どぞ。
第一話 物語の始まりは…
式守総合病院、受付。
「こんにちは」
少年がそう挨拶する。
「あら、八緑君? 妹さんのお見舞い?」
一人の女性看護師が少年に気付き声を掛ける。
「中宮さん、ども」
少年ーー
「久し振りね~、元気してた?」
中宮 あずさはにこやかに続ける。
「まぁ、そうですね。 ぼちぼちです」
楓は落ち着いた態度でそう返す。
「相変わらず愛想がない子ね~。 たまには笑ったら?」
「と、云われましても」
「はぁ…良いけどね」
溜め息一つ。
「それより、お見舞いでしょ? はいこれ」
云いながらパスを手渡す。
「ども。 じゃぁ失礼します」
お辞儀を一つし、奥の特別病棟に行く為のエレベーターへと向かう。
「蒼桜ちゃんにはちゃんと笑顔見せなさいよ~?」
「うるさいです」
「素直じゃないな~…」
それを無視し、エレベーターに乗る。
………
特別病棟、VR治療試験室。
被験者名・
「……」
その病室の前に楓が立つ。
ネームプレートの下にあるスリットに受付で貰ったパスを挿し、スライド。
小さく電子音が鳴りLEDがオレンジからグリーンへ。
扉を開け、部屋に入る。
「蒼桜、入るぞ?」
云い、進む。
そこは細く狭い部屋で、入って右側の壁は腰の上から黒いガラス張りになっている。
「兄様? いらっしゃいませ」
部屋に設置されたスピーカーから、少女の声。
「よっ、久し振りだな」
微笑を浮かべ、声にも乗せる。
「お久し振りです、兄様!」
少女ーー八緑 蒼桜も笑みを浮かべ答える。
「今日はどうされたのですか?」
「あぁ、ちょっとな。 ガラス、透かしても良いか?」
「はい、どうぞ」
了承を受け、壁のスイッチを操作しガラスを透明にする。
そこには様々な機材と、中心にそれらが繋がれた少女がベッドに横たわって居た。
清潔そうなシーツが掛けられ、頭には〈ナーヴギア〉を被っている。
「今日も被ってるな、それ」
「頭のですか?」
「あぁ、まさかナーヴギアを病気の治療に使うなんてな」
〈ナーヴギア〉
世界初の
この病院では試験的にVR治療を行っており、蒼桜は被験者第二号だ。
「ゲーム機を治療に使うなんてな、不思議なもんだ」
「確かにそうですね。 一応、ゲーム機ですものね。
ところで、なにか御用があるのでは?」
「ん? どうしてだ?」
不思議そうに聞き返す。
「そんな感じがしましたので」
笑みを崩さず返す。
それを聞き楓は、
「全く、蒼桜は相変わらず鋭いな」
そう苦笑する。
「兄様の事なら任せて下さい。 大体はお見通しです」
胸を張って云う。
苦笑を深め。
「敵わないな、蒼桜には」
「なーんて、此処にいらした時に兄様が仰ったではないですか。 ちょっとな。 と」
得意げな笑みを浮かべ、種明かしをする。
「…あぁ、確かに。 流石だ」
一つ頷き、破顔する。
「ふふ。 それでどうされたんですか?」
「ん、ちと報告があってな。 それも取って置きだ」
「なんですか? 良い事ですか?」
嬉しそうに笑顔を浮かべ、身を乗り出す。
「おう、えっと、前に話したよな? SAOの事?」
「SAO…[ソードアート・オンライン]、でしたよね?」
「ん。 それだ。 実はこの前βテストの募集をしててな。 応募してみたんだが」
「βテスト? 確か1000人の定員でしたっけ?」
「そう、たった1000人だ。 結構な倍率だったんだが…」
ニヤリと笑う楓。
「ん…もしかして?」
期待の眼差しを向ける蒼桜。
「あぁ、見事当選したよ」
そう嬉しげに云う。
余程嬉しかった様だ。
「わぁ! おめでとうございます!」
我が事の様に喜ぶ蒼桜。
声が弾んでいる。
「ありがとな。 ナーヴギアでの初の本格VRMMOだ。 嬉しいよ」
「良いなぁ…私もやってみたいです…」
「そうだな、蒼桜も出来たら良いんだが…」
「音邑先生にお願いすれば何とかなりますかね?」
「いや、どうだろうな? ナーヴギアはあるんだし、出来ない事はないだろうが…」
少し困った様子で口篭る。
それを聞くと。
「あ、すみません…兄様を困らせるつもりは…」
「いやいや、構わないぞ。 俺も出来れば一緒にやりたいしな」
「…ありがとう、ございます」
「ま、まぁ今度何か出来ないか考えておく。 だから…」
と、そのタイミングで病室の扉が開く。
「ん?」
楓が振り向く、前に。
「おや? 楓君かい? 久し振りだね!」
白衣を着た男性が入ってきた。
「音邑先生? どうされたんですか?」
その男性に蒼桜が声を掛ける。
「や、蒼桜さん。 調子はどうだい?」
男性ーー
「そう、ですね。 悪くはないですよ」
「そうかい。
「んー…そですねぇ…」
「ん? どうしたんだい?」
言いよどむ蒼桜。
「えっと、ですね? 走り回ったり跳んだり跳ねたり出来るのは嬉しいんですけど、その…」
「狭いんですって」
「狭い? あぁ、そうか。 成程ね」
ナーヴギアにより仮想現実が実現出来たが現状リリースされている対応ソフトには狭い空間のものしかなく、ちょっと歩くと端から端に着いてしまう様なものばかりだ。
ソフトによっては確かに広大なものもあるが、自身の足で歩く様なものはそれが主流だ。
「うーむ…現状は仕方ないねぇ…」
腕を組み右手を顎にやり唸る、と。
「そうだそうだ! その事でちょっと話があるんだよ。 楓君が居るのは丁度良いね。 二人は[ソードアート・オンライン]っていうのは知ってるかい?」
「え? ソードアート・オンライン、ですか?」
「えぇ、知ってますよ? さっきまで蒼桜とその話をしてましたし」
「お? そうなのかい? って事は楓君はやるのかい?」
「はい。 βテスターに当選しましたしね。 早速明日から始めるつもりです」
「兄様流石ですよね♪ 倍率凄かったらしいですもん! …ん? ところで、SAOがどうしたんですか?」
小首を傾げ、不思議そうに問う蒼桜。
楓も気になる様子で医師に視線を向ける。
二人の視線を受け、一つ頷き。
「うん。 実はね? SAOの開発元のアーガスから打診があってね。 うちがVR治療を行っている事で懇意にしてる人からSAOでの治療試験依頼がきてね。 それで蒼桜さんともう一人の被験者用にソフトを提供してくれるとの事でね」
と、説明し。
「で、もし良ければ、と思ってるんだけど…どうかな?」
蒼桜に視線を向け、聞く。
「…えっと、つまり私もSAOが出来る、って事ですか?」
期待と不安が入り混じった表情で云う。
それに対し。
「うん。 そういう事だね。 勿論楓君と一緒に冒険も出来る。 どうかな?」
微笑を浮かべ蒼桜と楓を見やり、云う。
「蒼桜? 答えは決まってるんだろう?」
確信している様で、楓はニヤリ、と笑う。
蒼桜は。
「そう…ですね。 やってみたい…いえ。 やりたいです!」
初めは迷うように。 徐々に意思を込めてはっきりと告げる。
音邑医師はそれを聞き。
「…ん。 そうかい。 じゃぁ先方にはそう伝えておくよ。 正式サービスは十一月だよ? それまで大事にね?」
「はい!」
力強く頷き、満面の笑みで。
「良かったな、蒼桜? んじゃぁ俺はベータ中にしっかり鍛えておくかね」
「色々教えて下さいね? 兄様!」
「おう! それじゃぁ俺は帰るな? 音邑先生、また」
「うん、それじゃぁね。 蒼桜さんもまたね」
「はい。 それでは」
………
ふぅ…。
溜め息を一つ吐く。
兄様と一緒に…。
小さな頃に戻れるみたい…
あの子も一緒だったらな。
元気かな…?
『木綿季』…。
一応この兄妹がメインです。
何分素人な上、メンタル豆腐なのでガクブルです・・・
ある程度原作に沿って書いていきたいと思ってます。
どうぞよしなに!
追記・病院名を変更。 港北総合病院>司紀杜総合病院
2017.07.20.追記
病院名を再変更。 >式守総合病院