GS横島争奪大作戦   作:右近

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【予定は未定】
をまざまざと感じながら書きました。
何故こうなったかは、判りません
本編開始が殆どプロローグになってしまってますが、
第1話の始まりです。



第1話~未来との遭遇~

早朝校舎の屋上に閃光が走り、辺りを照す。

光は直ぐに消え、暗闇を取り戻すと光源だった場所に忠夫が現れた。

 

「ふぅ~。成功したかな?」

 

時間を早朝に指定したのは人目を避ける為だが、辺りが暗いため逆に判らない。今回の為に用意した電波式腕時計に目をやる。針がクルクルと回り、3時23分を指す。

 

「時間は許容範囲だな。後は、日付とここは屋上みたいだが、何処のだ?」

 

屋上に居るため、辺りを見回しても夜景だった。

忠夫が文珠で指定したのは【1998年1月16日3:30】で14文字。時間と日にちは文珠に文字を込めないと時間移動は出来ないが、場所は明確なイメージがあれば多少の融通はきく。場所指定も文珠で出来るが、文字数が劇的に増えて制御が限り無く不可能に近い。

(世界一長い地名は85文字でニュージーランドの丘の名前。日本でも25文字ある。)

前回は忠夫のアパートの部屋をイメージしたら、押し入れになり、今回は忠夫が通っていた高校の屋上をイメージした。否‼したはずだった。

 

「学校の屋上の様だが、母校じゃない。何処だ?」

 

屋上を調べた結果、学校の屋上で間違いないみたいだ。後はどの学校かが問題だが、東京タワーが見えるので東京なのは間違いない。身を乗り出して校舎を確認すると、なぜか目眩がする。

 

「まっ、まさか!?違うよな。俺は母校の屋上をイメージしたはずだ」

 

イヤ~な記憶が脳裏を過り、ふらつきながら後ずさると

 

─カチャン

 

踵から金属に当たった感触が伝わる。固まること数分、意を決して振り向き下を見る。

トランペットだった。

 

「なんでやー‼誰もおらん場所でボケなあかんのやー‼10年ひと昔やとおもてウケるとでも思ったんかー‼」

 

忠夫は宇宙意思(と書いて作者の無茶ぶりと読む)の不条理さに絶叫した。

 

「ハァ、ハァ、ハァ。デビュー当時のネタをやらされる芸人の気持ち、痛いほど判ったで」

 

近所迷惑になるので流石に吹きはしなかったが、場所は確定した。

六道女学院の屋上だと。

深層心理に学校の屋上=六女の屋上と刻み込まれていたんだと思いたい。その方がまだ救いようがある。

危険な時間移動までネタにされたら堪ったもんじゃない。今回はたまたまこうなったと想う事にした。気を取り直して

 

「場所も許容範囲だ。後は日付だけだな」

 

いつの間にか校庭に降りている忠夫が呟く。降りかたはは企業秘密だ。人が居ないのを確認し、塀を越え道路に出たところで鞄から服を出す。前回本人は気が付かなかったが、このままの格好ではバレるかも知れないとエクトプラズムスーツを着て女性に変身した。これなら美智恵と出会うまで気付かれないだろう。

 

「とりあえずは、コンビニに移動して日付を確認しないとね」

 

山田伝子ヨロシク女装のコツは成りきる事。話し方など基本中の基本。忠夫いや忠子はコンビニに向かって歩き出す。

 

東の空に太陽が顔を出し始めた頃、コンビニに着いた。

 

「ハァ~ハァ~車でしか行った事が無かったから道に迷ってしまったわ」

 

艶かしい吐息と気だるい表情。それに結構な距離を歩いた為白い素肌は仄かに紅く染まっている手で新聞取り会計をする。買った新聞は勿論デイリース○ーツだ。

そのまま近くの喫茶店に入り珈琲を頼み気が付いた。

 

「新聞買わんでもよかったやん」

 

ツッコミは関西弁になるが、乙女?なので声は小さい。さておき、珈琲を飲みながら新聞の日付を確認する。

 

「良かったわ。日付はバッチリね。後は、美智恵さんに渡すだけだわ」

 

多少の誤差はあったが、無事に時間移動出来た事に安堵し珈琲を飲みながら一息つく。

 

 

 

 

 

─トントントントン…

 

心地よい包丁の音とお味噌汁の香り。何時もならおキヌが用意しているが、今日は美智恵が作っている。

ひのめの夜泣きで中途半端な時間に起きた為、久し振りに令子にご飯を作ってあげようと張り切っている。

昨日は美神除霊事務所に泊まっていた。

 

何時もの時間におキヌが朝食の用意をしようとキッチンに来た。

 

「おキヌちゃんお早う。ご飯出来てるから食べてね」

 

「お早う御座います。あっ、作ってくれたんですね。すいません。」

 

「良いのよおキヌちゃん。たまには令子にも作ってあげたかったしね。それより、冷めないうちに食べてね」

 

「ハイ。頂きます」

 

おキヌに気が付いた美智恵が挨拶もそこそこに朝食を勧める。おキヌも申し訳なさそうにするも、理由を聞き、再度勧められると笑顔で食べ始めた。

 

 

 

おキヌが朝食を済ませ、家を出る頃に令子が起きてくる。美神除霊事務所の日常。

 

「あっ、美神さん。お早うございます」

「お早うおキヌちゃん。今から学校でしょ?遅れるわよ」

 

「あっ、いけない‼美神さん行ってきますね」

 

思い出したようにパタパタと音をたてて学校に向かうおキヌを見送りリビングに移動する令子。

 

「お早うママ。ひのめもおはよう」

 

ソファーで遊んでいるひのめを抱っこして美智恵の居るキッチンに向かう。

 

「あら、おはよう令子。今日も早いじゃない」

 

「ひのめの子守りをしてたら早くもなるわよ。本当はもっと寝ていたいけどね」

 

「規則正しい生活が出来て良かったじゃない。ひのめに感謝しなさいよ」

 

令子の愚痴を軽く返して珈琲を渡す。

アシュタロス事件の影響で仕事は無い。

平穏な1日になるはずだった。

 

 

 

 

午後3時を過ぎた頃、美智恵はお昼寝中のひのめを令子に預け、1人買い物に出掛ける。

事務所を出て歩いていると表情が変わる。魔族と闘い続けた日々。そして、アシュタロスと対峙した時の戦士の顔に。

 

(全然ダメ。霊力を隠しきれてないわね。それともわざとかしら?)

 

背後に感じる霊力は精密機械並のコントロール。それが常に一定量此方に流れて来ているのは何故かしら。完全に遮断が出来ない程の霊力なのか、其とも・・・

 

美知恵は何時もと違う道を歩いていく。

相手が格上で、自分を殺しに来たのなら人気の少ない開けた場所まで行き、振り向き様に精霊石をぶつけて怯んだ隙に『戦術的撤退』をと決める。

 

…カツ…カツ…カツ…

 

地面を蹴るヒールの音がこだまする。

人影も少くなってきた。この先に在る神社の境内を作戦決行の場所と決め、追跡者の霊力を改めて確認し歩く速度と速める。

 

…カツカツカツ…

 

速度を上げた美智恵が急に神社の境内に入り後を追っていた忠子はエクトプラズムスーツを脱ぎ境内に入るとそこには何かをお詣りしている美知恵が居た。

 

2人の距離が徐々に縮まる。

10m…9m…8m…そして5mまで接近したが害意が感じられない。意を決して振り返ると一人の男性が居た。

 

「貴方は誰?私に何のようかしら?」

 

見覚えのある顔のようだが、判らない。

男性はそんな私を見て、懐から1枚の免許証を私に渡す。

 

【対心霊現象特殊作業免許証 横島 忠夫】

 

尾行していたのは忠夫だった。状況の確認の為、事務所に来ていた。暫くして美智恵が1人で出てきたので、尾行を開始し、一定の霊力を美智恵に向けて誘導していた。

 

「えっ!?貴方、横島君なの!?」

 

横島忠夫だと名乗る男性。確かに横島君に似ているが、彼はまだ17才。しかし、目の前の男性はどう見ても30才前後にしか見えない。混乱している美智恵を見て

 

「10年後から来ました。おか…美智恵さんにこれを渡すために」

 

そう言って懐から1枚の手紙を取り出す。

 

「10年後?誰なのその差出人は」

 

「美智恵さん、貴女です。内容は俺も聞いてません」

 

手紙を受け取り、差出人を訪ねると未来から来たと言う横島が差出人が美智恵だと告げる。

 

「えっ?私!?」

 

予想外の名前に驚ろき、手紙の内容を確認しようとしたら

 

「ちょ、ちょっと待ってください‼未来の美智恵さんから、中身は俺が帰ってから見る様に言われてるんで後にして下さい」

 

慌てて制止する。

 

「理由は?」

 

信用した訳では無い。しかし、嘘を言っている様でもない。美智恵は手を止めて理由を訪ねる。

 

「不確定要素を減らす為と言ってましたよ」

 

横島の話を聞いて考える。

 

(内容は未来に関係する事ね。念の入れようからして単なる警告では無さそうだし)

 

警告なら今見ても問題無いし、横島も知っているだろう。それが無いのだから別の事のはず。美智恵が時間移動能力者じゃ無ければ今の段階で気が付かなかったかも知れない。

 

(まさか、未来の改ざん!?)

 

辿り着いた可能性に一瞬驚くも、直ぐに冷静になる。

どうやるかはまだ判らないが、そう考えると辻褄が合う。

自分達とは別の未来を創る。下手をすれば目の前の横島が帰る未来は無い。次元の狭間に行き着くだろう。未来の美智恵は過去に送った横島の帰る場所の確保と新たに平行世界を創る為の指示と結論付けた。

数分の沈黙だったが、横島は不安そうに此方を見ている。

 

「判ったわ。貴方はこれからどうするの?」

 

「用件はこれだけなので直ぐに帰りますよ。令…美神さんを宜しくお願いします」

 

そう告げると文珠を取りだし文字を込める。

 

【2007年4月18日9:00】

 

文珠が光だしそして、閃光を残して忠夫は消えた。

 

「全く、ホント横島君は何時でもトラブルを持ってくるんだから」

 

忠夫が居なくなった事を確認して手紙を見つめる。暫くしたのち、買い物の途中だったのを思い出して駅まで歩き始める。

 

 

 

 

 

 

横島霊能事務所に閃光が走る。応接室に居たタマモとシロは不意を突かれ光を直視してしまった。目を焼いたのは確実だろう。夜はに目が痛くて涙が止まらない事が確定した。

光が薄れ中心に人影がある。ジリジリと距離を詰める2人。チカチカする目に殺気を宿す。

忠夫はまだ知らない。この後、地獄の業火も生ぬるい制裁が待っている事を。

 

 

─しばらくお待ちください─

 

「いきなり何するんやー‼」

 

 

 

意識回復迄3600秒

 

 

 

「で、こんなはた迷惑な事してタダでは済まないわよ」

 

タマモの声で意識を取り戻した忠夫は体を起こそうとするも動かない。現在の状況を見てみると、体は呪縛ロープで厳重に縛られて、下腹部辺りをグリグと踏みつけられている。

 

「何でこんな事になったか判らんけど、ちょっと、カ・イ・カ・ン」

 

「誰がネタで終わって良いって言ったの」

 

忠夫を踏んづけている足に更に体重を掛ける。

 

「ゴッフ…なんでお前が知ってんだよ」

 

「私は現代の事もちゃんと勉強してるわよ」

 

ツッコミを切り返して勝ち誇った表情のタマモだったがそれは、忠夫のカウンタートラップだった。

 

「お前、古すぎるんだよ」

 

ただおのつうこんのいちげき。タマモは800のダメージをうけた。

 

「くっ」

 

忠夫のカウンターにタマモが怯んだ隙に

 

「タマモ其くらいにしないと話が進まないでござるよ」

 

シロが仲裁にでた。自分も文句は有るが、大切な師匠が踏まれているのをこれ以上放っては置けない。ロープをほどき、忠夫とタマモをソファーに座らせてお茶を淹れにキッチンに行く。

 

「何で急に現れたのよ」

 

当然の疑問を問い質す。

 

「お義母さんに頼まれて、過去に行ってたんだよ。てか、今は何時何分何秒地球が何回回った日だ?」

 

理由を教えた途端に何かを思い出したようにタマモの肩を掴んで逆に質問する。

 

「ちょっと、痛いって。落ち着きなさいよ」

 

忠夫の顔が目の前にある。息が掛かる位に。転生してから何度も助けられた。バカであけすけで。その裏にある優しさに。こいつなら良いかって想ったけど、遅かった。今なら絶対に自信があるのに、向けられるのは、妹想いの兄の優しさ。

 

「あっ、すまん」

 

タマモの顔が目の前にある。透き通る白い肌は紅く染まり、此方を見つめている。ちょっと前までは傾国の美少女だったが、忠夫にすれば幼かった。しかし、目の前のタマモは、紛うことなき傾国の美女。ハタチを越えれば多少の年の差(身体的)は問題ない。

 

2人だけの空間が形成されていく。忠夫の手は肩に置かれたままで、タマモの手が忠夫の首筋に巻かれていく。目を閉じて顔を近づける。誰も居ない(当事者視点)場所でこのまま最後までしてしまいそうな2人を止めたのはシロ…ではなかった。

 

『応接室にて熱源を感知 消火します』

 

後頭部に高水圧の一撃を受けた2人が勢いよくおでこをぶつける。幽幽も面白く無かったようだ。

 

「タマモ、気が済んだでごさるか?」

 

お盆にお茶を乗せたシロがジト目で見ながら言う。

 

「それより、今は何年何月何日なんだ‼」

 

まだ湯だっているタマモは答えられない。にやけているのを見ると、イケナイ妄想でもしてるのだろう。

 

「今日は2007年4月18日でござるよ。さっき過去から帰って来たって言ってたでござるが」

 

冷静に答えるシロ。この10年で武士道を修得出来たようだ。それで、時は今‼と先程から気になっていた事を聞く。

 

「良かったぁ~、ちゃんと帰って来れたみたいだな。あぁ、お義母さんに手紙の配達を頼まれてな。理由は聞いてないから判らんけど、決意のこもった表情だったんで受けたんだよ。それで、お義母さんは何処に居るか知ってるか?」

 

無事に帰れた事に安堵して、シロの疑問に答える。

 

「そうでござるか。美智恵どのは令子どののお見舞いに行ったでござるよ」

 

「病院か。今から俺も向かうとするか。ありがとなシロ」

 

シロから教えてもらった美智恵の居場所に出掛けようとしたら、事務所の電話がなった。

 

─ガチャ

 

「お電話有り難うございます。こちら横島霊能事務所です」

 

「あら、忠夫君なのね。無事に帰って来たのね 良かったわ。令子も明日退院だって言うし。それで、渡せた?」

 

「ホントっすか!?良かったー。令子の退院皆に知らせなきゃな。時間は何時になるんすか?」

 

美智恵の令子退院の知らせに忠夫はテンションがあがって、手紙の事は忘れている。

 

「クスッ、お昼3時よ。で、手紙は渡せたの?」

 

浮かれてるのが手に取る様に判る忠夫が可笑しく笑ってしまったが、時間を告げもう一度手紙の事を聞く。

 

「手紙っすね。(おキヌちゃんは遠いいから電話で伝えて、神父に冥子ちゃん、エミさんにも言わないとな。それにカオスとマリア、ピートにタイガー、雪之丞だな。かおりちゃんと魔理ちゃんには雪之丞経由で伝えてもらうとして、西条には言いたくないが、ピートと雪之丞に伝える以上バレるし、後で五月蝿いから、一応伝えるか。魔鈴さんに頼んで明日の夕方以降貸切りにしてもらってパーティーをしよう)ちゃんと渡せましたよ」

 

美智恵に伝えるほんの数秒の間に今後の予定を決めた。

 

「良かったわ。今日も依頼があるでしょうし、明日1時頃に皆で迎えに行きましょう」

 

「了解っす。それと、明日の夕方から退院祝いパーティーを考えたんすけど、場所は魔鈴さんの店で。ここなら体にも良いと思いまして」

 

「急にだから皆の都合があうか判らないけど、良いんじゃないかしら?先に場所の予約を済ませてから皆に伝えるのよ。私はもう少ししたら直接帰るから、ひのめが来たら、早く帰る様に言ってね。じゃあ、明日ね」

 

「じゃあ、明日1時に。令子には内緒にしてて下さいよ」

 

明日の打ち合わせをした後、魔鈴に貸し切りの予約と退院する事を電話で伝える。続けて、神父冥子エミおキヌには電話で、カオスは電話を引いていないので直接アパートに、その帰りにオカルトGメン事務所に出向き、ピートと雪之丞、仕方なく西条に明日のパーティーを伝える。ピートは卒業後念願のGメンに入り、雪之丞は7年前に美智恵が、最高の訓練施設と民間GSでは扱いきれない高難度除霊依頼があることを伝えスカウトした。某戦闘民族と自称する雪之丞は二つ返事でオーケーし、通信制高校在学中にGS免許を取得し卒業後正式に入った。

…えっ?タイガー?たぶんエミの事務所で肉の盾を続けているだろう。

 

 

 

 

 

翌日、美智恵はひのめを連れて事務所にやって来た。

 

「お早う忠夫君。シロちゃんにタマモちゃん。幽幽もお早う」

 

「お兄ちゃん、タマモおねいちゃん、シロおねいちゃん幽幽オハヨー」

 

「お早うございますお義母さん。ひのめもおはよう」

 

「おはようございまする」

 

「おはよう」

 

『皆さん お早う御座います』

 

一通り挨拶を済まし、ひのめは忠夫に抱き付き、早く行こうと急かす。

 

「それじゃ行きますか。幽幽事務所の事頼むな」

 

『判りました 皆さん気を付けて行ってらっしゃいませ』

 

一行は車で白井総合病院に向かう。

 

車中美智恵は

 

「着いたら皆に聞いてもらいたい事があるの。忠夫君が過去に行った理由を」

 

ひのめ以外、緊張の面持ちで頷く。

 

 

 

令子は退院の用意を済ませてベッドに腰掛けて忠夫が来るのを心待ちにしている。

 

(漸く退院出来るわー。身体も大分鈍ったし、今夜は久しぶりに現場に出よっと。あぁ、悪霊しばきたい)

 

病み上がりで早速除霊に参加しようと思う辺り、禁断症状が出ている。

 

「あら、もう用意出来てたのね令子」

 

「令子どの退院おめでとうでござる」

 

「お姉ちゃんが入院中はひのめがお兄ちゃんの事、しっかりと面倒見てたよ‼」

 

「ひのめ、病院なんだから大声出さない」

 

美智恵が先頭でシロ、ひのめが挨拶を、タマモはひのめを怒りながら病室に入り、最後に忠夫が入る。

 

「令子…無事に治って…良かった」

 

感極まり、今にも泣きそうな顔でゆっくりと近づき、令子を抱きしめて耳元で囁く。

 

「ちょ、なにするのよ!?」

 

予想外の行動に声を荒げ、耳まで真っ赤に染まる令子だが、離れようとはせずに、抱きしめ返すと落ち着きを取り戻す。

 

「あなた、心配掛けてゴメンね。もう大丈夫よ」

 

夫婦愛の成せる強固な結界を一気に作った2人を、嫉妬の視線が3つと呆れた視線1つで穿つも壊れる事なく、無差別に見せつける。流石にひのめも動けない。これ以上展開の遅延は出来ないと判断した美智恵。

 

「やれやれだぜ。続きは家でしてもらえるかしら?」

 

背後には【星の白金】のビジョンが結界を殴っている。

 

ビジョンが結界を破壊した時、漸く2人は周囲の視線に気付き、名残惜しそうに離れる。美智恵に星形のアザがあるかもしれない。

 

「2人共気が済んだ?皆に話があるの。忠夫君は判るわね。手紙の事よ」

 

苦笑から一転、真剣な表情で語りだす美智恵。忠夫とシロ、タマモは漸く理由が聞けると息をのみ、令子とひのめは訳が判らないが、周囲の雰囲気に息をのむ。

 

「令子とひのめには知らないみたいね。1週間前に忠夫君に手紙の配達を頼んだのよ。内容は…ルシオラの事」

 

忠夫と令子は驚き、シロ達は新しい敵?の名前と判断し険しい表情になる。

 

「受取人は過去の私よ。あなた達を見てるとルシオラの事でお互いにわだかまりが在るのが判ったの、このままなら何時か壊れそうだったから、お節介かもしれないけど」

 

忠夫と令子は俯く。何となく判っていたが怖くてちゃんと話せなかった。

 

「手紙には、ルシオラが生き返る可能性の高い方法を書いてあるわ。過去の忠夫君にルシオラが消えた直後に行って、飛び散った霊破片を集めて持ち帰り、手元にある破片と併せて生き返らす。教えなかった理由もこれよ」

 

静かに話す美智恵。忠夫ははっ!と顔をあげ、令子は不安な表情で忠夫と見つめる。

 

「この方法は今でも可能でしょうね。でも、令子と結婚した貴方はルシオラを幸せに出来ると思う?逆も同じ。結局3人共傷付くだけなの。私はそんな結末は望まないわ」

 

シロ達も話の重さに口をつぐむ。忠夫は考えるまでもなく再び俯く。

 

「過去の私がどうするかは判らないし、確認の方法が無いの。手紙を読んだ時点で平行世界に成ったはずだから」

 

憂いを帯びた表情で語る美智恵に令子は

 

「それって手紙を渡した時点で平行に成る可能性もあったって事よね?忠夫にそんな危険な事させないでよママ‼」

 

ルシオラの事で不安になっていた令子だが、忠夫が帰ってこれなかった未来に恐怖を感じ、美智恵に泣きながら怒りをぶつける令子。

 

「…知らなかったとは言え、ごめんな」

 

令子を優しく抱きしめ、悲しませてしまった事を謝る忠夫。こんなにも自分を愛してくれる妻を大切にすると改めて心に誓う。

 

「ゴメンね令子。でも貴女も判っていていたはずよ?何時かはケリを着けないといけない事は」

 

諭す様に優しく話しかける。

 

「確かに、令子とルシオラ2人を幸せにする事は出来ないっすね。それに今の俺は令子が居るだけで十分幸せっす。おかしな話ですけど、ルシオラは自分以外の自分に任せます。令子、これからも宜しくな」

 

俯いていた忠夫が顔をあげ言い切った。その顔に迷いは無い。

 

「あなた…」

 

もうルシオラの事で不安にならなくていい。忠夫の言葉に泣き止み、そのまま顔を見る。何時もより優しく、頼もしい夫に思わずキスをした。

 

(今はまだ我慢の時でござる)

 

(まだまだこれからよ)

 

(お兄ちゃんは私のものなんだから)

 

それを見せつけられた者の感想である。

 

 

「あなた達、さっきから家でしなさいって言ってるでしょ。用意は終ってるんだから、早いこと退院して魔鈴さんの店で、退院祝いするんでしょ?」

 

「えっ?」

 

美智恵の言葉にまたもや驚く令子。今日は悪霊をしばいて、追加で忠夫とコウノトリを喚ぶ儀式をしようと決めていたのだ。

 

「忠夫君の発案よ。令子を驚かそうって内緒にしてたの」

 

「そっ、そうなんだ。ありがと」

 

悪霊はしばけなくなったが、儀式は出来るからこれでハッスルしようと予定変更。

 

─しかし、運命の悪戯かその願いは叶わない─

 

「魔鈴の店なら身体にも良いから今日は一杯食べるわよ‼病院食は味が薄すぎて食べた気がしなかったからね」

 

令子を先頭に正面玄関を出て、高らかに宣言したその時

 

「うっ、ぎもぢわるい。でっでるぅー」

 

吐き気を催し、トイレに走る令子。一瞬の出来事に全員固まったが、いち早く美智恵が後を追う。

 

「令子は私が付いてるから、あなた達は先に行って。後で電話するわ」

 

走りながら伝える美智恵の言う通り、一行は魔鈴の店に向かった。

 

 

【魔法料理 魔鈴】

ここは、料理と魔法の組み合わせで、美味しくて身体にも良く値段もお手頃と人気の料理店。

店主の魔鈴とは最初こそ令子の一方的な敵意があったが、結婚してから和解?し、今では令子が料理を教えてもらいに行く事もあるほど忠夫達行きつけの店になった。

 

パーティー開始時間を少し過ぎて忠夫達が到着した。おキヌは流石に来れなかったが、他は全員集まっている。

 

「やあ、遅かったね」

 

「主催者が遅れてはいかんじゃろ」

 

「私を待たせる何てどういうワケ」

 

遅れた事に文句を言う者や、

 

「わしゃーもう腹が減って死にそうじゃけん」

 

「挨拶とか要らねーから喰っちまおうぜ」

 

「タイガー、もう少しなんだから、ちょっとは我慢しろよ」

 

「雪之丞もですわ。みっともないんですから」

 

早く料理を食べたい者、それを怒るものなどで店内は賑やかである。

 

「いや~遅れて悪かった。ちょっとドタバタしてな」

 

忠夫が遅れた事を謝っていると、

 

「あれ~?令子ちゃんは~どうしたのぉ~?」

 

主役であるはずの令子が居ない事に冥子が気付く。

 

「令子ちゃんはどうしたんだい?横島君。場合によっては魔鈴君の異界で語り合うことになるが。主に拳で」

 

未だ、令子に未練がある西条が忠夫に問い詰める。

 

「何で拳なんだよ。病院を出ようとした時、令子が急に吐きそうつったから、お義母さんに言われて俺達だけ先に来たんだよ」

 

仕方無しに令子が居ない理由を伝える。女性陣は、何があったのかとヒソヒソと喋っている。店に電話が掛かったのはその時だった。

 

─カチャ

 

「お電話有り難うございます。魔法料理魔鈴です。…横島さんですね、少々お待ち下さい」

 

「横島さん、美智恵さんから電話ですよ」

 

電話は、美智恵からだった。魔鈴に呼ばれて電話にでる。

 

「お義母さん、令子は大丈夫ですか!?」

 

急に吐きそうだと言った令子が心配だった。まさか、血清が効かなかったのでは?と頭を過る。

 

「ええ、はい。って、えぇぇぇぇぇぇえ‼マジっすか!?はい、有り難うございます‼」

 

忠夫の声に店内は静かになる。

電話を終えた忠夫に視線が集まる。皆、見当はついているが、やはり本人の口から聞きたいのである。

 

「え~っと、令子は大丈夫みたいです。検査の結果、妊娠が確認されました。6週目だそうです」

 

耳まで真っ赤に染まった忠夫が報告すると

 

「横島さん、おめでとうございます‼」

 

「横島さん・マリア・嬉しい」

 

「横島さん、良かったですね」

 

「忠夫、やったじゃない」

 

「師匠、拙者感動でござる‼」

 

「お兄ちゃん、おめでとー」

 

集まった皆からの祝福の言葉に、自分が父親になる事を少しだけ実感していたら

 

「話は聞かせてもらったで。横っち、やったやないか‼」

 

「えっ、銀ちゃん!?何で!?」

 

銀一の登場に店内は騒然となる。勝ち誇った顔の銀一の後ろからおキヌが顔を出した。

 

「エヘヘ。横島さん、おめでとうございます」

 

「えっ?おキヌちゃん!?何で一緒に?どう言う事だよ銀ちゃん?」

 

おキヌは実家に居ると思っていただけに驚く。そんな忠夫をしてやったりと頷くおキヌと銀一。

 

「驚く事あらへんやろ。今日、親に紹介しただけや」

 

何事も無いように言う銀一に全員が思考停止した。

 

「………なっ、なんやってーーーー‼」

 

忠夫の叫び声が響き渡る。小さな奇跡の夜に。

 

 

 

とある胎内では

(まさかおキヌちゃんに私の転生オチを、未来では初登場だからって自分の熱愛発覚オチで上書きするなんて思ってもみなかったわよ。でもこれではっきりとしたわ。最大の敵は令子じゃなくておキヌなのね。今回は私の負けね。でも平行世界では私が勝つわよ‼)

姿は無くても意識はしっかりとあるルシオラだった。




今回は頑張った(笑)寝落ち奉行です。
実は、生き返る方法が一番最初に思い付いたんです。
(もう1つ考えていますがそれはまたの機会に)
次に、美智恵をいい人にしようと考えた話なんです。
最初は、アシュ戦直後の美智恵が横島に教える予定で、未来部分は無かったんです。でも、未来横島が文珠で時間移動した事を令子と横島は【忘】の文珠で記憶から消してるので、美智恵が知っているのはおかしいと思い、
それなら未来の話を使えば良いなと。
あの後、美智恵に話してるだろうし。
横島を過去に行かせたのは、落雷なんて滅多にないし、アシュ戦後もうしないって言ってるので決定。
タマモとシロは書いているうちに原作とは逆の性格になってしまいました。お色気担当はタマモの方がしっくりきますから。
最後のおキヌちゃんですが、六女3人組で唯一彼氏が居ないので、救済措置です。
未来編?は暫くお休みで、(未来の話も考えてますよ)次回から原作アフターになります。
それでは、次回まで暫しお別れを
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