GS横島争奪大作戦   作:右近

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今回はほぼシリアスだと思います。…多分

漸く南武編も終わりで、次は予定通り特別編を書いてから、横島メインを書くつもりです。

それでは南武編の最終話、第8話をお楽しみ下さい。



第8話~マタ会ウヒマデ~

ルシオラがどうであれ目覚めてしまった。自分達を覚えていれば良いが、もしもの時は…

いやがおうにも緊張感が増す。どれ程の力があるかは未知数だが、先程感じた魔力からは死を連想させるには十分だった。

 

「ヨコ…シ…マ…」

 

か細い声で聞き取り難いが、ルシオラはヨコシマと言った。それを聞いた2人は安堵し幾分気を緩めてしまう。

 

「ぐはっ⁉」

 

「雪之丞‼」

 

僅かな気の緩みだった。その隙を突かれて雪之丞は反対側まで飛ばされてしまう。ピートも動揺が隠せない。確かに横島と言った。それなのに雪之丞はいきなり殴られている。

 

「くっ‼」

 

雪之丞に気を取られてピートも隙を作ってしまいルシオラはピートにも殴り掛かる。かわせるタイミングではないので何とかガードは出来たがそれでも数メートルは後退した。

 

「どうすれば…」

 

ルシオラを知っているだけに闘いたくない。しかし、そんな事はお構い無しにルシオラは攻撃してくる。ピートは防戦を強いられ一気に雪之丞のそばまで押されてしまった。

 

「すげー威力だな。横島や美神のダンナはこんなのと殺りあってたのかよ」

 

まさかの不意討ちに吹き飛ばされた雪之丞だが、ピートほど困惑していない。確かに驚きはしたが今の一撃で元来のバトルジャンキーが目を覚ました。横島はルシオラの力があったとは言え傷を付け、美神に至っては、不意討ちヘッドバットに啖呵まで切った。最上級魔神相手にだ。そんな自分よりも先に居るライバルに追い付くチャンスと感じる。

 

防戦一方でどうにか猛攻を凌いでいるピートだが、腕の感覚がなくなりつつある。皮肉にも先程自分が採った戦法だった。

 

「…⁉」

 

後少しでピートを壁際に追い込む事が出来たはずのルシオラだが、腹部に思いもよらない衝撃を受け後退してしまう。それは、意趣返しとばかりに雪之丞が放った霊波砲だった。

 

「ここだと不利だ‼外に出るぞ‼」

 

何が起こったのか判らず呆然としているピートを引っ張り、階段を掛け上がる雪之丞。途中に罠を仕掛けない辺りまだ甘い。

 

「勝たなきゃ終わりだ。俺は相手が誰だろうと最後まで足掻いてやる。それにこんなところで終わるつもりもねーしな」

 

「…そうだな雪之丞。僕もまだ終われない‼」

 

雪之丞の檄で漸く迷いが消えたピートは力強く答えた。

 

一方、攻撃を受けた隙に逃がしてしまったルシオラは、ゆっくりと後を追う。ダメージは全く無いが、一撃を入れられた事に魔族の本能が2人を敵と判断した。本来は、理知的な性格だが、消滅後時間経過により以前の記憶は殆ど無く、僅かにあった大切な思い出も戦闘により消えて、残るはプライドを傷付けられた魔族だった。

 

 

「ここでなら何とか戦えるな」

 

外に出た2人は油断なくルシオラの登場を待つ。疲労が蓄積している状態では、気休めでも休める時間が取れた事は有難い。

 

「それにしても、まさかルシオラさんが出てくるなんて」

 

「出てきたもんは仕方ねーだろ。それより、ピートを選んで正解だったな」

 

「…そうだな」

 

口には出さないが考えている事は同じで、横島だったら二度と立ち直れない程の傷をおっていただろう。自分の手で恋人を殺す事になっていたかもしれない。

 

「勝つぞ」

 

「ああ」

 

施設からルシオラが出てくる。戦闘体勢をとった2人を見て僅かに口角が上がる。

 

「喰らえ‼連続霊波砲‼」

 

「ダンピールフラッシュ‼」

 

ルシオラが構える前に先手必勝と全力で攻撃を開始する。若手GSとは言えその攻撃力は下級魔族を倒せる威力があり、それを2人係りで無防備な相手に撃ち込み闘いが始まった。

 

ルシオラを中心に、爆音と閃光が盛大に起き、爆煙が昇る。これで倒せるとは思っていないが、ダメージはある程度期待していた。

 

「チッ、やっぱダメか」

 

煙が晴れるとそこには無傷のルシオラが立っている。力の差を認識していたため落胆はない。それならばとピートが接近戦を挑もうと前に出た瞬間、ルシオラは右手をスッと前に突き出し霊波砲を放った。

 

「うっ⁉」

 

あれを喰らってはいけないと直感で感じたピートは紙一重でかわし、雪之丞はサイドステップで避けると霊波砲を放つ。

 

「なに⁉」

 

雪之丞の霊波砲はタイミング的に避ける事は難しく直撃した瞬間、ルシオラの姿は淡い光を放ち消えた。

 

「ぐはっ⁉」

 

次の瞬間、ピートは背中に強い衝撃を受け、地面に叩きつけられる。

 

「クソッ、幻影か」

 

動きと止める事が出来なくて愚痴を呟くも、止まってはいられない。ルシオラはピートには目もくれず、雪之丞に向かって行く。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

ピートが顔を上げると雪之丞はルシオラと接近戦を繰り広げているが、やはり押されていてならばとピートも参戦し、闘いは激しさを増していく。

 

2人の戦法は雪之丞が正面に、ピートは死角を突くコンビネーションが主体で、変化を付ける為に時々入れ替わったりしたが効果は薄い。ルシオラも押してはいるものの、死角を突かれる攻撃の為、決定打を与えれない。気を抜けば致命傷を、手を緩めれば主導権をと次第に消耗戦へと様変わりしていく。

 

 

 

「魔鈴チャン、あっちニャン‼」

 

箒に乗って移動中の魔鈴は、使い魔の黒猫が指示する方向へ向かう。

 

「判ったわ。あっちね」

 

あまり異界を散策して無かった魔鈴は、良い機会だと思いながら箒を操る。

 

 

膠着状態になった闘いに変化があったのは、ピートが参戦してから十数分経った時だった。押しているのは依然ルシオラだが、その攻撃が大振りになってきているが、2人もスタミナが限界に近く反撃に出れない。それでも粘り強く闘っていたが、ついに雪之丞の脚が止まった。

 

「しまっ‼」

 

正面で止まっては格好の的になる。それを見逃すはずもなくルシオラは強烈なストレートを放った。雪之丞はガードを固め、衝撃を最小限に抑える為にわざと飛ばされてダメージを軽減した。

 

「ぐっはっ⁉」

 

「雪之丞‼」

 

ガードに徹しても衝撃は凄く一瞬呼吸が出来ない。ピートは攻撃を中断して雪之丞の所まで下がった。

 

「………」

 

次で終わりだと言わんばかりに魔力を解放したルシオラは、そのまま、もう一度距離を詰める。ピートは時間稼ぎのために一人で立ち向かう。

 

ーバチッ

 

ルシオラは向かって来るのを確認すると、自身が発光して目眩ましをして、怯んでる隙に多重幻影で惑わし、身構えているピートの背後にそっと近づき麻酔を掛けた。

 

「…ッ⁉」

 

一瞬で身体の自由を奪われ膝から崩れ落ちるピート。最後の抵抗と気合いで立ち上がり後ろを向くがそこまででうつ伏せで倒れた。

 

「ピート‼」

 

ピートのお陰で呼吸を整えれた雪之丞は一瞬で倒された相棒の名を叫ぶも、目の前にはルシオラが迫っいる。ピートの事は後にして雪之丞は闘おうとするも身体が言うことを聞かなかった。体力と霊力を限界近くまで使い、気力だけで立ち上がったが、先程息が出来なくなったことで集中力が途切れた身体は動かない。ルシオラは雪之丞に近づき麻酔を掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ううっ…」

 

「…ここは」

 

2人が目を覚ますとそこには見慣れぬ天井があった。

 

「気が付いたんですね。良かった~、かなり消耗してるみたいなんで、何か食べれる物探して来ますね」

 

意識が戻った2人を見て魔鈴がほっと胸を撫で下ろす。何があったかは判らないが、ひどく消耗している2人にと、食料を探しに部屋を出た。

 

「ハデにやられたな」

 

「お互いに」

 

「…俺達、生かされたのか?」

 

「判らない。最後は気絶してたから…」

 

「…俺もだ」

 

負けたのは仕方ないとしても、最後まで立ち続ける事が出来なかった事に悔いが残る。

 

「お待たせしました。出来ましたよ」

 

そんな重い空気を魔鈴の声と持ってきた料理の匂いにかき消された。

 

「レトルトしか無かったですけど、冷めないうちに食べてください」

 

そう言って魔鈴はベッドに料理を運び、用意を済ますと2人は食べ始める。

 

「レトルトなのにこんなにも美味しくなるなんて」

 

ピートは料理人が作るとここまで変わるのかと驚き、雪之丞はガツガツと食べている。

 

 

「ふぅ~、食った食った」

 

「魔鈴さん、ご馳走さまです」

 

「お粗末様です」

 

「ところで魔鈴さん。僕達の他に誰か見てませんか?」

 

食事も終わり、一息ついたところでピートが訪ねる。もしかしたら闘いの最後を見ているかもしれないと思った。

 

「他の人ですか?んー見てませんよ。私が来た時はお2人だけでしたよ」

 

「そういや、どうやって俺達を見つけたんだ?ここは異界だしよ」

 

「私の家は異界にあるんですよ。クリスマスの時みたいに、お店の奥と家を繋げてるんです。それで家に居たら外が騒がしくて様子を見に行ったらお2人を見つけたんです」

 

ピートの質問に答えると、雪之丞が更に聞いてきたので大まかに答える魔鈴。

 

「それより、お2人はどうして異界に居るんですか?私もこんな施設があるなんて初めてしりましたよ」

 

「仕事でたまたまここに来たんだ。ピートはその手伝いだ」

 

魔鈴も不思議に思った事を2人に聞いてみる。異界で自分以外の人間を見るのは初めてで、ましてや知り合いが居たとなると気になってしまう。

 

「仕事で異界ですか、大変なんですね。私で良ければお手伝いしますよ?」

 

「もう殆ど終わったので大丈夫です」

 

「そうだな。後は書類を持ち帰る………しまった‼俺達戻る手段がねーぞ‼」

 

魔鈴の申し出を、仕事上守秘義務があるので断るが、結界を勝手に出てしまったため帰り方が判らないと雪之丞は叫び出す。

 

「………すいません魔鈴さん。やっぱり手伝って貰えますか?」

 

「大丈夫ですから気にしないで下さい。これも善き魔女の勤めですから」

 

話を聞いて無かったのかと雪之丞に呆れつつ、申し訳なさそうに戻る段取りを頼むピートに、笑顔で了承する魔鈴だった。

 

「雪之丞。魔鈴さんに戻る手筈を頼んだから大丈夫だ」

 

「なに⁉本当か‼恩に着るぜ」

 

戻れるメドが着いた事を言うと、やっぱり聞いて無かったのか雪之丞は、満面の笑みで感謝を伝える。

 

「今からどうします?一旦戻りますか」

 

「いや、体調も大分良くなったし、手伝ってくれるなら今から資料を集めようぜ」

 

「雪之丞がそう言うならそれで良い。魔鈴さんお願い出来ますか?」

 

「判りました。でも無理はダメですよ」

 

雪之丞の提案により3人は手分けして証拠となりそうな資料を集める。協力してくれる魔鈴には、事情を説明しながらコントロール室に向かった。

 

「これとこれ。あとこれも使えそうね」

 

魔鈴が加わった事で効率が増す。知識量は2人とは比べ物にならなかった。

 

「そう言えば、お2人を見つける少し前に光の玉?みたいになのが上に上がって消えましたよ」

 

「本当ですか⁉どんな感じでしたか?」

 

途中、何かを思い出した魔鈴は2人に話す。ピートはそれがルシオラで何処かに行ってしまったのではないかと魔鈴に詳しく訪ねる。

 

「そうですね。確か小さくて、数はそんなに無かったです。淡い光りでしたし。まるで蛍みたいでしたよ」

 

「そうですか。有難うございます」

 

「おい、今の話って」

 

「多分そうだと思う」

 

魔鈴の話を今度はちゃんと聞いていた雪之丞は確認すると、ピートも同じ事を思っていた。

 

「どうかしましたか?」

 

「いや、何でもない」

 

2人の呟きが気になって聞いてみるも、はぐらかす雪之丞。その後は黙々と資料を探す。

 

 

「こんなもんか?」

 

「大丈夫だと思うぞ」

 

「それでは帰りましょう」

 

1時間後めぼしい書類をまとめ終えると、一行は魔鈴の家を目指す。途中、マンドラゴラやバロメッツなど稀少価値の高いオカルト植物が自生しており魔鈴が採取して、荷物が増えたのは別の話である。

 

 

「魔鈴さん、今日は本当に有難うございます。あのまま2人だけだったらどうなってた事か」

 

「それはお互い様です。私も荷物を沢山持ってもらいましたから」

 

自宅に到着するともう一度お礼を言うピートに、魔鈴は山の様に採取した植物を指差してお互い様だと答える。

 

「いや、本当に助かった。帰り方もわからなかったしな」

 

「本当にお互い様ですよ。それより今日は泊まって行きませんか?時間も時間ですし、まだ疲労も残っているでしょうし」

 

雪之丞も礼を言うが、魔鈴はここまで言われると恥ずかしいのか話題を逸らす。2人はどうみても疲れている。少しは回復しているが、このまま帰すのは気が引ける状態だった。

 

「教会の事もあるので帰ります。魔鈴さん、今日は本当に有難うございます」

 

「有難いが俺も帰るぜ。報告書を作らなきゃいけないからな」

 

「そうですか。では気を付けて下さいね」

 

2人はそのまま魔鈴に見送られながら家路に着くのだった。

 

 

 

 

 

ーハックション‼

 

「2人とも無事に帰って来ておくれ」

 

ガソリン代が勿体ないとエンジンを切っていた車で、寒さに耐えながら待っていた唐巣を、ピートが迎えに行ったのは次の日の朝で、風邪を引いたのは言うまでもない。




いかがでしょうか?途中休載してましたが、何とか南武編を終わらせる事が出来ました。これも読んでくださる皆様のおかげです。有難うございます。

ルシオラには一旦退場してもらいますが、ちゃんと復活はしますので暫しお待ち下さい。

其では次回またお会いしましょう。
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