漸く話が動き出し始めます。
ルシオラが生き返るまでまだまだ先は長いですが
第3話のスタートです。
※誤字脱字は、見つけ次第修正していますが、発見したら、気にせず指摘してください。
AM10:00
ひのめが寝ている間にオカルトGメンのオフィスに出向き、書類の整理、確認制作をする。その殆どはアシュタロス事件関連だが、それだけではない。令子から聞いた南武グループの事案は今も内偵が続いている。リゾート開発部門内の心霊兵器開発をしていた部署は令子達によって潰れたが、アシュタロス事件のどさくさに紛れ、南武グループから切り離されていて全貌は掴めていない。
「こんなに仕事が山積みなんて、西条君が私を復帰させたかったわけね」
美智恵が復帰してから幾分片付いたが先は長い。珈琲を飲み一息入れて次の書類を手に取る。
「これは西条君に回して、こっちは私でも大丈夫ね」
次々と仕分けをしていく。そして南武グループの中間報告書に目をやる。
「どうやらクロだったようね。ここから先はGSじゃないと難しいわ。西条君と人選をしないと」
美智恵は南武グループの書類を手に、西条の席に向かう。
その頃横島は、生徒指導室に呼ばれていた。
「横島、この前の事件を公休にしても出席日数不足で留年は決定だ。残りは休んでも構わないぞ」
「はぁ~、やっぱどうにもならないっすかぁ~。こりゃオカンに殺されるな」
担任に留年を告げられ、命の危機を洩らす。
「今回は流石に無理だな。授業態度やテストの成績が良ければまだ救いようは有ったかも知れんが、殺されんようにな。生き延びたなら4月にまた会おう」
「俺は軍人か‼」
担任も自業自得だと言わんばかりに、4月の再会を願う。横島もツッコミつつも、諦めた表情で生徒指導室を出て教室に向かう。
「横島さんどうでしたか?」
教室に着き席に座ると、ピートが尋ねてきた。
「アカン、留年が確定した」
「横島サン。ワシは、ワシはー‼」
「横島クンが留年か~。これも青春かな?」
横島の留年にタイガーは泣きながら叫び、愛子は何時も通りの台詞で慰め?る。除霊委員の面々は、横島が呼び出された事で薄々気が付いていた。
「留年はともかく、このままじゃオカンに殺られる。今からどっかに避難せんと」
横島はそれだけを言うと教室から出て行った。仲間の不安げな表情を残して。
一方美智恵は西条と潜入捜査の人選を始める。
「令子の時、既に人造魔族の製造技術は出来上がっていたみたいね。並のGSじゃ不測の事態に対応出来ないわ」
「そうですね。一流どころは顔が知られている者が多いですし難しいですね」
美智恵達の人選は難航していたが、ふと思い出す。
「伊達君はどうかしら?小竜姫様の依頼をこなして、GS協会のブラックリストから外れてるわ」
「能力的には問題ないですが、彼は無免許のモグリです。そんな人物を使ったのが世間に知れ渡ったら、今のバッシングどころの騒ぎじゃ済まないですよ‼」
美智恵の人選に声を荒げる西条。魔族との戦闘を想定すれば適任だが、モグリであり、過去に魔族と繋がりがあった雪之丞を使うにはリスクが大き過ぎたのだ。
「それも想定内よ。もし彼に依頼した事が洩れても、更正の為、オカルトGメンの指揮下に置いている事にすれば良いわ。道を誤った者を導くのも仕事よ。それに、今回の捜査で成功すれば、私の弟子としてオカルトGメンの臨時職員にし、高卒資格とGS免許を取ってもらい正規職員にすれば問題ないと思うわ」
美智恵は雪之丞の進路込みで今回の人選を考えた。
「ふぅ~。先生には敵いません。それで伊達君への依頼はどうしますか?」
美智恵の考えに多少の強引さを感じながらも了承し、最後のツメに入る。
「そうね、出来るだけ早いほうが良いから、連絡が着いた方が依頼しましょう。詳細は直接会ってからになるわね」
話を終えて時計を見る。時刻はお昼12時を過ぎていた。
「もうこんな時間なのね。ミルクの時間だからこれで帰るわ。後は宜しくね」
美智恵は席を立ち、手を振りながらオフィスを後にする。
「先生、判りました。有り難う御座います」
西条は美智恵を見送りながら礼を言った。
早退した横島は、自然と美神除霊事務所に向かっていた。
「あぁ、美神さんにタイガーは進級して、俺は留年したのを知られたら、時給は下がるしシバかれる」
横島はこれから起こる惨劇を口に出して嘆いているが、足は事務所に向かっている。
「アカン。どうやっても死亡確定や。美神さんとオカンに殺られる。『横島忠夫は2度死ぬ』なんて洒落にならん」
頭で何回シュミレートしても死亡フラグがたつ。このまま逃げようかと思ったが、目の前には美神除霊事務所がある。
(辺りに人は居ない。今ならまだ間に合う‼)
脳内会議では、全会一致で緊急離脱を採決したが、体が動かない。頭と体の攻防でその場に硬直する。
「あら、横島君じゃない。入り口で固まってどうしたの?」
オカルトGメンから出てきた美智恵に見つかってしまった。
「たっ、たいひょう!?いっいえ、なっ何でもありませんでアリマス」
思いっきり挙動不審な横島の言葉に、また何かやらかしたと考えた美智恵は
「そこだと怪しまれるわよ。何をしたのかは知らないけど、私も居てあげるから素直に謝りなさい」
横島の背中を軽く叩き、事務所に入る。美智恵に見つかってしまった横島は退路を断たれ死地に向かうしか選択肢は無かった。
「ただいま令子。ひのめ、良い子にしてまちたかぁ~?そろそろご飯ですよぉ~」
「ママ、いきなりやるとキャラ壊れるわよ。あら、横島クン。今日は学校に行くって言ってたのに早いじゃない」
美智恵の豹変を冷静に突っ込みつつ、後ろから入ってきた横島に、予定より早く来た事を尋ねる。
「オッ、オハヨウゴザイマス。ミカミサン」
「あんた、挙動不審よ。多分怒らないから話なさい」
横島の挨拶だけで何かあると思った令子が問い詰める。
「私も聞きたかったのよ。どうして事務所の前で立ち止まってたの?」
美智恵にも訳を聞かれて、逃げ場を失った横島が話し始める。
「ホントに怒らないで下さいよ?怒ったら美神さんの有る事、無い事言いふらしますよ?」
「早く話しなさい‼」
手に取った神通棍に霊力を込めて、横島の戯れ言を無視する。
「じっ実はですね、学校の事なんですが…スンマセン‼留年してしまいました‼」
額を床に付ける綺麗な土下座を披露しながら謝る横島。
「あんたの留年でどうして私が怒らなきゃいけないのよ」
留年など令子にはどうでも良かったのだが、横島は余計な事を言ってしまう。
「いや、タイガーとピートは進級したんすよ。同じ様に休んでるはずなのに、俺だけ留年なんです」
─ピキッ
「へぇー、タイガーは進級したのね。エミの丁稚は進級したのね」
目の笑ってない笑顔で横島に近づく令子。背後に蒼白い炎を纏い、持っている神通棍は膨大な霊力で裂けて多条鞭になっていた。
「このバカ横島ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ‼」
「美神さんのウソつきぃー‼怒らへんって言ったやんかー」
令子の多条鞭が横島を襲う。横島は必死に避けながら叫ぶも、一本一本が、まるで意思を持っているが如く連携攻撃を仕掛ける。
─ビシッ
「ぎゃぁー‼」
─バチン
「うわぁー‼」
─ベチン
「堪忍やー‼」
壮絶な折檻の横で美智恵は考え事をしている。
(留年するなら、残りは学校に行かなくても良いわよね。少しでも修業が出来ればルシオラを生き返らせる事が早まるかも知れないわ。場所はやっぱり妙神山ね。理由は、留年した罰に、心身共に鍛え直すと言う事にしましょう。ルシオラの事はまだ言えないから)
考えが纏まり、横島に話そうと前を見ると、そこは、凄惨な事件現場だった。
「ちょ、ちょっと令子、それくらいにしなさい。横島君でも流石に死んでしまうわよ‼」
余りの光景に一瞬怯むも、直ぐ冷静になり、仲裁に入る。
「だってママ、こいつが私に恥をかかせるのよ‼エミに会ったら何て言われるか‼」
美智恵に止められるも未だ怒りか収まらない令子。美智恵は言い聞かす様に
「令子が相場並に時給を渡せば横島君も学校に行けて、留年なんかしなかったかも知れないでしょだから私に任せて。悪いようにはしないわ」
「うっ、判ったわよ。あんたもそれでいいわね」
「しっ死ぬかと思った。それでいいです」
美智恵には逆らえない令子は、不服ながらも従い、横島は折檻から逃げれれば何でも良かった。
「で、どうするのママ?」
「横島君には4月まで、妙神山で修業をしてもらいます。小竜姫様の指導の下、心身共に鍛え直します。それと令子。貴女も横島君の時給を学校に支障の無い程度に上げてもらいます」
「えっ!?何で私もなのよ‼」
美智恵の提案は令子には受け入れがたいものだった。
「当たり前でしょ。最初はそうだったかも知れないけど、貴女が時給をケチったりするからよ。それとも横島君と一緒に小竜姫様の修行を受けたいいの?」
「そっそんな!?」
令子は返す言葉が見つからない。確かに霊能力に目覚めてからは、経費の節約に繋がっていたし、本人は気が付いてないが、好きな男の子にイジワルをしてしまう女の子の気持ちもあったり、ヒャクメに妨害されたりと、昇給を言い出す機会を逃していたが、それでも美智恵の口から横島の昇給を言われるかとは思っていなかった。
「しゅ、修給っすか?」
横島もまさか修業しろと言われるとは思いもしなかったし、自分の給料まで言及し、それも昇給だとは信じられない。言葉は造語で、思考は停止してしてしまった。
「2人共判ったわね。横島君は明日妙神山に、令子は今月分からです」
美智恵は念を押すと、ひのめのミルクを作りにキッチンへ向かう。残るは増収に驚いてる横島と、減収に驚く令子の2人だけだった。
オカルトGメンのオフィスに居る西条は、雪之丞に依頼をする為、方々に居場所や連絡先を聞いていた。
「彼はいったい何処にいるんだ。神父やエミ君も知らないとなれば、事件の時一緒に襲われた六道女学院の弓かおり君なら知っているかな」
事件の経過が書かれたファイルを見ながら六道女学院に電話をする。
─カチャ
「六道女学院です」
「もしもし、オカルトGメンの西条と申しますが」
「お世話になっております。私は教師の鬼道ですが、今日はどう言ったご用件でしょうか?」
「生徒の、弓かおりさんに用がありまして」
「弓は私のクラスの生徒ですが、弓がどうしました?」
鬼道はまた、弓が事件に巻き込まれたと思い訳を尋ねるも、西条は短い言葉で否定する。
「いや、彼女に連絡をとってほしい人物がいまして」
雪之丞の名前と依頼内容は伏せて鬼道に話す。
「そうですか。今から呼びますので暫くお待ちください」
納得はしてないが、相手がオカルトGメンなので、弓を呼び出す。暫くして弓が電話にでる。
「お電話変わりました。弓です」
「オカルトGメンの西条です。今日は貴女に連絡してほしい人物がいまして」
弓はオカルトGメンが何用だと思いながら電話にでる。西条は先程と同じ様に話を切り出した。
「先の事件の時、一緒にいた伊達雪之丞君に連絡してほしいんだ」
西条は雪之丞と弓が付き合っているとは知らず、事件当日に一緒だった事から、弓なら連絡先を知っていると思い、六道女学院に電話をした。弓が六道女学院の生徒と言う事は事件の報告書にも書いてあり知っている。
「ゆっ、伊達さんにですの!?」
彼氏の名前が出るとは思っていなかった為に、何時もの呼び名で話しそうになったが、なんとか名字でとどまる事が出来た。しかし、顔は真っ赤になっている事は西条には判らない。
「そうなんだ、彼に依頼したい仕事があってね。我々も調べたのだが、モグリの彼の連絡先を簡単には掴めなくてね。早急に片付けたいヤマなんで君に連絡をしたんだ」
弓に伏せて話しても、雪之丞から直接聞くのは判っていたので、ある程度は理由を伝えて話す西条。
「判りましたわ。お急ぎの様なので、直ぐに連絡するように伝えますわ」
「すまないね。そうしてもらえると有り難いよ」
西条は、礼を言うと電話を切り、雪之丞からの連絡を待つ間に、残っている報告書の制作を再開する。雪之丞から電話が来たのは30分後だった。
「こちらオカルトGメン西条です」
「よう、西条のダンナ。俺に仕事を頼みたいって?」
「伊達君か。そうなんだが今何処にいる?直接会って内容を伝えたいんだが」
雪之丞は早速仕事の話を切り出す。西条は、慌てるなと言わんばかりに、居場所を確認する。遠ければ電話越しに依頼も仕方ないが、出来れば会って話したい。
「今か?今は都内にいるから、そっちに行くには、後10分後だな」
雪之丞は直ぐにでも仕事を受けたいらしく、西条に到着時間を告げる。
「判った。じゃあ10分後だな。待っているよ」
雪之丞のせっかちに苦笑いを浮かべつつ、待つ事を告げて電話を切る。そして、雪之丞への依頼内容を確認しながら到着を待つ。
「待たせたな西条のダンナ」
丁度10分後に右手を挙げながら雪之丞がオカルトGメンに入ってきた。
「いや、時間丁度だよ伊達君。それより急な依頼で悪かった」
「気にするな。こっちも暇だったしな。それで依頼ってどんな内容だ?」
西条は急に呼んだ事を謝るも、雪之丞は全く気にもせずに依頼内容を尋ねる。
「そこまで慌てなくても良いのだが。まぁ、その方が話が早いな。これが今回の依頼書だ、飲み物を取ってくるからそこに座って目を通しててくれ」
少し呆れ顔の西条は、雪之丞に依頼書を渡してソファーに座らせる。自身は飲み物を取りに奥の部屋に入る。
「依頼内容はどんなものだ?」
雪之丞は座ると、依頼書に目を通す。
「依頼は潜入だな。場所はN県にある商業施設で、相手は南武グループか」
概要を見終わった時に西条が戻ってきた。
「ダンナ、どうして南武グループ相手に潜入なんてするんだ?場所も商業施設だしな」
戻ってきた西条に早速質問をする。西条は、珈琲をテーブルに置き詳細に話し出す。
「南武グループは以前、心霊兵器を開発していて人造魔族まで開発に成功している。その時は美神除霊事務所にちょっかいを出して自滅したんだが、最近になってまた兵器開発を再開した様だ。前のデータ等も残っているだろうし、実用化は目前と我々は考えている。そこで君には、開発の証拠を取ってきてもらいたいのと、出来れば実用化の延期に繋がる工作を頼みたい。手段は問わないが、開発施設が商業施設の地下なので、一般人の被害は出さない様にしてくれ」
「いいぜ。それなら今から行った方がいいな」
西条の説明に考える事無く了承し、直ぐにでも出発しそうになる。バトルの匂いにココロオドル雪之丞だった。
「ちょ、ちょっと待ってくれ‼それは有り難いが、一応は役所からの依頼だ。ちゃんと報酬の説明と書類にサインをしてからにしてくれ」
慌てて雪之丞を引き留め、報酬の話をする。
「さっきも言ったが、こちらは役所だから十分な金額は出せない。その代わりに成功報酬は、君のGS資格修得の手助けと、後はオカルトGメンへの就職だ」
「はぁ?GS資格の手助けは有り難いが、オカルトGメン就職に何のメリットが有るんだ」
西条の提示した報酬に疑問を投げ掛ける。オカルトGメン就職に雪之丞は何のメリットも感じないのだ。
「確かにそう思うかも知れないが、良く考えてくれ。オカルトGメンは、アシュタロス事件の様な大規模霊症に備えなければならない。その為に、都庁地下にある訓練施設の常時使用許可がおりた。勿論オカルトGメン職員だけだ、民間GSは使えない。その施設で横島君は更に強くなり、アシュタロス戦の主戦力に成ったんだ。どうだろう君もそこで修業したいと思わないか?」
西条は美智恵が言った通り訓練の話をし雪之丞の反応を見る。
「そうか。横島が更に強くなった施設を何時でも使えるのか」
西条の話に雪之丞は、冷静を装い独り言を言うが、身体の奥からフツフツと込み上げてくるモノに自然と震えている。それを見逃す西条では無かった。
「それに、ピート君も高校卒業後はオカルトGメン希望だし、公務員は社会的地位が高い。今後彼女が出来て、両親に挨拶をする時、無職や、民間GSよりも受けは良いと思うが」
畳み掛ける様にピートの事と、社会的地位を持ち出して決めに掛かる。
「オカルトGメンは高卒資格が要るんだろ?俺は中卒だぞ」
陥落寸前の雪之丞。決定打は彼女の両親に受けが良い事だったのは極秘である。
「まだ判らないが、こちらで手配しよう。ピート君も途中から高校に入っているし、何とかなるだろう。言い忘れていたが、GS試験時の為に、僕か美神美智恵っと言うより、隊長の方が判りやすいか。のどちらかが君の師匠になるがどうだろう?」
全て話し終えた西条。後は雪之丞次第になった。
「判った。それでいい。じゃあ、後の事は頼んだぜ。俺は今から行く」
書類にサインをし、それだけを言い残して、雪之丞はオカルトGメンから出ていく。幸せな未来を想像しながら。
横島を差し置いて次回は雪之丞の話になります(笑)
南武グループに潜入する事になった雪之丞に待ち構えているのは!?
次回、俺は雪之丞‼─結婚なんてまだ考えていないんだからね‼─(嘘)をお楽しみに