃撃を受ける。
「まだ…こちらもいますよ?」
タクティカルアームズを射撃モードにした空が海中から出てくる。それに続くように鈴、セシリア、シャルロット、ラウラも出てくる。
「さっきの仕返しよ!」
「倍返しと行きましょう!」
「さっさと倒して凪を探さないと!」
「同意だ!」
更に四人の攻撃も加わり、福音は追いつめられていく。
「ちっ、エネルギーが…!」
二段階瞬時加速で福音に接近し、
一夏の『白式・雪羅』はエネルギーが異常なくらい減っていて、あまり派手に暴れることが出来なくなりつつあった。
新たな武装、雪羅自体も攻撃に零落白夜を使っているので余計にエネルギーを喰うのだ。
「一夏…」
一夏の背を見て、共に戦いたいと思った箒。
その意思に応えてか、ハイパーセンサーからある情報が送られてくる。
「こ、これは…」
エネルギーが回復していってる。
―――『絢爛舞踏』…エネルギーを増幅させて回復するワンオフ・アビリティー…。
「応えてくれるのか、『紅椿』! ならば、行くぞ!」
その声に応じるように赤い装甲が金色に輝き始め、箒は一夏の下に駆けつける。
「一夏!」
「ほ、箒!? なんで、ダメージがあるだ――」
「そんなことはどうでもいい! それよりこれを受け取れ!」
箒は腕を『白式』に触れる。
瞬間、『白式』のエネルギーが全回復する。
「な、何だ…エネルギーが―――」
「それより今は奴を!」
「! ああ、分かった!!」
一夏と箒は同時に瞬間加速を行い、福音に接近。
一夏は大型化した雪片弐型と雪羅から零落白夜の剣を、箒は腕の展開装甲を使用してエネルギー刃を、福音に斬りかかる!
「「うおおおおおおおおお!!!!」」
『!?!?!?!?』
翼やシールドをまとめて破壊され、福音に二人の攻撃が通る。
そして装甲各部にひびが入ると同時に福音のアーマーは解除され、搭乗者は落ちていく。
「あ!」
「し、しま――!?」
「ふぅ…ちゃんと最後まで気を抜かないでください」
堕ちていく搭乗者を海面ギリギリで空が受け止め、二人の下に向かう
残りのメンバーも同じように集まっていく。
福音との再戦は、一夏達の勝利で終わった。
『ヴォアチュール・リュミエール』を起動させた状態でタクティカルアームズによって斬る……
ある意味最悪な辻斬りじゃなかろうか……(汗