この話で漸くプロローグが終わります。
次回から本編突入(の予定)です。
それでは第3話のスタートです。
※ご指摘頂いた間違い箇所修正しました。
これからも多々出ると思いますが、どんどん指摘して下さい。
賑やかな夕食が終わり暫くして美智恵はひのめと一緒に帰宅した。
ひのめを寝かせてから風呂に入り、バスローブ姿の美知恵は1人ワインを呑む。
(忠夫君はルシオラを今でも愛している。そして令子も。このままじゃ何時か破綻してしまうでしょうね。)
夕食前の会話を思い出し思案する。娘夫婦は幸せだろう。しかし、何時壊れるか判らない共通の課題を2人共抱えている。
(ルシオラ、貴女の望みは何?)
忠夫は救えたかもしれない彼女を想い、その魂を身に留めているし、令子は寂しがり屋で、自分だけを見て欲しい。死んだルシオラを未だ見ている忠夫の想いを知ってしまったら受け止めれないだろう。
結局2人共にルシオラの死を乗り越えられないでいる。
ルシオラの魂は、其が判っているかの様に転生した気配も無い。
アシュタロス戦から10年。ルシオラの転生で解決出来る時期は過ぎてしまっている。全てを解決するには
(魂の救済か…まるでアシュタロスみたいね)
2人の子供にルシオラが転生するのが理想だろう。しかし、現状それは望めない。では、転生ではなく生き返らせたら?
以前から考えていた方法はある。条件が厳しく机上の空論だった。仮に今成功しても3人とも傷付くだけだろう。
「ふぅ。昔は気楽だったわね」
グラスのワインを飲み干し溜め息と共に出た言葉に気が付き美智恵は急いで手紙を書く。
「やっぱり忠夫君は何時でも切り札ね」
手紙を書き終え1枚の写真と一緒に封筒に入れた。
「後は向こう次第ね。結果がどうであれ私は知る事は出来ないけど、きっと上手く行くはずだわ」
託すしか出来ないもどかしさは消えないが、前に進む切欠が出来た事に安堵の表情を浮かべる。
「明日忠夫君に行ってもらいましょう」
グラスを片付けて寝室に向かう。
(これで進めるはず)
決意を固める様に何度も呟く。ベットに横になり眠りにつくまで続いた。
新しい未来の為に─
AM6:27
何時もより早く目が覚めた朝。
何時もと同じで朝食の準備を始める。7時を回ったところでひのめを起こす。
「早く食べて用意しなさい‼学校に遅れるわよ‼」
何処の家庭の母親は大体同じで朝は3割増しで恐ろしい。
AM8:00
ひのめを送り出し一息ついたところで忠夫の携帯に電話をする。
「お早う忠夫君。急に悪いけど、今日の昼1時に時間を作ってくれないかしら?」
「お早うございます。1時っすか?ちょっと待ってくださいよっと」
電話越しにガサゴソと手帳を探す音がする。程なく
「良いっすよ。今日は夜だけなんで」
横島霊能事務所は3期連続で納税額1位の忙しい事務所であり、日中に空いている事は珍しい。
(ご都合主義万歳)
「其にしても珍しいっすね。お義母さんが頼み事なんて。何かトラブったんすか?」
軽い返事の後、何時もと少しだけ違う美智恵の声に忠夫は急ぎの徐霊でも入ったのかと思い用件を聞く。
(こういう時だけ妙に鋭いんだから)
「詳しくは会って話すけど、忠夫君に手紙をと届けてもらいたいのよ」
苦笑いお浮かべながら答える。
「判りました。それじゃ昼1時っすね。場所は事務所でいいっすか?」
「そうねぇ、2人っきりで「まさか!?お義母さんから禁断の」令子にバラすわよ?」
「かんにんやー‼おちゃめなジョークなんやー‼」
忠夫曰く、おちゃめな?ジョークを令子の名前で切り捨てる。昨日の決意が一気に揺らぐも極めて冷静に
「○○駅前の【後の星達】で。それじゃまた後で」
と伝え、返事も聞かず電話を切る。
「はぁ~あれが無ければねぇ~」
盛大な溜め息と共に愚痴をこぼす。セクハラ紛いだけでも無かったらもっと早くに令子と結ばれていただろうと思い小一時間。
「あら、もうこんな時間!?こうしちゃ居られないわ。私も早くしなくちゃ」
朝食の後片付けに洗濯、部屋の掃除と主婦は忙しい。手早く片付けて出掛ける準備をする。
不安はある。それでも、明るい未来の為、新しい未来の為に美智恵は手紙を鞄に入れ家を後にする。
忠夫も時を同じく出掛ける準備をする。美智恵の言葉に多少の疑問を感じてはいるが、現状ではどうしようも無い。全ては話を聞いてからと頭を切り替え窓の外を見て
「ルシオラ、行ってくるよ」
何時もの日課。太陽や月に向かって話し掛けるとルシオラの返事が聞こえる気がする。
(おはよう ヨコシマ)
(行ってらっしゃい ヨコシマ)
(お帰りなさい ヨコシマ)
(お休み ヨコシマ)
何時も元気付けてくれる声が今日は
(頑張ってね パパ)
の様に聞こえた気がする。
(何時に成ったら逢えるんだ?ルシオラ)
忠夫は呟きながら事務所を出た。
美智恵は店前に到着し辺りを見渡す。
「忠夫君はまだのようね」
腕時計に目をやり時間を確認する。
12時50分。
少し早いが気にする様でもなく、鞄から小説を取り出して読む。
「お義母さん、すいません待たせたみたいっすね?」
2分後に忠夫が小走りでやって来た。
「大丈夫よ。私も今着いたところだから。其より何時もより早いじゃない?洗濯物部屋に干しておくんだったわ」
「そりゃ無いっすよ。ところで何処か移動します?」
「ここで良いわよ。たまには事務所以外もいいでしょ?」
小説を鞄に仕舞い忠夫をからかいながら店に入っていく。
「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」
「2人よ」
「2名様ですね。こちらにどうぞ」
店員とのやり取りの後、席に着く2人。最初に話を切り出したのは忠夫だった。
「手紙って誰にと届ければいいんすか?」
少し緊張気味の忠夫。何かを感じているのか直ぐ本題に入ろうとする。
「別に慌てなくても良いわよ。先に注文しましょ」
苦笑いの美智恵の横を見ると困惑している店員が居た。
「珈琲2つでいいわね?」
「それでいいっす」
「かしこまりました」
注文を受けた店員が下がるのを確認して本題に入る。
「渡して欲しい手紙はこれよ。相手は…私、美神美智恵よ」
そう言って1通の手紙をテーブルの上に置く。
「えっ?」
忠夫は理解出来ていない。差出人と受取人が同一人物なのだから当たり前である。誰が聞いても一緒だろう。
「どう言う事っすか?」
暫く考えてみたが皆目見当が付かない。もう一度美智恵に聞いた時
「お待たせしました。珈琲2つです」
店員が珈琲を持ってきた。美智恵は受け取ると一口飲み真剣な眼差しで
「過去の私に渡して欲しいの」
…………………………
普通ならあり得ない頼み事に2人共沈黙する。珈琲の香りが2人を優しく包む。
人は一部を除いて過去には行けない。しかし、この2人は除かれた一部に属する。
「ご免なさい。手紙の内容を今教える事は出来ないの。でも帰って来たらちゃんと教えるわ」
頭を下げながら話す美智恵。それを見て忠夫は
「判りました。その代わり後でちゃんと教えてくださいよ?」
今度は忠夫が苦笑いで引き受けた。
「えっ!?本当に、良いの?」
あっさりと引き受けた忠夫に驚きを隠せない。自分の説明で簡単に納得してもらえるとは到底思えない。忠夫の考えが読めない。
「どうしてあれだけの説明で受けてくれたの?」
自分だったら絶対に受けない。其ほど危険で滅茶苦茶なお願いだったから、逆に真意を知りたい。そうしないと何時か忠夫を警戒する自分が見えたから。
「俺、出掛ける前とか何時も太陽や月に語りかけるんすよ。そしたらルシオラの声が聞こえる様な気がして。今日は言葉が違って、ヨコシマじゃなくて、パパって聞こえたんすよ。それだけっす」
恥ずかしそうに頬を掻きながら訳を話す。
「教えてくれてありがと」
忠夫の話を聞いて確信した。全て上手く行くと。ルシオラとの絆をちょつとだけ嫉妬したがこれで良かった。美智恵の表情は安堵に包まれている。
「でもどうして俺なんすか?お義母さんが直接行く方が確実だと思うんすけど?」
素朴な疑問だった。自分が時間移動出来る事は令子から聞いたんだろう。しかし、経験は断然美智恵が上のはず。なのに自分に頼むのが解らなかった。
「簡単な事よ。私も海外で生活してる時に、現地の神族に能力を封印してもらったの。今更解除なんてしてくれないわ。其より今、文珠は幾つ有るの?」
理由を告げると、直ぐに現状の確認をする。これから行う事を少しでも安全にする為に。
「今っすか?16個ですね。出力の低いのならもう少し創れますけどどうします?」
忠夫もGSを10年してるだけあって回転が速い。美智恵の問に答える時には仕事の顔に成っていた。
「失敗は出来ないから、ちゃんとした文珠30個は要るわね。それと、向こうで接触するのは私だけにして。出来るだけ不確定要素は無くしたいから」
淡々と説明する美智恵と真面目に聞く忠夫。
「後14個っすね。1週間で出来るから、移動は来週に」
「それは貴方に任せるわ。それと、向こうの私に手紙を確認するのは忠夫君が帰ってからにしてもらえるかしら?」
「了解っす。渡したら直ぐに帰って来ます。」
これで全て決まった。後は渡して帰ってくるだけ。安心したらお腹が減ってきた2人。
「お昼ご飯はまだよね?食べに行きましょ」
「良いっすね。何にします?」
昼ご飯の話をしながら店をでる2人。
1週間後忠夫は過去へ行った。
動く時間は戻せ無い。
戻せ無いなら、新たに創る。
美智恵の想いを忠夫に託して。
最後は強引過ぎたかなと思う寝落ち奉行です。
未来の話は次回も有りますが漸く現代に行ってくれました(笑)
手紙の内容はいったい!?
気になる方もそうで無い方も暫しお待ちを。
それではまた次回にお会いしましょう。