GS横島争奪大作戦   作:右近

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皆様、ご無沙汰しておりました。寝落ち奉行です。
第5話から約8ヶ月振りですが、何とか更新出来た事にほっとしています。

それでは、第6話スタートです。


第6話~潜入中~

魔力の上昇に比例して勘九郎の身体も大きくなり、顔もより禍々しくなる。もう人間だった面影はない。

 

雄叫びが終わると先程よりふた回りほど大きくなった勘九郎は、雪之丞を睨み付ける。

 

「イイキニナルナヨムシケラガ…」

 

右腕を振り上げ殴りかかるも、雪之丞は半身でかわす。

 

「そんな攻撃当たるかよ」

 

半身で避けた反動を使い今度はみぞうちにカウンターを入れる。

 

「ぐぉぉっ!?」

 

身体をくの字に曲げ後ずさる勘九郎。ここぞとばかりに雪之丞は畳み掛ける。

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラァー‼」

 

残像が見えそうな程のラッシュに後退を続ける勘九郎だったが、そのままの体勢から強引に左腕を横凪ぎにする。

 

ーブン‼

 

「なっ、うっぐはっ」

 

攻勢に出ていた雪之丞が避けられるはずもなく、側頭部に直撃し吹っ飛んだ。

 

「グッグォォォォォ‼」

 

雄叫びを上げゆっくりと近づく。雪之丞も頭を押さえながら立ち上がる。

 

「頭がクラクラしやがる。次喰らうとヤバイな」

 

軽い脳震盪で立っているのもやっとな雪之丞に勘九郎の豪腕が迫る。

避けるにも身体は動かないし、ガードするにも力が入らない。

 

(こうなりゃ一か八かだな)

 

タイミング見計らって、両手で勘九郎の腕を払いのけ足を掛ける。

ードーン‼

 

轟音と共に土煙が巻き上がる。その音でピートは漸く辺りを見渡す。

実は、勘九郎の姿を見てから今まで、主に祈りを捧げていた。周りが見えないほど真剣だった為に気が付いていなかった。

 

「雪之丞‼」

 

闘いの中心地であろう場所を見て相棒の名前を叫ぶ。次第に土煙が消えていくと、雪之丞が立っていた。

 

「はぁ、はぁ、何とかなるもんだな」

 

肩で息をしている雪之丞の足下には、顔面を床にぶつけた勘九郎が横たわっている。

幾分マシになった体で距離を取り、勘九郎を注視している。

自他共に戦い好きを認める雪之丞は、咄嗟に合気道の真似事をしていた。

強く為るための努力は惜しまない雪之丞は、色々な武術や武道の本を読んで知識だけはある。実戦でいきなり出来たのは、本人の格闘センスの良さに他ならない。

 

「やったか!?」

 

「いや、受け流しただけだからな。ダメージは殆ど無いハズだ」

 

ピートの期待のこもった問いかけにも、冷静に答えた後、軽くストレッチをし、呼吸を整えて改めて構えを取る。

勘九郎も起き上がり首を傾げる。何が起こったか判らない様子だが、やはりダメージは無さそうだ。

 

「ぼさっとしてんじゃねぇーよ」

 

起き上がるのを待ってたかの様に距離を詰める。

 

「グガァァァァァァァー‼」

 

勘九郎も、近づいて来る雪之丞を迎え撃つも、直線的な攻撃の為、避けられてカウンターを喰らう。

 

ーバーン‼

 

「ガァァッ」

 

「こっちだ」

 

ーズドン‼

 

カウンターを決めた雪之丞は、すぐ右に回り込んで脇腹

を殴る。勘九郎が反撃する時には、その場から離れていて空を切る。

 

「よそ見してんじゃねぇーよ」

 

ーズバン‼

 

「雪之丞…いつの間に…」

 

今までの正面からの殴り合いでは無く、流れる様な動作

で攻撃をかわしカウンターを決めていく雪之丞にピートは軽い衝撃を受けた。その動きは見事に柔よく剛を制すを体現している。

 

 

「グォォォォォォォォォォ‼」

 

(言葉すら忘れて…こんな奴じゃなかったのにな…)

 

苛立ちを発散する様に吠える勘九郎を見てふと白竜会時代を思い出した。

 

 

 

『チッ、またかよ』

 

『雪之丞、アンタの攻撃は単調なのよ』

 

『わかってるよ。だから変えてただろ』

 

『バカねぇ~、攻撃のリズムや切り替えのタイミングが毎回一緒なのよ』

 

『んなこと言ったってよ』

 

 

 

(あの頃のアイツは何時も先を読んでやがったな)

 

叫び終えると雪之丞に突進する勘九郎からは知性の欠片も感じられない。あるのは魔族の本質、闘争と殺戮だけだった。

 

(自分で言ってたじゃねーか)

 

勘九郎の突進を半身でかわすとみぞうちにカウンターを入れる。

 

ーゴフッ

 

動きを止め紫色の血を吐く勘九郎を見て、哀れみを覚えながらもジャンプする。

 

(単調な攻撃じゃダメだってな)

 

求めていた物の違いで、対極の道を選んだかつての仲間。最後は自分が幕引きをするのが筋と心に決め、渾身の一撃を放つ。

 

「GSキーーック‼」

 

 

 

ーズドォォォォォン!!

 

 

 

 

雪之丞の一撃が勘九郎の背中に当たり爆煙を吹き上げる。

 

 

 

ーカタカタカタ

 

「今日はやけに騒々しいわね」

 

窓辺に腰かけて異界の夜空を眺めている。

 

「向こうで何か光ったニャン。魔鈴チャン行ってみようだニャン」

 

使い魔の黒猫はそう言うと箒を取りに部屋を出た。

 

「待ちなさい…って、もぉ~仕方ないわね」

 

手に持っていたティーカップを置き部屋を出る。

 

 

 

爆煙が収まると、雪之丞は勘九郎を見下ろしている。魔装術は解除され、一撃を受けた背中には穴が開いており、ゆっくりと消滅している。

 

「い…いい…」

 

「勘九郎!?」

 

勘九郎の声に驚きながらも、そっと体を仰向けにしてやる雪之丞。

 

「いい…一撃…だった…わ」

 

「意識が戻ったのか!?」

 

「ま…魔族…因子が…砕け…た…から…」

 

「そうか…すまん」

 

勘九郎の言葉に、こんな形でしか救えない事が申し訳なく謝る。

 

「ア…ナタ…が…気にす…る事…は…無い…わ」

 

「…」

 

「魔…族に…なったの…も…わた…しの…意思」

 

勘九郎は消え行く体で懸命に話す。雪之丞に出来るのは聞く事だけだった。

 

「私…は…まだ…マシ…よ…自我…が…消え…る…前に…復活…出来…たから」

 

「……」

 

「気を…付ける…のよ」

 

雪之丞が勝ったと確信して、ピートもそばに来た。

 

「自我…の…無い…魔…族は…殺戮…兵…器」

 

「………」

 

「妬ける…わね…こんな…イイ男…が…相棒…なんて」

 

勘九郎の視線が何故だか怖い。ピートの背筋に寒気が走る。

 

「アナタ…みたいに…私も…純粋…だっ…たら」

 

「………」

 

「イイ…男…と…仲良く…なれ…」

 

「さっさと逝けぇぇぇ‼」

 

ーメメタァー‼

 

「■§#△▲ΞΚ◎〒□●♯※%」

 

雪之丞は躊躇無く勘九郎のシンボルをおもいっきり殴った。2度目の言葉にならない悲鳴を上げ消滅した。

 

「ゆっ雪之丞…」

 

ピートも、無慈悲な一撃に、勘九郎に同情してしまう。

 

「さっ、次に行こうぜ」

 

雪之丞は何事も無かった様に元の場所に歩きだす。釣られてピートも後を追うがその目に光る何かを見た。

 

「雪之丞、向こうに何かあるぞ」

 

先程と同じ場所に浮かび上がる魔法陣に入ろうとした雪之丞を慌てて呼び止める。

 

「どうした、何かあったのか?」

 

呼ばれた雪之丞はピートの所まで戻り、次の言葉を待つ。

 

「床の外になるけど、あの辺りで何かが光った」

 

「何が光ったかは知らねーが、どうすんだ?」

 

ピートは言いながら指を差す。雪之丞の目を凝らして見るも見えない。

 

「何もねーじゃねーか。さっさと次行くぞ」

 

「ちょっと待ってくれ雪之丞…」

 

歩きだす雪之丞をもう一度呼び止めると、直ぐに考える。

 

(向こうに見えた光…魔法陣…一本道の通路…商業施設の地下…ジッケンジョウ…)

 

「一体どうしたんだ?」

 

雪之丞の呼び掛けにも、思考の海に深く潜っているピートには届いていない。そのまま数分間待つも帰って来ない相方に痺れを切らす。

 

「おいピート‼何時まで考えてんだ。時間もねーし次の部屋でも戦わなきゃならんだろうから、さっさと次行くぞ」

 

苛立ちを含む言葉と同時に肩を叩きピートを引き戻す。

 

「戦い…そうか‼謎は全て解けた」

思考の海から帰って来たピートは雪之丞の一言が切っ掛けで思考が纏まっていく。

 

「雪之丞、こっちだ‼」

 

 

 

その頃未だ出番は少ない横島は、修行の準備を終え寝ようとしていたがなかなか寝付けず、ルシオラの霊破片である蛍を手に取り、ぼんやりと眺めていた。

 

「なぁ、ルシオラ…明日から妙神山で修行だ。パピリオは元気にしてっかな?」

 

話しかけるも返事など無い。それでも横島は語りかけていたが、いつの間にか寝息に変わっていた。

 

 

 

勘九郎を倒した2人は結界の範囲内である床から飛び出し異界を走っている。

 

「本当にこっちになんだろうな?」

 

「あってるはずだ。どのみちあのまま指示に従っても目的は果たせない」

 

前を走るピートに雪之丞は胡散臭げに聞くも返ってきた言葉は頼りないものだった。

 

結界を出てから既に10分位経っている。ここに来るまでにピートから説明は聞いた。学校で横島から聞いた話では前回、美神達が偽りの依頼で実験台として危うく死にかけた事を。今回もあのまま従っていれば死ぬまで実験台にされると考えたピートは、結界を出て光が見えた方向に走り出したのだった。

 

「しっかし、何も見えてこねーな」

 

バトルが目の前にあったにも関わらず、お預けを喰らった雪之丞は少し不機嫌になっている。

 

「やっと敵が出て来たぞ雪之丞」

 

会話を待っていたかの様なタイミングでピートの前に大型犬のゾンビが10体ほど現れた。

 

「ちっ、犬のゾンビかよ。まぁ出て来ないよりマシだな」

 

雪之丞は言うや否や魔装術を展開して殴り掛かる。ここには先程の結界も無いので一撃で倒していく。

 

「ダンピールフラッシュ‼」

 

ピートも援護に周り攻撃を開始すると、数秒で片付けるも、どこからともなく動物型のゾンビが次々と現れる。

 

「雑魚が幾ら出て来ても無駄だ。喰らえ、連続霊波砲‼」

 

ードドドドドド‼

 

霊波砲は爆煙を上げながらゾンビを倒していく。攻撃の手を緩めない雪之丞は煙で視界が塞がれた。

 

「これじゃ準備運動にもならねーな」

 

攻撃を止めて煙が晴れるのを待つ。不意討ちを警戒していたが、その必要は無かった。視界が回復すると先程まで居たゾンビ達は跡形もなく消えて、援軍も出て来ない。

 

「ピートの言った通りだな。このまま真っ直ぐ行くぜ」

 

敵の出現に気を良くしたのか先に雪之丞が走り出す。ピートは苦笑いを浮かべながらそれに続く。そこから数分走った所で漸く目的地と思われる建物が見えた。

 

「あの建物だな」

 

建物を視界に捉え、雪之丞は、後は調査だけだと気が緩んでしまう。

 

ードーン‼

 

「危ない‼」

 

一瞬の隙を突いて放たれた霊波砲は、少し遅れて到着したピートが雪之丞を抱えてかわす。

 

「まだ仕事は終わって無いぞ」

 

「すまん」

 

軽く注意をしたピートは、雪之丞が謝ったのを聞いて、霊波砲が飛んできた場所に向かって走り出しす。そして

 

「お前だ…な⁉」

 

霊波砲を放つ位だからGS崩れだと思っていたが、そこに居たのは人形のゾンビだった。

 

ピートが驚くのも無理はない。今ままで闘ったゾンビは一様に肉弾戦で、多少の知性がある者でも連携や武器を使う程度だが、霊能力を使える者は居なかった。別の敵が居る事も考えたが、それは目の前のゾンビに打ち消される。

 

ゾンビの右手に霊力が集まりまたもや霊波砲を撃ってきた。

 

ードーン‼

 

狙って撃つも動作が遅いので、難なくかわしてピートは構える。そこへ雪之丞も追い付き

 

「Tーウイルス⁉」

 

メタ発言を繰り出した。まあ、心霊兵器を研究している時点で生物兵器の研究をしてもおかしくは無いが、まずはメドーサを疑うのが筋でしょう。

 

ー閑話休題ー

 

「いくぞ‼」

 

突っ込みはしなかったが、今の発言で集中が切れたピートは掛け声で気合いを入れ直しゾンビに向かって行った。

 

先程の霊波砲は撃つまでに数秒掛かるが威力はなかなかのものだった。連続で撃てるかは未知数だが厄介なのは確かで、ならばと接近戦を挑む。

 

ーバン‼ドン‼ズドン‼

 

右フックからバックブローで回転を付け、回し蹴りの3連コンボを繰り出す。どれもスピードと体重の乗った重い攻撃だが、相手のゾンビは体勢を崩すも強引に左ストレートを振り抜く。

 

ードス‼

 

「クッ…」

 

カウンター気味の攻撃にバンパイアミストを発動する間も無く右足でガードするが、予想以上に重い一撃に顔を歪める。一度距離を取ろうとするも相手の右手に霊力が溜まるのが見えたピートは

 

「サマーソルトバンパイアキック‼」

 

体勢が不十分ながらも顎を蹴り上げその反動で距離を取り難を逃れる。相手も今の一撃で貯めていた霊力が霧散した為に追撃は出来ず、お互いに間合いが空いた事で体勢を直す。

 

「強そうだな」

 

今の攻防を見て自分も闘いたいと思うも手出しはしない雪之丞。取り敢えずはピートを見守る事にした。




如何だったでしょうか?勘九郎のありきたり感f(^_^;
前回の話から勘九郎戦までは直ぐに出来ましたがその後が全く浮かばなくこれだけ間隔が空いてしまいました。
申し訳ないです。
しかしピートの扱いが難しい。やはり美形は敵ですね(笑)
それはさておき、南武編の目処が立ちましたので、次は出来るだけ早くお届けしたいと思います。
それでは第7話でお会いしましょう。
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