IS~転生者は頑張って生きるそうです~(凍結)   作:赤い変態

34 / 37
長らくお待たせしました、コラボ編2話です。

協力してくださった龍使いさんとGHOST=大博さんの二人には頭が上がりません。

本当にありがとうございます。

では、コラボ編2話、始めます。




世界を越えた出会い……2話:外枠VS風の獅子

 

「…さて、何から話したものかな…」

 

『この世界』の皆に自己紹介をした後、場を拓海君の部屋に変えたは良いが、何から話せば良いのだろうか?

 

「…とりあえず、俺に何か訊きたいことは無いか?」

 

そう言って、俺は皆を見渡しながら、話しかける。

 

「あ、じゃあ俺から質問だけど…高天原さんはどういう理由でこっちの世界に来たんだ?」

 

やはりと言うか、一夏が最初に質問してくる。というか、なんで『さん』付けなんだ?

 

「修練とリハビリの為だ」

「リハビリ? どこか怪我してたのか?」

 

今度は修夜君が尋ねてくる。

…まあ、隠しておいても意味は無いか。

 

「『銀の福音』にやられた『俺側』の一夏と箒を旅館に連れて戻る際、『変な奴』に襲撃されてな。

 そいつに左胸から右脇腹まで裂かれた上に海に叩き落とされ三時間以上沈んだままだった」

 

おかげで内臓や骨が海水まみれのグチャグチャになったよ、と自嘲的に言う。

 

「…よ、よく生きていたものだな」

「高天原さんは、本当に人間ですの?」

 

箒とセシリアがそれぞれ感想を述べる。周りを見ると絶句している者もいれば、その光景を想像したのか顔を蒼くしている者もいる。

 

「……あのさ、それ言ったら俺も人間じゃないことになるんだが、気のせいか?」

『うっ……』

 

そんな中で、修夜君が半ば呆れたような表情で言い、拓海君を除いた一夏たちが苦い表情を浮かべる。

 

「どう言うことだ?」

「俺も福音相手に重体を負った身でな。お前ほど酷くはないが、何時死んでもおかしくない状況からの復帰だったんだよ」

「まぁ、それでも銀の鐘(シルバー・ベル)の直撃を受けた時の熱波による大火傷の上に、衝撃波による全身骨のひび割れ、身体の各所で出血までしてたから、規模的には凪君とどっこいどっこいだけどね。

 ……因みに、その時の修夜はそんな状態になった後も、一夏たちが撤退し終えるまで無理やり意識を繋ぎ止めて戦ってたけどね」

「……マジか」

 

拓海君の補足に、今度は俺が絶句する羽目になった。そんな状況になった後も戦い続けたって、どう言う精神力をしてるんだ、彼は……?

 

「人の事を言えた義理じゃないが、よく無事だったな……」

「……俺もそう思うが、あの時ばかりは退けなかったからな。無理位するさ」

 

俺の言葉に苦笑を浮かべながら肩を竦める修夜君。

 

「それでみんなに迷惑をかけてたら世話ないと思うけどね、僕は……」

「そうだよ。今後は、ああいう無茶は控えてよね、修夜……」

 

呆れながらため息をつく拓海君に同意するように、悲しい表情で頷くシャル。

ふと周りを見渡せば、シャルだけでなく一夏達全員が、修夜君を複雑な表情で見つめていた。

修夜君の傍にいるくーちゃん(この世界の彼女は修夜君の妹、真行寺紅耀という名前らしい)に至っては、服の裾を握って、上目に彼を見つめていた。

 

「……わーってるって。俺だって『あんな事』になるのは勘弁だからな」

 

再び苦笑を浮かべながらそう言う修夜君。後で聞いた話だが、彼が復帰した後にそれなりの騒動に発展したらしく、散々な目にあったらしい。

 

「…っと、話を戻すが……修練の内容は具体的に何をするつもりなんだ?」

 

そう修夜君に訊かれ、俺は腕を組み考える。

お袋からはただリハビリと修練に行って来いとしか言われてない。

そもそも、修練とかもどうすればいいか聞いて無いわけだし…。

 

「…特に決めてないな…」

「じゃあ、こういうのはどうだい?

うちの修夜と対戦するとか。これなら修練にも持って来いだろうしね」

「いいのか?」

 

拓海君の提案を聞き、修夜君の方を窺う。

 

「俺は別に構わないぞ、むしろ大歓迎だ」

「いや、だが……何処でする気だ?

 いくら夏休み中とはいえ、アリーナでするのは無理だろう…?」

 

それに他の誰かに俺がISを動かすところを見られた際、問題になりかねない。

最悪の場合、今後こちらの学園で過ごすことに成りかねないからな。

そう思い、別の場所でやらないかと言おうと考えたが、

 

「それについては大丈夫よ♪」

『うわっ!?』

 

突如目の前の空間が揺らぎ、そこからお袋が現れた。

無論、俺と拓海君以外はいきなりの登場に驚いてしまったようだが。

 

「…お袋、皆が驚いてるじゃないか」

「おっと、驚かせてしまってごめんなさいね。

 私は高天原那美、凪の母親よ。よろしくね、『並行世界』の皆さん♪」

 

皆に対し謝ってから自己紹介を始めるお袋。

その顔にはまるで反省の色が見えない。

とりあえずさっきの言葉が気になり、俺はお袋に問いかけた。

 

「…で、何が大丈夫なんだ? さすがにアリーナ以外で対戦が出来るところなんて…」

「そこは大丈夫、白夜さんに手伝って貰ってアリーナで戦っても大丈夫なように人払い済んでるから」

「…師匠まで絡んでるってか」

 

修夜君が若干目を丸くする。

だが俺はその『白夜さん』というのが気になり、彼に尋ねてみた。

 

「誰だ、その白夜さんって」

「俺の師匠で、拓海と紅耀、俺の家族なんだが……しいて言えばチートキャラというか…」

「凪君にも解るように言えば那美さんより規格外な存在かな?」

「…OK、大体理解できた」

 

修夜君と拓海君の言葉を聞き、大体の事を把握する。

…というか、お袋より規格外ってどんな人だよそりゃ……?

その人…人間なのか?

 

「…とりあえず、アリーナに行けばいいのか?」

 

とにかく気を取り直し、再三尋ねる。

 

「そうよ。じゃあ、付いてきなさい♪」

 

そう言って部屋のドアを開け、通路に出て行くお袋。

戸惑いながらも後を追うように俺達も移動を始める。

…しっかし、本当に大丈夫なのだろうか?

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「あ、凪ぃー!」

アリーナに到着するとシャル姉が待っていた。

勿論、その隣には空も居た。

 

「…本当に連れてきたのか、お袋」

「さすがにラウラちゃんは軍のお仕事で来れなかったから、別に二人ぐらいいいでしょ?」

 

そう言い、「私悪くない」と言う風に腰に手を当て胸を張るお袋。

…うん、無理があるな。さすがに……。

 

「…嘘、シャルロットと紅耀ちゃんが二人いる!?」

「…まさか、『向こう側』の二人なの…?」

「あ、あはは……どうも…」

 

俺がお袋に問うていた横ではシャル姉と空の周りで、一夏達が様々な反応をしていた。

…もし『俺側』の全員を連れてきたらどうなるんだろう? 

…確実に大騒動になりかねん…。

 

「…武さんも来ると思ってたんですけど、どうしたんですか?」

 

唯一驚いて無かった拓海君はお袋に対し疑問をぶつける。

 

「さすがに完全に留守にすると不味いからね、一人留守番することを頼んだのよ。

ま、それより二人とも、挨拶しちゃいましょう」

「どうも、高天原シャルロットです。…ええと、名字からわかるように凪の義理の姉をしてます」

「初めまして、高天原空です。凪兄さんの義理の妹です」

『え、ええっ!?』

 

二人の自己紹介にまた一夏達が驚きの声を上げる。

…まあ、仕方ないか。

 

「…まさか、そっちでは僕って彼の義理の姉になっていたなんて…」

「私も、驚きました…」

 

シャルと紅耀ちゃんがシャル姉と空の前に出て、二人の姿と自分たちの姿を比べるように立つ。

 

「まるで鏡合わせ…というか、本人だから同じに決まってますか」

「那美母さんに聞いてたけど、本当にもう一人の僕が居るや…」

 

シャル姉と空もそれぞれの感想を述べる。

…しかし、こうして見ると間違えかね無い――いや、本人同士だからそれは仕方ないか。

その時、お袋が話を進めようと手を叩き、注意を向けさせる。

 

「はいはい、同じ人同士が会話して盛り上がってるところ悪いけど…先にやる事済ませちゃいましょう?」

 

話を進めようとお袋が注意を向けさせる。

お話はその後にとかね、と言いながら空中投影ディスプレイと同じく投影タイプのコンソールを出し、操作し始めるお袋。

 

「対戦すると言っても、さすがに本調子じゃない状態で戦わせる訳にもいかないし、流し程度で相手してあげてくれない? 本気のバトルはまた後日という事で…それでいいかしら?」

 

頭だけこちらに向け、ひたすらにコンソールを操作し続ける。

ディスプレイに映っている文字から考えるに、アリーナの警備システムの無力化をしているのだろう。

たぶん、今からするつもりの対戦がカメラに映らないように細工してるのだろう。

助かる。人払いが済んでるとはいえ、カメラに映れば意味が無いからな。

やがてディスプレイに『システム解除完了』との文字が映り、同時にお袋が展開してたそれらが一瞬で消える。

そしてお袋は皆の方へ振り返り、満面の笑みで言った。

 

「…さ、始めましょう♪ 『異なる世界』の者同士の対戦を♪」

 

 

凪side out

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

No side

 

 

アリーナの前で那美が宣言した後、凪は一人ピットに入って二機の愛機たちの調整を入念に行っていた。

母や義理の姉妹達は修夜以外のメンバーと観客席側に行っている。

今回は退院後初となる対戦、それも未知の相手との対戦だ。本調子では無い体でも十分耐えられるように調整していく。

一応、最初に母である那美に調整をして貰おうかと考えてはいたが、それだと修夜とフェアではなくなると思い、自分で調整することにした。

粗方の調整が終わり、目の前に展開してた『彼女たち』を一度待機形態に戻し話しかける。

 

「もう出てきていいぞ」

 

二機の待機形態である左手のリストバンドに話しかける。

すると一瞬それが光り、左腕の上に白と青の少女たち――『アウトフレームD』と『ゲイルストライクS』の人格、『アウト』と『ゲイル』がホログラムで仮初めの姿を現す。

白い方の少女、『アウト』は漸くかと言わんばかりに嘆息し、青い方の少女、『ゲイル』は疲れたーと言いながら仮初めの体の右肩を左手で揉み解す。

 

『ふぅ……マスター、言われた通りに姿は出さないでおきましたが、どうして『この世界』の皆さんの前で姿を出すなと言ってたのですか?』

『そうだよ! せっかく『この世界』の皆をびっくりさせてやろうと思ってたのにー』

 

二人はマスターである凪に抗議する。

実は『この世界』に至るまでの空間の中で、凪は彼女たちにこれから向かう『並行世界』でむやみに姿を出すなと言っていたのだ。

これは『元の世界』でも彼女たちを知る人物以外の前で姿を出さなかったのと同じで、彼女たちを見て『この世界』の一夏達が騒がない様に配慮したからだ。

もっとも、自分がこっちに渡ってきた瞬間を見た時の彼らのリアクションから考えると拓海の部屋で出しても良かったのでは?と凪は考えていたが、

 

――まあ、過ぎた事だ。仕方ない。

 

と割り切った。

とりあえず、まずは不機嫌気味な彼女達の機嫌を取らねば対戦時のサポートが受けられないと思い、話しかける。

 

「済まなかった、機嫌治してくれって。 

今度とびっきりの整備してやるから、今は対戦時のサポートを頼む」

『むぅ、絶対ですよ?』

『…手を抜いたら駄目だからね?』

 

頬を膨らませながらも、凪に了解の意を伝える。

その様子に苦笑しながら「ありがとう」と言い、凪は黒の私服を脱ぎ、あらかじめ下に着ていたISスーツ姿を露わにする。

スーツで覆いきれてない右脇腹から七月の時についた傷痕の一部分が確認出来る。

その痕に触り、特に問題は無いと感じた凪はさっそく『アウトフレームD』を展開、違和感がないか確認する。

何分、約一ヶ月ぶりに行うIS同士の対戦、戦いだ。いくらリハビリ目的の対戦とはいえ、万全で行かなければ相手に失礼だ。

…まあ、退院したばかりである時点で万全とは言い切れないのだが。

 

『武装はどうします? やはり最初はエールとライフル、シールドで行きますか?』

 

『アウトフレームD』を展開したことによりホログラムの姿を消した『アウト』が凪に展開する武装を訊く。

デフォルトとして今装備しているのはバックジョイントとアーマーシュナイダー、ビームサインのみ。これだけでは訓練機の『打鉄』や『ラファール・リヴァイヴ』を相手にするのが限界だろう。

一度思案した後、凪はバックジョイントからエールに換装、更にランチャーのコンボウェポンポッドとソードのパンツァーアイゼンを右腕に装備という変則装備をする。

後は左腕に専用ビームライフルを持って準備完了となった。

 

『随分と変わった変則装備だね。何か考えての装備?』

「ちょっと試したい事があってな、まあそれ以外に意味は無い」

 

『アウト』同様に仮初めの姿を消した『ゲイル』の問い、それにただ試したかっただけと答える凪。 

それと同時に頭の中で『ゲイルストライクS』時に装備する武装を考えるが、そろそろ時間だと思いピットの出口に立ち、一度深呼吸をしてから集中する。

 

―――傷は殆ど治った、問題は無い。流し程度とはいえ対戦して貰う以上、無様な終わり方をしない様に…。

 

十分に集中し終え、スラスターを噴射しピットから飛び出す。

アリーナの中央まで来ると同じように反対側のピットから修夜が搭乗しているISが飛び出してくる。

 

『機体名、『エアリオル』…それ以外はわかりません』

『アウト』から相手の機体名だけが伝えられる。

直角的なアーマーが多くかつシンプルに纏まったシルエット。

腕部や脚部には光を受け金色に輝く爪の様なものがあるのが確認出来る。

更に側頭部の一部アーマーが鬣のようにも見え、どことなく獅子をイメージした機体だと凪は感じた。

 

修夜がアリーナ中央まで来ると驚いたような顔をする。

 

「へぇ…、全身装甲か。随分と変わってるな」

「素肌を晒すのはどうも苦手でな、こういうのが落ち着く。…まあ、それよりも…」

「ああ…」

 

それ以上の言葉は不要とばかりに武器を構える。それに応じるように修夜も武器を展開する。

二人の間にピリピリとした張りつめた空気が生み出されていく。

今ここに、誰も経験した事の無い異世界のIS同士の戦いが幕を開けた。

 

 

 

先に動いたのは凪の方だ。右肩に装備されているコンボウェポンポッドのガトリングとビームライフルが一斉に火を噴く。

だが、修夜はわずかに体を傾けるだけでそれらを全部避け、お返しとばかりに『エアリオル』の基本武装、アサルトライフル『ハウリング=アヘッド』による射撃で反撃を行う。

 

『直撃コース!』

―――避けるまでもない!

 

『アウト』からの警告、それにプライベートチャネルを使い答えた凪はコンボウェポンポッドのミサイルを放ち、わざと銃弾に当てて誘爆させ他の銃弾もその爆撃で防ぐという荒業を見せる。

ミサイルの爆発により、両者の間に大きな爆風と煙が発生、二人の視界が埋まる。

その爆風の中から、パンツァーアイゼンの先端部分が飛び出し『エアリオル』の左脚部に絡みつき、その場から逃げられないように捕縛する。

続いて凪自身が飛び出て、右手のライフルのビームを放つ。

 

「させるかっ」

 

だが修夜は直前に振動実体剣『ストライクファング』でパンツァーアイゼンのワイヤーを切り離し、防御用自律ユニット『メインシェル』でビームを防ぐと同時に一気に凪との距離を取る。

だが、それだけで凪の攻撃は終わらなかった。

 

「やるな、だが…これならどうだ?」

 

腰のビームサインを引き抜き、高出力状態にしてから修夜に向かって投擲する。

そして一定の距離まで到達すると同時にビームライフルで打ち抜き、ビームサインのエネルギーを拡散させる。

その拡散したエネルギーはまるで幾重もの刃の波となり、広範囲から修夜に襲い掛かる。

 

「なっ、ちぃ!」

 

さすがに拡散されたエネルギーの刃は避け切れないと判断したのか、『メインシェル』を前面に出し一時防御に徹する。

どうやら、序盤のペースは凪が握りつつあるようだった。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「…凄い」

 

一方、観客席側でその勝負を見てた一夏たちの誰かが開始直後の凪の実力を見てそう呟く。

最初はアリーナに現れた凪のISの姿に対し少しばかり驚いていた彼らだが、その戦闘技術の高さに更に驚く羽目になったのだ。

銃弾を避けずにミサイルに当てさせ誘爆、その爆発で残りの銃弾も防ぐと同時に自分の有利な状況に持って行き、回避不能な攻撃を繰り出すその戦術は明らかに彼らの戦い方より上のものだった。

とても、退院し立ての人間の動きだと考えられなかった。

 

「…驚いた、まさか凪君の技量がこれほどとは…」

「なんだよ、アレ…。修夜が押されてる…?」

 

拓海が唖然とした表情を浮かべ、一夏が目の前の光景を疑う。

彼らの中で修夜はほぼトップの実力を誇る。 

いくら流し程度、それも『エアリオル』の基本形態『ゼファー』で戦っているとはいえ、今行われている対戦ではまだ本調子では無いと言う凪に押されているのだ。

 

「そうは言うけど、修夜君もなかなかの技量を持ってるじゃないの。

ちゃんと凪の攻撃を防ぎ切ってまだシールドエネルギーを減らして無いとか…十分凄いわよ」

 

二人の言葉に対し那美も修夜の技量の高さを素直に称賛する。

この戦いを贔屓目なしに見ても、未だにシールドエネルギーを殆ど減らして無い修夜の強さに少なからず驚いているのだ。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「これで本調子じゃないって、本当か……!?」

 

防戦一方の修夜は凪の戦い方に舌を巻いていた。

現在凪は未だにエール基準の変則装備の状態で修夜を攻めている。

近づくものならガトリングで、離れようものならパンツァーアイゼンで捕まえられ、射撃武装で攻撃しようものならミサイルにわざと当てさせ防ぐという戦術。

それに対し自分はさっきから防御や回避に徹するだけの状態だ。

今はまだ『メインシェル』のおかげでシールドエネルギーを減らさずに済んでいるが、このままではジリ貧は確実だ。

 

―――本調子じゃ無いってことで侮るんじゃなかったな。どうにかこの状況を変えないと…。

 

《マスター! ここは『ソニック』で撹乱しながら戦った方が良いよ!》

 

彼の耳に愛機のAI、『シルフィ』の声が響く。

確かに、ここは機動力で勝る『ソニック』で戦った方が良いのかもしれない。

相棒の進言に従い、状況を打開する為にも『ソニック』への転換を開始する為、多少の被弾覚悟で瞬時加速を使い凪から距離を離す。

 

「さて、いつまでもやられっ放しは性に合わないからな。コール、ASBL:ソニック!」

 

そう叫ぶと同時に『エアリオル』は淡い光に包まれていき、群青色の装甲を持った別の姿に変貌する。

ブースターは翼をもつ大型のモノになり、脚部もスタビライザーが付いてより速そうなイメージを湧かせるモノに変化している。

これを目の当たりにした凪は一瞬、二次移行か、それとも自分と同じように別の機体に変換したのかと考えたが、即座に違うと分かった。

 

―――アレはストライカーパックと同様の、戦況に合わせて変更する武装の一種かっ!

 

原理や仕組みすら違うだろうが、換装型の武装を使ってきた凪だからこそ初見で気付けた。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「えっ!? ISが変わった!?」

「…いえ、違います。アレはたぶん…」

 

観客席の方で今度はシャル(高天原)が驚愕する番だった。

それに対し空はボンヤリとだが、凪と同じ答えに辿り着こうとしていた。

 

「あれは『ASBLシステム』、状況に応じて的確な姿に変形する機能だ。

…凪君が使う『アウトフレームD』のストライカー・シルエット・ウィザードシステムに似たものだと考えてくれていいよ」

 

拓海が高天原姉妹に向かって彼女たちにも分かり易いように説明する。

だが、今度は一夏たちの方が首を傾げることになった。

 

「ストライカー…シルエット? ウィザード? なんなんだ、それは?」

 

箒が皆の疑問を代表して問う。

それを聞くと同時に那美は投影ディスプレイを出し、ストライカーシステム等のデータを表示させる。

 

「ストライカー・シルエット・ウィザードシステムって言いうのはバックパックを換装することで様々な状況に応じることが出来るシステムなの。

まあ今拓海君が言ってくれた様に、『ASBLシステム』のバックパック版ね。

これらは『ASBLシステム』と違ってバックパックと一部兵装を変えるだけで済むから『ASBLシステム』より高速で換装できるの。

高速機動戦から狙撃、砲撃、ビット攻撃から接近戦、簡易的な変形まで何でもござれのシステムよ」

 

そして今凪が背中に装着してるのは機動戦重視の『エールストライカー』って言うのよ、と言いながらそれらのデータを表示させていく那美。

それらの内容を聞いて、一夏達は自分達がそんな万能なシステムを操る凪と戦った場合、勝てるのか?と思い、同時に若干不安になる。

この強敵に修夜が勝てるのかどうかを……。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

観客席側で那美が一同にストライカーシステムの説明をしている最中、凪と修夜の戦いも変化が起き始めた。

『エアリオル』の高起動形態、『ソニック』の速さに翻弄されつつある凪は修夜を捉えることが出来なくなってきたのだ。

これにより無駄な発砲も出来ず、ひたすら高速で動く相手からの射撃や接近により、回避に専念するしかない状況だった。

まさに、序盤と立場が綺麗に変わってしまっていた。

 

『十時の方向…上です!』

『わぁっ!? 早すぎっ―――て、今度は左斜め後方から!』

 

必死に『アウト』、『ゲイル』からのサポートでギリギリ避けるに留まっているが、シールドエネルギーが確実に削られていってるのが現状だ。

―――まさか、高速戦闘特化とはな…だが、その位俺にも出来る!

タイミングを窺いつつ、修夜との距離が一番離れる時を狙い、そして―――

 

「今だっ、『Gフライト』に換装!」

 

即座に右腕に集中してた武装と背中のエールが消え、ほぼタイムラグ無しで『Gフライト』のパーツが機体各部に装着されていく。

この間、僅か0,1秒未満。そして換装が完了すると同時に飛行形態へ移行、『エアリオル』に迫る勢いで飛ぶ。

 

《嘘っ、これにも付いて来る!?》

「まだまだっ!」

 

凪の『アウトフレームD』の変化に気付き、修夜は振り切ろうとスピードを上げていく。

徐々に離されていく凪。だが、それでも近づけたことにより攻撃が可能となる。

左腕だけ前に出し、ビームライフルで追撃を始める。

それをバレルロールで避けながら『ソニック』時の射撃武装、リニアライフル『イーグルハンター』と連射重視のアサルトライフル『ハウリング=ラプター』を展開し応戦する修夜。

その光景は、まるで戦闘機同士のドッグファイトにも見えるぐらい高度な戦いで、観客席で見ていた一同の視線を奪っていく程のものだった。

 

 

No side out

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

修夜side

 

 

「……ちっ、速い!」

《ソニックの速度に此処まで……本当にリハビリ必要なの?》

「…正直な話、絶対要らないだろ、これなら…っと!」

 

襲いかかるビームの雨をとっさに避ける。

……射撃がどんどん正確になって来てるな…。

ソニックの武器である速さで挑んでも、対戦相手である凪の前では無意味となりつつある。

死角から仕掛けようとしても、ギリギリで回避され、逆にこちらが死角を狙われるというこの状況…。

いつまで避けて居られるか……。

 

《不味いね、このままじゃ…》

「埒が明かねぇな……どう反撃するべきか……」

 

牽制の意味も含めてこれ以上接近できない様に射撃をしつつ、この状況を変える為に思考を巡らせる。

ライフルの弾数も残り少なく、ソニックのスピードを活かすにしても決定打を打つ事は出来ないし、既に凪は互角のスピードで挑んで来ている。

それに、恐らく向こうはまだ何かを隠し持ってる筈だ。ソニックに対しすぐに対応出来たように、一気にこの状況を変えることが出来る装備を…。

もしそんな装備を今すぐに出されたら、こちらが落とされる可能性は高いだろうな…。

…となれば、それを出される前にこちらから攻勢に出る他ない。

それに…、幾ら流しでやってるとはいえ、押されたままっていうのも納得がいかない。

なら……、

 

(……ここら辺で勝負に出るか……)

 

「…仕方ねぇか……。

…シルフィ、ブラストで突破するぞ! このままやられる訳には行かないしな!」

《オーケー! こうなったらトコトンやるよ!》

 

そうと決まれば次への行動は早い。

一度わざとスラスターを切って停止、スピードを出し過ぎていた凪が横を通り過ぎ、追い抜いて行く。

すれ違い様に無表情なフルスキンのマスクに覆われている筈の顔が一瞬驚いている様に見えたのを視認すると同時に、再びスラスターを全開にして加速。凪とは真逆の方向へ飛ぶ。

そして、凪との距離が200メートル以上開いたのを確認した瞬間、俺は勝つ為に打って出た。

 

「反撃開始と行こうか! ASBL:ブラスト!」

 

装甲が淡い光に包まれていくのを感じながら、俺は突撃する。再接近してくる、並行世界から来た強敵に向かって。

 

 

修夜side out

 

 




とりあえず、次はもう少しかかります。

まあそれでも出来る限り早く仕上げますので、ご容赦を。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。